会社に明確な目的・目標があって、常にそれに向かう判断を下すことができていれば、それで万事 OKかと問われれば、実はそうではない。会社の目的よりも優先させなければいけないものがある。それは、社長個人の目的だ。 会社の目的を決める前に、まず社長自身の「人生の目的」を明確にしておかなければならない。なぜなら、社長という仕事も、社長本人の人生の目的を果たす手段の一つにすぎないからだ。 まずは、個人の目的ありき。ビジネスを成功させること、会社を大きくすることではなく、ビジネスや会社経営を通して人生を豊かにすることこそが、社長たるあなたの真の目的のはずだ。それは、オーナー社長でも、雇われ社長でも、同じだ。 何のために社長をやっているのか。何を得たくてビジネスをやっているのか。なぜ自分で会社を立ち上げたのか。あるいは、なぜ自分で会社を持たずに雇われているのか。 それらを明確にしておかなければ、会社としての目的は果たしたものの、社長自身は不幸になってしまった……という悲劇を招きかねないのだが、これもまた残念ながら、よくある話なのだ。むしろ、ほとんどの社長が何かしらこの罠に掛かっていると言ってもいい。 成功している会社の社長で、個人としての幸せも同時に手に入れることができている人は、現実的にはかなり少ない。それは、目先の社長業に追われ、自分自身の人生の目的が、ビジネスよりも上位にあるという真理を忘れてしまったからに他ならない。
個人の人生においても、当然、目的と目標は別物だ。わかりやすく言うなら、目的を叶えた先にあるのが「幸せ」であり、目標の達成は「成功」だ。 社長として成功はしているが、実生活における幸せは手に入れられていない、そんな社長は多い。睡眠不足や運動不足で健康とは言えない生活をしていたり、趣味も仕事や接待などとセットになって、本当の意味での自分のやりたいことに十分な時間を割けていなかったりする。 また、いつ何があるかわからない不安から、好きなときに好きな場所に好きなだけ旅をすることができなかったり、社長業が忙しいことを言い訳に大切な人との時間すら十分に満喫できなかったりする。 もちろん、何をもって「幸せ」と感じるかは人それぞれなので、外側から計測できるものではない。一方、「成功」は、年商や会社の規模など、一定の尺度で測ることができる。要するに、わかりやすい。だから多くの社長は、成功に気を取られ、幸せにまで意識が向いていない。 しかし、そもそも自分の幸せが何なのかを明確にわかっていない社長が多いのも事実だ。そして、その答えを探すよりも目の前の成功を目指したほうが手っ取り早く、かつ楽なので、そうやって仕事に逃げ込んでいるのだろう。 目の前には常に「成功」という名の目標があり、そこを目指してひた走っている。少しでも早くそこに近づこうと、プライベートを壊してでも走り続けようとする。その結果、たしかに成功はするかもしれないが、「幸せ」という目的は叶えられない──悲しいかな、これが多くの社長の現実でもある。あなたの判断を下支えするもの 年収 1億円のために、肉体を酷使し、趣味の時間を削り、家族にはストレスを強いて、子供の成長にも関与せず、時には人間関係までも壊しながら、目標に向かう。だが、その 1億円で家や車は買えても、健康な身体や、笑顔が絶えない家庭を買うことはできない。結果、成功しても幸せにはなれない。 他人の目には大きな成功を手にしているように見えても、本人は、そこまでの過程で捨てたものに見合うだけの幸せを手に入れていない。むしろ以前よりも不幸になって、取り返しがつかないことをしてしまった……そう嘆く成功者は、実は世の中に多い。 目標に向けて突き進むことももちろん大切だが、それ以上に、目的を意識することが非常に重要だ。何のために目標(成功)を目指すのかといえば、それは「幸せ」のためであるはずだからだ。安心や愛を手に入れ、また好奇心を満たし、感謝され、自分の存在意義を感じることは、年収や肩書きだけでは得られない。 そのために社長は、まずは個人としての人生の目的をはっきりさせる必要がある。その明確になった目的によって、人生の目標も、さらには会社の目的や目標も見えてくるはずだ。 私は、ビジネスなどの相談にやってきた経営者に、目標とする年収をよく尋ねるのだが、そのとき、あわせて聞くことがある。それは、「なぜ、その年収が必要なのですか?」という質問だ。 「1000万円は欲しい」「目標は 5000万円」「年収 1億円を目指しています」などなど、様々な回答があるが、「なぜ、その年収が必要なのか?」と聞かれて、明確に答えられる人はまずいない。その理由は、目的が明確になっていないからだ。 もし目的が明確になっていれば、「年収は、 50歳までは 7500万円は欲しいですが、その後は投資収入で資産の 3%の配当があればいいです」とか、「無理して 5000万円を狙うより、健康と家族を大切にしながら 3000万円をキープし続けることを目指しています」といった、明解な答えが返ってくるはずだ。 もちろん、目的を明確にした上での目標が、「年収 1億円」であること自体は素晴らしいことだし、目的を突きつめた結果として「社長として 100億円企業を作る」といった大きな目標を掲げることになるかもしれない。それもまた、大いに立派な目標だ。 いずれにせよ、個人としての人生の目的・目標が明確になれば、会社の目的・目標にも力強さが生まれる。それが強固な土台となって、社長であるあなたが下す、あらゆる判断を下支えすることになる。
コメント