第4章では、小さい市場で圧勝する商品戦略を紹介する。年々、高品質商品でロングセラーを狙うビジネスモデルが主流になってきているが、当社の定期購入(サブスクリプション)による売上比率は約7割。これが利益を生み出す源泉になっている。
品質重視、ロングセラーを狙う商品開発
ビジネスモデルを「特産品」から「健康食品」に変えた理由当社の取扱商品は、健康食品、化粧品など、ほぼ1か月で使い終わるものだ。だからお客様に気に入ってもらえれば、毎月購入していただける。高品質商品でロングセラーを狙うビジネスモデルなので、定期購入による売上比率は約7割。これが利益を生み出す源泉になっている。なぜか。
同じ製品を生産すればするほど品質は向上し、コストは低下。原価は安くなる。定期購入してもらえるということは、新規開拓にかかるコストが必要ないということだ。よって販促費が安くなる。5段階利益管理の経費項目「原価」と「販促費」の2つが下がり、利益率が上がる。
カニやメロンにも「おいしかった」という声をたくさんいただいたが、便通改善の喜びの声は桁違いだった。
「悩みが解決した喜びとは、こんなに大きいものなのか」最高においしいものを食べる喜び。長年の苦痛が一瞬で解消される喜び。インパクトが大きいのは後者だった。これがきっかけとなり、悩み解決型の美容・健康食品の自社開発に注力するようになった。
基本方針に「新規事業、新商品開発を行うときは必ずGDPが上がること」と書き込む私はお客様の悩みを解決する新しい商品をつくりたいと思った。競合と争うのではなく、今までになかった新しいものや市場をつくりたいという気持ちは、社会人として初めて勤務したリクルート時代からあった。ある会社に100万円の求人広告を出してもらおうと営業すると、必ず競合が現れた。私が受注しても、競合の営業が受注しても100万円の仕事だ。大きく見ればGDP(国内総生産)は変わらない。そこにパワーを割きたくない。今までになかった新しいものを世に生み出すことに力を注ぎたい。
「新規事業、新商品開発を行うときは必ずGDPが上がること」2匹目のドジョウは狙わない。他社のヒット商品をマネることは絶対しない。競合からお客様を奪わない。新しく市場をつくる仕事しかしない。
小さな市場で圧勝する戦略商品開発は「お客様の悩み」から始まる。ここには小さなマーケットで勝負する狙いがあった。大手が参入するには小さすぎる市場を切り拓き、中小にはマネできない高品質の商品を投入する。私の感覚では、大手企業は20億円以下のマーケットには参入してこない。つまり、小さな市場で圧勝する戦略だ。
小さな市場を切り拓くヒントが「お客様の悩み」だ。社内の企画会議ではどんな悩みがあるかを話し合う。
このように最初から商品形態は決めていない。悩みを解決するなら商品形態は問わない。
検索している人数の多いキーワードから「お客様の悩み」を考え、競合商品が存在しないときに商品企画をスタートした。
「品質」に集中する理由売れる商品には理由がある。商品自体の品質、品名、デザイン、販促、価格、アフターフォローなどだ。
「北の快適工房」を始めた初期段階で、「この要素をすべて網羅するのは無理だ」と感じ、品質に注力することにした。ここにヒトとカネを集中させ、他の中小企業ではマネできない品質を実現しようと思った。
品質はリピート率に影響する。売れ続ける商品こそ高利益を生む。なかでも、「生活者の観点での品質」に細心の注意を払った。企業は商品を開発するとき、どうしても生産者目線で「よし悪し」を語ってしまう。その結果、生活者の観点を見落とす。中身のよし悪しと使い勝手は別だ。商品は「使えてなんぼ」なのだ。
試作品完成後は、モニター調査を3か月かけて行うが、最後は全社員、全役員が自分たちで使って判断する。
お客様の使用前、使用段階における品質の概念を設定し、独自に750の評価項目をつくった(その一例が図表25)。お問合せやクレームが入るたびに社内で共有し、評価項目が次第に増えていった。
容器メーカーは空の状態でテストする。だが、商品には液体、クリーム、ジェルなどが入り、それぞれ成分は異なる。商品は完成形でテストしないと意味がないと実感した。
容器メーカーは「おたく以外からそのような報告は受けていない」と言ったが、それはOEM業界の実態を反映した言葉だと後からわかった。
OEMメーカーのクライアントに、当社のようなロングセラー主義の会社は少ない。多くの会社は、ブームを察知して商品をつくり、それを売り切って終わり。ヒットするケースもあるが、まったく売れずに在庫を抱えるケースもある。基本的には一回つくって終わり。再生産しないと決めれば、仮にクレームが数件きても、OEMメーカーには言わないだろう。
だが、私たちは同じ商品を長く売るため、問題があれば改善していく。当社の商品を受託していたOEMメーカーから転職してきた人が何人かいる。
「OEMの現場では『つくって納品して終わり』が普通でした。『北の達人』からは何回も同じ商品の発注がきて、不思議に思っていました。自分のつくった商品が全国のお客様に愛されていることがわかり、転職を決意しました」
OEMメーカー、外注検査機関が「問題なし」と判断しても、当社基準でNGの場合は発売を中止する。
全役員・従業員で1か月使って最終チェック
