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品がいい人のこんな「所作」、こんな「外見」

シャネルの流儀「上品な服装は女を引き立たせるが……」「下品な服装は服だけが目につき、上品な服装は女を引き立たせる」これは、ココ・シャネルこと、ガブリエル・シャネルの言葉です。1883年にフランスの救済病院で生まれた彼女は、幼くして母を病気で亡くしたのち、姉とともに行商人の父に捨てられ、孤児院で育ちました。しかし、そんな不遇な時代を乗り越え、シャネルを創業し、20世紀を代表するファッションデザイナーと称されるまでになります。ココという名は、彼女が若い頃、キャバレーで歌っていたときの愛称です。その名をあえて名乗ったのは、自分の生き方に誇りを持っていたからでしょう。ココ・シャネルが亡くなったのは1971年。今から50年近く前のことです。しかし、シャネル・スーツといえば、現在でも女性用ビジネススーツのトップブランドとして、多くの女性の憧れとなっています。それはシャネルのデザインが、シンプルでありながら品格とエレガントさを兼ね備えているからでしょう。だからこそ、時代を超えて多くの女性に愛され続けているのです。そもそも彼女が生み出したデザインは、それまでのファッションの常識を覆すものでした。当時、上流階級の女性はコルセットで体をしめつけ、ロングドレスを着用するのが当たり前でした。しかしシャネルは、「なぜ女性は、窮屈な服装に耐えなければならないのか」と考え、よりスッキリとした活動的に動けるデザインを提案したのです。シャネルの試みは、第二次世界大戦後の時代に、社会進出をはじめていた女性たちに広く受け入れられました。働く女性たちが彼女のデザインを認めたのです。とはいえ、シャネルのデザインした服が、単に「動きやすい」というだけだったら、21世紀の今日までトップブランドであり続けることはなかったでしょう。着やすさに加え、品格とエレガントさも兼ね備えていたからこそ、多くの女性たちに選ばれるようになり、今もなお、シャネル・スーツを身につけることが、女性にとって「一流」の代名詞となっているのです。着るものによって、その人に対する周りの評価は変わります。男性でも女性でも、社会に出ると、服装によって人の価値が判断されることは少なくありません。たとえば、今、若い人の間ではファストファッションが主流となっています。安く手に入りますし、アイテムによってはさまざまな着回しができるので、重宝します。デザインだけで着こなすことができる若いうちは、背伸びして高価な物を身につけるより、よほど好感が持てます。しかし、経験を積み、責任を負う立場になったら、シンプルでも素材のよい物を身につけるなど、意識を変えていく必要があります。ファストファッションや流行を取り入れすぎると安く見られ、あなたの存在が霞んでしまうばかりか、アンバランスで滑稽にさえ感じられることもあるからです。かしこまった席や対外的な場に出るときには、特に注意が必要です。ふだんとまったく同じファストファッションでは、自分でも気づかないうちに、周りからの評価を下げることにもなりかねません。最近、フォーマルな席にラフなスタイルで登場する人が目につきます。特にIT系やベンチャー系で成功した人の中には、Tシャツ姿で出席する人も見かけます。本人は、「それのどこが悪いんだ。そんなにかしこまる必要なんてないじゃないか」と、あえてそうしているのかもしれません。しかし、どうしても周囲の人は違和感を覚えるものです。「まあ、あの人らしいな」と許容はしてくれても、「品がいい」とは決して思ってもらえないでしょう。それどころか、場合によっては、「礼儀知らず」「常識がない」などと悪印象を持たれかねません。だからこそ、服の使い分けが大切なのです。社会人になったら、〝ここ一番〟というときに着るスーツの1、2着は準備しておきましょう。もっとも、高価なブランド品であればなんでもOK、どこへ行くにもOK、というわけにはいきません。どんなシーンにどんなスタイルが合うのか、TPOに合わせて服を選ぶことが大切です。冒頭のココ・シャネルの言葉を、心の中にしっかりと留めておきたいものです。

格式や伝統を重んじる「ドレスコード」をわきまえましょう若いうちはラフな格好も素敵ですが、年を重ねるにつれて、チープな服装はどうしても目についてくるものです。また、社会的な立場にふさわしい服装をすることも、必要になってきます。40歳を過ぎて何人もの部下を持つ人が、20代の人たちと同じような服装をしていると、かえって浮いて見えてしまいます。2018年5月にイギリスのヘンリー王子と結婚したメーガン妃は、その直後に行なわれたエリザベス女王92歳の誕生日を祝う式典に、肩出しドレスを着て登場したことで、「こんなオフィシャルなイベントにありえない服装だ」「女優だっただけあって、自己主張が半端じゃない」などとメディアに叩かれました。また、同年10月、オセアニア諸国への外遊の際には太ももが露わになるスリット入りのサンドレスを着ていたことから、インターネット上では、「英王室という立場をわきまえない場違いなファッション」「露出しすぎで品がない」などと、激しくバッシングを受けたのです。また、今ではイギリス国民に大人気のキャサリン妃も、かつては同じように批判されたことがありました。たとえば、エリザベス2世即位60年を記念して、テムズ川で行なわれた水上パレードの席に、燃えるような真紅のドレスを着て登場し、「いくらなんでも派手すぎる」「ケイトったら何を考えているの?華やかすぎて〝私を見て!〟と叫んでいるみたい」などと批判されたのです。私は、「素敵なファッションだな」と思って見ていましたが、さすがドレスコードが明確なイギリスならではの厳しい指摘でした。なんでもありの風潮が強い現代において、格式と伝統を重んじる国に学ぶことは多いと感じました。洋服の文化が浅い日本ではそれほど明確なドレスコードがあるわけではありませんが、それでも年齢や立場に応じて、その場にふさわしい服装をする心がけが必要でしょう。「あの人は品がない」という印象を持たれてしまっては、どんなに能力があっても、実績があっても、マイナス査定をされてしまいかねません。

