相談者のなかには、「うちの経営はきわめて順調で、銀行(金融機関)からの借入は 1銭もありません」と誇らしげにいう方がよくいます。
「それなら、なぜ、相談に見えたのですか?」と皮肉をいいたくなりますが、実際は、私はひそかに「今日、相談にきてよかったですね」と胸をなでおろしています。
「銀行から 1円も借りていない」ということは、この会社は銀行との関係がないということです。これまで、それでやってこられたのはただ運がよかっただけ。
事業をしていれば、取引先が倒産することもあれば、地震や大型台風などの自然災害に見舞われることもあり、まったく予想していなかった被害、経営のミスでもなんでもない、でも、どうしようもない損害を出すことだってあり得ます。
災害のときならば、保険金や公的な措置で、事業の立て直しは図れるかもしれません。
しかし、つなぎ資金はどうするのでしょうか? もっとリスキーなのは、取引先の倒産のあおりで、こちらまで資金繰りに窮する事態に陥ることです。
大きな企業が倒産するとその余波に巻き込まれ、最悪の場合には連鎖倒産に追い込まれる中小企業がどれほどたくさんあるか、想像してみてください。
こういうとき、それまでつき合いのある銀行ならば緊急融資を考えてくれるはずです。無借金経営は、そうしたときに頼れる銀行をもっていないということに他なりません。だから、「無借金経営ほど危ない」のだという現実に気づかなければいけないのです。
❖銀行は見ず知らずの会社にお金は貸さない
ここまでお話ししても、まだ、「うちの経営状態は上々だから、いつでも銀行はお金を貸してくれるはずだ」と思い込んでいる経営者もたくさんいます。
経営者であり、社長と名乗っていながら、銀行がどういうところなのか、まったく理解していないのです。銀行が重視するのは、それまでの融資実績、というよりも、貸したお金をきちんと返してきたかどうか。つまり返済実績です。
百歩譲って、きわめて経営状態が良好で、銀行から見ても新規の取引先として積極的に融資したいような企業だとしましょう。
それでも、新規の融資を検討するにはそれなりの資料を用意してくださいといいます。最低でも 3期分の決算書、ほかにもいろんな資料を要求するはずです。
社長個人についてもカードの事故歴や税金を滞納しているなどがあれば融資はアウトです。緊急にお金が必要なときにそれらを調べて結論が出るのを待っている時間の余裕はないでしょう。
そのときになってあわてても手遅れです。
❖好調なときこそ、積極的に融資を受けて事業拡大を目指す 経営状態が絶好調なら、こうしたときこそ、融資を受けるビッグチャンスだと考えるべきです。
日本人はなぜか、融資を受ける、借金をすることをネガティブにとらえがちです。
一方、海外では、融資を受けることは、それだけビジネスが評価されたのだとか、自分を信用してもらえた結果だと、大いにポジティブに受け止めます。
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズは PCの開発に天才的な才能をもつと同時に、借金することにも素晴らしい手腕をもっていたと伝えられています。
経営が順調なときならば、初めて融資を申し込んでも、かなりの確率で「 OK」となり、融資を受けられるはずです。
その融資を約束どおり、きっちり返済して銀行と良好な関係を構築しておくべきです。
前書でも申し上げましたが、あらためて、無借金ではなく、良質な借金経営こそ、中小企業が目指すべき経営のあり方なのだということを肝に銘じてください。
▼「無借金経営」よりも、銀行から適正規模の融資を受けて取引実績をつくり、いざというとき、すぐに融資してもらえる態勢を整えることのほうが重要。
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