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実行の手順を改めてはっきりさせる

 ここまでに説明した「経営を構成する大事な要因」と「利益性の原則」の2つは、経営原則の中で最も重要度が高いものです。  ではこれらを、どのような手順と考え方で実行に移せばよいのか?  実行の手順を考えるときにとても役立つのが、軍隊の将校が作戦計画を立てるときの作業手順なので、これについて説明しましょう。  将校が作戦計画を立てる際の前提になるのが、必勝の信念と決断力です。次いで目的、目標、戦略、戦術、戦闘時間、戦闘期間、情報、革新の順で計画

を立てます。  これを、会社のリーダーである社長に置き換えると次のようになります。  前提になるのが、経営の願望、熱意、決断力、向上心です。  自分が経営している会社の業績を、何としても良くしたいという強い思いと熱意、重要なことをきちんと決める決断力、自分の戦略実力を高め、従業員や仕入先などから尊敬される、立派な社長になりたいという向上心が社長には求められます。  会社は歩合給で運営されており、しかも多くの競争相手がいる中、もしこれらが弱かったら、競争の荒波にのまれてしまうことははっきりしています。  その上で、第一に明確にしなければならないのが、経営の目的です。  人はことのほかお金にとらわれているために、ほとんどの人は、経営の目的は「利益の追求にある」と考えています。  しかしたとえ経営の目的を利益の追求に定めたとしても、ではどうすれば利益が多くなるか「その方法」ははっきりしません。そこでつい、労せずして儲かりそうに思える、土地、株式投資、商品先物投資、外国為替投資などに目が向いてしまいます。  バブル経済のとき、これらに手を出したことが原因でなんと 30万人もの社長が経営に失敗し、大事な人生を棒に振ってしまったそうです。こうした現象は過去に何度となく起きていて、そのつど多くの社長が失敗しています。こうなった大本の原因をただせば、労せずして儲けたいという人の「欲の深さ」にあるのです。  ですから社長は、経営の目的は利益の追求ではなく、競争力がある強い商品づくりや、特定の地域で 1位になる客層づくりに定めるようにすべきです。  競争力がある強い商品づくりや 1位の地域づくりは、一朝一夕にしてできるものではありません。本気で取り組んでも何年もかかるので、その期間は脇目をふらずに経営に取り組むことができるので、「欲の深さ」から逃れるためにはかえって好都合といえるでしょう。  次の手順は、目標です。  目標というと、多くの社長は売上高目標や利益目標をあげますが、ここでは、「経営の目的」に対応した目標を設定します。会社の「目的・目標」です。  競争力がある強い商品づくりや、 1位の地域づくりを目的にした場合の目標は、次の3つになります。  1つ目は、「重点商品の決定」です。社長の性格と過去の経験、自社の経営力と競争相手との力関係、業界におけるランクの3つを考えた上で、どの商品に力を入れて、将来 1位になることをめざすかを決めます。  2つ目は、「重点地域の決定」です。自社の経営力と競争相手との力関係を考えた上で、どことどこの地域に力を入れて将来 1位になることをめざすかを決めます。  3つ目は、「重点業界や重点客層の決定」です。どの業界、どの客層に力を入れて強くするかを決めます。  売上目標や利益目標は、単なる数字合わせではなく、強いものづくりや 1位づくりと連動した形で決めなければなりません。お客づくりに直接関係する「商品」、「営業地域」、「業界と客層」の3つと全く関係なく売上目標を立てた場合、仮にそれが達成されても、従業員 1人当たりの経常利益は多くならないのです。   4番目が、戦術です。本当は 3番目の戦略を先にすべきなのですが、説明の都合上、戦術を先にします。  戦術の語源は古代ギリシャのタクティコースにあり、もともとは掃除を専門にする人をこう呼んでいました。掃除を専門にする人は、まず手に掃除道具を持ち、次に手や体を繰り返し何回も動かして体に汗を流します。この様子が兵士の動きによく似ているので、いつの間にか兵士のこともタクティコースと呼ぶようになったそうです。  