100人に1人もできない「あること」とは?
3章では私がどのようにして時間術を生み出していったのかをお伝えしてきました。
この4章では、小学3年生の夏休みの後悔と、その1年後のリベンジを端緒にし、マイクロソフト退社後の企業経営の中で結実した、究極の時間術をお伝えします。
この章の内容こそが、私が半生をかけて導き出した仕事の仕方の結論です。その名もロケットスタート時間術です。
なんだか安直なネーミングだと思う方もいるかもしれませんが、まさにロケットスタートという言葉がぴったりな時間術なのです。
今まで、たくさんの日米のエンジニアと仕事をしてきました。
その中には私よりも明らかに賢いエンジニアもいましたし、ものすごい生産性でプログラムを作ってくれる馬力のあるエンジニアもいました。
しかしそんな中でも、私が仕事をするうえで最も大切だと考えている「あること」をきちんとこなせる人は100人に1人もいませんでした。
その「あること」とは、「常に締め切りを守ること」です。正確に言い換えれば、「常に締め切りを守れるような仕事の仕方をすること」です。
2章のビル・ゲイツの例で話したとおり、あなたの仕事は、パーティーに花が間に合うよう花屋さんに予約をすることではなく、パーティーに花を間に合わせることです。
期日に間に合うよう予約しても間に合うとは限りません。予期しないアクシデントが起こることを前提としなければならないのです。
チームで仕事をする場合、どうしてもお互いが担当するタスクの間に依存関係が生じます。
そんなときに、どれか一つのタスク完了の遅れがほかのタスクの完了に波及し、全体のスケジュールがさらに遅れる、という事態はソフトウェア開発の現場ではよく見られます。
これはほかの一般的な職場でも頻繁に起こっていることでしょう。
上司からすると、安請け合いして締め切りを守らない部下ほど、残念な気持ちにさせられるものはないのです。
そんな状況をできるだけ回避するには、プロジェクトに関わる人全員が自分に割り当てられたタスクは「必ず期日以内に仕上げる」という強い意志を持って仕事にのぞむことが必要です。
そもそも部下にとっては、上司に約束した納期に仕事を間に合わせることが仕事の第一の鉄則なのです。
「そんなこと言ったって、仕事の過程において予想不可能な事態に陥ることはよくあることで、締め切りを絶対に守ることなんて無理」と思う方もいるでしょう。
たしかにそのとおりです。
みなさんは怠慢が原因で締め切りを破ることなんてないはずですから、きっと締め切りを破るとしたら予測不可能な事態が原因だろうと思います。
しかしスケジュールの立て方・仕事の進め方の段階から、締め切りを守ることの大切さをきちんと認識すれば、何があっても常に締め切りを守り続けることは十分に可能なのです。
「ラストスパート志向」が諸悪の根源
大半の人が、スケジューリングの段階から大きな勘違いをして仕事に取り掛かっています。締め切りという言葉への典型的な誤った考え方は、次のようなものでしょう。
- ・見積もりはあくまで見積もりでしかなく、予定どおりに仕事が進むとは限らない
- ・締め切り目前に、徹夜でも何でもして頑張ることが大切
- ・それでもどうしても締め切りに間に合わなかった場合は、その段階でスケジュールを変更してもらうしかない
たとえば、このような意識を持っているエンジニアに、私があるソフトウェアの作成を依頼したとしましょう。
するとそのエンジニアは、今までの経験から「3か月くらいでできると思います」と軽い気持ち(漠然とした見積もり)で答えます。
多くの場合、この手のエンジニアはプロジェクトを甘く見て、最初の2か月くらいはのんびりとすごします。
残り1か月くらいの「お尻に火がついた」状態になって頑張るのですが、あわてて作るためにスパゲッティコード(スパゲッティのように複雑に絡み合ってしまったプログラム)になってしまいます。
残り2週間目くらいでソフトウェアはそこそこ動き始めますが、まだまだ機能は不十分だし、バグもたくさんあります。
最後の1週間でバグの修正に取り掛かりますが、最後の最後になって基本設計上の欠陥が見つかります。
しかし、いまさら後戻りはできないので、バグを回避するための、その場しのぎのパッチ(修正プログラム)を当てますが、そんなことをしているとますますプログラムが汚くなっていきます。
最後は徹夜もしますが、寝不足でミスが続き、結局バグが取れずに締め切りの日になってしまいました。私には「申し訳ありません、できませんでした」と言うしかありません。
「じゃあどのくらいで完成するの」と聞くと、「あと2週間あれば大丈夫だと思います(根拠なし)」と答えます。
しかし、2週間では根本的な変更などできるはずもなく、パッチにパッチを当て、目も当てられないようなプログラムになっていきます。
結局2週間努力しても問題は解決せず、「根本的な問題の解決のためにあと2か月ください」と言い出します。
