MENU

八章●贈り物のお礼からお祝い、不快感の伝え方まで──〝こころ〟がしっかり伝わる「手紙ならでは」の言葉づかい

八章●贈り物のお礼からお祝い、不快感の伝え方まで──〝こころ〟がしっかり伝わる「手紙ならでは」の言葉づかい

感謝の手紙を書くとき●頂き物なら具体的に感想を入れる最近は、電話やメールですましてしまう人が増えていますが、感謝の意を丁重に表すには、やはり手紙がベスト。簡単な文面でいいので、お世話になったときや贈り物をいただいたときは、その日のうちに感謝の手紙を出したいものです。このとき注意したいのは、ただ漠然と「ありがとうございます」としないこと。このような書き方では、たんに儀礼的に体裁をつくろっているだけの印象になってしまいます。ありがたく思っている点に具体的に触れて、感謝の気持ちを表現しましょう。たとえば、上司や目上の人から何かしてもらった場合には、恐縮の意味をこめて、「お忙しいなかを……」と、相手の労を感謝する配慮の言葉を添える。贈り物のお礼状なら、「さっそく愛用させていただきます」などという言葉とともに、いただいたものに対しての具体的な感想を入れる。こんなちょっとした心くばりで、先方に心からの謝意が伝わりやすいものです。また、お祝いに対するお礼状では、「おかげさまで」のひと言を忘れないこと。祝い事でその喜びを表現するのはいいのですが、そうした幸せがすべて自分の力だけでできたと思うのは傲慢なこと。相手や周囲の人々の力添えのおかげなのですから、その気持ちを謙虚に言葉で伝えましょう。より丁寧に書こうとして、「おかげさまをもちまして」とする人がいますが、これは間違い。「おかげをもつ」などという言い方はありえないことからもわかるように、「おかげさま」でひとつの決まり文句。そもそも、「あなたのおかげ」と謝意を含んでいるのですから、これだけで相手を立てる気持ちは十分表せます。また、得がたい喜びを伝えるフレーズとして、「痛み入ります」や、励ましの手紙や言葉に対するお礼のフレーズとして、「心に沁みました」という言葉も、品格を感じさせる謝意の言葉ですから覚えておきましょう。

依頼の手紙を書くとき●丁寧なつもりで不遜な表現をしているかも…「助けてほしい」「協力してください」とお願いする手紙で、〝勘違い敬語〟を使うようでは困りもの。使い方を間違えると、謙虚なつもりがはからずも不遜な表現になってしまうことがありますから、細心の注意をはらいましょう。たとえば、「力を貸してください」という依頼を、敬意をこめて表現するなら、「お力添えくださいますか」「お力をお借りできますか」であって、「お力になってくださいますか」は間違い。これも正しいように思うかもしれませんが、「力になる」というのは、自分が相手に助力する意。「わたしでよろしければお力になりましょうか」などと使い、自分が力を貸すときの謙譲表現です。いくら「お」をつけても、相手からの助けが欲しいときには使えません。いずれにしても、人にものを頼むということは、多かれ少なかれ相手に負担をかけることになるものです。「~していただけるとありがたいのですが」「ご配慮いただけないでしょうか」「ご一考いただければ幸いです」というように、相手の都合に配慮して、ストレートに依頼せずワンクッション置くことで、控えめな姿勢を表現することです。また、どうしても聞き届けてもらいたい場合、「思案に暮れております」と、思い惑う様子を率直に表現したり、「ご無理を承知でお願いするのですが」「身勝手なお願いとは重々存じながら」「身が縮む思いですが」「なにとぞ事情をおくみとりいただきたく」などと拝み倒したり、表現にもいろいろありますが、依頼の手紙を書く場合の心構えとして大切なことは、依頼される人の立場になって書くということです。承諾してもらいたいばかりに、突然の手紙で長々と事情を説明されても、相手は迷惑です。手紙一通ですまないようなたいそうな依頼は、手紙では腰を低くして都合や意向を問い、くわしくは後日あらためてお願いするようにしたいものです。

