「棺桶型社会」。強烈なインパクトを感じる言葉です。この言葉は、少子高齢化がすさまじい勢いで進行している日本社会の人口構成を意味するもの。
かつては若い人口が多く、高齢になるにつれて人口が減っていくピラミッド型だったのに、現在では、高齢者層が厚く大きく、若くなるにつれて人口が減少しています。
その様子をグラフにすると、欧米で使われる逆長三角形の棺の形になる。
それが「棺桶型社会」と呼ばれる日本の実情です。
最近、地方の企業の顧問先の相談を受けると、不安なことを予期してしまう私は、この後、どんな方向を目指していけば活路が開けるのか、考え込んでしまうことがあります。
大企業 vs.中小企業の厳しい戦い。
地方ではそれに加えて、地方社会の衰退というもう1つのシリアスな課題と向かい合わなければいけないのです。
少子高齢化により市場のパイが年々小さくなる現象は、地方ではより深刻化しています。
しかし、どんなに厳しいなかにも活路は必ずあります。
私は、得意先と一緒に、活路を見出すためにギリギリまで頭を絞り、最後の 1滴まで知恵を出し合って話し合いを続けることを繰り返しています。
そうして見えてきた1つの答えが、手間暇を惜しまず、人の心に訴えかけるというビジネス手法です。
❖徹底的なまでにきめ細かなサービスで顧客を取りこぼさない
家電市場では量販店が市場を席捲し、小さな街の電器屋は苦境に立たされています。
しかし、ある得意先は、いまも売上をキープ。しかも定価販売です。
この社長は、「自分の店の商圏のお客は 1人たりと取りこぼさない」という方針を立て、地道にそれを実践しています。
具体的には、電球 1個、電池 1個でも配達し、交換まで行っています。そのついでに、「この間の洗濯機の具合はどう?」とか、「エアコン、古くなったね。最近はいいのが出ているよ」とか「おじいちゃんに電気肩掛けを買ってあげたら?」などと新規の購入を導き出すことも忘れません。
そのきめ細かなサービスと、まるで親戚のお兄ちゃんのような親しい話し方、家族への気配りが、この店の安定的な商売を支えているのです。
東京の木挽町にある老舗和菓子店は、家紋入りの焼き菓子を特注でつくり、人気を得ています。焼き印をつくってお店に預けておくというアイディアがお客の「特別感をくすぐる」のでしょう。店で預かっている焼き印は増える一方だそうです。
新橋にある飲み屋は古いビルの地下という立地にもかかわらず、いつも満員。
この店には全国の高校の寄せ書きノートがなんと 3000冊近くも置いてあり、それを目当てに、故郷の母校を懐かしむお客が足しげく通ってくるのです。
こんなめんどうなことを、めんどうくさがらずに地道にやっている、そんな会社は経営難の 3文字とは無関係な経営を続けています。
❖手間暇をかけることで出版不況と戦っている書店
出版も不況に悩む業界の1つです。
街から書店が消えていく様子は珍しくなく、私の周辺でも、ふと気づくと、それまで大きな書店だったところがカフェやドラッグストアに変わっている例をいくつも見かけます。
そんななかで、めんどうな手間暇をかけることで 3000人の固定客をがっちりつかみ、安定的な経営軌道にのせた書店があります。
「いわた書店」は北海道の砂川町にある小さな書店で、以前はご多分にもれず、売上減少に四苦八苦していました。
しかし、店主は、「書店のプロとしてのスキルで勝負できないだろうか」と考え、「 1万円選書」というサービスを思いつきました。
お客はいくつかのアンケートに答え、同時に 1万円を払い込みます。
そのアンケート結果(カルテと呼ばれている)に基づいて、店主がそのお客さん 1人のために、おすすめの本を約 1万円分選んで届けるのです。
もともと「売れる本」ではなく「売りたい本」を置くようにしていたという心底本を愛する岩田さんだからこそ、思いついたアイディアといえるでしょう。
このサービスは口コミで広がっていき、ついには NHKが『プロフェッショナル仕事の流儀』でとり上げるまでに。
「運命の 1冊、あなたのもとへ ~書店店主・岩田徹」が放送されると評判はさらに高まり、いまでは「 1万円選書」は抽選で当選した人限定、という人気ぶりです。
アンケートは A 4用紙 3枚におよぶ詳細なもの。
これを書くことで自分を見つめなおす機会を得たという感想も多いといいます。
さらに、送られてくる本には岩田さんからの手紙も添えられており、それがお客に新たな感動を呼んでいます。
カルテを読み、そこから見知らぬお客の思い出や人間性を読み取って本を選んでいく、店主の手間暇がどれほどのものであるかを思うと、その努力と、本に対する愛情に強く胸を打たれます。
届く本は多彩で、ふだん、自分では手にとらないようなジャンルの本も含まれていることが多く、そこから新たな本との出会いを提供するという効果もあります。
めんどうくさいから、手間暇がかかるから……と尻込みするばかりでは、会社の将来は開けていきません。むしろ、人がいやがるめんどうくさいところに積極的にお金を使ってみましょう。
その思いきった戦略が活路を開く。こうした戦略はほかにもいろいろあるはずです。
▼会社の生き残りをかけた戦略には、手間暇、お金を惜しまずに使う。そうして活路を開いていかなければ、会社の存続さえ危うくなる。
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