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会社におカネを残す策

目次

【4ー1】経営者最大の心配事:普通に商売をしていたら、おカネが残らないのは当たり前。

経営者の心配や悩みの多くは、「おカネが足りるか」だ。「取引先に支払いができるか」「手形が落ちるか」「従業員に給料が払えるか」「きちんと納税できるか」…とくに中小企業にとっては切実である。

だから、普通に商売をしていたら、おカネが足らなくなるのは当然だということを経営者は知らなければならない。経営とは外部から材料を仕入れて、そこに様々なカタチで付加価値をつけて販売する。内部で付加価値を高めてくれる従業員や設備などもあらかじめカネを払って用意しておかなければならない。売るための経費もかかる。しかし、その投資資金を回収できるのは、普通に考えれば売れた後である。

つまり、どうしてもカネの「入り」より「出」が早くなるのだから、経営者が意識的にコントロールしなければ、会社におカネは残らないのである。

佐藤肇「決断の定石」CDより

【4ー2】借金に対する考え方:借金で会社が大きくなっても、それは真の実力ではない。

会社を儲からない体質にしている元凶は、とくに中小企業にとっては借入の金利支払いだろう。そう考えて間違いない。

借金の金利支払いがいかに利益の上昇にブレーキをかけているかを知るには、短期。長期の借入金、社債、割引手形の4つを足して、B/Sに記してある自社の総資本で割ってみればよい。

要するに、資金調達のうち金利を支払うおカネが何%あるかということであるが、この「金融調達」の比率が30%ある会社は、営業利益の1割、2割を金融費でもっていかれてしまう。規模が小さな会社ならば、3割以上が利息の支払いになることもあるだろう。

ちなみに、89年のバブル最盛期には日本企業全体の金融費比率の平均は40%だった。しかし、金融調達が40%、50%になると、付加価値の7%も8%も金融費を払わなければならなくなる。

当然のことながら、社員は銀行に利息を払うために働いているのではない。

しかも低成長時代においては、付加価値はそう簡単に伸びてはいかない。よって、少ない付加価値を金利支払いでさらに削るような愚は、何としてでも避けなければならないのである。

かつての高度成長時代には、「借金も実力のうち」と、借金によって手を広げ、事業を拡大していくことこそ、事業発展の定石のように言われていたときがあった。

大幅なインフレが続くことを前提にすれば、借りたときの1億円は返済時には実質4000〜5000万円、借金して設備したり土地を購入しておけば、高い金利を払っても十分に元が取れると多くの経営者が考えていた。

おまけに、必ず利益が出ていれば利子は経費処理できるから、借金しなければ損だ、とまで公言する経営者も少なくなかった。しかし、いまは違う。

これからは、社長としてB/Sの要点をはっきりつかんで、資金を効率よく回すことが一層大事になってくる。自分の失敗を、インフレ経済が帳消しにしてくれることを期待してはいけないのだ。

佐藤肇著「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」より

【4ー3】P/Lは体力、B/Sは体質:日々の資金繰りというのは、その会社の財務体質の結果を表している。

日々の資金繰りというのは、その会社のもっている財務体質の結果を表したもので、 一朝一夕におカネが残るような会社になれるわけもない。私はこれを人間の身体にたとえて、「P/Lは体力、B/Sは体質」と言っている。

つまり、体力が落ちたときは栄養と睡眠をたっぷりとれば1日、2日で回復する。 一方、体質の改善、たとえば肥満を解消するには3カ月や半年、場合によったら1年かけて、食生活や運動で少しずつ体重を落としていかなければ成功しない。

ダイエット経験者の多くが身に染みておわかりのように、極端な食事制限をして急激に体重を減らしても、たいていはすぐにリバウンドしてしまう。

要するに、売上は体力のようなもので、小売業などは出店さえ増やせば、売上を一気に伸ばせる。

しかし、会社の財務体質というものはそう簡単には直らない。たとえば在庫の削減ひとつとっても、いままで大量に在庫を保有していた会社が、営業になんの支障もなく、来年には在庫を半分に減らせるかといえば、それはなかなか難しい。