しかたがないのでスケジュールの変更を認めると、時間に余裕があるので、また最初の1か月はのんびりしてしまいます。
そうして最後の1か月でラストスパートをかけようとしますが、再び同じような状況に陥り、最後は徹夜の連続。
再び寝不足のためにプログラムが汚くなり、バグが多発。結局、新しく設定した締め切りも逃してしまいました……。こんなことでは、プロの仕事とは言えません。
この仕事の根底には「締め切り=努力目標」という考えがあり、「目標に向けて精一杯努力をすることが大切」という体育会的な姿勢があります。
そして最も良くないのが「ラストスパート志向」です。多くの人が、「最初はのんびりしていても、最後に頑張ればなんとかなる」という根本的な誤ちを改めるところから始めないといけません。
ラストスパート志向の一番の欠点は、最後の最後までそのタスクの本当の難易度がわからないという点にあります。
どんな仕事でも、やってみないとわからない部分が必ずあるのです。だからラストスパート志向で仕事に取り組むと、仕事の後半に予想外のアクシデントが発生して、完了までの時間が延び、ほかの人に迷惑をかけてしまう可能性が出てくることを忘れてはいけません。
これは1章でも2章でも何度もお話しした大事なことです。
まずは「締め切りは絶対に守るもの」と考える
ではたとえば上司から「これ10日でやっといて」という仕事が降ってきたとき、どうすればいいでしょうか?
大切なことは、スケジューリングの段階から「締め切りは絶対に守るもの」という前提でのぞむことです。
すると予定を立てる段階から、次のような真剣なやり方をとらざるを得なくなるはずです。
①「まずはどのくらいかかるかやってみるので、スケジュールの割り出しのために2日ください」と答えて仕事に取り掛かる(見積もりをするための調査期間をもらう)
②その2日をロケットスタート期間として使い、2日で「ほぼ完成」まで持っていく
③万が一、その2日で「ほぼ完成」まで持っていけなかった場合、これを「危機的な状況」と認識してスケジュールの見直しを交渉する
まず①ですが、「締め切りは絶対に守るもの」ということを常に念頭に置いておけば、何も考えずに「だいたい10日くらいでできると思います」のようなあいまいな回答はできないはずです。
当然ですが、仕事の最初の段階では見積もりすら不可能なタスクも多々あります。
しかし、その手のものを、今までの経験をもとにざっくりと見積もるのはとても危険な行為です。
そういう場合は、まずは上司から指定された期間の2割(この場合は2日間)を見積もりのための調査期間としてもらい、その期間、猛烈に仕事に取り掛かります。
仕事の真の難易度を測定するためです。
その間に「8割方できた」という感覚が得られたなら上司に「10日でやります」と伝えます。
そこまで至らなかったら、相当難しい仕事と覚悟したほうがいいでしょう。
上司に納期の延長を申し出るのは、早ければ早いほどいいわけですから、8割方できなかった場合は期日の延長を申し出ましょう。
スタートダッシュで一気に作る
大切なのは、②で全力のスタートダッシュを行うことです。『マリオカート』をやったことはあるでしょうか。
『リッジレーサー』でも『グランツーリスモ』でもそうですが、あらゆるレーシングゲームにはスタートダッシュ(ロケットスタート)というテクニックがあります。
スタート前の「3→2→1」のカウントダウンのあいだに、適切なタイミングでボタン操作をすることで、スタートと同時に圧倒的に加速でき、ほかを引き離すことができるテクニックです。
これをイメージしてください。
「締め切りに迫られていないと頑張れない」のは多くの人々に共通する弱さですが、先に述べたように、仕事が終わらなくなる原因の9割は、締め切り間際の「ラストスパート」が原因です。
ですから、10日でやるべきタスクだったら、その2割の2日間で8割終わらせるつもりで、プロジェクトの当初からロケットスタートをかけなければなりません。
初期段階でのミスならば簡単に取り戻せますし、リカバリーの期間を十分に持つことができます。
とにかくこの時期に集中して仕事をして、可能な限りのリスクを排除します。考えてから手を動かすのではなく、手を動かしながら考えてください。崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるのです。作業を進めていって根本的な方向転換が必要だったら、この時期に行います。
たとえばソフトウェアの開発ならアーキテクチャ(基本設計)の変更などです。何だか全然ダメなものができてしまったらもう一度ゼロからやり直します。健康だけには気をつけながら、全力疾走で仕事と向き合います。
そうして、実際に指定の2割の時間がすぎた段階で、仕事がどのくらい完了しているかをできるだけ客観的に判断します。
8割方終わっていればスケジュールどおりに進んでいると考えていいでしょう。6割くらいしか終わっていなかったらかなりの危機感を持つべきです。