贈答品に手紙を添えるなら●この配慮ある添え書きがあなたの株を上げる最近では、お店から直接配送してもらうことがほとんどですが、そもそも贈答品というのは、お世話になったお礼やお祝いで贈るもの。そうした本来の意味を考えると、品物を送るだけでなく、一筆したためるのがマナーです。贈られたほうも、手紙が添えられていると真心を感じてうれしいもの。お店でメッセージカードを用意しているところもありますから、それを利用したり、品物に手紙を添えられない場合には、別便で送り状を出すようにするといいでしょう。贈答品に添える手紙にしろ、別便での送り状にしろ、ポイントは、受け取った相手が「こんなものをもらっていいのだろうか」と不安になったりせず、気楽に受け取ることができるような書き方を心がけることです。そういう意味では、贈り物をする理由をはっきり述べたほうが、相手も安心して受け取ることができます。といっても、難しいことではありません。お礼の品なら、きちんと謝意を伝える。お祝いの品なら、お祝いの言葉を添える。それで贈る理由を説明することになるのです。また、以前は、「つまらないものですが」「粗末なものですが」などと表現するのが奥ゆかしいとされていましたが、いまはこういった卑下した表現を使わないほうが、かえって品があるようです。「心ばかりのものですが、どうぞお納めくださいませ」このフレーズなら、謙遜しすぎということもありませんし、自然で好感をもたれるはずです。「心ばかりのものですが」の代わりに、「かたちばかりではございますが」「ほんの気持ちではございますが」も、奥ゆかしい表現です。また、「どうぞご笑納くださいませ」とする表現もあります。これは「つまらぬものですが、笑って受け取ってください」という意味になります。これらはいずれも品のいい常套句ですので、大人の表現として、ぜひ覚えておきたいフレーズです。

不快感、怒りを伝える手紙を書くとき●ストレートに感情をぶつけるのはいかにも軽率こんな手紙はできるなら書かないですませたいものですが、ときには、不快感や怒りを先方に伝えなければならない場合があります。そんなとき、感情的になって居丈高な調子で書くのは禁物。それでは、かえって問題をこじらせてしまいます。このようなときにこそ、品のある言葉づかいを心がけましょう。たとえば、相手の発言や行為に対して不快感を表明するのに「不愉快です」とストレートに書くのは、いささか子どもっぽく響きます。そんな感情的な表現は避けて、疑いや迷いなどが晴れず、気持ちがはっきりとしないさまを表す、「釈然としません」や、どうしたらよいか判断できずに困る様子を表す、「困惑しています」といったクールな言い回しをします。また、「怒っています」という感情の吐露も避けたほうがいいでしょう。感情的になっている、と受け取られるような言葉づかいはやめて、「憤懣やるかたありません」「残念です」など、不愉快さや怒りなどで、気持ちの整理がつかない状態を描写するような表現を心がけるといいでしょう。こうした手紙は、相手に喧嘩を売るためのものではありません。こちらのこうむっている迷惑に対し、状況を説明し、善処を望むのがいちばんの目的のはず。こちらの受けている迷惑について、相手にはっきり伝えることは必要ですが、心情を率直に伝えたあとには、「右の事情をご賢察くださいまして」とするなど、冷静に品格のある文面を心がけましょう。どんなに腹が立つことでも、感情にまかせて相手をなじるような書き方はタブーです。

今後もつきあいの継続をお願いするとき●社交辞令とは感じさせない気のきいた表現とはお世話になった方に、お礼かたがた、「今後も引き続きよろしくお願いいたします」とするのは、これからもおつきあいを続けたいときによく使うフレーズです。もちろん、これで間違いではありませんが、この文句は、その曖昧さゆえにあたりさわりのないあいさつ程度に使われることも多いため、ただの社交辞令のようにとられかねません。本当に今後のおつきあいをお願いしたいなら、品格を保ちながらも、その気持ちが伝わるような具体的な表現を心がけることです。たとえば、どこかへ一緒に遊びにいったなど、楽しい時間を過ごした相手へは、「次の機会が楽しみです」と書けば、次回への期待を率直に伝えることで、心から楽しかったことが表現できます。プライベートなイベントなどで同席した相手には、「これに懲りずに、またよろしくお願いいたします」と言い、相手の好意に素直に甘えたいときには、「また面倒を見てやってください」などと、今後をお願いするのもいいでしょう。ただし、「これに懲りずに」というのは、明らかに面倒をかけた相手に使ってはいけません。「面倒を見る」も、相手の手を煩わせたと率直に述べることによって、たんなる儀礼的な表現以上の誠意がこもって感じられる反面、相手の負担が大きい事柄について使うと不遜な印象になってしまいます。一方、「またご一緒しましょう」「そのうちまたご一緒できるといいですね」というのは、社交の常套句。あまり会う機会はない相手に、今後のつきあいを漠然とお願いしておこうというときに使います。誘ってほしいという気持ちを伝えたいなら、「お誘いください」というダイレクトな言葉でも失礼にはあたりません。もっとも、このフレーズは姿勢こそ受け身ですが、あくまでも誘い文句。同輩以上の人に誘ってほしいときは、「ぜひお声をかけてください」とします。ただし、こう書いた以上、実際に誘ってもらったときに安易に断るのは、失礼になるということをお忘れなく。

