第2章では、売上OSが利益OSに変わる!売上最小化、利益最大化の法則に触れる。売上はコストをかければ簡単に上がる。100億円の売上を上げたいなら大量に広告を打てばいい。しかし、変化の激しい時代、先行投資期に売上が上がっても、回収期には市場が変わって利益が回収できないことはよくある。だからこそ売上と利益をセットで管理する経営方式を採用しなくてはならない。よって、今回のようなコロナ禍にも負けない盤石経営のために、「売上を下げることで利益を増やす」という経営手法も紹介する。さらに、会社を利益体質にするには、社員が利益志向でなくてはならない。そこで私自身が社員に行っている研修「何のために利益を出すのか」を実況中継する。
売上は上がっても利益が上がらない理由
創業から20年の歳月が流れた。北の達人コーポレーションは、売上約100億円、営業利益は約29億円(2020年2月期)となった。多くの会社の利益率が3%程度なのに対し、当社は29%となっている。従業員数が少ないから一人あたり利益率は高い。東京証券取引所(東証)一部上場企業従業員の平均人数は約7300名。一人あたり利益は約303万円(2019年12月〜2020年11月決算)。当社の従業員は125名なので一人あたり利益は2332万円(2020年2月期)。東証一部上場企業平均と比較して一人あたり約7・7倍の利益を上げていることになる。多くの人は売上が100億円になったことに注目する。しかし、私は利益29億円に意味があると思っている。
一般的に、売上は多ければ多いほどいいといわれる。だから多くの経営者は売上を最大化しようとする。経営者は自分の会社を大きく見せたい。大きく見えるポイントは売上と従業員数だ。
売上を上げることは悪いことではない。売上が上がり、利益も上がれば問題ない。しかし、売上が上がれば、単純に利益も上がるわけではない。
利益をグロスで見ると、黒字でも、受注ごと、商品ごとでは赤字が含まれているケースがある。売上を追いかける会社は、一つの受注、一つの商品が赤字でも、別の受注で大きく黒字になれば、全体として採算が合うと考える。しかし、そもそも赤字の受注がなければどうなるか。赤字の商品を扱わなければどうなるか。受注しないから売上は下がる。だが、利益は増える。2000年頃、ほとんどのネット通販は売上が上がっても利益が出ていなかった。利益は後からついてくると考えられていたからだ。ところが、ネットビジネスはスピードが速い。赤字を出しながら市場シェアを獲得し、後で資金回収するビジネスモデルが通用しない。
たとえば、広告投資をしてシェア拡大を狙ったとしよう。広告を出せば一瞬だけ売上は上がるが、大きな経費のため赤字になる。その後、広告をやめ、トップシェアの利を活かして投資分を回収しようとする。しかし、その段階で競合が参入し、一気に市場を取られる。投資分を回収できないまま倒産する。そんな会社を何社も見てきた。ネットビジネスではマメに利益を回収すべきだ。その考えは今でも変わらない。変化の激しい今の時代、先行投資期に売上が上がっても、回収期には市場がガラッと変わり、利益が回収できないケースが多発している。だからこそ売上と利益をセットで管理する経営方式が必要だ。私は創業時から、売上を商品ごとに個別に見て、どの商品の売上がどれだけ利益に結びつくかを考えていた。商品ごとに原価、売れるまでの手間、経費が異なるからだ。
同じ利益なら売上は少ないほうがいい
A社売上100億円-原価&販管費97億円=利益(営業利益)3億円*営業利益率3%B社売上10億円-原価&販管費7億円=利益(営業利益)3億円*営業利益率30%一般的には、売上が多いほうが「いい会社」とされる。だから、A社のほうがよいと思うだろう。だが、A社もB社も利益は同じ3億円だ。注目したいのは、3億円の利益を出すために、どれだけのコストがかかったか。右の式で言えば、原価&販管費の部分だ。利益(営業利益)は以下のように算出される。利益(営業利益)=売上-原価-販売管理費(販管費)営業利益3億円を上げるのに、A社は原価と販管費を97億円使った。B社は7億円を使った。よって約14倍のコスト差がある。B社のほうが圧倒的に効率的だ。代表的な販管費について、図表5にまとめた。