その段階で万が一、完成度が6割未満だった場合は、③のとおり、「締め切りまでに完成できない可能性がある」と判断し、上司に状況を説明してスケジュールの見直しをしてもらいましょう。
締め切り直前ではなく、締め切りよりもはるか前に、期日に間に合わせられるかどうかを見極めることが大事なのです。
この段階で「まだ2割しか時間を使っていないから大丈夫」と思うのは大間違いです。
全力疾走で2割の期間を使って、まだ「ほぼ完成(8割方完成)」の状態に持っていけてないのだったら、かなりの確率で締め切りには間に合わないと判断すべきです。
逆にその時点で8割方完成していれば、上司に「10日のスケジュールで大丈夫です」と伝え、残りの2割の「完成にまで持っていく仕事」を残りの8日間をかけてゆったりと行っていきます。
余裕があればその期間に、次の仕事の準備を進めたりもします。
この段階で大切なのは、「全力で仕事と向き合う」ではなく「仕事の完成度を高める」であることを強く意識して向き合うことです。
8割の時間を使って2割の仕事をこなすわけですから「仕事が終わらないわけがない」という余裕が生まれます。心地いいほど完璧なスラックの獲得です。
見積もるには、とにかくやってみることだ
ここまでが、私が実践している仕事との向き合い方の全貌です。一言で言えば「時間に余裕があるときにこそ全力疾走で仕事し、締め切りが近づいたら流す」という働き方です。
仕事に対する姿勢を根本的に変えなければならないので簡単な話ではありませんが、確実に効果があることを保証するので、なるべく多くの方におすすめしたいと思っています。
ロケットスタート時間術の概要をわかっていただけたところで、ここからは仕事術の背景にある考え方まで踏み込んで、みなさんに深く理解してもらいましょう。
具体的な見積もりの仕方は、「最初の2日で仕事の8割を終わらせる」でした。これが鉄則です。最初の2日というのは締め切りまでの期間によって適宜変わります。
締め切りが10日後の仕事なら2日間、5日後なら1日、3日後なら半日、1日なら3時間というように、大体全体の2割程度の期間です。
とにかく猛ダッシュのロケットスタートを切ることが重要です。
なぜそんなハードなスタートダッシュを切るのかというと、あなたのラストスパート志向を矯正するには、そのくらいハードなことをしないといけないからです。
人生を変えたいのであれば、今後あなたは、徹底的にロケットスタート型に舵を切るべきです。ちなみにロケットスタートを実践するときのコツですが、前倒しで取り掛かることです。
仕事が決まったら、すぐにやってください。人は誰しも無意識のうちに不安を抱えながら仕事をしています。締め切りに間に合うかどうかを恐れているからです。
ですから、取り掛かる時期が早ければ早いほど不安は小さくなります。
取り掛かりを前倒しし、華麗なロケットスタートを切れば、仕事のほとんどが期限の2割程度の時間で終わります。
その瞬間を体験したとき、あなたの目から見えている景色は180度変わっていることでしょう。
ぜひその快感を体感してみてください。
仕事の提出を前倒すのではありません。
取り掛かりの時期をこそ前倒すのです。
徹夜は仕事がノッているときにしろ
徹夜は、いわゆるラストスパートの一種として、締め切り間際の恒例的行事になっている人が多いようです。
みなさんも経験がおありかと思います。徹夜が良くないことは、すでに1章でお話ししました。
徹夜をするせいで仕事の効率は落ち、締め切りが近いこともあって集中できず、結果仕事は終わらないし自身も疲弊するばかりです。
したがって徹夜はするべきではありません。ですが例外があります。それは仕事がノッているときです。
じつは私は、仕事を始める最初の2日間のうちに徹夜をすることがあります。
意外に思われるかもしれません。
しかしこれは私の仕事の仕方を象徴する、ある意味でこの時間術のコアになる部分です。とにかく最初の2日間に8割終わらせることを目標にロケットスタートを切ります。
私は大体、この期間にソフトウェアの大まかな設計を作り上げます。企画書を書いている人は、この期間に企画書の大枠を書き上げます。マーケティングプランの構築をしている人は、そのプラン全体の構築を行います。作曲やライティングをしている人は、枝葉を気にせず一気に最後まで書き上げます。
考えてから手を動かすのではなく、手を動かしながら考えるのです。手を動かしたら何も考えられないじゃないかと思うかもしれません。しかしそれを否定する言葉があります。
「案ずるより産むが易し」。手を動かせば頭も動くのです。
頭が動くかどうかというメタレベルの思考ばかり続けているから、ベタレベルの思考ができなくなるのです。
言い訳とか、不安とか、疲れているからとか、馴れていないからとか、そんなことはどうでもいいので「8割完成」という一つのゴールに向かって爆進してください。
