他社よりも 1円でも高く売る VS値引販売をする 私のクライアントの中に、「他社で同じレベルの商品が 1万円で売られていたら、うちは必ず 1万 1000円で売る」と言う社長がいます。意味がわからなかったため「その 1000円はなんですか?」と聞いたら、「決まってるだろ、それはうちのブランドとしての金額だ」と言うので、「なるほど」と納得してしまいました。 その社長が言うには、他社で 1万円で売っているところを 9900円にするから価格競争に巻き込まれるのだそうです。 一度価格競争に入ってしまうと、今度は 9800円、 9700円、 9600円……となっていき、どんどん会社としての体力を弱めていってしまいます。 だから「うちは 1万 1000円から動かない」。その代わり、「他社と何が違うのか」、ここをひたすらアピールして販売する。安売りに動じないというのは大切という話で、すごいなと感心してしまいました。 たしかに安売りをして粗利益がとれなくなってしまうと会社の体力はなくなり、最終的にはつぶれてしまいます。何より問題なのは、安値で販売していると高く売るためのブランドのポジションがとれなくなるという点です。一旦安売りのイメージがついてしまうと、そのイメージはなかなか払拭できません。 価格競争に巻き込まれると資本力の勝負になるため、大手企業に勝つことはできません。ですから、中小企業は安売りを選ぶのではなく、生き残る術として、工夫して高く売らなければならないのです。 また、安売りは客層にも大きく影響します。 高級居酒屋を経営しているとある会社の例をご紹介しましょう。その居酒屋の客単価は 5000円程度で、カップルのデートや接待で使われることが多いお店です。 今は客単価も安定し、うまく回っていますが、開店当初はどちらかと言うとサラリーマンや現場仕事の方が多く来店しており、売上も芳しくありませんでした。明らかにコンセプトと客層が乖離していたため、社長も「どうしたものか……」とずいぶん頭を悩ませた様子で、「なんとかなりませんか?」と相談にやってきたのです。 データを見せてもらうと、お客様のほとんどが串盛りを一つ頼み、あとは瓶ビール 1、 2本で何時間もダラダラと飲んでいるという事実が浮き彫りになりました。ちなみにその串盛り、かなりボリュームがあって、しかも価格はリーズナブル。近くに大衆向けの焼き鳥居酒屋があり、負けないようにと作られた目玉商品でした。 私は「メニューから串盛りをなくしたらどうですか?」と伝え、「焼き鳥が食べたいなら、向こうに焼き鳥屋がありますよと紹介しましょう」と提案しました。すると社長は、「それは困ります。今よりお客様がいなくなっちゃいますよ!」と言います。そこで私は、「お店のコンセプトと乖離しているので、串盛り目当てのお客様は来ないほうがいいですよ」と、データを見せながら意図を説明したのです。 お店のコンセプトや想定している客単価があるのに、わざわざ単価が下がるようなメニューを作っていること自体が問題です。想定している客単価と客層があるならば、それに見合った価格でメニューを提供しないと、想定している客層も足を運ばなくなります。串盛りがメニューから消えた後は、客層が大きく変わっていき、当初のコンセプト通りデートや接待として使われることが多くなりました。 このように、安売りしたことで結果的に売上が落ちるというケースも珍しくはないのです。とくに資本力がない中小企業は大企業とは戦い方が違いますから、常に上を見るように工夫していかなければ、道を切り開くのは厳しいと言えるでしょう。
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