先ほども述べたことだが、海外勤務の経験のある銀行の支店長をご存じだったら「支店長、
あなたのいらしたところでは、土地が担保になるのですか。あちらでは銀行は何を根拠にお
金を貸すのですか」と実際に聞いてみるとよい。外国では、資金を融資する際には、 一つご
との借金案件の企画を慎重に検討して決めるのである。借り手は「今回、こういう事業につ
いて、このような計画を立てているので、これだけの資金がどうしても必要なのです」と具
体的な案件について種々のデータや根拠を示して十分な説明をし、銀行側がその計画の妥当
性や将来性を判断し、もっともだと納得して、はじめて融資を受けられるのである。世界広
しといえど、日本のように「土地を担保」にしさえすれば全部オーライで銀行が金を貸してく
れる国はない。
いまから二〇〇年ほど前、オランダではチューリップの球根が担保になったことがある。
ところが担保であるチューリップの球根が、その後、大暴落したため大変な事態に陥ってし
まった。 一時は世界の各地に多くの植民地を持ち、強大な国威を誇っていたオランダが衰退
した原因の一つに、チューリップの球根があげられているほどである。そのほか、チーズが
担保になった国もあるようだ。日本でもこれからは、土地を担保に金を貸すというようなこ
とは、銀行も考え直していくだろう。
このことは、最近の質屋の衰退を見ればよくわかる。かつて一般消費者、庶民向けの金融
は質屋が行なっていた。質草に時計や着物などモノを担保にしてお金を借り、月利九%、年
利一〇八%の金利をとられていた。しかし、今日では武富士、アコム、レイクなどの消費者
ローン会社をはじめ、銀行までが消費者向け無担保ローンを行なっている。しかも金利は年
一二〜三四%である。質屋の「質草、モノ本位制」から「借り手、給与所得信用制」へ変わっている。
これを考えたら、銀行が「土地担保制」から、いわゆる「経営の利益。成長制」に変わるのは
当然と言えよう。個人と同様、企業にとっても時代の流れは、その方向に向かっている。土
地が担保になり得たのは、土地がつねに供給不足であり、すぐに希望の価格で売れたからこ
そである。
だが、いまや、土地をめぐる環境は大きく変わりつつある。例えば、
①農業政策の大転換で農地から転用の土地が今後増える。
②輸入自由化による小売価格の低落や価格破壊による物価、物件費の低減化が推進され、
モノを収納する倉庫などを維持できなくなる。
③海外への生産拠点のシフトが進み、工場用地が余ってくる。
④土地の高度利用が進み土地規制の緩和が進む。
などの理由から、土地が担保となる要件が希薄になってくるのは明らかだ。
前述したが、貸借対照表(B/S)の自己資本比率が五〇%を超える優良な会社では、現預
金・投資有価証券等のキャッシュが多いので、土地購入をやめろとは言わない。
しかし、土地を全額借入で買えば、その後の資金繰りは非常に苦しくなる。なぜなら土地
は、減価償却がきかないので返済資金が出てこないからだ。
土地が担保になる、個人保証がいる、土地が値上がりするという過去の経営常識が通じな
い経済下になってきているのである。
ところで、私の事務所に大手量販店の幹部が出入りしている。不動産情報や地域の小売情
報を取りに来るのである。面白いことに気がついた。
(A)土地建物
(B)土地建物
自社所有型
賃貸物件
A型は郊外主要道路側の土地をダミー会社に安く買わせる。形の整ったところで買い上げ、
そこに店舗を開店する。時価は一気に上がる。買収資金は銀行から借り入れ、その買収した
新土地店舗を担保に次の新たな物件を買い入れる。不動産屋商法である。
B型は土地を所有している方から賃貸して店舗を出店していく。土地購入資金に充てるよ
りも、それだけの資金があれば新店舗が3か所はできる。土地の資金負担を持たず、重い経
営よりも軽い経営をおこなっているのである。
ジャスコの財務担当者は「オフバランス」「財務回転主義」という言葉を発している。
ジャスコの経営理念は「大黒柱に車を付けよ!」である。
小売業は立地産業であり、良い立地でも環境変化によって、悪い立地になる。店舗はいつ
でも「スクラップ&ビルド」と、口ぐせのように言っているのである。
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