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会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、最後の 1円まで、お金は前向きなことだけに使っている。

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まえがき

会社は、どんなことがあってもつぶしてはいけない。倒産だけはしない。これが私を貫いている信念です。

どんなに高い理想を描いて起業したとしても、社長になったそのときから、社長は「会社を倒産させないこと」という使命を背負うことになったのだと自覚してください。

倒産してしまったら、高い理想も、輝やかしい理念も地に落ち、打ち砕かれてしまいます。同時に、社長の人生も崩壊し、ほぼ再起不能です。

家族の暮らしも大きく揺らぎ、みなの人生の行く先も不透明になってしまいます。

私は、そうした悲劇を 1件でも少なくしたいと、中小企業を対象に、「絶対に倒産させないためにどういう経営をすればいいか」についての経営相談にあたっています。

経営とは、お金を集め、使い回し、利益を出して残し、そのお金を新たに使い回しながら事業を大きく育てていくことです。

私が、「絶対に倒産しないための」経営相談を始めようと思ったきっかけは、ほかならぬ私自身が、いつ倒産してもおかしくないほどの絶体絶命の経営危機と、長い間、戦った経験をしたことでした。

私は、父が創業した三條コーポレーションの二代目として、神戸の三宮一帯で手広く、貸しビル業と飲食業を展開していました。

事業は順調に拡大していき、地域ナンバー 1企業となり、繁栄を謳歌していたのです。

しかし、 1995年1月、阪神・淡路大震災で被災。

事業は一気に傾き、総額 140億円という巨額な負債を背負い込んでしまいました。

これほどの危機に立ちながら、私は、「どんなことがあっても会社は倒産させない。なんとしても家族の生活は守る」を不動の信念として戦い続け、ついに、 140億円を返済し、完全復活を遂げました。

しかも個人資産もしっかり守り抜いたのです。気がつけば 8年という歳月が流れていました。この間の戦いは凄絶の一言でした。

返済までの道で私は心身ともにボロボロになり、何度となく、いっそ死んだほうが楽だろうと思ったくらいです。

しかし、ついに借金を返し終わったそのとき、これまで味わったことがないほど晴れやかで、清々しい気分を味わっていました。

同時に、 1人でも多くの社長・経営者たちにこの気分を味わってもらいたい。絶体絶命のところからでも倒産しない道はあると伝えたいという気持ちが、強く湧きあがってくるのを感じていました。

その気持ちを生かして、その後、私が選んだのは、中小企業の経営者の経営上の悩み相談にお応えし、事業を育てていく後押しをするといういまの仕事です。

経営アドバイザーとして独立してから今日までに、約 1300人の経営者の相談にのってきました。

なかには、明日にも倒産しそうな会社もあり、しかし、そうした方のご相談に全力で応じた結果、倒産をまぬがれ、いまでは順調に業績を伸ばし始めた企業も少なくありません。

上場を目指そうと意気込んでいる企業もあります。

私は実際に、自分自身が中小企業を経営した体験をもっています。

災害をこうむったことからとはいえ、経営がうまくいかなくなり、 140億円という借金を返済する過程で、大手銀行、地方銀行、信用金庫など様々な金融機関と真っ向勝負をしてきた経験を積んできています。

だからこそ、中小企業の経営者たちの悩みを真に理解することもできれば、正攻法から驚くような裏技まで、実際に、困難な局面を乗り切っていく、現実的な方法をアドバイスすることができるのだと自信をもっています。

「そのような方法があるのですね」「そんなやり方は考えてもいなかった」など、その社長が考えている範疇を超える知恵や創意工夫などが一瞬にひらめくことによって感動してもらえ、話を真剣に聞いてくれるのです。

だから、ここまでやってこられたのでしょう。日本広しといえども、私のような経営アドバイザーはほかにいないと思います。胸を張って、私はこういえます。

もちろん、優秀な経営コンサルタントはたくさんおられるでしょう。でも、彼らの多くは大学院や経済研究所などで得た、いわば机上の知恵を提供されています。

実際の経営経験、借金と戦った経験のない人に、現実に即したアドバイスができるはずはありません。多くの社長から私のアドバイスは説得力があり、「実際に先生のアドバイスどおりにした結果、危機をまぬがれた。本当に感謝している」といっていただいているのは、とてもうれしいことだと思っています。

そのノウハウやアドバイスをまとめた前書『社長の基本』(かんき出版)ほか、これまで出版した著作はお陰で好評で、多くは版を重ねており、読者から感謝の手紙やメールなども何千通もいただいています。

しかし、本を読んで相談にこられたといいながら、まだまだ、中小企業の経営について、あまい考えから抜け出していなかったり、今日明日乗り切れればなんとかなると先の展望をもたないまま、駆けずり回ったりしている方が少なくないのが実情です。

そうした社長さんをなくしたい。少なくとも私とご縁があった経営者を倒産だけはさせたくない。さらに一歩踏み出して、厳しい状況のなかでもどんどん事業を発展させていく、そんな経営者へと変わってほしい。そんな思いを込めてまとめたのが本書です。

