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企画力の付け方

戦術の二番目に企画力がある。いつでも、「異」を創るのは企画力である。競争に勝つためには、自社の独自性をお客様に知らしめるということが大切だ。「差別化して独自性を仕掛けていくこと」が、企画力の基本である。

情報が氾濫していても、お客様は、自社の商品やサービスについて何にも知らないのが実態である。

レストランがおいしいメニューを作るのも、人の心を打つDMの挨拶文を書くのも、買う気をそそるパッケージを作るのも、大増客のイベントを開くのも……すべて企画力がないとできない。お客様に仕掛け、知らせることがスタートである。

企画力は、人間がもっている。機械がもっている訳がない。企画力をつけるということは、取りも直さず企画力のある人間を採用するということである。

企画力は、知識や記憶の善し悪しと全く関係ない。

多くの会社で、「今年は、頭の良い子を採用した」と、自慢する。私が会ってみると、少しも頭が良いとは思わない。確かに知識や記憶力は抜群で、「1+1=2」と正解を出す。

それを「頭が良い」と称しているが、彼らは事務方にしか向かない。「正しい」とか「正しくない」という尺度ばかりで会社をまとめているから、いつまでたっても新事業や新商品の開発ができないのである。見当違いもはなはだしい。

企画力は、学校の試験で「1+1=5」とも「6」とも答えて、平気でバツをもらうような感性豊かな人間からしか生まれない。

私は、どんなに知識に優れていても、ゴルフの十ヤードのパットで、距離も方向も目茶苦茶に外すような人間は、少しも「頭が良い」と思わない。はっきり、「頭が悪い」と言っている。目で見て十ヤードであれば、十ヤードの感覚で打てなければ、脳と手の感覚が鈍い、感性が悪いわけである。こういう人間を採用して「頭が良い」と称しているだけのことが非常に多い。冗談ではない。

これからは特に、感性型人間が会社にとって不可欠だ。なぜか……人は豊かになって、「好き嫌い」が尺度で物を買うようになったからである。

ネクタイでも、家でも、自動車でも、映画を見るのでも、好き嫌いによって選択が決まる。自らの感性に訴えるかどうかが最優先される。感性が悪い人間は、ネクタイ一本、シャツ一枚だって作れない。

「異」を創造する企画力は、優れた感性から生まれる。企画力で優劣が決まってしまう時代を迎えた。

子供の商品を企画するなら、本当に子供の心が分かり、何がおもしろくてドロンコになるか、背広がヨレヨレになるまで遊びほうけるくらいの人間でないとだめだ。感性は、競争に勝つための哲理である。

そういう人間を積極的に得て、用いていくべきだ。差別化して、仕掛けていって、敵の市場を奪っていける人間でないと役に立たない。企画力には色々あるが、商品企画力と販売企画力が最も重要である。

商品企画力では、これから売れそうな物に、絶えず目を光らせていることがポイントである。自社の業界や商品だけではなく、ライバルから他業界、広くアメリカからヨーロッパまで目を広げ、あらゆるものを引っくるめて何が売れそうか探り続ける。

過日、ドイツにあるジーメンスの役員で二十年来の親友であるザヴァダ氏夫妻が、私の自宅を訪問した。身長が百九十センチメートルくらいあるので、歓談の合間に、ためしに体重を計ってみた。約九十キログラムとデジタル表示されたが、同時に表示されたもう一つの数字を指さして、「これは何だ」と不思議な顔をしている。体脂肪も一緒に計れると教えると、びっくりして、「これはドイツにない。欲しい、欲しい」と言って、まるで赤子のようだった。

もちろん、新品を贈って、お土産としてドイツに持って帰ってもらった。それはともかく、「他国にあって、自国にないもの」を発見することは、企画力を付けていく上での第一歩である。

今、「プラスワン」の発想を身につけることも重要だ。普通の体重計の市場は完全に成熟し切って、新たな需要は見込めない。そこで、体脂肪計を「プラスワン」することによって、旧来の市場を一挙に奪い取ることが可能となった。普通の体重計は役目を終え、古くなったから捨てられる。存在価値がなくなったからである。

