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将来への見通し

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状況をコントロールしつづけるには

本書の前半を読み終えたあなただったら、すでに状況をコントロールする術を知っているはずだ。

次に大事なことは、どこに注意を向けていくか、である。

そもそも状況をコントロールする最大の理由は、余計なことに注意を奪われないようにするためだ。

だが、ここで本当に考えなければならないのは、あなたの注意を奪うものの本質である。

確かに、頭の中や周囲の環境をすっきりさせることもGTDの目的の1つであるし、それ自体、すばらしいことだ。

心が何ものにもわずらわされない状態が達成できれば、あなたはかつてないほどの集中力を発揮できることだろう。

これがGTDの最も優れたところだという人も多い。

けれどもその状態を維持するには、さらに踏み込んで「あなたが何に注意を向けているか」について考えておく必要がある。

状況のコントロールと将来への見通しの関係について1つの例を挙げてみよう。例えば、読む本が多すぎて放置されているという問題を考えてみよう。

いつか読みたいと思っている本やプリントアウトされた書類、パンフレツト、マニュアル、雑誌、カタログなどが、本棚やデスクや居間のテーブルに放置されていたり、引き出しやカバンの中に紛れ込んだりしている状態を、あなたも経験したことがあるはずだ。

この手の書籍や文書の管理を実現する最も手っ取り早い方法は、「あとで読む」というラベルをつけた場所を用意し、そこにすべてを入れてしまうことである。1冊たりとも例外扱いしてはいけない。

すべてが収集できたとき、このうえない満足感を覚えるはずだ。読むべきものが1つの場所に収まっており、他のものと明確に区別できているからだ。

そこには読むものが大量にあるかもしれないが、それらの意味はすでにはっきりしており、それに対してとるべき行動もはっきりした。雑然とした状態は解消され、あなたは安心感を覚えていることだろう。

それらに精神的、物理的に対応しただけでなく、放置されているものが完全になくなったからである。

しかし、こうして状況をコントロールしたうえで、さらに完璧を目指したいならば「将来への見通し」の観点からも考えてみるとよい。

この場合は、読むべきだと思って収集したもののうち、本当に読むべきものがどれかを判断する、という作業だ。

以前は興味があったが、今はどうでもよくなってしまったものはないだろうか。自分にとって本当に大事なのはどれだろう。もう興味を失っている分野の雑誌もあるかもしれない。

今、自分が興味や情熱を持っている分野について考えたときに、どの雑誌の購読を停止し、どの雑誌を新たに購読するべきだろう。

状況のコントロール、そして将来への見通しの両面から考えることがあなたの生産性を高めるには必要なのだ。

ただ、重要なのは、「将来への見通し」の前に「状況のコントロール」を確実に達成してしまうことだ。

読むべきものの収集と整理を済ませる前に、「人生の目的を考えたときに、あなたが今読むべきなのはどれでしょう?」と尋ねられたら、あなたはどう答えるだろう。

ほとんどの人は、何とか答えを出そうとするはずだ。

けれどもたいていは、読むものが整理されていないせいで、十分に注意を向けて深く考えることができないだろう。

少なくとも最低限の整理ができていない限り、より高度な次元で優先順位を考えることは時間のムダなのだ。

水準を保つには見通しをクリアにする

読むべきものは、ただ収集しただけでも気分的にすっきりするが、それだけではダメである。

集まったものにさらなる注意を向けないと、再び状況のコントロールができていない状態に戻ってしまう可能性が高い。

「将来への見通し」についても注意を向けていかないと、それらはすぐにまた散らかりはじめるだろう。

収集したものの意味を随時見直して最新の状態に保たない限り、それらはまた「気になること」に逆戻りしてしまうからだ。

実際には、本や雑誌が自分にとってどのような意味を持っているかを評価するには、適切な視点と見通しの枠組みが必要である。それがないと、本当の意味で状況のコントロールが達成されることはない。

「状況のコントロール」と「将来への見通し」は密接に結びついているがゆえに、後者は忘れられがちだ。

とりわけ状況のコントロールが比較的うまくいっているときはそれだけで満足してしまい、「将来への見通し」に目が向かなくなってしまうことも多い。

GTDを実践して状況のコントロールができてくると、頭がすっきりとして、より自信を持って行動できるようになる。集中力もぐつと高まってくるはずだ。

たとえ状況が混沌としてきても、5つのステツプでいつでも状況をコントロールできるようになるから大文夫、という安心感も得られるようになる。

そうなるともうこれ以上、他に必要なものなどないではないか、と思うのは仕方がないのかもしれない。

ただ、完全にキャプテン&コマンダーの状態を達成するには、状況のコントロール以外に、「将来への見通し」についても適切な注意を向けるべき、ということを知っておくべきだろう。

それぞれのレベルを把握する

実際のところ、状況をコントロールする5つのステツプさえ完璧に行なっていれば、他に何もしなくても好調な状態を達成することができる。

しかしさらに生産性を高めるためには、「見通し」を定めるための6つのレベルについても、システマチックなアプローチで注意を向けていかなくてはならない。

私たちの人生はあまりにも複雑であり、注意が向いていることのあらゆる側面を1度の作業で細部に至るまで明らかにすることはほとんど不可能に近い。

見通しというのは、動いている的のようなものだ。あるレベルのことをじつくり考えはじめると、別のレベルで新しい気づきがあったりする。

例えばプロジェクト(高度1000メートル)のリストを完全にチエックすれば、修正するべき目標(高度3000メートル)や、それまで気づかなかった家族に関して負うべき責任(高度2000メードル)などが見つかるはずだ。もちろん、必要な行動(高度0メートル)も出てくるだろう。