あなたにとって「いい服」とはブランド品を買うのは、2年か3年に一度でいい高価なブランドの服は、それを身にまといさえすれば誰もが品よくなれるというものではありません。そればかりか、その服に見合わない人が身につけてしまうと、かえって品性を疑われてしまうことにもなりかねません。最近では、日本の若い人が、ルイ・ヴィトンやエルメスなどの高級ファッションブランド品を身につけているのをよく目にします。しかし残念なことに、本当の意味で似合っている人はごく稀です。一方、欧米では、ブランド品を身につけた若い人を見かけることは、ほとんどありません。「ブランド品は、それを持つにふさわしい人が持つ物であり、もしそれを持ちたいなら、まずは自分の内面を磨き上げなければならない」という考え方があるからです。また、作家・評論家のマークス寿子さんはご著書『自信のない女がブランド物を持ち歩く』(草思社)で、「裕福な人たちも、ブランド品を買うのは2年に一度、あるいは3年に一度くらい、という認識を持っている」と指摘しています。購入した物は10〜15年にわたって持ち続け、本当にいい物であれば、それを子や孫に譲り渡して使い続けていく。それが、ブランド品と呼ばれている物の価値だというのです。いい物を揃えて、丁寧に、何年も使い続けるのが理想でしょう。『フランス人は10着しか服を持たないパリで学んだ〝暮らしの質〟を高める秘訣』(大和書房)の著者、ジェニファー・L・スコットさんはアメリカ人女性ですが、学生時代にフランス・パリの貴族の家にホームステイしたとき〝シックなライフスタイル〟を学んだそうです。本書でスコットさんは、「フランス人は、どんな服を着たら自分の美しさが引き立つかをわかっていて、自分のスタイルを確立しているからこそ、たった10着の服しか持たなくても十分におしゃれに見えるのだ」と言っています。無駄に服装にお金をかけるのではなく、自分が最も自分らしく見える服、最大限の美しさを引き出してくれる服を見つけ出し、身につける。品のいい人の魅力はそこにあります。お金をかけてブランド品を買うよりも難しいことかもしれませんが、そんな努力をしていきたいものです。

あなたはここを見られている「あと始末」をきちんとしていますか?使った物はもとの場所に戻す。デスク周りはきちんと整えておく。こうして、物事を「しっぱなし」にしない習慣が身についていると、「あの人は品がある」という印象を持たれやすいものです。もっとも、私自身、しょっちゅう家の中でスマホを探しているので、あまり偉そうなことは言えないのですが……。意外かもしれませんが、男性よりも女性のほうが「しっぱなし」にする傾向が強いようです。たとえば、飲みかけのペットボトルやカップに口紅がついていても、平気でデスクの上に放置していたり、デスクの下では窮屈さを嫌って素足になり、脱いだ靴や靴下を脱ぎっぱなしのまま転がしていたりするのです。周りから見られている、という意識があまりないのでしょう。そう考えてみると、電車で脚を大きく広げてスマホに夢中になっている女子学生もよく見かけますし、先日は胸元を大きくはだけたまま、大口を開けて眠り込んでいる若い女性がいて、ついつい二度見してしまいました。自分が興味あるものにしか注意を向けず、それ以外には無関心。これは、女性に限らず、最近の若者全般に当てはまる傾向かもしれません。視野が狭いというより、自分にばかり気持ちが向いているのです。ただし、その結果は明らかです。「あれ、あの子かわいいのに(ハンサムなのに)、中身はだらしないんだな」そんなふうにがっかりされてしまう……。なんとももったいない話です。誰かに見られているかもしれないことを、常に頭の片隅に意識しておきましょう。しっぱなしで放置しているあなたの行動によって、あなた自身が人物査定されている場面はいくらでもあるのです。カバンを開けっぱなしにしない。机の引き出しを開けっぱなしにしない。靴を脱ぎっぱなしにしない。お化粧室の洗面台の周りにはねた水をきちんと拭き取っておく。ちょっとしたことへの気配りを忘れないことです。「だって忙しいんだもん」とか「そんなことまで気にしていられない」という声が聞こえてきそうですが、忙しいときほどひと呼吸おいて、身の回りに気を配り、あと始末をしっかりしておきましょう。その小さな習慣の積み重ねが、品のよさをつくっていくのだと思います。

「音」に気を配る「物静かな人」の魅力たとえば、パソコンのキーボードをやたらと強く叩く人。これみよがしに足音をコツコツ響かせながら、ハイヒールで闊歩する人。上司に成果を報告するときの声ほど、必要以上に大きい人。このように、職場でやたらと音を立てて周りをイラ立たせる人がいるものです。私の偏見かもしれませんが、自分のことを〝できる〟と思っている人ほど、その傾向が強いような気がします。しかし、たとえ実際に仕事ができたとしても、この手のタイプに対する周りの印象は、あまりよいものではありません。そもそも、多くの人が「上品な人」と言われて抱くのは、〝物静かな人〟というイメージです。やたら騒がしい人のことを、上品だとは絶対に思わないでしょう。とはいえ、本人はわざとやっているわけではありません。自分が立てる音は自分にとって不快なものではありませんし、決して意識的なわけではなく、音に気づいてすらいないのでしょう。何気ないふだんの行動を思い返してみてください。「パソコンのキーボートをやさしく叩こう」「ドアの開け閉めを静かにしよう」「オフィス内では静かに歩こう」と意識していますか?まったく無頓着だったのであれば、これから気を配ることで、あなたの品のよさは格段に上がるはずです。また、職場だけではなく、公共の場でも、余計な音を立てないように気をつけたいもの。よく問題になるのは、電車内でのイヤホンの音漏れです。自分が思っているよりも音は漏れやすいことを十分に意識しておく必要があります。それから、意外に嫌がられるのが、電車での会話。特に何人か仲間が集まると、話に夢中になり声も大きくなりがちです。自分が楽しんでいるときも、周りの人に気を配れる余裕を持てる人が、「品がいい」と言われる人なのです。