やはり、在庫が増え続ける原因を突き止めて、全社をあげて解決していくには相応の時間が必要である。しかし、直した体質は、それ以後の会社の確実な発展のベースになってくる。

そのために社長は、常に決算書からわが社の体質を正しくつかみ、実態が効率のいい経営となるように、なおかつ同時に、万全の健康な体質となるように、必要な手を逐次打っていかなければいけないのである。

佐藤肇著「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」より

【4ー4】売掛債権と資金の相関関係:売掛債権とは本物のカネではない。

多くの会社の運転資金は、代金の回収が遅くなると不足が発生する。ところが、売上にしか関心のない社長は、売掛債権の増加にさほど危機感をもたない。

それはすなわち、「売掛債権は本物のカネではない」ということがゎかつておられないのだ。売上が立っても回収されないおカネは売掛債権としてB/Sに記載される。「バカにするな、それくらい知っている」と反論されるかもしれないが、そういう会社にかぎって、売上欲しさに売掛債権のサイトを長くして、売れば売るほど資金繰りが苦しくなるようなバカなことをやっているではないか。売ったものをすべておカネにする、これなら問題ない。理想的である。ところが現実はそうはいかないから資金不足が起こるのだ。

ゆえに、カネに困らない経営をしたいなら、売掛債権が増えると資金にどう影響するか、そういうことがピンとくるように勉強してもらいたい。

佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より

【4ー5】回収が先、支払いが後:カネの「入り」を「出」よりも1ヵ月早めれば運転資金が足らなくなることはない。

必要運転資金を少なくするには、最低でも1カ月、資金の「入り」を「出」よりも早めることだ。私の経験則から言えば、この1カ月のサイクルの目安は、売掛債権の「回収率」が買掛債務の「支払い率」を5%上回ることで実現される。

自社の「当期回収率」というのは、当期に回収すべき「当期売上高」プラス期首の売掛残高(つまり、前期に回収できなかったもの)に対する、当期に回収できた回収高の比率である。

一方の「当期支払い率」は、当期に支払う「当期仕入高」プラス期首の買掛残高(前期に支払わなかったもの)に対する、当期に支払った支払い額の比率のことである。

この自社の回収率と支払い率を計算してみて、もし支払い率が回収率を上回り、その傾向が年々続いているようなら、それだけB/S右側の資金調達が増え、

結局、金融のための金利が増えることにつながる。厳しい言い方をすれば、社長の怠慢で、社員が一所懸命に稼いだ利益を、無駄な金利支払いで減らしているということだ。

そこで支払い率の高い会社は、まず回収率を上げ、同時に支払い率を下げる方策を考えねばならない。ただし、回収率も支払い率も、すべての会社における絶対的な適正値というものはない。

そこで、どの会社にも共通する目安としては、資金繰りに1カ月の余裕をもたせるべく、回収率が支払い率を常に5%上回るようにすればよいのである。

ちなみに、この回収率と支払い率に5%の差を設けると、1カ月分の資金余裕が生まれるという法則は私の経験則から導きだしたもので、学問的な裏付けはないc

しかし、実際に自社の回収率や支払い率を試算してみれば、この法則のとおりになるはずだ。

計算の詳しい解説については拙書『先読み経営』をご参照いただくとして、大事なことは自社の回収率や支払い率の適正値を社長が知らずにいるかぎり、営業部長に回収改善の指示を出したり、資材の担当長に支払い条件の改善を具体的に指示できないということである。

回収と支払いの改善は、取引相手あってのことだから一朝一夕にはいかない。時間がかかることだ。だからこそ、社長が自社の適正値を知り、これを部下と共有して、支払いサイトの長い仕入れ先の取引を増やすとか、現金や前受金取引の仕組みをつくれないかなど、執念をもって策を講じてほしいのである。

佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より

【4ー6】在庫は罪子:在庫が増えて倒産した会社はあっても、在庫を減らして倒産した会社はない

日々の資金繰りを楽にしたければ、とにかく在庫を極限まで減らすことだ。売掛債権の回収は取引先あってのことだが、在庫削減は自社だけで進められるのだから、 一番取り組みやすい運転資金の改善策は在庫削減である。

しかし、売上にしか興味のない社長は「在庫がないと販売機会を損失する」と言って、キャッシュを在庫として寝かせたまま、資金繰りに余計なおカネを借りて、余計な金利を払っている。まったく、これでは会社におカネを残すどころか、ザルで水をすくっているようなものである。

品切れして倒産した会社はない。在庫が多くて倒産する会社は星の数ほどあるが、その逆はない。事実、わが社がリーマンショックの影響で85億円の大赤字を出しながらも、現預金の減少をわずか6億円に抑えられたのも、64億円分の在庫を1年間で圧縮したことが大きな要因である。

佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より

【4ー7】付加価値基準で考える:どうせもたなければならないのであれば、「儲かる在庫」を優先的にもちなさい。

自社の在庫が多いか適正かを考えるとき、「年商の何力月」とか「仕入高の何力月」という見方をしている会社が多い。これは大きな間違いだと言いたい。

とくに売上増イコール利益増が成り立たない低成長時代に、売上の2カ月分あるいは3カ月分まで在庫をもっていても安全だという考えでいると、黒字倒産になりかねない。これは、人件費や経費についても言えることだ。

したがって、自社の在庫回転率の適正は「付加価値(売上総利益または粗利益、加工高とほぼ同じ)に対して何力月分をもっているか」で判断すべきである。

在庫適正値は付加価値の4カ月分である。理想は在庫ゼロだが、現実的には無理だ。そこで「儲かる在庫」を優先的に、たとえば、付加価値率60%の在庫Aと30%の在庫Bを、利益率に合わせて2対1でもつというように、付加価値率を基準に「儲かる在庫」をもつのが、一番合理的な在庫の方針である。

佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より

【4ー8】わが社の適正在庫:どんな商売でも、付加価値の4カ月以上の在庫は過剰在庫である。

私が主宰する経営塾では、「在庫というものは建設業をのぞき、業種業態、規模の如何を問わず、付加価値(売上総利益)の4カ月分が適正だ」と申し上げている。

どんな商売でも、1カ月の付加価値に対して在庫が4カ月分あれば支障はないはずだ。言い換えれば、メlヵlだろうが流通だろうが小売だろうが卸だろうが、4カ月以上は過剰在庫ということである。

最初は異口同音に「ウチは特殊な商売だから例外」と言う塾生に、各社の付加価値に対する在庫の割合を計算させてみると、不思議なことに在庫過多の会社というのはみんな、付加価値の6〜7カ月と、同じような数値となる。

さらに、在庫を1カ月減らすと金利がいくら減るか計算してもらい、指導し続けると、時間はかかったが十数社すべて、4カ月分に減らすことができた。「余分な資産の減少は余分な金利の減少」がわかると、社長は真剣になるものである。

佐藤肇著「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」より

【4ー9】一円を大切にする社風:一円も無駄にしない社風をつくるために会社のお札に2色の色を塗る。

手元にムダな現金をおいて借金をするくらい、バカなことはない。しかし、手元の現金を一日でも普通預金に入れておけば、このカネがいくらかでも利息を稼いでくれる。

たとえば、皆さんの会社の回収口座はほぼ100%当座であろうが、これを手形決済以外の回収をすべて普通口座に切り替えるように、あるいは、手形の決済が終わったら次の決済日までの間も、こまめに当座から普通に移しておくようにと、社長が経理に指示するのだ。

手形や小切手の決済日は月に1回、多くても2回、それも決まった日に落ちるのだから、決済前日に必要なカネを入れておけばいい。しかも、現在はインターネットで回座の振り替えが簡単にできるのだから、銀行に出向く必要もない。決して手間がかかることではないのだ。