8割終わらせることができれば、締め切りまでにはほぼ確実に終わるはずです。つまり言ってしまえば8割終われば仕事は終わったようなものです。
このロケットスタートの2日間は、私はメールもフェイスブックもやりません。不本意に時間を取られかねないものはすべてシャットアウトします。
普段仕事の合間に何げなくやってしまう、コーヒーを淹れてみたり、散歩に出てみたりといったこともしません。
とにかく仕事のことだけ考え続けます。もっと言えば、最初の2日間は同僚や上司からごはんに誘われても断ります。
メールもチェックしないわけですから、2日間は完全に現実から去った仙人のようになっています。そして3日目に人間界に現われるというわけです。
2日間くらいなら、同僚や上司を無視していてもなんとか関係が修復できます。2日間というのは、人間関係を破壊しないギリギリのラインなのです。
だから私は2日間はメールもごはんの誘いも無視して仕事をします。
逆に、2日間の付き合いの悪さ程度で疎遠になってしまうような人がいたら、そもそもその人とは長続きしない関係だったと割り切るべきでしょう。
しかし大抵の人であれば、2日間嫌な奴になっていたとしても、関係は取り戻せます。要するに、煮詰まったときの徹夜はしてはいけません。
ただロケットスタートと同時にノリノリで徹夜をするのは十分ありです。スタートダッシュでなくても、仕事がノッているときがあれば、それこそが徹夜をするチャンスです。
ただし、やりたくもないのにやむをえず徹夜をするのだけはやめましょう。そもそも、無駄な徹夜をしなくても済むような仕事の仕方が正しいのです。
仕事は最速で終わらせてはいけない
そうして2日で仕事の8割を終わらせたあなたは、このペースなら3日で終わるのではないかと考えます。
3日でその仕事を終わらせて、上司に提出するのが今までの仕事の進め方でしょう。なるべく早く提出したほうが上司からの評価も高いだろうと。
私の考えではそれは間違いです。なぜなら3日で終わらせると、続けざまに次の仕事を依頼されるからです。
しかも上司は、「前の仕事を3日で終わらせたんだから、この仕事も3日で終わるだろう」と期待し、締め切りをもっと早く設定したりします。それこそが大いなる間違いです。最初の2日間あなたは全力で仕事をしたわけです。
たしかにもう1日くらいなら頑張れなくもないでしょう。実際そうして今まで体力勝負で乗り切ってきた方もいると思います。けれども永遠に全力で働き続けることは絶対に無理です。
1章でお話しした、アメリカのとある病院の話を思い出してください。あの病院がきりきり舞いになっていたのは全員が常にもう全力を出していたからでした。
逆説的ですが、いつも全力を出していると、真の実力を発揮できなくなるのです。
ですから、スタートダッシュで仕事の8割が終わったからといって、そのままのスピードで仕事を終わらせてはいけません。
3日間頑張って完全に消耗した挙句、間断なく仕事を振られるようだったら3日目は休んでいたほうがましです。
仕事を早く終わらせることよりも、仕事を安定して続けることを意識すべきです。結果、焦って仕事をしていたときよりも早く、しかも高い完成度で終わるようになるのです。
1章で「スラック」と「トンネリング」という言葉を紹介しました。スラックとは余裕のことです。スラックを持っていると仕事の効率が上がっていきます。
2日で8割終わらせるというのは、スラックを意図的に獲得するための戦略です。8割終われば、残りの期間は流しで仕事をすることができるからです。
そのことを忘れて3日で仕事を終わらせようとすると、そこはもう暗いトンネルの中です。仕事が終わるころには休む間もなく次の仕事を回され、先の見えない状態に陥ります。
すなわちトンネリングです。スラックの確保こそ、ロケットスタート時間術の最大の鍵です。
あなたの仕事が終わらなかったのは、余裕を確保していなかったからなのです。ここまでの仕事のやり方を図にすると、次のようになります。
集中力の秘密は「界王拳」
仕事をもらってから最初の2日間に仕事の8割を終わらせるというのは、みなさん想像がつくように簡単なことではありません。
仕事期間の見積もりという名目があるとはいえ、ほとんどただ単に、仕事をものすごく頑張ってやっているわけですから。
私はこの、仕事をものすごく頑張っている2日間のことを「界王拳」を使うと呼んでいます。界王拳とは、有名マンガ『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空の技の名前です。
孫悟空の師匠・界王に「元気玉」という技とともに伝授された必殺技で、「界王拳」を使用すると全身が赤いオーラに包まれ、戦闘力が飛躍的に上昇するのです。
たとえば「3倍界王拳」を使うと戦闘力が3倍になります。ちなみに作中では2倍界王拳から20倍界王拳までが登場しています。