上品に見える所作の基本「あと2秒」の心がけで、お辞儀の印象がよくなる気持ちが急いていると、行動までせかせかしてくるものです。それはしかたのないことですし、場合によってはテキパキと動く必要もあるでしょう。でも、四六時中、せかせかしている人を見て、「あの人は品がある」と思う人はいません。逆に、ゆったりとしたしぐさの人を見ると、どことなく優雅で上品に感じるものです。たとえば、テレビのニュースなどで美智子様を拝見すると、いつでもゆったりとしたしぐさで、お辞儀もゆっくりなさいますし、言葉遣いもやわらかく、ゆっくりとお話しになります。そうした物腰が、人々に深い安心感を与えると同時に、崇敬の念を抱かせるのです。しぐさはゆったりと、ゆっくりと。今日からこれを意識してみましょう。映画『プリティ・ウーマン』では、娼婦のビビアン・ワード(ジュリア・ロバーツ)が、実業家のエドワード・ルイス(リチャード・ギア)と出会ったことをきっかけに、エレガントな女性へとみるみる変わっていく様子が描かれます。エドワードと知り合った当初のビビアンは、言葉遣いは粗野でしたし、食事もガツガツ食べていました。しかし、徐々に優雅に食べることを覚え、歩き方も変わり、しゃべり方もレディになっていきます。以前は自分の服装も、しぐさも、まったく意識していなかったビビアンが、エドワードに教えられることで、振る舞い、しぐさ、装いの美しさに気づき、意識しはじめ、やがて劇的な変身を遂げるのです。あなた自身にも、ビビアンと同じような変化を起こすことができます。ほんのちょっとした〝気づき〟が、あなたの印象を格段に変えるのです。難しいことはありません。身近なところにも、変化のきっかけはたくさんあります。たとえば、電話を切るとき、相手が電話を切るのを待つちょっとした余裕を持つだけで、相手に与える印象は変わるものです。スマホで日常的にやりとりするようになったせいでしょうか、話が終わると即座に通話を切ってしまう人は多いようです。家族や親しい友人ならまったく問題ないでしょう。しかし、相手が目上の人や仕事関係の人であるときは、不快な思いをさせたり、マイナスのイメージを与えたりしかねません。逆に、「相手が電話を切るのを待つ」という、些細に思える行動でも、身につけておくだけで好印象につながるのです。私自身は職業柄、必ず相手が通話を切るまで待つように心がけていますが、相手のほうが、私が切るのを待っていると感じることはほとんどありません。だからこそ、たまに私が切るのを待っている気配を感じると、とても丁寧な方なのだなという印象を持ちます。もっとも、お互いに相手が切るのを待ったままだと電話が終わりませんから、ほどほどにすることも必要ですが、どちらにしろ、ほんの1、2秒でも「待つ」という余裕が、あなたの優雅さを演出することには変わりありません。1、2秒の余裕が印象を変える例といえば、お客さまをエレベーターまでお送りするとき。「ありがとうございました」とお辞儀をしたはいいものの、パッと頭を上げたら、まだエレベーターの扉が閉まっておらずお客さまと目が合ってしまい、恥ずかしい思いをしたことはありませんか?ほんの1、2秒のことですが、そのわずかな差が相手に与える印象はかなり違います。さすがに、それぐらいのことで「なんて失礼な人なんだ」と怒り出す人は稀でしょうが、なんとなく気まずい空気が流れるのは間違いありません。逆に、ほんの1、2秒しっかり頭を下げ続けることで、相手には丁寧な印象が強く残り、「あの人は上品で素敵な人だな」と思われるのではないでしょうか。残心という言葉があります。武道や芸道において用いられており、「技を終えたあとにも気を緩めない」という意味で、余韻を残すという日本の美学に通じる言葉です。忙しいときにこそ、心を残すゆとりを!それがあなたを優雅に見せ、あなたの上品さを演出するのです。

カッとしない「怒り」は一瞬で、品性を奪います映画『ウェディング・プランナー』の中で、主演のジェニファー・ロペスが演じるウェディング・プランナーは、お客さまの前ではいつも優雅に振る舞いますが、お客さまから見えないところでは、一転してドタバタと走り回ります。実は、まさに現実もそのとおりです。すべてが予定どおりに進行する結婚式など、ほぼありません。大なり小なり、想定外の出来事が起こります。祝辞を予定していた人が急に欠席になったり、スピーチや余興が長引いて時間が押してしまったり、お客さま同士の間でちょっとしたもめごとが起こったり……。それでも、何事もなかったかのように進行しなければなりません。バックヤードもたいへんです。式場の進行に合わせて、新郎新婦のお色直しをしたり、料理を準備したりで、バタバタの状態です。それでも、お客さまの前では、ドタバタぶりなど決して見せない。それがプロの使命です。結婚式に携わる仕事において大切なのは、とにかく落ち着いてものごとを進めていくということです。結婚式では、華やかな中にも厳かな雰囲気をつくり上げることを求められます。スタッフが、せかせか、バタバタしていては、とてもそんな雰囲気はつくり上げられません。ですから、少々トラブルがあっても、イラッとすることがあっても、ひと息ついて、意識して、口角を上げて笑顔をつくることを心がけています。そうすることで、会場に落ち着きを取り戻すことができるのです。そういう意味では、私たちは〝シーンに合わせた立ち居振る舞い〟が求められると言ってもいいでしょう。しかし、それはブライダルの仕事をしている者だけに求められるものではありません。社会人として当然のことです。どんなときでも、イライラしたり、まして怒ったりしていては、いい結果につながることはないのです。怒りや焦りの感情を表に出すことがいかにマイナスかを感じた出来事が、2018年のテニスの全米オープンで起こりました。大坂なおみ選手が破竹の勢いで勝ち上がり、セリーナ・ウィリアムズ選手と対戦することになった決勝戦でのことです。第2セット、ウィリアムズ選手は審判から「客席のコーチから指示を受けた」という理由で警告を受けたことに対して、「私はずるいことはしない」と激しい口調で抗議しました。その後も、イライラを募らせてラケットを叩きつけたために1ポイントのペナルティを科されます。すると、主審に対して「私からポイントを奪った泥棒だ!」と発言して1ゲームを失い、結局、2−6、4−6のストレートで負けてしまいました。試合後の記者会見でウィリアムズ選手は、「もっとひどいことをする男子選手はたくさんいるが、これまで主審に泥棒と言って1ゲームのペナルティを科された男子選手はいない」と、「これは男女差別問題だ」と訴えます。その結果、表彰式は観客から大坂選手に対するブーイングが起きるなど異様な雰囲気の中で行なわれました。そんな中、大坂選手は「みんなセリーナを応援しているのはわかっている。こんな結果になってごめんなさい」と謙虚な姿勢で涙を見せたことで、会場の空気を一瞬にして変えてしまったのです。一方、ウィリアムズ選手に対してはその後、賛否両論ありましたが、「下品だ」という批判も相次ぐこととなりました。試合後のインタビューで、大坂選手はこう言っていました。「小さいときからテニスをやっていて、相手が怒ったときには、相手を見るなと言われていた。本当は、何を怒っているのか知りたかったけれども、そう教えられていたから私は後ろを向いた。だから、何が起こっていたか私は知らない」と……。教えを守り、純粋な気持ちで試合に臨んだ大坂選手は、さすが一流選手だと思います。怒りや焦りといった負の感情に負けて、攻撃的な言葉を口にすれば、その人の持つ本来の才能や技術にかかわらず、一瞬で「品性を欠いた人」だという印象を与えてしまうことを、知っておきましょう。