また、6つのレベルを考えるときには、1つずつ集中して注意を向けていったほうが効果が高い。

もちろんあなたの心はさまざまな連想をしてしまうだろうし、それを無理やり抑えつけるのも精神衛生上よろしくない。

ただ、そうした自由な発想を許しつつも、将来への見通しを定めるためには今どのレベルを集中的に考えているのかを意識しておいたほうが、その効果が最大化されるはずだ。

高いレベルに注意を向けるほど、いろいろな問題や不安、デリケートなことが思い浮かんでくるものだ。そのせいでバランスのとれた状態が簡単に崩れてしまうことも多い。

しかしこれらすべてを明らかにすることによってはじめて、自分にとって最も大事なことは何かが明らかになる。そういう状態になればあなたは自分の能力を存分に発揮できるはずだ。

つまり、それぞれのレベルを見渡す作業を実際に済ませてしまわない限り、真の意味で心の平安は得られないわけである。

一方、それをやり終えてしまえば、見通しがクリアになって安心感と自信が湧いてくる。なぜ今までやらなかったのかと、あなたは不思議に思うはずだ。

ただし、このプロセスを実際にやろうとしても、人によっては今までやったことがないためになかなかすぐにはできないこともある。

これまで何らかの理由で避けてきたことが明らかになって、対処しなければならないことがどんどん浮かんでくるだろうし、それはお世辞にも楽しい経験とは言えない場合もある。

トップダウンかボトムアップか

人生と仕事で関わっていることのすべてに向き合うときには、まずは下のレベルから考えていくと手がつけやすい。また、このようなボトムアップのアプローチが優れている理由は、他にもある。

下のレベルのほうが比較的コントロールしやすいし、そこをコントロールできるようになれば自信が高まり、より曖味で複雑な上のレベルについても考えてみようというモチベーションが湧いてくるからだ。

私はこれまで、こうしたボトムアップのアプローチをお薦めしてきた。

実際、成功している人たちの多くは、下のレベルでGTDのプロセスを実行すると、特に頭を働かせなくてもさまざまなインスピレーションが湧いてきて、より上のレベルに取り組めるようになった。

GTDを実践している人の多くが最も価値を感じるのは、行動リストといった現実的な部分ではなくて、それらがコントロールできたときに自然に達成される、ダイナミックで創造的な思考なのだ。

逆に上のレベルから考えて下のレベルを考えていくトツプダウンのアプローチはあまりうまくいかない。

確かに来年の目標をはつきりさせれば、インスピレーションは高まるだろう。少なくとも会場を借りてやるような規模の会議では効果が期待できる。

だが、それをやつたからと言って、書類受けの中身やメールや頭の中のことを片付けようという気にはまずならない。

キャツシュフローが危機的な状態のときに、幹部たちに長期的な目標や戦略を一所懸命考えさせようとしてもうまくいかないのだ。

心理学者の大家エイブラハム・マズローが指摘したとおり、まず日常のこまごまとしたことが安定しない限り、より高い次元のことに向き合つていくことはできないのである。

ただ、心が安定しているかどうかというのは、外見と違ってはっきりとはわからないことが多い。

見た日は落ち着いて見えるのに、心の中に大きな不安や弱さを抱えているクライアントを、私は何人も見てきた。

そのような状態では、長期的な目標を考えようとしてもうまくいかない。それは本人からしてみても同じだ。

海で滋れていればすぐに気がつくが、内容のはっきりしていない大量の情報や不安に溺れていても本人はなかなか気がつかない。

そして気づかないがゆえにそのままの状態でずるずると過ごしてしまいがちだ。

これは私が何度も日の当たりにしてきたことだが、「収集」「処理」「整理」をやってGTDのシステムに取り込む作業に自信を持っている人は、新たな目標や課題にも挑戦しやすくなるようである。

書類受けに放り込んだものがすべて、いつかは実行可能な物理的な行動に変わることがわかっていると、より大きなことや素晴らしいことに取り組む余裕が出てくる。

これについても、逆のパターンというのはちょっと考えにくい。日標を立てたリビジョンを描いたりする能力に自信があっても、それが現場における仕事の能力や自信を保証してくれるわけではないからだ。

6つのレベルでの見通しを実践する

見通しを定めるための各レベルについては、以下の章で順に解説していく。それぞれのレベルにおいて、いつどんなことをどのように考えていくべきかについて詳細に見ていこう。

なお、それぞれのレベルを高さにたとえているが、これらは重要度に対応しているわけではなく、視野の大きさを象徴的に表しているにすぎない。

かけなければならない電話(高度0メートル)と、人生の目的や重要な価値観(高度5000メートル)は、すべてのレベルについて考えることで生産性が最も高まることを考えると、どちらも同じように「重要」なのだ。

そしてそれぞれのレベルは密接に結びついていることにも注意してほしい。

組織の年次計画(高度3000メートル)は、長期的なビジョン(高度4000メートル)の下位に属し、プロジェクト(高度1000メートル)は、注意を向けるべき分野や責任を負っている分野(高度2000メートル)の下位に属している。

これらのレベルはいずれも単独では役に立たない。

各視点が統合されてはじめて、適切な方向に注意を向けていくことができるようになるのだ。

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