手紙で相手の気づかいを遠慮するとき●先方の負担をなくすこれが魔法のフレーズ先方から知らせを受けたり、友人からお祝い事を耳にしたら、時機を失しないよう、お祝いの品を贈ったり、お祝い状を送ったりして、先方の慶事を一緒になって喜びたいもの。しかし、その配慮が先方の負担になっては意味がありません。とくに、栄転したり、家を建てたり、新たに事業を始めたりと、先方が新しい環境で立て込んでいることが予想されるようなときには、よけいな気づかいはさせたくありません。そんな際に使いたいのが、「お気づかいは無用です」というフレーズ。相手によけいな気づかいをさせたり、気を回させたりしないということは、相手への何よりの心くばり。この言葉は、そういったときのための必須の表現として覚えておきましょう。もう少しやわらかく表現したいときは、「どうぞお気づかいなさらないでください」とするといいでしょう。また、「ください」を「くださいませ」に換えれば、より丁寧な言い回しになります。目上の人に対して、あらたまった表現をしたいなら、「どうぞご放念くださいませ」とすれば、品格を感じさせます。もちろん、逆に、こちらから祝い事をお知らせする際にも使えます。ただ、こうした言葉づかいは奥行きの深さを備えた表現なので、相手に対して丁重に遠慮するときにも使います。ですから、こちらの言葉を相手が「遠慮」と受け取ってしまう可能性もなきにしもあらずです。そんなさらなる気づかいを避けるためには、たとえば、「お引っ越し直後でお忙しいことと存じます」などと、先方の事情を察していることを伝えるひと言を付け加えるといいでしょう。だからお気づかいなさらないで、というこちらの気持ちが率直に伝わって、安心してもらえるはずです。

手紙で相手に注意をうながすときは●「ご注意願います」をさらに丁寧に言うと…相手に注意をうながす手紙には、こちらからのなかば強制的な要望から、相手の自由意思に訴える依頼まで、さまざまなニュアンスのものがあります。どれも実質的には、注意をうながすことを相手に要求するという点で同じなのですが、婉曲に表現する度合いによって、印象がずいぶん違うものになります。もちろん、強制的な要望といっても、「注意しろ!」と威圧的な態度をとるわけにはいきません。もし、手紙でそんな書き方をすれば、喧嘩を売っているのと同じことです。まず、一般的な丁寧な表現にしようとすれば、「ご注意願います」「ご留意願います」という具合になります。もう少し品のいい言葉づかいで書く場合は、「お気をつけください」「お気にとめておいてください」という表現に。よりやわらかく、親しみのこもった印象になります。このレベルの婉曲表現で、ある事情に対して気をくばって、具体的にフォローしてほしいときは、「ご配慮くださいませ」と言い、事情を考えてほしいと強調したければ、「ご考慮くださいませ」という言い回しをします。こうした注意をうながす表現の婉曲度をバージョンアップさせていくと、「ご配慮いただけないでしょうか」「ご配慮くださいますようお願いいたします」「ご配慮いただければ幸いです」「ご配慮いただければ幸甚に存じます」となり、じょじょに控えめに依頼しているニュアンスになるのがおわかりいただけると思います。どのニュアンスが適切なのかを考えて、上手に使い分けてください。

お詫びを伝える手紙の書き方●非礼の度合いに応じた品のいい表現とは明らかに自分側のミスだと思われるときは、とにかくすみやかにお詫びの手紙を出すこと。出すタイミングを逃すと、謝りにくくなってしまいます。自分に落ち度があると認めてお詫びをするからには、文面は謙虚で礼儀正しく、弁解はいっさいしないほうが賢明。下手な自己弁護は、かえって相手の気持ちを逆なでして、さらに気分を損ねさせる結果にしかなりません。礼儀に外れる度合いは、一般にひどいほうから「無礼(非礼)」→「失礼」→「失敬」となります。たとえば、自分の失態を丁重にお詫びするときは、「ご無礼をいたしまして、申し訳ございませんでした」と言います。失敗が重なったときなどは、「非礼の数々、お許しください」とすると、より深いお詫びの気持ちが表せます。自分の失敗を恥じ入る表現としては、「お恥ずかしい次第です」「面目ありません」といった比較的軽めのものから、「汗顔の至りです」「慙愧に堪えません」といった、そうとうに恥じているときに使う堅苦しい表現までありますから、ニュアンスに応じて使い分けるといいでしょう。「行き届きませんで、申し訳ございませんでした」「お気を悪くなさらないでください」は、実際に相手に失礼をしたかどうかや相手が気分を害したかどうかにかかわらず、ちょっとした行き違いなど、相手に不愉快な思いをさせかねないことがあった場合に社交辞令的に使うフレーズ。自分の過ちを恥じ、責めているような場合に使ってしまうと、誤解が生じるので気をつけなければいけません。その際は、「自責の念に堪えません」などという書き方にします。そして、今後はこのようなことがないようにしたい、という反省の言葉も忘れずに添えましょう。