これだけで印象が変わる物の受け渡しは「両手」を使ってあなたは人に物を渡すとき、きちんと両手で渡していますか?同僚に書類を手渡すとき、片手でポイと渡していないでしょうか。「そこのペンを取って」と頼まれたとき、片手でヒョイと差し出してはいませんか。それは避けたほうがいいことは言うまでもありません。渡すほうは何気ない行動でも、受け取るほうは意外にそういうしぐさを見ているからです。両手で渡されると、「ああ、この人は丁寧だな」と、人は瞬間的に思うものです。逆に、フッと片手で渡されると、「私のことを軽く見ているのかしら」と不快に思うかもしれません。それが自分にとって大切な物であれば、「この人は、これが大切な物だと理解していないんだ」と、相手に対する評価を下げるでしょう。特に意識したいのが、名刺です。今でこそ、片手で差し出して同時交換しても違和感を覚えない人が増えていますが、名刺は本来、その人自身を表す物であるという考えから、両手で渡し、両手で受け取るのが基本です。名刺交換においては、先に目下の者が、目上の人に差し出すのが原則と言われ、ビジネスシーンでは、売り手は買い手に、受注者は発注者に対して敬意を払い、先に差し出します。ただ、一部の一流ホテルや百貨店においては、「たとえ紙一枚でもお客さまに持たせたままにしてはいけない、手をわずらわせてはならない」という考えのもと、お客さまが名刺をお持ちになったら、先に頂戴するというマナーを徹底しているところもあります。どちらにしろ、どの動作も両手で行なうことが大切なのは同じです。名刺を渡すときには、名刺入れから名刺を出し、「○○の□□□□と申します」と名乗り、先方に両手で名刺を差し出します。一方、名刺を受け取るときには、「頂戴いたします」と応え、両手で受け取ります。片手での同時交換が一般的になっている現在だからこそ、両手でお渡しし、両手で受け取るという基本を徹底させることで、相手はあなたに一目置くでしょう。常に両手で──。その心がけが、あなたの品格を高めることは間違いありません。

カバンに常備しておきたい物現金を渡すときは「封筒」に入れてお金の扱いには、その人らしさが垣間見えます。現金のやりとりひとつに、ちょっとした気遣いがあるだけで、奥ゆかしい品のよさを印象づけられるのです。たとえば、同僚に立て替えてもらっていたお金を返すときに、現金をそのまま渡すのではなく、封筒や、女性であれば、絵柄の入った多目的封筒などに入れて返したほうが、相手も気持ちよく受け取れるでしょう。もちろん、「ありがとうございました。助かりました」とお礼の言葉を添えるのも忘れてはいけません。あるいは、なんらかの会費を集めているとき、現金で渡すより、封筒に入れて「こちらでお願いします」と渡したほうがスマートですし、何より上品です。こういった心遣いが見られると、「とても丁寧で、しっかりしている、奥ゆかしい人だな」と、相手は好印象を持ちます。そもそも、人前で現金のやりとりをするのは決して品のいい行動とは言えません。最近は100円ショップにも、用途に合わせた封筒やポチ袋が充実していますから、オフィスのデスクの引き出しやカバンの中に1セット、準備しておくと役に立ちます。もちろん、突然の食事会で「割り勘にしよう」となったときは、そんな準備はできませんが、お財布の中にあるお札の中から、できるだけきれいなものを選んで出すくらいの気遣いはほしいものです。クシャクシャのお札をそのまま無造作に出しては、奥ゆかしさどころか、がさつなイメージさえ持たれかねません。ちなみに、男性の中には、お財布を持たず、ズボンやスーツのポケットに現金を裸で入れている人もいますが、だらしないイメージとともに、金銭感覚を疑われる可能性もあります。お金はお財布にきちんと入れておきたいものです。貴重なお金だからこそ、扱いは慎重にしましょう。特に人前で受け渡しをする際は、最低限の心配りをすることが、その人の品性を高めることにつながります。