界王拳はたいへん強力な効果を持つ代わりに、使用後は全身が激痛に襲われ、戦闘力が通常時以下に下がってしまいます。
私は最初の2日間のロケットスタートは、この悟空が界王拳を使うときの状態をイメージして仕事をしています。
最初の2日間はものすごく仕事を頑張ると言いましたが、それは言ってしまえばものすごく仕事に集中するということです。集中力を保ちたい、というのは、すべてのビジネスマンの悩みです。
私もいかに仕事に集中するか、ということは常に悩んでいますが、最も手軽な方法は、悟空の界王拳をイメージすることです。界王拳を使って戦闘力を何倍にも上げ、目の前の仕事を倒すのです。
さらに私が注意していることは、「このときに何倍界王拳を使うか」という具体的な数字まで決めるということです。
たとえば最初の2日間はいつも「20倍界王拳」をイメージしています。
本当に通常時の20倍出ているかどうかは関係ありません。
『ドラゴンボール』に登場した界王拳の中で最も強力な、20倍界王拳の発動をイメージする、ということ自体が大切なのです。
それはすなわち、自分の出せる最大の能力を、仕事のスタートダッシュで使ってしまうということです。
『ドラゴンボール』に限らず、少年マンガの主人公が最大の奥義を使うのは、戦闘中にピンチに陥ったときと相場が決まっています。
たしかに窮地に追い込まれたときはマンガに限らず、現実でも人は最大の力を発揮します。そうしてマンガではライバルを倒し、現実では大きな仕事を終わらせるわけです。
すでにお話ししたとおり、私はそうした「ラストスパート志向」を信じていません。仕事が終わらないことの諸悪の根源とすら思っています。
ライバルに倒されそうになるとき、つまり仕事の締め切りが迫っているとき、人は必ず焦るからです。焦ると生産性は上がりません。
マンガの世界では、そこで主人公の能力が覚醒して一気に勝敗を決するわけですが、現実ではそのようなドラマチックな逆転劇は必要ありません。
むしろ逆転劇ばかり起こすような仕事の仕方をしていては、上司も常に肝を冷やします。それでは上司からの評価も下がり、社会人としての信頼も失いかねません。
界王拳を使ってメールを返す必要があるか?
集中力を上げるために必要なことをもう一つお話しします。それは、マルチタスクを放棄することです。マルチタスクこそ、仕事が進まない理由の最たるものです。
みなさんはいつどんな仕事をしているときも常にメールには気を遣っていることと思います。大事な取引先や上司からのメールは、できるだけ早く返信するのが望ましいからです。
そうして返答をするあなたは、きっと取引先からも上司からも重宝されることでしょう。けれどもメールに気を取られることで、メインの仕事の効率が落ちているということを忘れてはいけません。
メールの返信が早くてもメインの仕事が遅い人の評価は高くありません。単に仕事が遅い人だなあという印象を持たれます。逆にメールの返信が遅くてもメインの仕事が早い人の評価は高いです。
仕事ができるのだから、多少メールの返信が遅くても気になりません。この話が示しているのは、「あなたの仕事はメールを素早く返信することではなく、仕事を終わらせることである」ということです。
こうして言葉にするとずいぶん当たり前のことのようですが、「仕事のメールには即レスしろ」といった言説に惑わされ、これに気づいていない人は多いのです。
ですから界王拳を使っているときはメールのことを気にしてはいけません。もっというと、電話も気にしてはいけません。可能な限り会議に出るのもやめましょう。
同僚とのおしゃべりなんてもってのほかです。マルチタスクは仕事の効率を何倍も下げます。
メールや電話、ほかの仕事のことを気にし始めると、メインの仕事に割くリソースが減ってしまいます。
2章でした認知資源の話を覚えているでしょうか。
重大なタスクに没頭するためには、ほかのこまごまとした小さな仕事に悩んではいけないのです。認知資源は、最大限メインの仕事にのみ割くべきです。
ですから界王拳を使っているときは、メールにも電話にも出ないということを今日決断してしまいましょう。
界王拳を使っているあいだにやることはメインの仕事のみです。それ以外のことは一切放棄して黙々と作業に取り組んでいきます。
通常の20倍の能力を発揮して、メールチェックに挑む必要があるかどうか考えてみてください。界王拳使用中は、絶対にマルチタスクはしないのです。とはいえ、人間には限界があります。
私の感覚では、高い集中力を保ち続けることができるのは、6~7時間が限度です。
ですから私は、次の図のように1日中界王拳を使い続けるために、限界が来たときに朝ごはんや昼ごはん、夕ごはん、そして昼寝をはさんでいます。
そうした小休憩の後はシームレスに20倍界王拳を発動し、仕事に戻ります。
ごはんを食べ終わり「ごちそうさま」と言った瞬間に、睡眠から覚醒し目覚ましのアラームを止めた瞬間に、全身が赤いオーラに包まれるわけです。
