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会社をつぶさずに、お金を回せる社長は、創業理念を貫く姿勢が揺らぐことがない。

日本は世界一の老舗大国です。

東京商工リサーチの調査( 2016年)によると、 2017年に創業 100年以上になる老舗企業はなんと 3万社以上。

最古の企業は寺社建築の ㈱金剛組(大阪府)で、創業は 578年。

次いで、 587年創業の池坊華道会(京都府)、 705年創業の ㈲西山温泉慶雲館(山梨県)と続きます。

こうした古参中の古参企業は別格としても、江戸時代から続く企業が 4164社、明治時代に創業した企業は 2万 1773社と、いずれにしても長い歴史を誇る企業が多いことにはあらためて驚きます。

なぜ、こんなにも長い期間、会社を存続してこられたのか。

「大企業で、しっかりした経営基盤があるからではないか」。

そう思う人も多いでしょうが、歴史の長い老舗企業の内訳を見ると、年商 5億円未満が 6割強、従業員数 10人未満が約 5割と、大半は中小企業であることがわかります。

❖時代の荒波をくぐって生き延びてきた理由は「創業理念を貫く姿勢」 明治以降だけを考えても、時代は激しく変化してきています。

特に、昭和に入ってからの戦争、しかも大敗に終わった戦争の影響は計り知れないものがあったでしょう。

私は阪神・淡路大震災でひどい状況に立たされましたが、老舗の多くは、おそらくそれ以上の激変、激動を乗り越えて今日まで事業を続けてきたわけです。

有名なところでは、三越は江戸時代の約 340年前の創業時は呉服商。

創業者・三井高利(通称、八郎兵衛)は店先現金商売や反物の切り売りなど、当時では考えられなかった商法を次々取り入れ、店は大繁盛。

高利の理念は「常にお客様第一」でした。

明治に入り、三井呉服店、三越呉服店、三越百貨店と名前と業態を徐々に変化させながらも、「常にお客様第一」という経営理念は不動だったのです。

❖老舗だから、とあぐらをかいていられる時代は終わった しかし、その三越さえ、現在は徐々に支店の閉鎖を進めるなど苦しい状況に立っています。

最大の理由は時代の大きなうねり。

現在、販売業にはネット購入という、産業革命以来といわれるほどの大きな変革が進んでいます。

そこに、少子高齢化という、これもかつて想像さえしたことがなかった構造変化が重なっています。

こうした歴史的な変化は、規模の大小に関係なく、すべての企業の足元をひたひたと脅かせています。

私のところにも、老舗企業の経営者が多数、相談に見えます。

あるとき相談にみえた企業は、 100年の伝統を誇る老舗企業です。

繊維関係を扱ってきておられ、これまでは老舗のブランドで大した苦労もなく、はっきりいえば、それほど努力をしなくても売上も、利益もそれなりに確保できてきました。

長年の間に資産もたっぷり残してきており、ちょっとやそっとのことではビクともしないとタカをくくっていたようです。

しかし、この会社は大手企業の下請け。

これまではロットの多い商売をしてきたのでそれなりに利益を確保してこられたのですが、近年は発注先の大手企業もシビアになってきて価格を叩かれ、発注数も激減というダブルパンチをくらっています。

現在は、長年蓄えてきた資産を食いつぶしているのが実情です。

しかし、社長には、現状のビジネスモデル、つまり、大手にべったり依存した下請けではダメだという意識はないようです。

資産はやがて枯渇していき、その先に待っているのは破たん、倒産です。

私は社長に会うたびに、下請けのコスト競争はさらに熾烈化していく。

発注先はどんどん海外企業に流れていく。

いまのままでは現状維持さえむずかしい。

生存競争に打ち勝つには大手企業頼りではなく、自社のブランドをつくり、下請け事業から脱却しないと利益を確保することはできない時代だ、と話し続けています。

❖内視鏡手術のトレーニング器を開発して大ヒット K技研は従業員 16人の典型的な町工場。

現社長の父親が 40年ほど前に創業。

「これだけは絶対に他社に負けないという技術があるわけではなく、ものづくり全般のノウハウを蓄積してきたので、要望されたらなんでもつくる。

それがうちの売りだった」、そんな会社でした。

しかし、現社長は父の時代とは明らかに吹く風が変わってきたことを感じ取っていました。

「これからは、うちでなければつくれない、というもので勝負していかないとダメだ」と考え、懸命に自社独自の商品づくりにチャレンジしたのです。

K技研の強みは極薄の金属板を製造できること。

たまたま、医療機器の会社に勤める知人から、「腹腔鏡手術に使う練習器具が 1台数十万円とめちゃくちゃ高い。

そこで、ドクターたちはホームセンターで材料を買ってきて自分でつくったもので練習している」と聞いてさっそく現物を見せてもらったところ、「これならうちの技術でできる。

コストも大幅にダウンできる」と確信。

すぐに開発を始めて、手術用トレーニング器を完成。

価格はなんと、それまでのトレーニング器の 10分の 1以下という画期的なものでした。

ウェブサイトから医師にダイレクトに販売することで販売コストも最小限におさえ、さらにドクターからの生の意見を聞く機会も得て、手術用トレーニング器はさらに進化し続けているそうです。

お陰で目が覚めた、という社長 下請けオンリーだった金属加工工場からオリジナルな手術用トレーニング器のメーカーへと変身を遂げた K技研の話を聞いた老舗企業の社長は、ようやく私の話に本気で向き合う気になってくれました。

その企業だけのオリジナル製品をもつと価格決定権も手中にするので、買い叩かれることがなくなり、適正な利益率を確保できます。

これが大きいのです。

発注先の事情に振り回されずに、安定した経営ができるようになるからです。

もともと社長の息子として何不自由なく育てられ、今日まで、人生の苦労らしい苦労を知らない人です。

その分、素直で、「わかった」となれば即、行動に移す実行力をもっています。

「これまで、いままでどおりやっていけばなんとかなると考えていたんですが、それではあまいんですね。

目が覚めました。

これからは心を入れ替えて、なんとかわが社オリジナルの製品を開発して、下請けから脱却するためにがんばります」というではありませんか。

本気モードに入ればもう大丈夫。

もともと経営基盤はしっかりしている会社ですし、まだ、ストック資産も残っています。

この会社は今後、がらりと変貌を遂げて大きく飛躍していくだろうと、私は大いに楽しみにしています。

▼会社を長く存続させていくのに必要なのは、常に変革する気持ちを忘れないこと。

自社ならではのオリジナリティをもつこと。

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