ネイルアートについて「指先」まで神経を行き届かせるおしゃれのひとつとして爪を気にかける人は少なくありませんが、実は紀元前3000〜4000年頃の古代エジプトには、すでに爪に着色する文化があったそうです。特に女性には、爪をきれいに見せたいという根本的な欲望があるのかもしれません。見方を変えれば、指先はそれほど人の目を引く部分であり、それをきれいにしておくことが、豊かさや権力の象徴だったのかもしれません。また、指先は鏡を見なくても視界に入る自分の一部分です。気分が落ち込んでいるときでも、きれいにしてある爪を見るだけでテンションが上がったりします。今ではさまざまなネイルアートを楽しめるようになっていますが、品よく見せるためには、気の向くままに楽しめばいいというものではありません。プライベートな時間ならそれでもかまいませんが、ビジネスパーソンとして働くときは、配慮が必要です。たとえば、病院で働く人や飲食を扱う仕事をしている人は、爪はきちんと切って清潔さを保たなければなりません。マニキュアをする場合にも、淡い色のものに限ります。一方、ブライダル業界やメイク業界で働く人は、センスのよさをウリにする部分もありますから、ネイルアートを施すことが必須になっているところさえあります。それでも、あまりに奇抜すぎるデザインのネイルはかえってマイナス効果です。メイクの専門家の中には、「女性がマニキュアをしないのは、スッピンでいるのと一緒。マニキュアは最低限のマナーです」と言う人もいます。マニキュアやネイルアートを必ずしなければならない、というのは行きすぎかと思いますが、指先が周りの人の目にも入りやすいのは確かです。ネイルアートを施すのであれば、違和感を抱かれないように派手すぎるものは避けること。そして、ネイルアートを施さなくても、不快感を与えないようにきれいに手入れをしておくことが必要ではないでしょうか。指先にまで神経を行き届かせてこそ、あなたの評価を高めることができるのです。

足元への気配りを靴には「その人らしさ」が見えている「履いている靴は、その人の人格そのものを表す」「靴のきれいさは心の反映だ」と言われます。たしかに、それなりの立場にある人や、人格者と呼ばれる人は、足元に気を遣っているように思います。また、あなたの周りの人たちが、思っている以上にあなたの足元を見ているのは間違いありません。日頃から靴のお手入れに気を遣う習慣を身につけておきたいものです。およそ身につけるものの中で、靴は最も使用頻度が高く、最も汚れやすいアイテムでしょう。泥だらけでボロボロの靴を履いている人は、たとえ高級ブランドの服を着ていても、それだけでひどく貧相に見えてしまいます。一方、足元まできちんとしている人は、メイクや髪型にも手入れが行き届いている女性であったり、常に紳士的な服装をしている男性であったりするものです。出かける前に、これから履く靴にまで気を配る習慣を身につけているのでしょう。なにも高価なブランド靴を履く必要はありません。大事なのは、きちんと手入れをしているかどうか。どんなに高価な靴を履いていても、その靴に汚れがあり、くたびれた状態で、ろくに手入れがされていないとわかれば、ひと目見ただけで、「この人は身だしなみにいい加減で、細かい気遣いのできない人だ」と思われてしまいます。実際、自分が身につけるものの扱いが雑な人は、周りにいる人たちへの対応も、仕事のしかたも雑になりがちです。あなたの靴に、あなたらしさが見えています。もし汚れていて、くたびれた様子なら、とりあえずは靴磨きセットを購入しましょう。出かける前に、靴のお手入れをする習慣をはじめてほしいと思います。「靴が幸せになれる場所へ連れて行ってくれる。だから女の子は素敵な靴を履くと幸せが訪れる」これはヨーロッパの言い伝えです。足元に気を配ることがいかに大切かを教えてくれる、素敵な言葉ですね。

「小物」は意外と見られている一週間に一度、財布をメンテナンスする靴もさることながら、持ち物にも気を配りたいものです。バッグ、財布、名刺入れなど、あまりにくたびれた物を持っていると、品のよさは感じられません。たとえば、ボロボロの名刺入れから出された名刺を、ありがたいと感じて受け取る人はまずいないでしょう。渡された名刺に価値がないように感じられ、その人自身を軽視してしまう気持ちが湧いてくるのもしかたがないことです。同様にバッグなども、あまりにもくたびれた物を使い続けるのは、避けたいものです。特にビジネスシーンにおいて、破れていたり、汚れていたりするバッグを使っていることは、相手にいい印象を与える結果にはつながらないでしょう。むしろ、物を大切に扱えないだらしない人に見えますし、物事に対して無頓着な人にも思えて、「無神経で信用できないな」と感じるのが人間の性です。もちろん、古くてもしっかり手入れの行き届いたバッグは、好印象を与えます。「物を大切にする人なんだな。そんな人なら人間関係もしっかりしているだろうし、安心して付き合ってもいいかな」と感じるものです。より身近な物としては、お財布もそうです。最近は、カード類を複数持つ人も多く、大ぶりのお財布を使っている人が増えていますが、小銭やカードでパンパンにふくれ上がらせている人が目立ちます。さらに、レシートやさまざまなサービス券も入ってくるので、必要なカード1枚を探し出すのもひと苦労です。ふくらんだ財布も、それを探る様子もカッコいいものではありませんし、決して品のいいものではありません。お財布なんて人に見られるものでもないし……なんて思っているかもしれせんが、周りの人は意外とチェックしています。せめて1週間に一度は、お財布のお手入れをして、ついでに中身も整理して、人に見られても恥ずかしくないように整えておきたいものです。

