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定石43:創業以来の会社の体質、体力、すなわち自社の実態はB/Sにすべて集約されている B/Sを大事に経営すれば絶対に会社を潰さない

会社を絶対に潰さない定石というものがある。その第一は、バランスシート(B/S)を大事にする経営に徹するということだ。

我が社が2008年秋のリーマンショックに端を発した大不況により、わずか2年で売上が一気に3分の1に激減、最終利益にいたっては85億円の赤字を出しながら、人員削減、給与カットは一切なし、現預金や自己資本比率も好調期と変わらない強い経営体勢を維持しながら、2011年2月期に黒字転換を果たしたのも、なによりB/Sを大事にする経営を推進してきたからにほかならない。

ところが、 一般にP/L (損益計算書)に関心のある経営者は多いが、B/Sに関心を示す経営者は多くない。私の経営塾に来られる方に聞いてみても、P/LとB/Sのどちらが大事か、どちらに関心をもっているかといえば、100名中90名はP/Lと答える。

要するに、たいていの経営者は「いくら儲かったか」「経費はどれだけかかったか」といった目先の損得が気になり、すぐにP/Lに目がいくものなのである。人情としてそれも理解できないわけではないが、しかしよく考えてみていただきたい。P/Lというのは、わずか一年間の経営の結果をあらわしたものにすぎない。つまり、この一年間でどれだけ儲けたか、あるいは損したかを示しているのがP/Lである。

しかし、世の中の景気が悪くなると原則的に売上・利益は減っていくものだ。逆に、景気が回復すれば、それはすぐもとへ戻る。このように簡単に変わりやすい数値がP/Lの数値だ。

それに、時と場合によっては損が出てもいいケースすらある。本書の序でも述べたが、2010年の我が社は、近い将来赤字になる事業を捨てて、さらに値崩れを防ぐために意識的に売上を抑えて大赤字を出した。

しかし、それによる固定資産の減少、在庫の削減、売掛債権の減少によりB/Sを圧縮し、ROAを高めて収益性と健全性を改善した。おかげで市場の回復に伴い自然と売上が伸びるに従って、赤字前よりさらに儲かる体質となった。だから、わずか一年の損益など、決して無視していいとは言わないが、社長はそんなことでいちいち一喜一憂する必要はないのだ。

これに対して、B/Sというのは、会社創業以来の蓄積の結果をあらわしたものである。言ってみれば、創業以来10年も20年もかけて蓄積してきた会社の力量、会社が現在有している体力のすべてを示しているのがB/Sなのである。

そこには、事業の歴史と社長の折々の判断が、良いも悪いも含めて、すべて凝縮されたカタチであらわされている。例えば、B/Sの右側は、その会社がもっている自分のカネ、利益、それと信用の累計であり、結局はこれだけの資金を使って会社経営ができるという「資金の調達力」をあらわしている。いわば、何十年もかけて蓄積してきた、会社の現時点における体力をあらわしているといっていい。

このように、B/Sの右側は資金の調達力をあらわしたものだが、それだけではない。さらに、どういうところから資金を調達しているのか、自分のカネなのか銀行からの借金なのか、信用によって仕入先から買掛債務として調達しているカネなのかといった「資金の調達先」もあらわしている。

一方のB/Sの左側は、右側で調達した資金をどのように使っているか、「資金の使い道」「資金の使途」をあらわしている。つまり、調達した資金を売掛金や手形でもっているとか、機械設備や土地でもっているとか、あるいは投資勘定でもっているといったことをあらわしている。そして、必要以上に在庫が多いとか、売掛債権が多いとか、自己資本以上に固定資産をもっているとか、万一不渡りをくらったときに、手元にすぐ金になるものがいくらあるとか、創業からこれまで資金をどう調達して、どう使ってきたか、いわば会社の体質、体力、もっといえば社長の性格、経営のやり方そのものが、B/Sには示されているといっていい。

だから過去3期分なり5期分なりのB/Sを拝見すれば、「売上の割に儲からない体質」とか「万一のときにどの程度の抵抗力があるか」だとか、その会社の実態が読み取れるのだ。

こういうことはP/Lだけ見ていても、決してわからない。基本的にP/Lで出る利益というのは、つくられた数字、いわば帳簿上の数字であって、利益が上がったからカネが増えるわけではないからだ。はっきり言ってしまえば、実際のカネと利益というのは直接関係がないのだ。

もちろん、P/Lで利益を出すことは非常に重要であるが、その利益を出すためにも、B/Sが必要なのである。詳細はこれから述べていくが、利益を出す方法の一つには売上を伸ばすことがある。ただ、本書で繰り返し述べているとおり、低成長時代を迎えた日本で、高度成長期と同じように毎年毎年売上を10%、20%の勢いで増やし続けていくことは難しとすれば、売上が伸びない中で利益を増やすには、コストを下げてマージンを増やす必要が出てくるが、これについてはP/Lだけを見ていたのではわからない。B/Sを数期にわたって分析し、B/Sの左側、資金の使途をよく検討して、必要のない無駄な借金はどんどん減らしていく。

すなわち、儲かる事業を伸ばして斜陽化していくものを捨てる、儲けに貢献しない無駄な固定資産を処分する、設備投資は減価償却費の範囲内で行う、過剰在庫を抑制する、日々の決済支払いと回収に1カ月の差をつくる、固定費比率を下げて減収しても増益する体勢を築くなど、これまで本書で述べてきた経営の定石を守った事業経営をすれば、B/S左側「資金の使途」がスリムで筋肉質なものとなり、同時にB/S右側の余分な「資金の調達」も不要になるため、無借金で収益性と健全性の高い財務体質が築けるというわけだ。

すなわち、企業の体質を強くしていくのは、社長の意思、社長の戦略として将来のB/Sをどう作り上げていくかにかかっているといってもよい。いわゆる目標B/Sをきちっと作って、それに向かってどうすればいいのかを考えていかなければならない。

B/Sの体質が良くなったのかどうか、経営としてはそれが重要である。利益は出たがB/Sが良くないというのでは、優れた経営とはいえない。利益が出て、なおかつB/Sが良くなり、効率のいい会社に生まれかわる、ここにこそ、経営の定石を守る意義があるといえよう。

そしてB/Sが良くなった会社というのは、確実にP/Lの利益も良くなる。逆に言えば、悪いB/Sのままでは、P/Lの利益も出てこないのだ。

ゆえに、P/LよりもB/Sを重要視した経営をする。これこそ、会社を潰さない一番大事な原点なのである。

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