ふざけているように思うかもしれませんが、まったくふざけていません。イメージすることが大事なのです。
どこまでも2:8の法則で仕事をする
何度も繰り返しているように、私は最初の2日で仕事の8割を終わらせることを信条としています。
そうすれば、締め切りまでの残りの8割の期間はのんびり仕事をすることができるからです。
すなわちスラックが最大の状態で仕事に取り組むわけです。
私はこの時間を「流し」で仕事をする、と呼んでいます(この期間に、余裕があっても次の仕事を入れないことは、すでにお話ししたとおりです)。
のんびり仕事をしているといっても、起きてから寝るまでずっとのんびりしているわけではありません。それでは残った2割を終わらせられないからです。
じつは先ほど紹介した界王拳は、20倍界王拳終了後の3日目以降も、1日の間に数時間だけ発動します。
どういうことでしょうか。「流し」で仕事をする3日目以降も、私は朝4時ごろに起きて仕事を始めます。
顔を洗ったら、そのままシームレスに仕事に移行します。コーヒーを淹れたりもしません。とにかく一瞬も隙を作らずに仕事を始めます。
ここではやはり、メインの仕事だけと向き合います。6時半ごろには朝ごはんを食べます。なぜ6時半かというと、そのころには家族が起きるからです。
家族が起きるまでの2時間半は、誰にも邪魔されない静謐な環境が保たれるので、仕事に集中できます。
私はその2時間半にも界王拳を使っているのです。具体的には10倍界王拳です。
最初2日間の20倍界王拳で疲弊しているため20倍というわけにはいきませんが、10倍は意識しています。
やるのはやはりメインの仕事だけです。そのあいだはフェイスブックもメールも見ませんし、電話にも出ません。会議や打合せなどは昼以降に回します。
そもそも朝4時に何か投稿したりメールを送ってきたりする人はいませんから、チェックする必要もありません。
チェックする必要がないわけですから、そういったものに時間を取られることはありません。
だから朝4時から6時半までの間は10倍界王拳タイムなのです。
ここで意識してほしいのは、この1日の最初の2時間半で、1日のメインの仕事の8割を終わらせるようにするということです。
2:8の法則は1日の中でも当てはまるのです。
10日間の仕事を最初の2日で8割終わらせるのと同様に、1日ごとに割り振った仕事も最初の2時間半で8割終わらせるのです。
そのためこの2時間半はコーヒーも飲まなければ、可能な限りトイレにすら行きません。息を止めて仕事をしているようなイメージです。
朝ごはんを食べた後は犬の散歩に行き、8時から12時まで仕事の続きをします。ここでも界王拳を使います。具体的には2倍界王拳です。
さすがに朝は疲れたので10倍というわけにはいきませんが、昼ごはんという締め切りがある以上、だらだらしたくはありません。だから2倍を意識しています。
午前中は、10倍界王拳を使っているあいだも2倍界王拳を使っているあいだも、ともかくすべての時間をメインの仕事だけにあてます。
メールも電話もいったん置いておきます。
そもそも午前中にメールが来ていたとしても、界王拳を使っているときにメールに返信する必要があるでしょうか。せっかく体力を使っているのだから、本体業務に集中するほうが得策です。
そうして「流し」の8割の期間であっても、午前中にメインの仕事をほぼ終わらせます。
最強の昼寝は「18分」
お昼がきたので、ここで昼寝について解説します。私は昼ごはんを食べた後は、必ず昼寝をします。
昼寝をすると脳にたまった老廃物が消えるような気がするので、新しいアイデアが生まれることがありますし、午後以降の仕事にもグッと集中して取り組めるからです。頭の回転も全然違うことを感じます。
ちょうど車のエンジン(脳)を使った結果、排ガス(眠気)が排出されていくようなものです。ガス(眠気)は車の中にためてはおけないので、外に出します。
そうして車は前進するのです。私は昼寝は18分と決めています。これは度重なる試行錯誤の果てに決まったマジックナンバーです。
18分より短いと老廃物が残存している感じがあり、18分より長いと深い眠気の底にいざなわれ、もう戻ってこられません。
私は、10分→20分→30分、と試していきました。その結果、眠気が残らず目覚めの良い時間が18分だとわかりました。
この18分の昼寝は、夜の2時間の睡眠に匹敵する回復力があると私は思っています。ぜひあなたも毎日少しずつ時間を変えて昼寝をして、マジックナンバーを探してみてください。
ちなみに昼寝の仕方ですが、私は必ずパジャマに着替えてアイマスクを装着し、ベッドで寝るようにしています。
ここまでして完全に快適な睡眠環境を整えないと、18分ではリフレッシュできないからです。
逆に言えば、最大限リフレッシュするための昼寝時間を一番短縮するには、そういった環境を整える必要があるということです。
