はじめに 経営書を読んだり経営セミナーに参加したりすると必ず出てくるのが、「競争条件が不利な会社は経営の大事なところを『差別化』し、自社独自の経営をしないと業績を良くすることはできない」という説明です。 差別化の必要性が、雑誌や経営書で説明されるようになったのは 1972年頃からなので、すでに 40年もたっています。今では新入社員でも知っていることでしょう。 ところが実際には、有効な差別化対策を実行し、業績が良くなっている中小企業はごくわずかで、ほとんどの会社では経営の差別化ができていません。それどころか、経営規模は小さいのに、強い会社のマネをしてひどい結果になっている会社がとても多く見られます。 従業員 100人以下の会社で、経営システムをつくる役割を担っているのは間違いなく社長です。しかも従業員 100人以下の会社では、業績の 96%が社長 1人の戦略実力で決まります。 ですから、競争条件が不利な会社が差別化した経営システムをつくって業績を上げるには、まず社長が経営戦略の研究にしっかりと取り組み、自分自身の戦略実力を同業者の中でトップクラスに高めなければなりません。 しかし社長としての「素質」が特別高いとはいえない人が、多数の競争相手がいる中で戦略実力をトップクラスに高めるには、経営戦略の学習方法そのものを差別化しなければなりません。 差別化力がある経営システムをつくれるかどうかは「結果」であって、その「結果」は、学習方法をどれくらい差別化できるかで決まるのです。 従業員教育の必要性ややり方については、あちこちでセミナーが催され、本もヤマほど出版されています。ところが中小企業の社長を対象にした、差別化力を発揮するための学習方法を説明するセミナーや本は、なかなか見当たりません。 仮にあっても、内容は大企業の事例が多く、企業数で 98%を占める従業員 100人以下の会社の社長を対象にしたものは非常に少ないのが現実です。これでは良い経営ができません。 これに疑問を感じて取り組んだのが本書です。 全体の構成は、「学習成果の公式」をもとにして、重要な項目ごとに分けています。 博多特産の辛子めんたいこ同様、かなり辛口の内容になっていますが、自分の戦略実力を高めて会社の業績を上げたいと、本気で考えている向上心の高い社長には、必ず役立つはずです。 本書を参考に、すごい戦略実力をもった社長に率いられた成長企業が 1社でも増えれば、これに勝る喜びはありません。
1経営のシステムをつくらなければ会社はうまくいかない会社は全て歩合給 会社には、結果を出せなくても入ってくるような、決まった収入はありません。人間でいえば、固定給なしの歩合給で働いているようなものです。 しかも、どんな業界にもたくさんの競争相手がいて、その中に大きくて強い会社が何社もあるのに、ゴルフや囲碁のようにハンディはいっさいありません。 経営規模が小さいなど競争条件が不利な会社が「特別な対策」をとらなければ、強い会社からの圧力で苦戦するに決まっています。苦戦して赤字になり、資金繰りが悪くなったとしても、政府はもちろんのこと銀行も助けてはくれません。 このように、経営は完全な実力主義の世界です。だから、もともと物事に積極的で、しかも自分の「戦略実力」を高めて立派な社長になりたいという向上心がある人以外、社長になるべきではないのです。 こうした厳しい現実の中で、社歴が浅かったり、業界でのランクが中以下にあるような競争条件が不利な会社は、まず強い会社とは違った考え方で経営システムをつくり、運営をしていかなければなりません。 不利な条件にある会社が「違った考え方」で経営を進めることで、強い会社から受ける経営上の圧迫を減らし、業績の向上をはかっていく――これが「経営の差別化」です。 競争条件が不利な会社の業績がどうなるかは、経営の大事なところがどれだけ差別化されているか、によって決まるのです。 この、「経営の差別化」の重要性を最初に指摘したのは、天才コンサルタントのドラッカーでした。 ドラッカーは 1964年、東京でオリンピックが開催された年の6月に日本で翻訳出版された、『創造する経営者』の第 7章「知識が事業である」の始めのところで、差別化について次のように述べています。「経済的な業績は差別化の結果である。差別化の源泉、および事業の存続と成長の源泉は、企業の中の人たちが保有する独自の知識である」 この、「事業の存続と成長の源泉は、企業の中の人たちが保有する独自の知識である」という短い文章の中には、たいへん重要な教訓が含まれています。
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