明治の初めヨーロッパへ兵学の研究に行った山縣有朋らは、これを「戦術」と翻訳しました。そして戦術とは「見えるもの」と解説を加えています。直訳は「兵士の術」になります。戦術は 1対 1の勝ち方の知識や技術になり、経営では「従業員の仕事術」になったのです。  経営でも道具を使い、繰り返しする作業は戦術になります。営業パーソンが定期的にお客を訪問するのは、繰り返し作業なので戦術です。新規開拓の仕事も同様です。  会計の仕事は、ボールペンやパソコンなどの道具を使い、次に手先を何回も動かすので戦術であり、資金繰りも、 10日、 15日、 20日、月末と繰り返しするので、やはり戦術になります。会計の専門家の中には「資金繰りは経営にとって大変重要だから、資金戦略だ」と言う人がいますが、そうではありません。  繰り返し作業で仕事量を多くするには、スピードを速くしたり、ミスや不良品を少なくする必要があり、これを「能率の向上」と呼んでいます。つまり能率は戦術に対応した専門の用語なのです。加えて言えば、「戦術は戦略に従う」という原則があるように、戦術上の仕事だけが「単独」に発生するものではありません。  兵士の数が多くなると、その上にリーダーが置かれます。たとえば 4、 5人の部下をもち、自分も戦術を担当する人を伍長と呼びます。その上が戦術リーダーで、戦術リーダーは、戦術行為をしないのが原則です。  経営でも、従業員が多くなるとその上にリーダーが置かれます。 4人 ~ 5人の部下をもち、自分も担当の仕事をもっている人は、伍長型のリーダーです。しかし伍長型のリーダーは、自分も戦術を担当しているため仕事時間に余裕がないので、幹部ではありません。  その上の戦術リーダーは、原則として戦術を担当しません。しかし自分の人件費とその他の経費はすべて部下の働きに依存するので、訪問型営業や建設工事業では 10人以上、小売業や飲食業では 20人以上、工場では 40人以上の部下をもたないと、自分の存在理由がなくなります。  だから、自分で戦術を担当しない会社の管理者は、戦略のプロにならなければならないのです。  さて、戻って 3番目が、その戦略です。  戦略の語源は古代ギリシャの「ストラテジア」にあります。   1864年、長州藩(山口県)出身の大村益次郎は、これを「将軍の術」と翻訳していましたが、明治の初めヨーロッパへ兵学の研究に行った山縣有朋らは、これを戦略、または軍略と改めました。それとともに、「戦略とは見えざるもの」と解説をしました。  ちなみに戦略の「略」の字は、知恵を意味しています。  このように戦略は軍事用語で、その意味は軍全体の効果的な勝ち方のルール、またはその知恵になります。これからすると経営戦略は、経営目標を効果的に達成する全社的なやり方、またはそのルールや知恵ということです。そしてこれが、「社長の経営術」です。  大村益次郎が訳した「将軍の術」ということであれば、その意味がおおよそわかりますが、戦略とか軍略と言われると、意味がはっきりしなくなります。そのため、コンサルタントの中には、戦略の意味を間違えて使っている人が少なからずいるのです。  自社の経営力や強みを考えた上で会社の将来目標を定めるには、レベルが高い戦略知識が必要になります。しかし戦略は、あくまでもその目標を達成する「

やり方」です。経営の目標とははっきりと区別して考えなければなりません。  戦略と戦術の正しい意味を理解していないと、経営をするときに、次のような誤りが発生します。・会社の規模でおのずと変わってくる、社長の役目と従業員の役目がわからなくなる。・きちんとした経営システムがつくれないばかりか、差別化力がある経営もできなくなる。・仕事の内容が見えるものだけを重視するようになるので、結局、業績は従業員の働きぶりで決まると考えてしまう。  これでは、まともな経営ができなくなるでしょう。  だから社長は、「戦略」という言葉に接したら、いったん「将軍の術」と語源にもどし、さらにそれを「社長の経営術」と置きかえて考えるようにしなければならないのです。

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