ここで注意したいのは、うっかり低く設定した価格を、あとから値上げするのは難しいということです。最初に不用意な価格設定をすると、常に経営が苦しい状態に陥るわけです。 そんな事態に陥らないためには、何を基準に価格を決めれば良いでしょうか。 価格を決めるアプローチは複数ありますが、私は「ビジネスモデルから考えること」と「差別化要素を明確にすること」の二つが基本だと考えています。両者は別々に考えるのではなく、連動して価格が決定します。 先ほどの例で青果を販売するというビジネスの場合、単価だけに注目する前に、ビジネス全体として実店舗を構えて販売するのか、ネットショップだけで販売するのか、あるいは、売り切り型なのか、契約したら毎月届けるサブスクサービスなのかといった、ビジネスモデルの違いで価格設定は変わってきますし、当然ながら提供価値も変わってきます。 実店舗も、都会の一等地に店を出すのと、郊外の無人販売所では、アクセスという価値が違うので価格設定が違って当然でしょう。 バリューチェーンの最後の売る機能だけを担っているのか、野菜の生産まで担うのかによっても価格は違ってきますし、単価が高いなら「無農薬野菜を売っている」「調理の手間が省けるようカット済みの野菜を取り揃えている」「ユーザーの課題に沿った料理方法まで提案する」といった特色を出すことで価格設定は変わってきます。 採用支援のサービスでも考えてみましょう。「採用候補者の面談とセットで 1件当たりいくら」の課金型送客サービスなのか、「 1採用当たり料金が発生する」成功報酬型なのか、はたまた、「採用候補のデータベースの提供」のみで提供したあとは顧客に任せるのか。そのビジネスモデルの違いによって、提供価値も変わりますし、価格設定もまったく変わってきます。 多くの人は、プロダクトやサービスをつくり出す原価や営業、広告といった間接費用などのコストから積み上げていきたくなりますが、お客様から見たらコストがいくらかかったなんて知ったことではありません。 お客様にどのようなビジネスモデルで価値を提供していくかをまず決める。それを基準にして、「こうした価値が得られるなら、いくらぐらいは払ってもいい」と納得してもらえる価格を設定していく。この順番が理想です。 提供価値によっては価格を高く設定しても、お客様はお金を出してくれます。たとえば、「無農薬野菜なら高くても買う」という人もいれば、「カットされていて調理の時短ができるなら、高くても買う」という人もいるでしょう。 そういったことを考慮しながら、提供価値とビジネスモデルに合わせた価格を決めていきます(*)。*それに加えて、コピー機のように「最初の導入コストは安くして、メンテナンスコストを継続的に取る」、ネットサービスのように「最低限のサービスは無料で使えるけれども、高度なサービスは有料にする」など、〝回収の仕方〟でも価格設定が変わってきます。
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