希望をもち、希望をもたせる。絶えずみずからの勇気を鼓舞し、社員の士気を鼓舞して「何か」を与え続ける。どんな苦境にあっても、それができるだけの経営者でありたい。
――不況で仕事がなく、社員のあいだに沈滞ムードが広がっています。
そのようななか、社員に働きがいを与えるにはどうすればよいでしょうか。
松下 仕事がないというのは、どうにもできんやないですか。経営を預かる者は、仕事がたとえなくても、社内を沈滞させないように考えなくてはいかん。それができるかどうかが、経営者としての分かれ道でしょう。
仕事がないなら、あした一日休め、しかしただ休んではいかん、一日分相撲を取れ。(笑)相撲を取って力を鍛えよ、勇気を鍛えよ。
仕事をやっても売れんからというて、きみらの腕を落としてはいかん。
腕を磨くためには、外で鉄でも拾ってきて、ヤスリをかけよ。
何かそういう積極性のあることを言わないといかんのです。
経営者というものはどんな場合でも、経営意欲を失ったらあかんわけです。希望をもち、希望をもたせてやらなければいかん。
経営者は、こういうときは先頭に立って、みずからの勇気を鼓舞し、従業員の士気を鼓舞して、何かを与えるんです。
仕事がなければ、仕事以外のものを与える、後日プラスになるものを与える。
それでも、なんにもないというなら、掃除でもしろ。
掃除にはぞうきんが要るが、ぞうきんが減るというのだったら、足でやれ。足は減らん。
それは冗談やけど、それくらいのことを言い、与えるだけの勇気をもつ経営者が、これからのほんとうの経営者なんです。
ともにシュンとして、困ったなと言っておったら、悪くなる一方です。
そこで、どうしても人員整理をやらなければならなくなったら、その利害を説いて、「会社はこのとおり金はない。
今まで、十億円なら十億円儲かっていたんだが、今は一円も儲けていない。会社も、十億円犠牲になっておるから、きみらもだれか犠牲にならないといかん。
一カ月交代でもいい、一年交代でもいい、お互いに休んでくれ。
しかし、会社はこれ以上、金を出すことはできん。これ以上出すと、会社はつぶれる。会社はだれのものでもない、諸君のものだ。
だから、働いた者が一割ずつでも出して助けあえ。
会社がつぶれたら帰ってくるところもなくなるぞ」それくらいのことを言える経営者でないといかんのです。
〔一九七七〕
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