いま、中小企業の経営者の多くが、銀行からの融資に戦々恐々としていると思う。我が社は無借金だから、そういった借金の苦労はないのだが、私の経営塾に参加される塾生から話を聞くと、なんだかんだと理由をつけられて、・融資がおりなかったり貸し剥がしを受けたりと苦労されている。
そこで一点、「見返り預金」という配慮を忘れてはならないだろう。見返り預金とは、銀行に融資を申し込む際に要求される預金のことである。会社が銀行から借金すれば、見返り預金を要求されるのが普通である。バブル期などは、とにかくカネを借りてくれ、借りてくれと、あちらがお願いにくる状態だったから、見返り預金など要求されることはなかっただろうが、今はそういうわけにはいかない。
もちろん、表面的にはそういうことが否定されていても、銀行も商売であるからには、当然のごとく見返り預金を要求してくる。どのくらい要求されるかは各行マチマチだが、 一般的には短期借入金の30%、手形割引で20%、長期借入金の場合は10%というのが相場であろう。
短期借入金が一番高く要求されるのは、無担保での貸出が原則だからである。手形割引の場合は、相手側が発行した手形という裏づけがあり、短期借入金ほどではないが、それでも20%ぐらいは見返り預金を要求される。つまり、借入金に対して、20%ぐらいの預金をしないと手形は割り引いてもらえない。
では長期借入金の場合はどうかというと、長期借入金は返済期間が長期に渡るため、必ず担保の見返りを要求される。たとえば土地、建物、あるいは機械設備が担保物件となるわけだが、それを担保に入れた上に、なおかつ預金も要求される。ただし、担保を入れている分、短期借入金や手形割引よりも少なく、だいたい借入金の10%ぐらいが相場というわけだ。
そして、この見返り預金がないと、借り換えの約定金利を上げられたり、追加融資を断られたりするので、見返り預金の分だけは必ず運用預金を確保しておかなければならない。そこで、皆さんも会社の見返り預金を計算して、預金残高が常に見返り預金分を確保しているか確認してみよう。
やり方は、第45表A社の「借入に対する見返り預金検討表」を使って説明する。まず借入金の状況をみると、直前3期は、短期借入を8,000万円、手形割引2,000万円、長期借入を2億7,100万円返済した。よって、A社の直前3期末借入残高は8億5,400万円である。
さて、 一方の見返り預金も計算してみる。まず直前3期の「短期借入金」の見返り預金は、短期借入金の期末残高2億2,000万円×30%=6,600万円。同様に、手形割引は期末残高8,000万円×20%=1,600万円、長期借入金は期末残高5億5,400万円×10%=5,500万円。
よって、A社は直前3期に8億5,400万円の借入に対して、見返り預金用に短期借入金の見返り預金6,600万円+割引手形の見返り預金1、600万円+長期借入金の見返り預金5,500万円=1億3,700万円を、回座に残しておかなければならないということになる。
それでは、実際にA社の預金残高はどうなっているかをみてみよう。直前3期の期首に4億円だが、 一年間の資金運用の結果、2億300万円減って、結果的に期末の残高は1億9,700万円である。
そうすると、見返り預金は1億3,700万円であるから、この期は見返り預金を十分補って余りあるだけの期末残高が残るということだ。
もし預金残高が見返り預金よりも少ないようであれば、A社は返済金額をもっと減らさなければならないし、逆にあまりにも預金残高が多い場合は、高い金利を払ってまで使い道のないカネを手元に置いているということだから、健全性を悪化させない程度に借入返済に資金を充てて、支払い金利を減らして利益の向上を図るべきだ。
効率的かつ健全性の高い資金運用と借入返済のやりかたについては、前著『先読み経営』(日本経営合理化協会刊)に詳述しているので、そちらをご参照願いたいのだが、とにかく銀行借入に対する見返り預金の見積もりというのは、このように計算していただきたい。
さて、同様に直前2期も計算してみると、借入金については、短期を2,000万円借りて、手形を2,000万円割り引いて、そして長期借入金は1億8,000万円返済した。そうすると、直前2期の借入金残高合計は7億1,400万円となる。
これに対する見返り預金を計算してみると、短期借入金の期末残高2億4,000万円×30%=7,200万円だ。同様に、手形割引は期末残高1億円×20%=2,000万円、長期借入金は期末残高3億7,400万円×10%=3,700万円が長期借入の必要見返り預金額となる。
よって、直前2期のA社は7億1,400万円の借入に対して、見返り預金用に1億2,900万円を残しておかなければならないのだが、 一方の預金残高は、1億3,700万円であるから、この期も見返り預金の確保は問題なくできているということだ。
同様に計算すると、直前期も問題ない。借入金8億5,400万円の見返り預金1億4,600万円に対し、預金の期末残高は1億6,700万円であった。これなら、預金残高が見返り預金を下回ることはない。
このように、銀行からお金を借りるときには、短期。長期。手形割引とそれぞれの性格別に掛率を変えて、借入に対して見返り預金が十分あるかを確認しておくことが、銀行との融資交渉において安定した資金の導入につながる大事な条件なのである。
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