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売上を半減せよ

リーマンショックが起こって、私が社員に指示したことは大きく2つある。

ひとつは「売上を減らせ。絶対に無理に売るな」、もうひとつは「在庫を減らせ」である。つまり、「売上なんか伸ばさなくてもいいから、とにかく在庫を減らしてくれ」と指示したのである。

なぜかといえば、リーマンショックの影響で世界中の経済はまったく動かなくなると読んだからだ。我が社は海外の売上が全体の85%を占めているのだが、そうなれば、スター精密の主力製品である工作機械などは10年からモノによっては30年使えるのだから、すぐにでも機械を入れなければ仕事が回らないという景気ではない以上、需要の大幅な増加はありえない。

それでも無理に売上を増やそうとすれば、必ず値下げしなければならない。言うまでもないが、いったん価格を下げればそれが市場価格となる。簡単には値上げなどできないから、結局は利益を削って自分の首を絞めるだけである。

また、日本人は基本的に真面目なので踏み倒しというのはそうないが、海外では平気でカネを払わない国もある。

リーマンショックの後に「たくさん買いたい」などと言ってくる会社は、そもそもカネを払う気がない場合が多いので、もし下手に売れば、回収が危うくなるだけだ。

つまり、売れば売るほど会社の健全性は悪くなり倒産リスクが高まるだけなので、私は営業部隊に「売上を伸ばすな。絶対に無理に売るな」と指示したのだ。

とはいえ、あの時期に「売上を倍にしろ」と言う社長はいても、「半分に減らせ」と言う社長はいただろうか。「売上を減らせなんて、とんでもない。こんな時期だからこそ全社一九となって販売に注力すべきだ」と多くの経営者は言う。

しかし、こんな時期だからこそ、無理に売上を拡大させれば、むしろ倒産リスクを高めるだけだということは、定石の一つである

考えてもみて欲しい。売れないからと売価を下げて、販売経費を増やし、営業部員も増やせば、結局売上は増えてもそれ以上に経費がかさみ、結局は赤字の上乗せになるばかり。さらに、無理に掛け売りで商品を押し込むから、売れるほどに運転資金が苦しくなる。

そして売上増にともなって在庫が増え、生産性を上げようと機械設備を入れ、その資金を借入に頼って金利負担が増えて、ますます利益が削られることは明白である。

そういう悪循環を辿ってどんどん健全性と収益性が悪くなったところに取引先のひとつが不渡りでも出せば、あっという間に資金づまりを起こす。

要するに、売上だけを追っていたら、間違いなく倒産する時代がきているということだ。

それでも経済が右肩上がりの時代は、売上さえ伸びていれば健全性や収益性はいくらでもカバーできた。ゆえに、かつての会社の優劣を評する基準の一番が「成長性」で、「収益性」や「健全性」は二の次、三の次でもよかった。

しかし、いまはそういう時代ではない。高度成長期やバブル期という、今とまったく違う環境で経営をしてきた世代と同じ感覚ではこれからはやっていけないのだ。

であれば、まずは第一に「健全性」、次に「収益性」を大事にし、身の丈に合った成長をしていかなければならない。

それがこれからの経営の定石であり、もっといえば、いつの時代でも変わらぬ経営の本質だと私は考えている。

大事なのは売上ではなく、あくまで利益とキャッシュであり、売上が大幅に伸びないことを前提にこれらを確保していかなければならない。

それでは、具体的にどうすればよいか。一つ一つの定石の詳述は次章以降に譲るとして、ここでは高収益かつ健全性の高い財務体質づくりの要諦だけを簡単に述べておく。

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