ここで私が言いたいことは、「会社のお札に2色の色を塗れ」ということである。つまり、金利を稼がなくてもいいお札と、たとえ一日でも金利を稼ぐお札に、会社の現預金を色分けして管理してほしいのだ。

私は、会社のB/S科目にある「現金・預金」のなかで、金利を稼がなくてもいいものを「手元現預金」とわざわざ区別し、「現金は本社で50万円、国内各支社は15万円以上は置かない」とルール化のうえ管理している。

小売業やサービス業などいわゆる日銭商売を除き、ほとんどの会社は多額の現金をもつ必要はない。給料が日払いなんて会社はないだろうし、公共料金も事務消耗品も月末払いだ。会社で毎日現金を用意しておく必要があるものといえば、接待雑費と少額の交通費程度である。

よって、利息を稼がない手元現預金は、年商20億円以下の会社なら「日商分」、年商20億円以上の場合は「日商の半分の金額」を限度とするというように、社長として明確なルールを決めることである。

もちろん一日分の受取利息はわずかな金額ではあるが、大事なことは、こうしたきめ細かなルールを徹底させることで、「一円も無駄にしない」という社長の執念が、社風となることだ。

スター精密は、接待は数店の指定店でツケ払い。国内出張の新幹線はすべて回数券、ガソリン代は給油券を支給している。社員全員そうさせているし、もちろん会長の私もこれにしたがっている。

社長が「細かくて、バカバカしい」と思えば社員はそれに倣うし、社長が率先して「会社に一円でも多く残そう」と執念を燃やせば、全社員がそのような姿勢で各自の仕事に取り組むようになるのである。

佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より

【4ー10】固定費は社長決裁:「ヒトの採用」と「設備の導入」だけは、どんなに少額でも社長が決裁すること。

わが社では、ヒトの採用と設備の導入に関しては、すべて社長の決裁を要する仕組みにしている。それは、設備もヒトも、20年、30年と関わりあうもので、景気が悪くなったからといって簡単に手放せないからだ。

したがって、設備投資はわが社の年間予算30億円分、数十点に及ぶ一つ一つすべてを社長がチェックする。ヒトの採用についても同様に、時給1000円以下のパートもすべて社長決裁だ。しかも、電子決済のようなワンクリックではなく、紙の申告書をわざわざ作って慎重にやる。

上場企業のトップが、時給3ケタのパートの採用までチェックするのかと驚かれるかもしれないが、機械設備の導入とヒトの採用については、きっちりとした一定の基準値をもち、その基準値の範囲内でやれるかどうかを社長自身が見ていかないと、カネは自然と消えてなくなっていくのである。

佐藤肇「決断の定石」CDより

【4ー11】設備投資の基準:耐用年数の7掛けでモトが取れない設備投資はやらない。

設備投資の可否をどのように決めるかについて、わが社では「耐用年数の半分、最低でも7掛けでモトが取れるか」を基準にしている。

たとえば、工場長から「1億円の旋盤を入れたい」といった設備投資の申告が出た場合、耐用年数が10年の機械ならば7年以内に1億円分の省力化ができる機械ならば承認。あるいは、この旋盤を導入すれば不良率が2%下がり、この2%は金額に換算すると7年で1億円以上になるならば承認する。機械の細かい性能はわからなくても、社長はこの一点を押さえればよいのだ。

償却期間が10年で資金の回収も10年かかるようでは、資金調達にかかった金利すらカバーできない。よって、減価償却が終わるよりかなり早めに投資を回収し、回収したその利益を使って新たに投資するというのが、ROAを高める経営の要諦なのである。

佐藤肇「決断の定石」CDより

【4ー12】投資リスクを最小化する:多額の設備投資には、「経営の踊り場」を設けよ。

投資リスクを最小化するために、設備投資において守るべき数値に、「固定比率100%」というのがある。

固定比率は、固定資産に投資した資金が、どのくらい自己資本で賄われているかを表しており、要するに、土地・建物、機械設備など、固定資産への投資は高額で回収に長期間を要するため、返済義務のない自己資本で賄われている状態(固定比率100%以下)が安全ということだ。