ワンランク上の「香りのマナー」自分のニオイも装いのひとつですニオイも装いのひとつ。品のいい人は、ニオイにも心を配ります。しかし、自分自身の身だしなみの中で、一番気がつきにくいのは、自分の発しているニオイなのです。特に男性の中には、自分の体臭にまったく気を配らない人もいます。日本人は体臭に敏感で、気にする傾向が強いので、注意してほしいと思います。体臭の最大の原因は、汗をかいたまま放置することです。気温の高いときや運動をしたとき、エクリン腺という汗腺から汗が排出されます。その気化熱によって皮膚表面の温度を下げ、体内の熱を発散させて、体温の上昇を防ぐのです。このエクリン腺から分泌される汗はほとんどが水分で、汗自体が臭うことはありません。しかし、汗を放置しているうちに、皮膚に棲みついている常在菌によって分解が進み、臭いの元となるガスを発生させます。二日も三日もおふろに入らないのは論外ですが、汗をかいたときには、すぐに拭き取るぐらいの心がけは必要です。臭いといえば、口臭やワキガ、加齢臭などがよく問題にされますが、自分の臭いにはなかなか気づかないものです。もし、家族や親しい人から指摘されたときには、気を悪くしたりせず、専門医に診てもらったほうが無難かもしれません。ところで最近、体臭を気にするあまり、やたらと香りの強い香水をつけている人がいます。ココ・シャネルは「香水をつけない女性に未来はない」と言ったそうですが、それも程度の問題!先日乗った電車で、駅で降りていったとある女性を見送りながら、女子高校生たちがこんな会話をしていました。「さっき降りていった人の香水、臭かったよね」「うん、すっごい下品な臭いだった。あれ、スメハラ(スメルハラスメント)だよね」何事もほどほどが大切です。夏場の暑い日、スッと出した扇子から漂ってくる白檀の香り……。そんな上品さのある香りで、さりげなく自分を演出したいものですね。

男性が嫌がる女性のしぐさ食事中、無意識に髪を触っていませんか?とあるアンケートで、「男性が嫌がる女性の食事中のしぐさベスト5」の中に、「髪の毛を触る」という項目が挙げられていました。「髪は女の命」とも言います。メイクや服装同様、髪に対する女性の意識は高いものです。髪型を気にするあまり、ついつい髪に触ってしまう女性が少なくないのでしょう。もちろん、上品さを醸し出すためにも、髪のお手入れは欠かせません。まったく手入れをしていない、伸び放題のボサボサの髪では、どう考えても品があるとは言えないでしょう。きちんとクシを通したか、寝癖はないか、フケは目につかないか、ボサボサのままになっていないか。それらは上品さ云々以前に、「あの人には近寄りたくない」と思われないための最低限の身だしなみです。どんなに忙しいときも、髪の手入れは心がけておくべきでしょう。また、最近ではさまざまな色合いのヘアカラーが登場し、自分に合った髪色を楽しむ人が増えています。働く女性の77%は、ヘアカラーをしているという統計もあります(日本石鹸洗剤工業会)。ヘアカラーは、個性を演出するための必須アイテムになっているようです。新しいおしゃれのひとつとして楽しむのはいいのですが、その上で品のよさを意識するのであれば、あまりにも個性的な、言葉を換えて言えば「どぎつい色」は避けたほうが賢明だと思います。こうして、自分の髪をとても気にする女性たちは、ついつい髪をかき上げたり、髪の毛をいじってしまったりするようです。本人は無意識にやっていることですが、周りにはその様子を不快に感じる人が少なからずいます。その結果が、最初のアンケートにつながってしまったわけです。そもそも、食事中にむやみに自分の髪の毛に触れるのは、エチケットに反します。また不潔に感じられてしまい、嫌がる人は多いのです。アンケートでも、女性が髪の毛を触る行為を不快に思う理由として、「いかにも退屈そうに見える」「清潔感に欠ける」という指摘が挙がっていました。どんなに手入れされた髪であっても、きちんと整えられた髪型をしていても、むやみにそれに触れていると、品のよさは半減してしまいます。ロングヘアの人はもちろん、ショートヘアでもかがむとサイドから髪がたれてきてしまうような髪型の人は、動くたびに乱れが気になって髪に触れてしまいがちです。特に仕事中や食事中には、髪を結わえておいたり、動かないようにピンで固定しておくなど、心がけておきましょう。ほんの少しの気遣いが、あなたの品のよさをさらに引き立ててくれるはずです。

ささやかな工夫を楽しむおしゃれな人は、〝季節感〟をちょっと先取りするあの人は、いつ見ても品のいい装いをしているな。なんだかいきいきと毎日を送っているな。そう感じられる人に共通しているのは、生活の中に「季節感」が取り入れられていることです。ブライダルの現場でも、会場に飾るお花などで季節感を演出するのは、とても重要なポイントになっています。それが人の気持ちに大きく影響するからです。日々の生活に季節感を取り入れるためにおすすめなのは、「衣替え」。そもそも衣替えの風習は中国から伝わったものとされ、平安時代の中期頃、宮中ではじまったと言われます。当時は「更衣」と言い、旧暦の4月1日と10月1日の2回、行なわれていました。4月は冬装束から夏装束へ、10月は夏装束から冬装束へと着るものを替えたのです。その慣習は明治維新後、新暦が採用されるに伴って変更されました。夏服の着用は6月1日〜9月30日、冬服は10月1日〜5月31日と定められたのです。学校や官公庁、制服のある会社などは、現在もこの日をめどに衣替えを行なっています(九州沖縄地方と北海道地方では1か月ほど前後します)。さらにプライベートでは、春物、秋物を着る時期もありますから、私たちは春夏秋冬に合わせたファションを楽しめるわけです。しかし最近では、空調設備の完備が進んだせいか、衣替えを意識する人はずいぶん減ったといいます。特に若い人には、まったく無頓着な人もいるようです。それはもったいないように思います。衣替えとは、何も袖が長いか短いか、生地が薄いか厚いか、といった単純なことばかりではないのです。四季折々にふさわしい柄や仕立てによって、季節感を演出することも、衣替えのひとつの醍醐味でしょう。四季に恵まれた日本に暮らす、私たちならではの楽しみ方ができるのです。季節感をちょっと先取りして、装うものの柄や仕立てに、ささやかなこだわりと工夫を楽しむ……。品のよさは、そうしたところから生まれてきます。人は生活がマンネリ化してくると、日増しに気分が萎えて、何を見てもやる気が湧かない「気涸れ」の状態になると聞いたことがあります。私たちの多くは、忙しくも単調な日々を送っているものです。だからこそ、衣替えの季節くらいは、意識をしてみましょう。装いを変えることで、季節の変化を肌で感じてみましょう。周りの人にも、新しい季節の到来を気づかせてあげましょう。そうすることで、あなた自身も元気になれますし、周囲の人からも一目置かれるようになるはずです。

