地域密着 VS全国展開 マーケティングの本を読んだことがある方であれば、一度は「ランチェスター戦略」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。 もともとは第一次世界大戦の際にイギリスの自動車工学・航空工学のエンジニアだったフレデリック・ランチェスターが軍事目的で提唱したもので、戦力の劣る「弱者」と戦力に勝る「強者」に分け、それぞれがどのようにして戦うと戦局が有利に運ぶのか、それを数理モデルに基づき考えられた法則です。 現在ではこれをマーケティングに落とし込み、ソフトバンクをはじめとしたさまざまな企業が経営に取り入れているのは有名な話です。 ここでは、このランチェスター戦略をもとに、地域密着と全国展開どちらが経営として有利に働くのかということについて、資本力の小さい中小企業を弱者と仮定し、その視点から考えてみます。弱者の戦略、ドミナント戦略とは? ランチェスター戦略において、中小企業・零細企業が資本力のある大企業に打ち勝つために、最も基本的な手法と考えられているのが「ドミナント戦略」です。 ドミナント戦略とは、たとえば小売店が特定の地域に参入し、その地域内に集中して店舗展開を行うことで経営の効率化を図り、かつその地域内でのシェアを獲得して、競合よりも優位に立つことを狙う戦略のことです。 代表例は、コンビニです。「自分の家の周りに同じコンビニばっかりあるな」と感じたことはありませんか? あれはドミナント戦略を行っているから、同じコンビニがいっぱい出ているのです。すごいときには道を挟んで同じコンビニが出店している地域もありますよね。 コンビニ業界ではセブン‐イレブンがドミナント戦略を始めたと言われています。 当時、セブン‐イレブンの親会社はイトーヨーカ堂でした。そのため、最初から全国展開をしようと思えば、今ほどの規模ではなくても全国に展開できる資本力はあったと考えられます。 しかし、そこをあえて全国展開せずにドミナント戦略に打って出て、フランチャイズの仕組みを使って地域ごとのシェアを占めることで、のちに全国に広がりセブン‐イレブンは成功を収めました。 これは認知度の強化もありますが、地域を特定することで配送効率が上がり、広告を地域に合わせて打つことができたという点も大きかったのだと思います。このドミナント戦略が功を奏し、長年セブン‐イレブンはコンビニ業界でシェアトップの強者になっています。 もしこれがドミナント戦略をとらずに、いきなり全国展開していたら……。もしかしたら、今のセブン‐イレブンの姿はなかったかもしれません。弱者と強者は状況に応じて変わってしまう 一方、次に紹介するのは全国展開に失敗したある司法書士法人の話です。 とある地方で相続対策シェアトップを誇っていた司法書士法人がありました。規模としては数十人と中規模ですが、その地方では圧倒的ナンバーワンの非常にやり手の司法書士法人です。 その司法書士法人が満を持して東京に出てきたということで、同業の間では「ついに出てきたか」と話題になりました。 しかし結果からお話しすると、この司法書士法人は数カ月後、仕事がまったく入ってこないという理由で東京から撤退することになるのです。 地元では圧倒的なシェアを占めており、経営のノウハウもしっかりとある。しかし、同じようにやっているのに、どうしてこんなにうまくいかなかったのでしょうか。 これにはさまざまな理由があると思うのですが、一番の理由としては、東京では弱者であるにもかかわらず、強者のノウハウで進出してしまったのではないかと推測できます。 少なくともその司法書士法人は、東京では圧倒的に認知度が足りませんでした。東京であれば有名な相続専門の司法書士法人が存在しています。数百人規模の非常に大規模な司法書士法人がいくつもあるのです。そこと比べてしまったら認知度も低いと言わざるを得ません。 仮に同じ価格で提案されたとしても、あえてそこを選ぶ必要性をお客様は感じないのです。地元では圧倒的な強者だったのかもしれませんが、東京では弱者ですから、勝つためには弱者としての戦略をとらなければなりませんでした。 それであれば地元の隣の県を少しずつ攻めて、たとえば宮城でトップを取っているのであれば福島や山形のシェアを取っていって、最終的に「東北で一番相続に強い司法書士法人です」というような形の経営戦略のほうが、結果的にシェアを大きく伸ばせたのではないかと思います。
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