とはいえこれは自宅で仕事をしているときの私の例なので、会社勤めの方が実践するのは難しいでしょう。
もちろん会社にベッドや布団を持っていく気力のある方は止めません。
みなさんがこれを実践するには、最低でもアイマスクを用意するのがいいでしょう。
これだけでも睡眠の質はかなり変わります。
加えて、耳栓やオットマン(椅子の前に置いて使う足乗せ用ソファー)、枕代わりのタオルなどを持っていくのはいかがでしょうか。
思い切って自腹でいい椅子を買って会社に持ち込むのもいいでしょう。
これなら明日からでも実践できます。心地いいソファーのあるカフェを見つけ、昼食と昼寝を取る方法もありでしょう。みなさんで自分に合ったオリジナルの昼寝用寝具を選んでみてください。
さらにいえば、私は昼ごはん後以外にも眠くなったらすぐ仮眠をとります。1日に3回寝ることもあります。
眠気で頭が回らない状況で無理して仕事を続けるよりも、驚くほど効率が上がりますので、ぜひとも試してください。
午後は気楽に「流し」で働く
昼寝の後は完全に流しで仕事をすることになります。たまっていたメールや着信に返事をしていきましょう。スケジュールの調整など、こまごました仕事はここで消化します。
ほかにも書類の整理やドキュメンテーション、資料の閲覧などといった仕事は、すべてこの時間帯に行います。ここでもマルチタスクは行いません。
こまごました仕事であっても、一つ終わったら次へと、一つひとつこなしていくことが重要です。
私は午後はフェイスブックのチェックをしたり、メールマガジンの記事を執筆したりします。そのあいだはコーヒーを淹れたり昼寝をしたり、かなり気楽に仕事をしています。
次の図にあるように、メインの仕事は午前中までに終わっているので、急ぐ必要もありません。夜は仕事も終わりつつあるため、翌日の仕事の準備をします。
具体的には21時ごろから、5章で紹介するタスクリストを作ることです。そうして夜10時半ごろには寝ます。翌朝4時に起きるので睡眠時間は5時間半程度ということになります。
世に出る数多の本では睡眠時間は6時間以上取るように言っていることが多いですが、それは個人差があると私は考えています。
私の場合、昼寝をうまく使うことで夜の睡眠は5時間半で十分だということがわかっています。
みなさんも自分の睡眠時間は何時間が適切か試行錯誤してみてください。ただし無理は禁物です。無理して短く寝て、日中頭が回らないくらいなら、いっぱい寝たほうがマシです。
朝が最強である3つの理由
早起きも昼寝も、すべては朝の2時間半の界王拳のためのお膳立てとして導入しているものです。仕事は朝のスタートダッシュがすべてなのです。
では、なぜ私は、朝4時という早朝からロケットスタートしているのでしょうか?理由は3つあります。
- ①外部要因の締め切りが設定できる
- ②メールをチェックする必要がない
- ③話しかけてくる人がいない
①は疑似的な締め切りを意図的に作れるという理由です。朝6時に家族が起きてくるのが私にとっての朝の締め切りです。締め切りがあると、仕事をやらなければならないという気持ちになります。
また、朝の2時間半に8割を終わらせると言いましたが、その8割の仕事がどの程度かというのはタスクリストを参照すればわかります。
詳しくは6章でお話ししますが、私のタスクリストには1日の仕事がすべて15分刻みで記されているので、朝のうちにここまでやるという範囲を容易に決めることができます。
私は毎朝ゲームをしているのです。
家族が起きる2時間後までに決めたタスクにすべてチェックを付けられるか、というゲームが始まるのです。こうした締め切りを意図的に作るのはなかなかできることではありません。
何時までにやる、と自分で決めることはいつでもできますが、内部要因での締め切りはいまいち拘束力が弱いのです。
その点朝は外部要因が多いので、締め切りを作ることが容易です。
家族が起きるまで、8時のニュースが始まるまで、近所の小学生たちが外ではしゃいでいるのが聞こえるまで……など。他方、夜はそうした締め切りが作れないのが難点です。
だから夜はいつまでもダラダラと仕事を続け、ある臨界点を迎えたところで「徹夜するか!」と開き直ってしまうのです。
こうした仕事の仕方がよくないということは、何度も繰り返しお伝えしてきました。②と③は、邪魔をするものが少ないということです。
先ほどお話ししたように、朝メールを送ってくる人はいませんし、電話をかけてくる人もいません。
また、集中しているところにほかの仕事を回してくる上司もいません。だから集中力を分断するものがないのです。
集中力が分断された3時間と分断されない1時間は、同じくらいの仕事効率があると私は考えています。
要するにメールや電話、ほかの仕事のことを気にしながらする仕事は、効率が半分になるということです。
朝型ならメールも電話も気にする必要がないので、そういうことがなくなります。
結局、ロケットスタート時間術とは何なのか?