色気を出すのも慎重に安っぽい露出は、やめましょうやたらと露出の多いファッションを好む女性は安っぽく見られがちです。ただ、不思議なことに、外国の女性が大きく胸元の開いた服を着ているのを見てもそれほど違和感を抱かないのに、日本人女性が同じような服装をしていると、まるで下心があってそうしているように感じてしまう日本人男性が多いようです。そこには東洋と西洋の文化的な違いもあるのでしょう。もし、日本の女性がチューブトップにミニスカートという服装で会社へ行けば、顰蹙を買うのは目に見えています。本人にはそんな気持ちはさらさらなくても、周囲から「そんな格好して男を誘っているの?」と、ヘンに勘繰られてしまうでしょう。ちなみに、服装によって相手にどんな印象を抱くかを調べたところ、男女ともに、「露出が多い服装をしている人は遊び相手」「露出が少ない服装をしている人は結婚相手」という結果が出た心理実験があったそうです。やたらと露出の多い服を着るのは、なるべく避けたほうがいいかもしれません。もちろん、プライベートなシーンで、ちょっと大胆なファッションを楽しむのもいいでしょうが、やはりTPOはわきまえておくべきです。実際、外国人女性でも、ある程度社会的に地位のある立場にいる人が、露出度の高い服装をしているのはあまり見かけませんし、ビジネスシーンでは露出度の低い服装をしています。パーティーでは大胆でセクシーなファッションを楽しんでも、きちんとすべきところはきちんとする。そういう切り替えができているのです。たとえば、ブラウスやシャツのボタンを一つ開けていたら素敵だけれど、二つ開けると少しセクシーすぎてしまう……。少しの加減で印象は変わります。品のよさを失わない、ちょうどよい加減を身につけておきたいものです。

ホテル業界の「挨拶の基本」語先後礼──美しい挨拶のしかた品位を保つには「挨拶」も大切です。ホテル業界には「語先後礼」という言葉があります。まず立ち止まって、挨拶の言葉を発したのちに、礼の動作をしなさい。〝おはようございます〟〝よろしくお願いします〟〝いらっしゃいませ〟と、はっきりと言葉を発したあとに、頭を下げなさい。そういう意味です。また、この順番は逆になってもいいのです。立ち止まって、一礼をしたあとに〝おはようございます〟〝よろしくお願いします〟と言葉を発してもかまいません。大切なのは、挨拶と礼の動作を同時にやってはいけないということ。「分離礼」とも呼ばれるこうした挨拶のしかたを、ホテル業界に入ると徹底して教えられます。これは、「ながら動作」をしないという意味で、「歩きながら挨拶をしない」という基本中の基本にもつながります。お客さまとすれ違うとき、あるいはすれ違いそうになったときには、お客さまの姿が見えたら、必ず足を止めてお辞儀をします。そうすると、お客さまも丁寧に応対された気がしますし、好印象を抱いてくださいます。「立ち止まり礼」と言いますが、これもホテル業界で働く人にとっては当然のマナーです。こうしたマナーが求められるのはホテル業界に限りませんし、一度身につけてしまえば、自然にできるようになるものです。周りからは「この人はちゃんとしているね」「立ち居振る舞いが美しい」と評価してもらえ、それが信頼を得ることにもつながります。特に若い人は、間違っても、歩きながら片手を挙げて「こんちゃーす!」なんてやらないこと。それが通用するのは、仲のいい友人との間だけであることを、肝に銘じてほしいと思います。学生時代の癖が抜けず、社会人になってもそんな挨拶をしていたら、たちまち「礼儀知らずで下品な人」という評価をされてしまうでしょう。

デューク更家直伝「品のいい歩き方」背筋をピンと──姿勢のよさは百難隠す姿勢のよさは百難隠すと言います。背中をいつも丸めている人はなんとなく貧相に見えるのに対し、背筋がピンと伸びている人は、さっそうとした気持ちのいい人に見えます。また、姿勢がいいと実際より大きく見えますし、健康的で自信と品にあふれているように感じられます。余談ですが、立ち姿がきれいで、歩く姿も優雅な女性に、「バレエか、日本舞踊の経験がおありですか?」と尋ねると、たいてい「よくおわかりですね」というお返事が返ってきます。そういう方たちからは、凛とした気品を感じるのです。品のよさを身につけるのに、クラシックバレエや日本舞踊を学ぶのは適しているのかもしれません。姿勢のいい人の前に立つと、「私もちゃんとしなきゃ」という気持ちになるものです。大げさかもしれませんが、姿勢のいい人の放つ、威厳というか、厳かさのようなものに影響されるのかもしれません。つまり、立ち姿、歩く姿が美しい人は、それだけでワンランク上に見られるということです。立つときも、歩くときも、背筋を伸ばすことを意識してほしいと思います。意識するといっても難しい、という人のために、ちょっとしたコツをお教えしましょう。たとえば、信号待ちをしているとき、片方の手を背中に回し、もう一方の腕の肘の部分を後ろに引っ張る動作をしてみてください。これだけで、背筋が伸び、姿勢がよくなります。実はこの方法、ウォーキングトレーナーのデューク更家さん直伝のやり方です。こうすると自然と胸が開いて、歩き出したときに、前の膝がちゃんと伸びた状態で着地するようになります。それが、まさに「いい歩き方」なのだそうです。また、一流ホテルのホテルマンは、新人の頃から、立ち方や歩き方を厳しく訓練されます。見る人が見れば、立ち姿だけでホテルマンかどうか見分けがつくほどの違いがあります。「姿勢のよさ」のお手本にはうってつけです。ホテルに行かれる機会があったら、ぜひ観察してみてください。

