さあ、これまで検討してきた長期計画を、いよいよ実行に移す段階である。
どの数字にも社長の意思が込められている。さまざまな角度から検討され、社長としても
これ以上は、あとは実践あるのみ、という煮詰めた計画ができた。
ここで、モデル会社であるD精機の社長になったつもりで、各部門長にどう指示するか、
お考えいただきたい。
まず営業部長を呼んで何と言うか?
「営業部長、今後五年間、何とか一二%増の売上計画をつくってくれ」
「社長、 一二%はきつい、主力の○○が伸び悩みですし」、社長の気楽な夢をいきなり売上
や利益計画にした、水増しの数字にばかり慣れた幹部なら、当初は検討もしないで消極的な
返事をするものである。
「ちょっと待てよ、関西地区の全体の伸びはこうで、うちはこうだ。 一三%の根拠はこうだ。
ヤマ勘で決めたわけじゃないんだ。できないと決めつけないで考えてみてくれ」
社長には、この売上をやってくれなければ、社員の生活向上も、先行投資も、安全投資も
すべて狂ってくるという思いがある。単なる損益計算で出した売上目標とは違う。説得力が
違うのだ。指示された幹部のほうでも、これならやり方によっては、実現可能かもしれない、
と考えてくれるはずだ。営業部長に、自分のもっている全商品別に、あれは二〇%いけるが
こっちは五%がいいとこか、というように営業品目別に、あるいは営業拠点別に売上一三%
増の具体的な計画を練らせる。これは営業幹部の仕事だ、社長の仕事ではない。
実現可能な一二%という目標設定は、営業部長のレベルで真剣にその実現計画を考えても
らうために、十分に具体的なのである。
多くの会社では、日標設定もそれを実現する商品別販売計画、得意先別販売計画、これら
のすべてを営業部長にやらせる。部長は課長に、課長は担当者に、来期はいくら売れるか、
下からの積み上げ方式だ。でてきた目標は、必ず、社長の期待を下回るものだ。上も上なら、
下も下で、どうせ折衝で上乗せされるのだからと、マイナスのゲタをはかせて提出してくる
からである。もちろんこれがぎりぎりの数字だ、ということを説明するもっともらしい理由
つきである。これでは大切な売上計画に、社長のビジョンを入れることなど不可能ではない
か。売上の目標設定は、社長がやることなのだ。
製造部長には、前期五七%の粗利であったが、今期は最低でも五六・五%になるように
考えてほしい、今後とにかく粗利が○ ・五%より落ちないように、外注製作、買い入れ部
品、生産計画を一つひとつ検討してほしい。これからは人を増やして増産する時代ではない、
六億円の設備枠をあげるから、社員を増やさないでパートでできるような仕組みを考えてほ
しい、というように具体的に指示を出す。
経理部長には、五年後に無借金会社にするぞ、そのためにはお金の裏づけはこう考えてい
る、専門家として俺をしっかリフォローしてほしい、資金の運用についても、お札に色をつ
けろと勉強してきた、うちではこれだけ資金が遊んでいるが、当座預金はこれだけにして、
残りを一日でもいいから金利を稼がせるように計画してほしい、と。
総務部長には、うちはこれからパートを増やしていく、パートの待遇、パートの採用が新
しいテーマだ、当面新卒一名、パートニ名ということで、採用計画を考えてほしい、なぜな
ら五年後は社員の給料をこのぐらい上げて、賞与もこれだけ出せるようにしたいんだ、と。
これらは、会社の各部門への具体的な社長方針であり、日標設定だ。なぜその数値でなけ
ればならないか、社長は幹部から質問があれば、「それはな、こうこうだから」と説得できる。
もはや聞き流してすます部下はいない。全社を挙げて、社長の夢の実現へ走りだすことにな
るのである。そうなるように、この長期計画はつくられているのだ。
発展への好循環サイクルをつくる
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