わたしも向こう意気の強さでは、人に負けないと思っていたが、P社の社長の鼻息には太
刀打ちできなかった。P社長がわたしの塾に入りたいと訪ねてきたときのことである。
「先生、わたしは上場するために今の事業をやっている。上場の仕方を教えてほしい」と、
いきなりのことだ。聞いてみると、地方で家電の量販店をやっており、親の代からの資産に
ものをいわせて、繁華街の中心部の適地を買いまくっているという。そこに自前の店を建て
て、チェーン展開をして資産を増やし、売上を増やし上場させよう、という夢をとうとうと
語ってくれた。
聞けば聞くほど、「ああ、これは昔の資産家のやり口そのままだな」と思われた。そこで、「あ
なたは大きな勘違いをしている。今のやり方だったら、せいぜいローカルの有力家電小売店、
というのがせいぜいのところだ。将来もし本当に上場させたければ、借地・借家政策に切り
替えることだ。そうでないと店を増やせなくなってしまう。店をムリに増やすと資金でつま
ずくことになる」と申しあげたのを覚えている。
社長の野望とその達成手段がちぐはぐなのだ。他人のわたしにすぐ分かるのに、本人は一
向に気がついていなかったのである。
それからというもの、このP社長を塾に入れて鍛えに鍛えた。事業にとって資金力とはど
ういうものか、お金の回し方とは、会社の財務体質とはというように、事業資産の運用ノウ
ハウはもちろんのこと、いかに効率よく多店舗展開をするか、同じ資金で幾通りものシミュ
レーションをやらせた。さらに、当時ようやく出はじめたロードサイド店の情報、それによ
る立地条件の変化など、異業種の仲間とも活発な情報交換のすえ、借地。借家でいくことに
切り替え、五年間の長期計画で多店舗展開を実施していったのである。
現在P社は、店舗数一〇〇、売上四〇〇億円の規模に順調に発展し、念願の店頭上場を果
たしたのである。
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