さて、ここまで「カネ」「ヒト」「モノ」と社長業にまつわる悩みを述べてきたなかで、非常に大事な言葉が何度か出てきました。「ミッション」「ビジョン」です。 会社を起業するにあたって、「どんなビジネスを始めるか」から考える人が多いのではないかと思います。 もちろん事業内容はとても大切です。しかし、私が多くの社長、企業を見てきたなかで、それより先にすべきだと感じることが、「ミッション」や「ビジョン」を決めることです。 ミッションとは、「何のために自分たちの会社が存在しているのか」という使命や存在意義のこと。 ビジョンとは、「将来、自分たちの会社がどのような姿になることを目指すのか」という実現したい将来像のことです。 最近はミッションやビジョンと似た意味で「パーパス」という言葉もよく使われますが、ラベリングの話はあまり本質的とは言えません。 要は、「この会社は何のためにあるのか」「創業者はなぜ起業したのか」を最初にはっきりさせたほうが良いということです。「ミッションやビジョンなんてあくまで理想であり、そんなに必要なのか。それより儲かるビジネスを考えることが先ではないか」。そう言う人もいるかもしれません。 実際、ミッションやビジョンは後回しにして、あくまでビジネスの観点から見て、起業のネタを探そうとする起業家は少なからずいます。「今はこのようなニーズが高まっているから、それに応えるビジネスを始めれば儲かるはず」というわけですね。 たしかに、世の中のニーズに応えるビジネスを始めれば、一時的にはうまくいくこともあります。しかし、ミッションやビジョンを真剣に考えることなく稼ぎだけを追い求めているスタートアップは一定の成長を遂げると伸び悩む、というのが、数々のスタートアップを見てきた私の実感です。 伸び悩む理由はだいたい共通しています。 まず、明確なミッションやビジョンがないために、何を意思決定するにしても拠り所がないということ。 事業計画も資金計画も採用計画も、企業の存在意義や実現したい将来像なしには決められません。決められたとしても、なんとなく決めることになるので、経営に一貫性がなくなってしまいます。 また、当然ながら、適当なミッションやビジョンしかない組織に、人は共感しづらいですし、ついていきたいと思いません。入社してもすぐに離反していくでしょう。 世の中には就職先の選択肢が無限にあります。そのなかで、あえて不安定なスタートアップや中小企業に入ろうとするのは、その会社が本気で「こういうことを実現していきたい」というミッションやビジョンを持っていて、それに共感しているからです。そうした人材を獲得するためにも、ミッションやビジョンが必要不可欠だと私は感じています。 顧客もそうです。もちろん、ミッションにお金を払うわけではないですが、会社の思想に共感いただけると、そのお客様は会社にとって大事なファンになります。
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