環境分析によって得られる情報やデータは、いわば、外部の状況を理解するための材料だ。だが、社長としてより適切な判断を下すためには、それだけでは足りない。内部の状況についても当然、十二分に把握しておく必要がある。 自分の会社にはどんな人材がいるか。ビジネスに使える道具や設備としては、どんなものを持っているか。また、ビジネスの潤滑油とも言える資金は、どれくらいまで使うことができるか。 そういったことを常に把握しておかなければ、人手が足りないときに大きな仕事を引き受けたり、無理な設備投資をしたり、というような誤った判断を下してしまいかねない。 そこで、「環境分析」で外部環境を調べたら、その次には、「資源」を洗い出す作業が必要になる。自分が持ちうるすべての資源をリスト化し、その内容を把握するのだ。これを「資源出し」と呼ぶ。 なお、環境分析と資源出しの作業は、同時に行うのではなく、それぞれ別に行うのが正しい。 なぜなら同時に行うと、調べたばかりのマーケット(環境)に照らし合わせて資源を見たり、あるいは、手元の資源に見合ったマーケットを探そうとしたりして、それぞれの作業に偏りが出てしまうからだ。それでは多面的な視点に立った適切な環境分析ができなくなり、漏れなく抜けのない資源出しができなくなってしまう。 私が言う「資源」とは、価値を生み出す源泉となる、ありとあらゆるものを指す。だから、資源を数多く認識し、それらをうまく活用ができれば、たくさんの価値を生み出すことができるようになる。あとでも説明するが、資源は「所有」していなくてもいい。認識できて、活用できればいい。 資源には、「ヒト資源」「モノ資源」「カネ資源」の3つがある。一般的には、カネをたくさん持っている人がもてはやされがちだが、真に ROI(費用対効果)の高い資源はヒト資源だ。 なぜなら、すべての資源の使い手は、人間だからだ。モノも、カネも、それにヒトも、あらゆる資源は人によって動かされる。 さらに言えば、ヒト資源は汎用性が高い。あらゆる場面で価値を生み出すことが可能で、多様な価値を生み出すこともできる。モノは汎用性が限られ、カネは使ったらなくなるのが一般的だが、ヒトの価値には無限の可能性がある。時間とともに知識や経験の蓄積によって価値が上がっていくのが、ヒト資源の特徴だからだ。 そこで、資源出しにあたっては、まずヒト資源から洗い出す。具体的には、まずは人物を特定し、その人の知識、経験、実績、人柄、人脈など、わかっていることをすべて書き出してみる。それらが、そのヒト資源を構成する要素になる。 このとき忘れてはいけないのが、自分自身。あなたも重要な資源だ。その後で、自分の周りの認識できるすべての人を書き出す。スマートフォンやメールのアドレス帳に入っている人、 SNSでつながっている人などをひとりひとり特定し、同じように書き出してみる。 現時点では、実際にあなたの依頼を聞いてくれるかどうかは考慮しない。自分が認識できていて、何らかの手段で連絡が取れる人であれば、ヒト資源としてカウントしていい。 ヒトの次に大事なのが、モノ資源だ。モノ資源とは、ヒト資源とカネ資源以外のすべてのモノ、と思ってもらえればいい。自分が所有していなくても構わない。他人が持っている場合でも、自分が活用できる可能性がほんの少しでもあるモノは、すべて自分の資源として書き出す。 例えば、自宅の近くに雰囲気の良い公園があり、仕事で何らかの撮影に使ったり、人との打ち合わせなどにも使ったりできるようであれば、それも、あなたが使えるモノ資源としてリストに記載する。 また、モノには「有体物」と「無体物」がある。形あるモノ(有体物)だけでなく、データや情報、権利やノウハウといった、目に見えない形のないモノ(無体物)も、すべて資源として認識する。むしろ、無体物のほうが ROI(費用対効果)が高い場合も多いので、洗い出す際には特に意識してリストアップしてほしい。 最後にカネ資源だ。正しく現状を理解し、いつ・どれだけ使えるかを把握しておくことが重要になる。現金だけでなく、株式などの有価証券や不動産なども、それを現金に換算したらいくらになるかを確認して、カネ資源として、その価値を常に正確に把握しておく。 ちなみに不動産は、投資用として所有しているなら、基本的にはカネ資源として換算するが、モノとして使う場合と、それを換金したらいくらになるかの把握は必要だ。自宅やオフィスなど実際に使用している不動産なら、モノ資源として評価すると同時に、カネ資源としての側面も考えてみてほしい。
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