面識のない相手に手紙を書くとき●受け取る人に配慮した上品な決まり文句とは見ず知らずの相手からいきなり手紙が届いたら、だれでも不審に思うもの。面識のない相手に手紙を書くときは、何よりもまず、こちらの身元をきちんと紹介しなければなりません。紹介者がいる場合には、「○○様にご紹介いただきました」と、その方の名前をフルネームで書きます。所属や肩書などもはっきりさせ、どこのだれであるかがすぐにわかるようにすることが大切です。人とはじめて会うときには、「はじめまして」などとあいさつをしますが、面識のない相手に手紙を出すときには、そんな簡単な書き出しではいけません。「はじめてお便りいたします」「突然にお手紙を差し上げます失礼をお許しください」などの、品のある決まり文句で切り出します。受取人にとっては、その手紙は突然の出来事。それを前提に、文面も書式もあらたまった形式で書くのが礼儀です。ちなみに、こうした言い回しは手紙を書くのがはじめて、という意味ではないので、誤解なきよう。言うまでもないと思いますが、何かの機会に会ったことがある相手や、電話で話したことが一度でもある相手には使いません。そういう場合には、「過日△△でお目にかかりました(お世話になりました)○○でございます」とします。先方は覚えていないかもしれませんが、こんな書き方をして、先方との縁を大事に思っているという気持ちを示すといいでしょう。さらに、相手とお会いしたい旨を伝えるときは、「ご拝顔したく存じます」「拝眉したく存じます」のような、敬意のこもった言い方があります。よりやさしい語感にしたければ、「お目もじしたく存じます」がよいでしょう。これは宮中で使われていた女房言葉「御目文字=お目にかかる」が由来。「拝顔したいものです」とすれば、同輩や目下の人向き。敬意とともに、親しみがこもった表現になります。

招待状の書き方と返事の仕方●この奥ゆかしい表現なら相手に喜ばれる披露宴やパーティーの招待状で、「万障お繰り合わせの上」という紋切り型の表現をしばしば見かけますが、この表現、じつはあまりおすすめできません。「万障繰り合わせて」とは、ほかのどんな用件よりも最優先させてきてください、という意味。是が非でも来てほしいという気持ちはわかりますが、これでは先方の都合を考えず、押しつけがましい印象を与えかねません。格式を大事にしたい祝賀の会では、儀礼にのっとって大時代的な表現をするケースが少なくありませんが、度をすぎるとかえって慇懃無礼な印象を与えるもの。昨今、オーバーな表現は滑稽な感じすらするものです。「ご多用中とは存じますが、ぜひご出席くださいますようお願い申し上げます」このほうが上品で、相手の意思を尊重した奥ゆかしい表現です。次は、招待状を受け取った場合。招待状が届いたら、すぐに出欠の返事をするのはもちろんですが、ここでもうひとつ気をつけたいことがあります。というのは、電話で会合の出欠を聞かれたら、「出ません」とだけ言って電話を切る人はいないはず。ところが、往復葉書などで招待の返事を出すとなると、欠席の理由を書き添える人は案外少ないものです。しかし、こういうささやかなところにこそ、人柄や品格が表れるもの。欠席の理由をひと言書き添えると、相手に与える印象がかなり違ってきます。出席の場合にも、披露宴なら、「おめでとうございます。喜んで出席させていただきます」と記します。会合ならば、幹事役への感謝と慰労の言葉として、「ご苦労さまです」「当日はよろしくお願いいたします」などと書き添えると、品のいい人柄がしのばれます。ところで、出席の返事を出してあったのに、身内の不幸などで欠席せざるをえなくなったときは、できるだけ早く連絡を入れ、「拠ん所ない急用ができまして」「急なさしつかえで参列できなくなりました」と、不参加のお詫びをします。おめでたい日に不吉なことを……と気にする人も多いので、あからさまにその理由を言わないのが、心くばりというものです。

おわりに品のいい言葉、丁寧なものの言い方の数々を紹介してきましたが、結局のところ、相手への慮りや謙虚さというものを持ち合わせていなければ、どんなに品格を漂わせる言葉を使っても、それは空虚なものに感じられてしまいます。本当に品のいい人というのは、その場の状況や相手にふさわしい言い回しを的確に選び、使いこなすことができるものですが、それは、常日頃から、豊かな人間関係を築くために心を砕いているからにほかなりません。本書を手にとってくださった方が、美しい言葉づかいとともに、他者を思いやることの大切さにあらためて気づいてくだされば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次