では、家族はどうでしょう。 これまで元気に会社の社長として活躍してきた夫(妻)、父親(母親)が突然、会社をたたむとか、売却するとか、事業の規模を極端に縮小するということを知ったときに、家族はなにを感じ、どう考えるかという不安もまた、これまで家族に対して会社の内情を共有していない場合に起こる社長の心理といえるでしょう。 会社の問題で家族が不幸になるのではないかと勝手に思うのではなく、家族の一員として、常に自分の仕事についての話し合いができていたとしたらどうでしょう。きっと家族は社長という任務を遂行している夫(妻)、父親(母親)に対して、「もう会社をやめたほうがいいんじゃないの?」「社長をやめたら?」「もう少し頑張ってみたら?」「私たちのことをそんなに心配しなくてもいいよ」「私もあなたと一緒に頑張ってみるから」「大丈夫! 会社が駄目になったら、一からやり直せばいいのだから」 などと助言してくれるでしょう。その助言が、社長の思い込みを解くキーワードになるはずです。 家族に心配をかけたくない、社員に心配をかけたくない、と苦しむことで、社長は自らの「思い込み」を外せなくなるのですが、思いや考えを共有することで、苦しみが軽減し、新たな希望を見つけ出すことが可能になるのです。 社員や家族に心配をかけたくないと思い、苦しめば苦しむほど、逆に社長の間違った「思い込み」が家族を不幸にしてしまうかもしれないのです。 社長といえども、会社組織の窮状を一人で解決することはできません。 先に述べたように、社員も家族もその仕事で生活しているわけですから、運命共同体なのです。 青天の霹靂のように、ある日突然、借金取りが家に押しかける事態に遭遇して、初めて驚愕し、そこで慌てて家族、親戚が集まり、大騒ぎになって揉めるというケースをよく聞きますが、それは、実状を共有できていないことが引き起こす惨事といえるでしょう。 人間関係の崩壊は、共有がないから起こるのです。 事業のことを家族に話したってわかるはずがないと、自分勝手に諦めてしまっている人がほとんどですが、苦しいとか、大変だとかを話せる関係でないと、いずれ崩壊します。 実際には、なんでも話せる環境や関係を築くのは非常に勇気のいることでしょう。社員や家族に馬鹿にされたくない、心配をかけたくないという心理の裏側には、軽蔑されたくない、信頼を裏切りたくないという、人間としてのプライドがあるはずです。 そこには、ありとあらゆる社長個人の「思い込み」がこもっていますから、共有することが極めて困難になってしまうのです。 共有できる人は、自分の「思い込み」や勘違いをすでに解決できているといえます。日常に共有理解があると、奥さんは、夫の窮状を肌で感じ取っているでしょう。奥さんだって、苦しく怖い思いをしているかもしれないのです。 そんなとき、自分の気持ちを正直に伝えたら、奥さんはホッとして、どんなことがあっても一緒に頑張ろうと言ってくれるかもしれません。子どもたちも同じように思ってくれるかもしれません。
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