とはいえ、事業には「攻め時」がある。このときに意識してほしいのは、固定比率が基準値を大きく上回った場合は、土地など一部を除いた固定資産は減価償却されるのだから、必ず一定期間をかけて比率を適正に戻す時間をつくるということだ。

つまり、守るべき比率を超すことがあっても、矢継ぎ早にイケイケドンドンで拡大するのではなく、その山を均してほしいということである。

バブル景気の最中に安直な借金で過剰な設備投資をして、その後の景気低迷に不良資産を抱えながら10年苦しむ企業が何社もあった。こういう企業の二の舞を演じないためには、上昇した固定比率を正常値まで戻す間に、「投資に見合う利益が上がっているか」、「景気や受注先の動向はどうか」と確認し、必要があれば追加の投資をしていくという慎重さをもつことだ。

要するに、攻め続けるのではなく、登ってはいったん立ち止まる、いわば階段の踊り場のような期間を意識的に設けることが、 一番安全な設備投資のやり方なのである。

マラソンでも、最初からハイペースで行ったら後半息切れしてしまう。世界記録保持者のトップランナーというのは、いきなり速く走ったり遅くなったりせずに、変動が少ない緩やかなペースアップで最後まで走りきるそうだ。

実力以上の力を出し続けると、途中で絶対におかしくなる。経営というのは、焦るといいことがないと心得るべきである。

佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より

【4ー13】易きに流れるなかれ:必要以上に長期の期間で借入をするな。その時間的余裕が経営を甘くする。

設備投資に長期借入をする場合の鉄則として、必要以上の期間で借入をしてはならない。たとえば、5年で回収すべき設備投資の長期借入を、返済期間5年ではなく、10年の約定で借りるようなケースである。

大方、融資担当者から「5年で毎年2000万円ずつの返済は結構きついですよ。御社なら特別に10年金利1・5%のところ、1・2%で融資します」などともち掛けられ、ホイホイと応じてしまったのであろう。

毎年2000万円ずつの返済が1000万円でいいと言われると、何やら得した気になるが、何のことはない。無駄な金利支払いが増えるだけだ。

もし、5年で返そうと思っていても、10年の猶予があると経営はどうしても甘くなってしまう。したがって、5年でモトを取る長期計画を立てたのなら、借入も必ず5年の約定で借りるべきである。

佐藤肇「決断の定石」CDより

【4ー14】銀行対策の基本:銀行対策の基本は、銀行がカネを貸したくなる会社にすること。

私の経営塾でこれまで千社以上の会社の決算書を見てきたが、自社の資金需要をあきらかに超えた、不要な借金をしている会社が決して少なくない。

なかには年商の半分もの額の借金をもつ会社もあり、とくに銀行が強い時代に資金で苦しんだ経験をもつ経営者は共通して、「銀行が有利な条件をもってきたから」「いざおカネが必要になったときに、銀行が応じてくれないと困るから」「貸してくれるときに借りておく」という考えをおもちのようだ。

しかし、近年の超低金利をみればおわかりのように、銀行は焦げつく心配のない優良企業に、じゃんじゃんおカネを貸したくてしょうがないのである。

よって、今後は明確な用途や目的のない多額の借入をして銀行にいい顔をしなくても、銀行が貸したくなる優良会社になるほうが、必要なときに必要な額を有利な条件ですぐに融資してもらえる。そういう時代なのである。

佐藤肇「決断の定石」CDより

【4ー15】確かな返済計画とは:銀行が「どうか借りてくれ」と頼みに来るのは、B/Sの長期計画をもつ会社だけである。

銀行借入に際して、返済期限は銀行との約定ではなく、自ら決めるものだ。言い方を変えれば、確かな返済計画をもたない借入は厳禁すると言いたい。

ここで言う「確かな返済計画」とは、「毎期いくら売り上げて、いくらの利益を出すから、それを返済に充てる」というP/L計画ではない。売上の増減という、最も不確実な要素が基礎になっているP/L計画だけでは、まったく具体性も実現性もないからだ。