売上が少ないほうが経営が圧倒的に安定する理由A社に勤める人は「同じ利益でも、うちのほうが売上が多い」と言い、B社に勤める人は「同じ利益でも、うちのほうが効率的だ」と言うだろう。この議論は平行線をたどることが多い。だが、企業の安定性を比べたらB社が圧勝する。図表6を見てほしい。
不景気やアクシデントなどによって、A社、B社ともに売上が10%下がったとしよう。A社の売上は90億円、B社は9億円になる。原価と販管費には、売上に連動して減るもの(変動費)、固定的にかかるので売上が下がっても減らないもの(固定費)がある。ここでは変動費は、売上の50%としよう。A社の変動費は50億円が45億円と10%下がる。しかし、固定費は47億円で変わらず、原価と販管費の合計は97億円が92億円となる。B社の変動費は5億円が4億5000万円と10%下がる。しかし、固定費は2億円で変わらず、原価と販管費の合計は7億円が6億5000万円となる。営業利益を算出すると、次のようになる。A社売上90億円-原価&販管費92億円=営業利益マイナス2億円*営業利益率マイナス2・2%B社売上9億円-原価&販管費6億5000万円=営業利益2億5000万円*営業利益率27・8%
B社は営業利益が2億5000万円になり、営業利益率は27・8%と高収益を維持できている。一方のA社はなんと営業利益がマイナス2億円と赤字に転落した。同じ利益であれば、売上が少ないほうがリスク耐性が高いということがおわかりいただけただろうか。
売上10倍は「リスク10倍」を意味する利益が同じ場合、売上が多いほうがリスクは大きい。経営していると実感するが、想定外のアクシデントは常に起きる。そしてアクシデント量は利益ではなく売上に比例する。商品数、顧客数などが多いからだ。売上10倍はリスク10倍を意味する。私が経営において大事にしているのは、顧客満足度を高めることだ。お客様に100%満足していただければ、永続的経営に近づく。しかしながら、売上を上げたい一心でやみくもにお客様を増やすと、一人ひとりの顧客満足度を高める施策に力が注げない。
売上が上がり、仕事が増え、従業員が増え、会社の規模が大きくなる。これは一般的によいこととされる。だが、その分アクシデントも増え、管理の手間も増え、やりたいことに注力できなくなる。規模が大きくなることは、必ずしもいいことばかりではない。
本業の販売活動から得た利益を表すのが「営業利益」だ。営業利益に対して原価や販管費がどれくらいかかっているかを見ることで、企業がどのくらい適切に投資しているかを判断できる。広告宣伝費を多くかければ売上は増えるが、営業利益は下がる。だから原価や販管費をいくらかけてもいい、というわけではない。営業利益に対して原価や販管費が高い場合、無駄なコストを払っている可能性が高い。
当社のようなネット通販の場合、広告費を無限に使えたら売上も無限に上がる。売上100億円を達成したければ、広告投資を大量にすればいい。だが、利益は上がらない。だから、管理が重要だ。現在は常時約5000本の広告を出稿しているが、そのパフォーマンスを毎朝確認している。採算が合わない広告はやめ、採算が合う広告だけが残っていく。
だが売上は1・3倍にしかならなかった。メルマガを出す労力は3倍になったのに、売上は1・3倍にしかなっていない。このとき、「売上さえ上がればいい」という考え方なら、こうすることもできた。週1回売上1↓週3回売上1・3倍↓週7回売上1・5倍実際、この作戦を実施するネット通販は多かった。だが、私は効率が悪いと思った。周囲の流れに乗って、次から次へと企画やキャンペーンをやっていたら確かに売上は上がる。でも、売上を上げるのにかかる手間やコストが増加して利益は少なくなる。メルマガを出さなくても売れる仕組みを考えないと利益体質にはならない。
「多産多死」から「少産少死」の経営へ
「売上最小化、利益最大化」を目指すには、まず「少産少死」の経営を徹底する。商品・サービスを「少産少死」にすること。商品は一生売り続けるつもりで開発する。ダメになったら廃番にしようと考えず、ロングセラー前提で商品開発を行う。