本章では、私の仕事の仕方についてお話ししてきました。まとめると、次の4点に集約されます。
- すべての仕事をスタートダッシュでこなして、絶対に終えられる納期を導き出す
- 最初の2割の期間を「見積もり期間」としてもらい、実際には、仕事量の8割を終える
- 最初の2割の期間で8割の仕事ができなかったら、期限を延ばしてもらう
- 「仮眠を取る」と「マルチタスクをやめる」
で、仕事の効率を上げるまず、すべての仕事をロケットスタートでこなします。これが鉄則です。
忙しくないときこそハードに仕事をこなす必要があるのです。何度も言いますが、ラストスパートこそ諸悪の根源です。
このことを絶対に忘れないでください。このロケットスタートのことを見積もりと呼んだりもします。
見積もりの期間はだいたい最初の2日間(最初の2割)です。見積もりというのは名目で、実際は全力で仕事に当たってみるのです。界王拳の話を思い出してください。
この2日間では、具体的には20倍界王拳を使います。
また、最初の2日間は「世捨て人モード」に入るので、メールも飲みの誘いも会議すら無視です。
ロケットスタートを成功させるために、徹夜も厭いません。むしろラストスパートで徹夜をしないように、ノッているときは、最初のうちに徹夜をしてしまいましょう。
そうして2日間の20倍界王拳が終わった後の3日目以降は、流しで仕事をすることになります。
とはいえ1日中ダラダラとしているわけではありません。このときは、朝4時に起きてから6時半まで10倍界王拳を使います。
その期間はメインの仕事にだけ集中します。朝はメールも来ないし、誰かが話しかけてくることもないので、集中が途切れません。ここまでで、1日のメインの仕事の8割を終わらせます。
朝食を食べ終えた8時からは、昼食までに1日のメインの仕事を全部終わらせることを目指して、2倍界王拳を仕掛けます。
午前中に1日のメインの仕事を集中して終わらせた後は昼食を取り、18分の昼寝をします。その後、午後からは疲れているので、メールチェックや電話対応、打合せや考え事などこまごました仕事をします。
ここでも仕事に詰まったら、さらにすかさず仮眠をとります。睡眠は脳の老廃物を除去する唯一の手段です。マルチタスクは絶対に行いません。以上が私の仕事術の全体像です。
しかし、あなたの頭の中には何かの不満があるのではないでしょうか。「こんなの自分には使えない」「導入が難しすぎる」「朝早く起きられない」わかります。
なぜならここで紹介した仕事の仕方は、そもそも現在仕事に余裕を持っている人だけが実践できることだからです。
現在進行形で複数の仕事を抱えているあなたは、たった今与えられた仕事を、徹夜で8割終わらせるなどということは不可能です。ほかの仕事の締め切りが迫っているからです。
そもそもこのやり方に馴れていないと、2日で8割の仕事を終わらせるほど集中するなんてことはできないでしょう。
今まで夜型だった人が朝4時に起きるというのも困難です。早く寝ようとしても会社の仕事があるため、上司に「というわけで5時に帰りますね」などと言うわけにもいきません。
そもそも本章で紹介したのは、すべて、自由に自分の時間をコントロールできる人の一連の仕事の仕方です。
一般的な会社勤めの方にはなかなか難しい方法かもしれません。ではあなたは諦めるしかないのでしょうか?いえ、諦める必要はありません。
あなたの仕事環境に合った時間の使い方を、次の章で一緒に考えていきます。
この時間術をあなたが使えるようにカスタマイズした先に、あなたにとっての真のロケットスタート時間術が待っています。
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