社長になると孤独になります。真っ暗闇の中に一人ぼっちで漂っているようなものかもしれません。その症状を持つ人は、「社長という病」のかなりの重症患者です。
では、どうして孤独感が起きるのでしょうか。それは心の重圧にあります。
私などは社長に憧れ、夢の一つにしていましたが、実際にはまるで向いていないことがわかりました。自分には社長を続けるだけの器量もないし、度胸もないことがわかったのです。ですから、思いっきり重症患者になりました。
心の重圧とは、目に見えない自らが作り出す恐怖心のようなものです。
まだ見ぬ明日に不安を感じたり、まだ見ぬ将来を恐れたり、なにも起きていないのに、なにか災いが起きたらどうしようかと、常に不安定な状態が続きます。
もし、売り上げを確保できなければどうしようか。
もし、売れなくなったらどうしようか。
もし、取引先からの仕事がなくなってしまったらどうしようか。
もし、病気になったらどうしようか。
もし、会社が潰れたらどうしようか。
もし、もし、もし、の連続です。
このような病に陥ると、やがてものごとに消極的となり、ものごとをなんでも否定するようになってしまいます。自らをも否定してしまうのですから、社員など他人を否定してしまうのは当たり前かもしれません。
よく社長同士の話の中で、生命保険の話が出ます。
それは、「私の会社になにかあっても、死ねば保険で解決するようにしている」といった内容です。
一億円の保険に入ったとか、三億円の保険に入ったとか、ある意味自慢話のようですが、それだけ会社経営に不安を感じている社長が多いということです。
保険会社も「社長さんになにかあった場合、この保険に入っていると安心ですよ」などと真顔で進めます。
しかし、これは会社が倒産した場合の倒産保険ではなく、生命保険です。
一見冗談のような話ですが、社長はそこまで考えざるを得ない立場でもあるのです。
「そうかあ、オレが死ねば会社は存続し、借金はチャラになる。これで誰にも迷惑をかけないですむ。後は死に方だな」
笑いながらそう話す社長は多いのですが、寂しい話ですね。しかし、どうして命をかけてしまうのでしょうか? それは日本特有の金融制度のあり方にあります。
社長ともなれば誰もが借金をします。その借金は運転資金であったり、設備資金であったりとさまざまな用途がありますが、事業が大きくなればなるほどこの借入金は増えていきます。
会社の借入金に対しては、必ず金融機関から「個人保証」を求められます。
大手企業の場合は、「個人保証」が必要という話はあまり耳にしませんが、個人事業、商店、中小企業などのすべては、この「個人保証」がなければ借り入れができません。
そのため、事業で失敗した場合は個人の財産、資産のすべてを差し出さねばなりません。
会社が借入金を返済できなくなった場合、親から譲り受けた資産、数十年かけて貯めた預金、土地や建物などがその「個人保証」によって、すべて差し押さえられてしまいます(外国にはこの「個人保証」はありません。日本特有の制度です)。
そのため、外国では倒産しても敗者復活の可能性があり、何度もチャレンジできますが、日本では倒産した者は再起が非常にむずかしくなります。
資産だけで精算ができなかった場合は自己破産を選ばざるを得なくなり、それは金融機関のブラックリストに載ることを意味します。すなわち、二度と復活することができなくなるのです。
このように事業に失敗すればなにもかも失ってしまうのですから、失敗への恐怖心が募り、それがやがて孤独感に変貌していくのも無理のないことなのです。
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