はっきりいえば、経営とはお金を上手に扱うことに尽きる。

私はそう、考えています。

本書は、経営のキモである「お金」に的を絞り込み、社長として心得ておくべき、お金についての考え方、お金を使う、集める等のノウハウについて書いています。

さらに銀行(金融機関)との上手なつき合い方、もっといえば銀行の〝利用法〟についての秘策まで、私が命がけで身につけた知識、そして多くの相談者との対話から知恵を絞って得たテクニックをあますところなく書き込んであります。

本書は、 2017年に出版した『社長の基本』に次ぐ、中小企業の経営者に向けた書の第 2弾です。

本書をお読みいただけば、お金に関する社長の心得はわかっていただけるはずです。

さらに、『社長の基本』も合わせてお読みいただくと、経営者としての心得をより広く、細部にわたって身につけていただけると思います。

もう一度、申し上げましょう。

経営とはお金をどう回していくか。この一言に尽きます。お金が回らなくなったら、会社は終わりです。そうならないために、あらゆる知恵と策を講じるのが社長の仕事です。

そのことをしっかり自覚して、本書をお読みください。

本書が、あなたを「会社を倒産させない社長」に変貌させるためのお役に立てば、著者として冥利に尽きます。

2019年2月三條慶八

社長のお金の基本・ Ⅰお金の使い方

会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、最後の 1円まで、お金は前向きなことだけに使っている。

「会社を始めてしばらくは何もかも絶好調で、社長業は天職だと思い込んでいました」 ある日、相談に見えた社長は笑顔でこう話し始めました。

でも、笑顔だったのは最初だけ。

正直な話、私のところに相談にこられる社長は、いまは順調だが、将来に危機を感じて先手を打ちたいとこられる社長もいますが、ほとんどはなんらかの問題を抱えた方です。

私はあんのじょう、と思いながら、話の行方に耳を傾けていました。

3年ほど前に、居酒屋と飯どころを合体させたビジネスを始め、最初は飛ぶ鳥を落とす勢い、売上はぐんぐん伸びていき、 1年前に相談にきたときはまず 2号店を出し、以後はチェーン展開をしていきたいと鼻息の荒い話を元気よく語っていました。

ところが今回は、「もうきつくて、きつくて。毎月、家賃などの経費と給料を支払うのがやっと。もう倒産も覚悟していますわ」というのです。

突然、風向きが変わったのは、近所に全国チェーンの居酒屋が出店したことからです。

最近の居酒屋は食事のメニューも充実していて、業態は相談者のところとほとんど同じ。

でも、全国チェーンのほうが知名度が高く、価格も低めです。これではひとたまりもなく、相談者の店の売上は急坂を転がるように落ちていってしまったのです。こうしたケースはあらゆる業界で、全国いたるところで起こっています。

どの業界も激しい競争が繰り広げられていて、その結果、敗者も出れば、もちろん勝者もいます。しかし、概して中小企業は後手に回り、苦しむケースのほうが多いのです。

私はこの社長にいくつかのアイディアを出し、それらを実施するためにどのくらい投資できるかと話を進めようとしたところ、社長はなんと、「実は、もうダメじゃないかと思っているんですよね。相手は全国チェーンですし。倒産に追い込まれるのは目に見えていると肚はくくっているんです。まだ金は少々ありますから、店を閉めるときに従業員に多少の退職金は渡せますし……」と言い出すではありませんか。

ここまで聞いて、実は私は、この社長はもう終わりだなと引導を渡したくなっていました。

前書の冒頭に、私はこう書きました。

経営者にとって一番大事なことは、「どんなことがあっても会社はつぶさない」と肚を決めていることです、と。

その流れでいえば、「倒産に追い込まれると肚をくくっている」というこの社長は、もうその段階で〝死に体〟です。

でも、その場合、従業員に多少のお金を渡したいという言葉には彼なりの誠意が感じられます。

そこで、私はこう提案しました。

「お店に新たな魅力を出す工夫を考えて、いま手元に残っている資金を投じて、もう一勝負してみませんか?」 そしてその後何回も相談を繰り返し、徹底的にご当地にこだわった店づくりを進めることにしました。

店内にお祭り屋台を設け、メニューもその地方のおふくろの味主体のものに変えるなど、店内は地域のお祭りの日のような雰囲気の演出に一変させました。

ご当地にこだわった転換は予想以上に受け、店は息を吹き返し、いまでは全国チェーンのほうが青息吐息だというウワサが聞こえてくるほどです。

倒産も覚悟。

そのときには従業員に多少の退職金を、と用意していたお金を新路線実現のためにと前向きに使ったことがきっかけになって、この店は息を吹き返したのです。

どんな場合もお金は前向きに使うべきだともお話ししました。しっかりした経営計画があれば、銀行を動かすこともできるはずです。銀行からお金を引き出して、さらに大きな投資を行う。

同じ肚をくくるなら、倒産ではなく、どん底からでも絶対に再興するぞと肚をくくってほしいと強く願っています。

従業員だって、わずかな退職金をもらって職を失うよりも、会社が元気を取り戻し、働き続けることができるほうがずっとうれしいはずです。

▼お金はもっと発展するため、新商品・新展開を実現するためなど、前向きに使う。

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