代わって、存在価値の高い物を新たに作る……これが事業の鉄則である。このイノベーションを実現するのが企画力だ

北海道のハドソンという会社に、「テクテクエンゼル」という大ヒットした商品がある。 一世を風靡した「タマゴッチ」は誰でも知っているが、それと同じようなキャラクター育成型商品に、従来からあったデジタル型の万歩計を「プラスワン」して、ただ組み合わせただけである。小まめに歩くと、「テクテクエンゼル」は良く育つが、怠けていると、途端に太りだし、ついには家出してしまう。健康グッズに遊び心を持たせたのが何ともユニークだ。当初、二十万個の売上見込みだったが、四十万個を越え、アッというまに百万個を突破してしまった。玩具店だけでなく、コンビニエンスストアやドラッグストアの流通にも乗せたからだ。これも、企画力である。

商品企画力を付けるには、目的意識を常に持つことが特に肝要である。

若者でも年配者でも、年齢に関係なく目的意識を持たせ、集中力を養っていくと企画力が強くなる。テーマを持てば、町中を歩いていても、ましてや海外に出れば、耳を傾け、目を皿のようにして売れる商品の発見に努める。英語が喋れない人でも、英語が聞けるようになって、重要なことは一言でも聞き逃さなくなる。見えない物も見えるようになってくる。今まで捨て去っていた物の中にさえ、アイディアの宝庫を見いだすことができる。むだに過ぎ去る物は何もない。持続して目的意識を集中すると、感覚が研ぎ澄まされていくからだ。

優れた販売企画は、それこそ企業の数ほど多くある。本書の随所にその事例を記載したので、ここではポイントだけを書く。

販売企画力では、「どこと組むか」「どの販売チャネルに乗せるか」もポイントの一つである。

仙台に菓匠三全という和菓子を製造販売している会社がある。田中裕人さんが、そこの社長だ。「萩の月」という単品だけで、年に百五十億円も売り上げてしまう。

田中さんは、同じ仙台の名物である「阿部笹蒲鉾」の星川社長と、「寿の三色最中」の堀池社長と提携し、本当に仙台を代表する三店だけをテナントにして店舗を新たに持え、ロードサイドに次々と展開していった。たちまち相乗効果を発揮し、三社とも旧に倍して売上を伸ばしていった。組み合わせの妙である。有象無象は、組み合わせの対象にしない。互いに足を引っ張り合うだけだ。

平八茶屋の販売促進として企画した一つに、やはり「組み合わせの妙」を取り入れたものがある。

まず、京都の本当の老舗で、互いにバッティングしない店を五つ、「京の老舗五店」と称して提携した。五人の当主が握手して大きなポスターを作り、京都市観光局のハンコをベタベタ押してもらって、JRの駅に次々に貼っていった。観光局とJRのお墨付きをもらったようなものだから、当然、五店だけにお客が集中するようになった。

さらに、ポスターとメニューを持って、私が紹介した旅行会社を回り、販売チャネルの開拓に努めた。「高級料亭だから、バスを連ねて大勢で来てくれという訳ではありません。高級なお客さんだけで結構です。多少は割り引きますが、売値が高い分、マージンも大きいはずです」と、敢えて横柄に言った。高級指向のお客が最近とみに増え、また、名だたる老舗が五店も揃えばすぐにパックが組めると判断して、旅行会社は飛びついてきた。この企画は、大成功だった。居ながらにして旅行会社が良いお客様を連れて来てくれる。

そのお客様が旅行から帰ると、「平八茶屋は素晴らしい。料理が最高だ」と言って、今度は自分たちだけで行くようになった。固定客になった訳だ。 一年も経たずして、売上が三倍以上になった。

企画力を発揮するためには、社長直轄のプロジェクトチームを作ることが最も効果的である。企画力のある感性豊かな人間を採用しても、その人間を動かせなければ何にもならないからである。

プロジェクトチームは、社長の下に専任者を一、二名置く。小人数の方が良い。そして、プロジェクトの期間を明確に決め、権限と予算を与える。午後五時過ぎたら、専任者の命令は社長命令と同じで、プロジェクトに協力しなければならないことを全社員に宣言しておく。

たとえば、試作品が必要な場合、工場から人員がすぐに来てくれるようにする。金のことなら経理が、販売のことなら営業がすぐに来て、進んで協力する。とにかく、動きやすくしてやることが、企画力を発揮するうえで非常に大事だ。

そして、十の企画のうち七つ失敗しても、二つ成功すれば良いというつもりで、何年も何年も続けていく。そうすれば、必ず、企画力が付く。

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