試作品ができたら、まず全国のモニターに、社名、商品名などを隠した状態で試してもらう。2〜3か月使ってもらい、効果を実感したかを調査する。7割以上の人が効果を実感したときに商品化を検討する。モニター試験をクリアしたら、商品化に進み、最終的に全役員、従業員で実際に1か月使い続け、見落としがないか最終チェックする。商品に同封する説明書を見ながら、初めて見た人がそれを読んで、そのとおりに使えるかを確認する。風呂場に放置しても品質は安定しているか、肌のトラブルや体調不良がないか、使用する際に不便なところはないか、説明書はわかりやすいかなどをチェックする。基本は「びっくりするほどよいものができた」場合だけ発売する。ボツになると全部つくり直す。実際に発売される商品は、開発案件のわずか2%。3年間試作品をつくり続けて最終的にあきらめた商品もかなりあった。
よいものができたら売るし、できなかったら売らない。ここは絶対のルールだ。
だから商品開発には時間がかかる。2、3年くらいかかるものもある。流行は追いかけない。社の方針として、数か月で商品を開発して販売することはしない。それによってたくさんの機会ロスをしていることはわかっているが、商品の品質に妥協するくらいなら、商売をやめたほうがいいと思っている。
サブスクリプション(定期購入)を促す秘策効果を感じない盲点は「使い方」にありサブスクリプション(定期購入、以下サブスク)は利益の源だと、事業をやっている人なら誰でもわかっている。だが、定期的にお客様を獲得するのは至難の業だ。営業活動、広告など労力とコストもかかる。5段階利益管理の経費項目では、おもに「販促費」がこれに当たる。一般的に、新規顧客を獲得するコストは、既存顧客の5倍かかるといわれている。
新規顧客は獲得コストが高いにもかかわらず、利益率は低い。よって新規顧客の獲得以上に、既存顧客の維持が重要なのだ。既存顧客は中長期的に商品を購入し続ける生涯顧客となる可能性が高い。企業に対してのロイヤリティが高い顧客ほど、時間の経過とともに大きな利益をもたらす。
リピートされるかどうかは顧客満足度にかかっている。顧客満足度は商品の品質に比例するが、一つだけ盲点がある。それはお客様が「使い方を間違えている」場合だ。よい商品をつくって送ればいいというわけではない。どんなによい商品でも、正しく使用しないと効果は得られず、お客様に満足してもらえない。そこで当社は商品に同封する「使い方マニュアル」の作成に力を入れている。男性は女性と違って化粧品を使った経験が少ない。シワの悩みを解消する化粧品クリームを塗り薬だと勘違いする人もいる。
クリームの効果を実感するには、少なくとも1〜3か月かかる(商品によっては即効性のものもある)。多くの男性はそんなことは知らない。だから男性用商品には基礎的なことをしっかり解説する。
おいしいものでも、食べ方を間違えたらおしまい
お客様が間違った食べ方をしないよう、一つひとつの商品に、あえて「素人臭さ」を残したデザインにした「かにしゃぶ虎の巻」のようなマニュアルを同封した(写真1)。お客様は商品に同封されたきれいな印刷物には目を通さない。よって手書き風の文字や吹き出しなどの違和感で注意喚起した。
特産品の通販サイトをやっていた頃の当社のキャッチフレーズは、「おいしかったと言っていただけるまでが仕事です」だった。よいものをつくって終わり、送って終わりではないのだ。
最終的には、社員がその商品にほれ込めるかどうか
前に触れたように、顧客満足度は商品の品質に比例する。つけ加えると、よい商品だから、社員がお客様に自信を持ってお勧めできる。それが最初の購入、そして定期購入につながっていく。
営業が自分の扱っている商品が売れなかったときにどう思うか。「こんなによい商品なのに」と思っていたら、なんとか売ろうと頑張るだろう。「そうでもない商品」と思っていたら、すぐにあきらめてしまうだろう。社員が「よいものだから多くの人に使ってもらいたい」と思えるかどうかが重要だ。当社のある商品は、試作品をつくり、外部のモニター調査をしたところ、かなり効果があるという結果が返ってきた。
ところが、改めて市場調査すると、「あまりに市場が小さい」ことがわかった。もともと当社は小さな市場を狙っているが、このときは小さすぎた。そこで発売しない決断をした。ところが、モニター調査に参加した人から、「早く発売してください。発売されたら絶対買います」という声が届いていた。そして一部の社員から、「なんとか発売しましょう!少ないかもしれませんが、必ず喜んでくれるお客様がいます」という直訴があった。社員の熱意に根負けし、このときはデータを無視して発売した。長い間ビジネスをやっていれば、必ず浮き沈みはある。大ヒットすることもあれば、売れなくなることもある。そんなときに大切なのはファンがいるかどうかだ。その商品は社員の熱心な販促活動によって、少しずつファンを獲得していった。ファンの数は決して多いとは言えないが、リピート購入され、黒字商品になっている。結局売るのは人間だから、自分たちが自信を持っているかどうかが大きい。
10億円の商品を10個つくって売上100億円の発想
以上お話ししてきたように、私たちの商品開発は「お客様」の悩みから始まった。これには小さなマーケットを100%押さえる狙いがあった。小さなマーケットを狙うメリットは競合が少ないこと。ライバルがいないので、競争コストがかからず、利益率は高くなる。商品比較がなくなれば広告コストもかからない。だから、そこで圧勝しても売上は10〜20億円程度しか上がらない。そこで私は、10億円の商品を10個つくって売上100億円を目指そうと考えた。実際に売上が100億円まで行ったとき、利益は29億円となった。
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