この反対が「多産多死」の経営だ。「多産多死」の経営は流行りの商品を次々に出す。一つの商品に依存せず、いつも商品が入れ替わって売上が立つ仕組みになっている。人は新しいものに興味を持ちやすい。新しいだけで魅力的だ。その点で勝負するには、常に新しいものをつくり続けなくてはいけない。だから、「多産多死」の経営はコスト高になる。販売形態によってもコストは大きく変わる。当社は通販しかやっていない。しかし売上を最大化するため、通販と店頭販売の両方をやる会社が多い。こうした会社のほとんどは、どちらかが赤字になっている。私なら黒字事業に特化し、赤字事業をやめる。経営者の中には、「通販と店頭販売をやることで宣伝になる。相乗効果がある」と言う人がいる。しかし、利益率は低くなる。両方やるとオペレーションも2種類必要になるから社員教育やノウハウの蓄積などにコストがかかり、利益を圧迫する。
矢沢永吉に触発された「DtoC」×「サブスクリプション」モデル当社は「悩みを解決する商品」を開発し、お客様に届ける。お客様に商品をきちんと使ってもらえるよう工夫した説明書もつける。無料カウンセリング相談もやっている。一回買ってくれたお客様とは一生おつき合いするつもりだ。私自身、商品に対して責任を持って販売しようという気持ちは創業当初から強かった。取扱商品をきちんと選び、わかりやすく説明し、お客様に心底満足していただきたい。だが、商品数が増えると責任の量も増えていく。北海道の特産品を扱っていたときには、「このまま商品数が増えていくと手に負えない」と感じていた。
その頃読んでいた何かの本に、矢沢永吉さんの言葉が書かれていた。それは「一回レコードを買ってくれたお客様とは一生つき合っていく」という趣旨のセリフだった。私も、うちの商品を一回買ってくれた人とは一生つき合うつもりでやっていこうと思った。
「DtoC」×「サブスクリプション」だ。DtoCとは「DirecttoConsumer」の略で、自社ブランド商品を、ネットを活用して直接顧客に販売するビジネスモデルだ。サブスクリプションは、アプリに対する毎月の課金をイメージする人が多いが、当社の場合、定期購入を指している。取扱商品は、健康食品、化粧品など1か月で使い終わるものだ。だからお客様に気に入ってもらえば、毎月購入していただける。
品質の高い商品でロングセラーを狙うビジネスモデルで、定期購入による売上比率は約7割と高い。これが利益を生み出す源泉になっている。
利益は目的、売上はプロセス
会社を利益体質に変えるには、利益目標を設定することだ。無収入寿命でもいい。多くの人は昨日の続きの仕事をやって、いつかゴールにたどり着くと考える。だが、今までと同じように歩いてもゴールにはたどり着かない。目的地を設定するから軌道修正も可能になる。同じことを続けていいのか、仕事の優先順位ややり方を変える必要はないのか、徹底的に自分に問う必要がある。だから、利益目標の設定を毎月、見直す。利益につながらない仕事を見つけたらやめる。このときグロスで利益を見るだけでは足りない。業務ごとに利益を管理する。業務ごとに採算が合っているかを見て、合っていないところはすべて切る。
多くの人が「そうすると、売上が下がってしまうのではないか」と言うが、そもそも売上を求めなくていい。コストは、何でも削減すればいいわけではない。適切な投資はするべきだ。ただし、施策と利益との関連性は常に数字で評価する。
当社は、第3章で紹介する5段階利益管理でそれを行う。これを怠って施策を楽観的に評価するとすぐ赤字になる。「この広告を打つことで、いつか利益が上がるだろう」と期限も根拠もないことを言ってはいけない。
売上と利益は対比するものではない。利益が絶対の目的であり、売上はそのプロセスだ。
だが、売上や規模を増やそうとしたことはない。一般的に企業は、まず売上を最大化させ、コストを削減しながら利益を出そうとする。当社の発想はそれとは真逆のアプローチだ。利益目標が先にあって、その目標を達成する最小の売上目標を考えているのだ。
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