目線を上げよう「花嫁」に学ぶ、品のいい歩き方前項で、「姿勢がいいだけで、なぜ品よく見えるのか」について書きましたが、やはり、姿勢よく颯爽と歩く人は自信に満ちていて、「きっとあの人は生き方もスマートなんだろうな」と感じられます。逆に、下を向いてトボトボ歩いている人は、不安げで貧相に見えてしまい、「なんとなく信用できないし、仕事も任せたくないな」と思われてしまいます。胸を張って堂々と歩くことは、自分の品格をより高く見せるための、意外に大きなポイントなのです。考えてみると、気が滅入っているときほど、なぜかうつむいてトボトボ歩きがちです。でも、今ひとつ気分が盛り上がらないとき、意識して顔を上げ、背筋を伸ばしてみると、不思議と気分が変わることがあります。形から入ることも大切なのです。結婚式でウェディングドレスを着た花嫁さまは、着慣れていないせいもあって、足元を気にするあまり、たいてい下向きの姿勢になりがちです。アテンドスタッフが助言しないと、バージンロードを歩くときにも下を向いて歩いてしまい、せっかくのウェディングドレス姿も映えません。ですから、「視線を真っすぐに」とか、「目線は十字架に」とひと言添えてさしあげるのです。ちょっと顔を上げて、視線を前に向けるだけで、歩く姿が見違えるほどきれいになります。表情も、とたんに晴れやかになります。歩くときは、目線を上げる。ただし、あごが上がらないように気をつけましょう。歩幅はふだんより小さくして、ゆっくり歩きます。ブーケはおへその前あたりで持つと美しく見えます。重心は後ろに置くことを心がけます。意識しないと前のめりの歩き方になりやすいので、自分で思うよりもかなり後ろに重心をもっていくようにするのです。花嫁の歩き方ワンポイントアドバイスでした。ふだん、品よく歩くためにも応用できるので、ぜひ実践してみてください。

自然体こそ美しいふたりの大女優に学ぶ「本当の美しさ」最近、「美魔女」というワードを目にするようになりました。「美魔女」とは、光文社が発行するファッション雑誌『美STORY/美ST』による造語で、35歳以上で〝魔法をかけているかのように美しい〟才色兼備な女性のことを指すそうです。たしかに、年を重ねてもうらやましいほどきれいな人、かわいらしい人がどんどん増えています。私もあやかりたいところですが、なかなかそうもいかず、年相応に生きていくしかないと覚悟を決めています(笑)。それはさておき、美魔女を目指すあまり無理に若作りをして、かえって本来の美しさを損ねている人がいることは残念です。たとえば、つけまつげは以前からある美容アイテムですが、流行を取り入れすぎて、違和感が生じている人も見かけます。口元も、流行りとはいえリップグロスを塗りたくり、品のよさ、かわいらしさというよりは、無理している感じが満載な人を見かけることも……。まさに〝過ぎたるは猶及ばざるが如し〟です。あまり無理をしないでオーソドックスさを保ちつつ、ワンポイントとして流行を取り入れるにとどめたほうが、自然な感じで品のある雰囲気を演出できます。女性の場合、日本人は〝かわいい〟という点に重きを置きがちなように思います。対して欧米の女性は〝少しでも早く大人になりたい〟という気持ちが強いそうです。たとえば、フランス女性は、若さより経験を積んだ素敵な大人の女性になることに重きを置いているといいます。だからパリジェンヌは幼い頃から、どんなスタイルが自分に一番似合うかを考え、親たちもそれを教えるそうです。一方、日本女性は〝実年齢より若く見せよう〟〝かわいらしく見せよう〟という気持ちが強いように思います。文化の違いといってしまえばそれまでですが、できることなら私たちも、周囲の流行に振り回されず、自分をしっかり持って、本当に自分に合ったおしゃれを見つける努力をするという意識に変わっていきたいものです。吉永小百合さんは、常に自然体で、年を重ねるほど美しくなっています。しかし、お化粧はいつも落ち着いていますし、スポーツがお好きだという話も耳にしました。ですから、「吉永さんは、内面の美しさをお持ちなので、いわゆる外見の美にはあまり頓着していないのかもしれない」と、私は思っていました。しかし、それは勘違いでした。吉永さんが『徹子の部屋』にご出演されたとき、黒柳徹子さんから、「あら、あなた。お変わりないわね」と声をかけられると、「それはそうです。女優という仕事をしている以上、見られなくなったらおしまいだと、自分にいつも言い聞かせています」とお答えになりました。つまり、「人の前に立つことを考えて、美しさに対しては最大限に気を遣っている」と言い切ったのです。吉永さんは、本当に自分に合った美しさ、自分の年齢や積み重ねてきた経験に合った美しさを知っているからこそ、あんなふうに知的で、若々しくいられるのだと、私は気づかされたのです。自分らしさを知っているから、知的で、若々しく、美しくいられる──。そういう意味では、亡くなられた樹木希林さんにも、通じるところがあったのではないかと思います。自分らしさを知っているからこそ、本当の強さをお持ちでした。心のしなやかさが彼女の言葉の端々に表れていましたし、それが樹木さんの品のよさにもつながっていたのではないでしょうか。決して見栄を張らず、いつも自然体。お化粧もナチュラル。着る服も自分で仕立て直して大切に着る──。その姿が本当に素敵でしたし、樹木さんらしい品格を醸し出していたような気がします。自分らしさを知り、自分らしく生きる。品のよさを培うために、まずは等身大の自分を知ることからはじめてみるのも、いい方法かもしれませんね。

 

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