社員が失敗するとひどく怒る社長は少なくありません。
特に、すでに先行投資をしており、失敗が金銭的なダメージを伴う場合は、「お陰で大損だ。取り返すのにいくら売ればいいかわかっているのか!」などということまで口にする社長も珍しくないでしょう。
しかし、これまで大成功してきた人のなかで、失敗をしなかったという人はいないはずです。世界市場で大成功を収めたユニクロの経営者・柳井 正氏もこういっています。
「僕はずっと失敗してきた。いままでどのビジネスでも 1勝 9敗くらい。唯一成功したのがユニクロです」 近年でも、ユニクロは「野菜」の生産・販売に乗り出し、 2年間で 28億円の赤字を出して、あっさり撤退しています。
失敗の原因は、野菜を安定供給できなかったり、在庫管理が思いのほか難しかったことなどだそうです。
柳井さんの経営哲学は、「致命的にならないかぎり、失敗はしてもいい。やってみないとわからない。行動する前に考えてもムダです。行動して修正すればいい」 という言葉に集約されています。
私の顧問先の企業にも、柳井さんのような社長がいます。
社員が新しいアイディアをもってくると、その社員と議論を尽くし、少しでも芽があると判断すると、「とにかくやってみろ。予算は〇〇円までなら OKだ。好きなように使っていいから」とちゃんと予算もつけて、社員の背中を強く押します。
社長の肚のなかには、いまの体力なら、ここまでの損金ならカバーできるという読みがちゃんとあるのです。
こうした読みができるのは、常に会社の数字が頭に入っているから、であることはいうまでもありません。
❖失敗から学ぶ学問を体系化した学会もある
失敗しないというと、いかにも堅実経営で優秀な企業だという印象がありますが、実際は「失敗しない」ことは「何もチャレンジしていない」ことに他なりません。
失敗しないことは、退歩に向かう兆候だといってもいいくらいです。逆に考えれば、失敗は前向きの行動です。そのうえ失敗には多くの学ぶべきことが潜んでいます。
失敗は将来に向けての進化や新たな価値を創造するときには欠かせないといってもいいほど重要なものなのです。
こうした考えから、失敗学という学問領域をつくり上げた研究者もいます。
畑村洋太郎東大名誉教授は専門の機械工学を学生たちに教える過程で、過去の失敗から学ぶ姿勢が研究や開発にどれほど大切なことであるかに気づき、 2002年、「失敗学会」を設立。
失敗から何を、どう学ぶべきかを理論的に考証しています。
❖失敗を受け入れ、前向きの力にしていく
いまは、かつてないほど社会の進化がめまぐるしく、昨日の成功、今日の勝利が明日も通用するとはかぎりません。
むしろ、明日はまた新たなビジネスが市場を席捲する。
そう考えていなければ、気がついたときには現在、会社を支えている屋台骨のビジネスは古くさくなってしまい、市場価値を失ってしまっているかもしれません。
こういう時代に必要なのは、失敗を恐れることなく、積極的にチャレンジを続け、将来に続く道を切り拓いていこうとする勇気と寛容さです。
もちろん、失敗は失敗。
いくらでも失敗していいというわけにはいきません。
万全を尽くしたのだが失敗してしまった。
そうした失敗であれば、それをただの失敗に終わらせず、なぜ、失敗したのかをよく見つめ、分析し、次に進む一歩のために生かすのです。
そういう失敗ならば、胸を張って「失敗で失ったお金は次の効果的な一歩のための前向きの投資だ」といえるのではないでしょうか。
▼失敗のコストは会社の将来に向けた先行投資の一部。社員が失敗したら、むしろ大いに喜ぶ寛容さをもつ。
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