定石28:将来の新事業o新商品開発の準備を怠ってはならない 現在の事業を維持するだけで、発展し続ける企業はない
もしこれまでと同じ商品やサービス、マーケットのままで、将来も商売を続けるというのであれば、競争のなかで利幅を増やすことは、至難の業だ。まあ、不可能に近いのではないか。
結局、長期にわたって利幅を減らさずに、利益率を高く維持しようとすれば、これまでより利幅のとれる新しい商品を見つけるか、利幅がどんどん減少する商品を切るか、あるいは少しでも高い値段で売れる新しいマーケットを開拓するしかないのだ。
そこで、これまで何度も強調してきたことであるが、「高付加価値を目指して将来の方向づけをする」ことが大事になることは言うまでもない。時の流れを読んで良くなるものを増やし、悪くなるものを除く、この当たり前のことが最も重要で、しかも難しい。
商品、サービス、マーケットの絶え間ない強化によって、次の主力となる事業や商品を追加し、新たな成長マーケットヘ進出することは、事業のまさに原点だ。もちろん衰退業界にあっては大胆なまでの業種転換も必要となる。高付加価値のとれるものを求めて、あらゆるツテを使い、試行錯誤を重ね、なんとしてでも売上を伸ばす策を講じ、利幅を広げる商品やマーケットを開拓しなければ、会社の将来はないのである。
これは、数字の操作ではどうにもならないことなのだ。本書冒頭から一貫して説明しているとおり、社長の最大の役割が会社の方向づけにあると強調したゆえんだ。したがって、私がここではっきりと伝えたいのは、今後の企業経営では、常に先行投資というものを考えなければならないということだ。従来のままでは利幅が減っていくから、なんとしてでも利幅のとれる方向づけに知恵を絞り、手を打つ。こういう考えが社長には必要だ。
もちろん、新たな方向づけが功を奏して大幅な利益率の改善を実際に見るまでは、利幅が年々減っても大丈夫な見通しを常に立てておかなければならないのは言うまでもないが、いずれにせよ、先行投資が企業のあり方を決める一つの大事な定石だと申し上げたいのだ。
定石29:先行投資という考え方と言葉を社内に定着させるために、 先行投資の予算枠を毎期必ず設けて、経費を使用せよ
企業の将来のために、常に新しい商品とか新しい業種のことを考えていかなければならないといっても、そうそう簡単に新たな事業の柱というのは生まれるものではない。
「会社の方向づけのための定石」のところで、安易な多角経営は企業を滅ぼす、よって、5年くらいしっかりと時間をかけて一歩一歩、 一つ一つ柱をつくっていくことが大事だと申し上げたとおり、新事業の開発には、相応の資金と時間をかけていかなければならない。
たとえば、何人かのプロジェクトチームを組んでマーケット調査、業界動向、企画、設計、試作…と一連の作業には、それなりの人件費がかかるし、経費もかかる。当然のことながら、ある程度の資金がなければ、新事業や新商品を収益の柱にまで育てることは不可能である。
したがって、先に結論を述べると、社長自身が「先行投資」という科目に対して明確な予算枠を設け、社員に積極的に予算を使わせることが、新事業あるいは新製品の開発の大きな原動力になる。これが定石だと言いたい。
ところで、社長のための損益計算書「佐藤式P/L」を思い出していただきたいのだが、社長がひと目で会社の実態を把握できるように科目を大きく10の分類にまとめて、会社の収益性と健全性が良くなるように、付加価値をバランスよく分配しなさいと申し上げた。
たとえば、内部留保は付加価値の5%〜10%を確実に確保できるように、人件費は野放図に増やさないように、金融費はどんどん減らしてゼロを目指すように…等、会社の収益性と健全性を改善するために5年計画を立てるのだが、その佐藤式P/Lに「先行投資」という経費科目があったのを覚えておられるだろうか。
もう一度、先ほどの佐藤式P/Lを載せておくが、営業経費のなかの「先行投資」という科目をご覧いただきたい。
先行投資とは、新しい商品や事業の調査費や研究開発費、将来の事業拡大に備えた企業広告費、セミナー参加費などの社員への特別教育費などの経費である。社長は、この先行投資に充てる予算を、会社の業種業態に関わらず、少なくとも一律2%くらいは毎年きっちりと付加価値のなかから分配して欲しいのだ。
そして、毎年振り分けた予算を積極的に使う。たとえば、エンジエアの社員が見本市へ勉強をしに行く。それが将来の勉強のためであれば、その出張旅費も先行投資の予算から使う。あるいは、新商品の情報収集を外部に調査依頼したら、その調査の費用、コンサルタント費用も先行投資の予算枠から使う。
その他、営業部員が今ある品物を売りに行く目的ではなくて、多少でも調査的な目的で出張するなら、その費用も先行投資という勘定科目に振り向け、この予算枠から使う。このように、振り分けた予算をきっちり使うことが、じつは非常に大事なことである。なぜなら、「今年は利益が出なかったから来年は先行投資はしない」、「今年は利益が出たから、来年は先行投資を行う」と、社長のきまぐれで先行投資の予算枠を設けたり設けなかったり、あるいは予算枠はあってもそれを有効に使っていなければ、先行投資という言葉なり、考え方なりが、全社になかなか浸透しないからだ。
すなわち、新事業や新商品を常に生み出し続ける社風というのは、 一朝一夕に築かれるものではないということだ。
しかし、先行投資を常にし続けるという風土が会社に定着すると、社員全員に「常に新しいものに挑戦しよう」という高いモチベーションが充満し、ひいては、高付加価値な事業なり商品なりを、将来にわたり開発し続ける企業体勢というのが自然と築かれる。ゆえに、社長は「先行投資を怠っていたら、次の時代の発展はない。目の前の仕事だけではなく、将来の果実を得るために常に投資し続けるのだ」という社長の強い意志を社員に伝えるために、先行投資の予算枠を毎期確保し続けなければならないのだ。
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