社長はいつも孤独です。 なかには明るく楽しそうに振るまう人もいますが、実際に一人になると孤独感が押し寄せてきます。 でも、本当は一人ぼっちでも、孤独でもありません。それは「社長という病」から自然に起こり、その寂しさやつらさは勝手に自分が作り出している幻想にすぎないのです。 みんなが無理をして、仕事を続けます。我慢して、会社のために、社員のために、家族のために日夜働き続けます。本当は無理をしてはならないのです。本当は我慢し続けてはならないのです。 その「無理」と「我慢」が本来の自分を見失わせてしまうのです。 確かに、会社の大きな目的は、売り上げを上げて、利益を確保することです。そのために我慢や無理が必要になるのですが、本当は、我慢しない、無理しないのが経営というものです。無理や我慢は、いまの仕事のやり方に誤りがあることから生じることが多いのですが、それに気づく社長は多くありません。 無理や我慢が続くと、いつの間にか自分にも他人にも正直でいられなくなります。本音すら言えなくなり、それが孤独感に拍車をかけてしまいます。 そんなときの解決方法は、「相手の話を素直な気持ちになって聞き、行動する」ことです。人は素直さがなくなると、自分一人だという意識と、寂しさ、孤独感が倍増してしまいます。 会社を二度倒産させ、三度目の復帰をしたある社長がこのような話をしてくれました。「私には素直さが足りなかった。従業員たちは会社の仕事を頑張ってくれていた。遠くからその姿を見ていると、わずかな給料なのによく我慢して働いてくれている、といつも思っていた。 その従業員たちが、私の会社のことを案じてくれているのか、いつも提案をしてくれた。 ありがたいことだが、私はそのすべてを否定してしまっていた。 その理由は、彼らが経営のこと、社長という仕事の重責のつらさをわかっていないと思い込んでいたからだ。 だから、よい提案でも、それは現実的にむずかしいと判断してしまっていた。その理由はおかしいことだが、従業員に不安や心配を与えたくないという気持ちからだと勘違いしていた。 本当は、従業員から『会社をこうしたらどうだ?』とか、『こう変えたらどうか?』と言われることに反発していただけだった。それは、私の社長としてのプライドでもあった。しかし現実には、そのアドバイスはすべて正しかった。それを認めると、私が無能力者に見えるのではないかと怖かった。 私の事業の失敗はそこに原因があった。 私は現在三度目の会社経営をしている。今度は、従業員たちは私の先生、社長だと思ってさまざまな意見を素直に聞くようにしている。 すると、事業が好転し始めた。彼らの一つひとつの提案は、社長という固定観念のかたまりの発想力ではなく、柔軟で、自由な意見、自由な考えがあり、それを実践していくだけでものごとの流れがスムーズになった。私は孤独ではない。決して一人ではないと感じるようになった」 自分のことがわかる人はどのくらいいるでしょうか。 わかっているつもりなのに、意外とわからないのが自分のことです。 逆に、自分のことがわからなくても、相手のことはよく見えますね。 私たちは自分の姿は鏡を見ないと見えないものですが、他人の姿は鏡の前にいる自分のようによく見えるものです。
自分の髪の毛に寝癖がついていてもわかりませんね。 スーツの背中に汚れがあっても見えません。 二日酔いで、顔が腫れぼったくても、鏡がなければわかりません。 しかし、他人にはわかるのです。「今日の社長は元気がないなあ」「少し、いらいらしているようだ」「あまり人の話を聞いてくれない」 などと他人にはよくわかるものです。 また、相手も自分のこととなるとまるで見えないので同じです。 一生懸命な人ほど他人に助言します。 ましてや会社のことを真剣に考えている者でしたら、会社のために懸命になって当たり前です。 しかし、社長の立場からすると的外れな助言や、あまり役に立たない情報なども多いと感じる場合もあるはずです。 そのため、そのような助言は無視せざるを得ないかもしれませんが、社員は真剣に伝えようとしているわけですから、それが的外れであろうが決して否定してはなりません。 会社のための助言ほどありがたいものはありません。 社員が的外れな意見を言ったとしても、それを否定した瞬間に、その社員はやる気を失います。場合によっては二度と提案をしなくなるかもしれません。 でも、それが的外れな意見だとしても、静かに聞いてあげることによって、その社員には聞いてもらえているという喜びがあります。 肯定される側にとってはとても嬉しいことです。そして、その社員はそれがきっかけとなり、さらに会社のことを考えて次々に提案や意見を言うようになります。 最終決定は社長の仕事です。 社員の意見や提案を聞くことと決定は違います。しかし、さまざまな社員の意見や提案は、会社に反映させていく使命が社長にはあります。会社を伸ばすのは社員たちの仕事でもあるからです。 社長も、社員に負けずに意見や提案をしてみませんか? きっと新しい発想や風景が見えるかもしれませんよ。
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