そうではなく、「設備はどの程度増やすのか、土地は買うのか」と、事業計画に沿って5年先までの資金需要を把握し、「その資金を銀行から借りるなら長期。短期どちらがいくら足りないのか」と見積もり、「返済の原資は在庫を減らすのか、売掛期間を短くするのか、はたまた預金を使うのか」など、そのほとんどを社長の意志で実行できるB/S計画に基づき、「毎年いくらずつ、これくらいの期限で返済します」というのが「確かな返済計画」なのである。

きちんとした返済計画を作成することで、長期かつ無計画に利息を払い続ける無駄がなくなる。

何よりのメリットは、融資条件の優遇につながることだ。貸す側に立てば当然であるが、返済能力があるのかどうかわからない高リスクの会社には、いろいろとリスクヘッジをかけることになるし、多くのリターンが見込める融資先は優遇する。

実際に、私の塾で長期B/S計画書を作成し、これをもって融資の相談に行った社長のほとんどは、「こんな素晴らしい計画をおもちなんですね」と感心され、融資審査なしで何億円もの融資を受けたり、以前の借入金利より0。3%下がるなど、銀行から優遇されるようになっている。したがって今後、資金導入については、しっかりとしたB/S計画を社長がつくり、この返済計画に基づいた約定で、銀行からお金を借りるという習慣をつけていただきたい。

佐藤肇著「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」より

【4ー16】有事の経営心得:景気後退局面で先行きが見えないなかでは、最悪の事態でキャッシュがいつまでもつか、予測バランスシートをつくつておけ。

景気後退局面に社長がまず第一にやるべきは、わが社の資金の把握である。

たとえば、2020年の前半にコロナ。ショックが起こり、経済回復の見通しがまったく立たないなかで、私は地元の若手経営者らに、「この状態で最悪のシナリオを考えたときに、いつまでキャッシュがもつかを計算しておきなさい」と助言した。

というのも、コロナウィルスの感染リスクを下げるためには、人が動き、接触することを避けなければならない。いわば「何もできない状態」である。

したがって、とにかくこの状態でどれくらい売上が落ちるか、そして減少する売上プラス手持ちの現預金で経費を賄う場合、いつまでキャッシュがもつかという予測B/Sを、まずはつくってみなければならない。

なぜなら、 会社は赤字でも倒産しないが、キャッシュが詰まれば一晩で倒産するからだ。ご自分の会社の生死に関わることなのだから、社長は最悪の事態となっても何とかなるように、何をおいても真っ先に、資金の実態を見通しておくべきなのだ。

予測B/Sは、現時点から最低でも1年半から2年後までシミュレートしておくとよい。もちろん、終息が早いことが読めるようなら不要だが、先行きが不透明なケースは2年後まで見通すべきである。

コロナ・ショックのときはとりあえず1年半後まで、2020年7月から12月までの6カ月を「フェーズー」、翌2021年1月から6月までを「フェーズ2」、7月から2021年末までを「フェーズ3」とし、6カ月ごとの3つのB/Sをつくり、キャッシュがつながるかを確認した。

とにかく、こうして予測B/Sをつくってみると、有事に際して自社の盤石な財務のありがたみを痛感する。

今回のコロナ・ショック以前にも、これまで幾度の景気後退局面を経験してきたが、わが社スター精密には日本人全従業員の給与、賞与、退職金3年分の現預金があるということが、私にどれほどの心強さをもたらしたか、計り知れない。

危機に際して不安がる社員たちを前に、「3年売上がゼロでも君たちの雇用を守るカネが、わが社にはある。絶対に会社は潰れないから、安心して一緒にがんばってくれ」と力強く宣言できたことは、会社におカネを残す経営に徹し続けた努力に対する、大きなご褒美だと思えてならないのだ。

佐藤肇「社長の決断と全社統率」CDより

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