はじめに
一九六〇年に、マクスウェル・マルツ博士の『0∽く∩工〇ハく∞m力z「一∩∽』が刊行されて以来、本の売上げは各国版合わせて全世界で、三〇〇〇万部以上に達しているcさらに、その本をもとに個人向けのオーデイオ・プログラムが多数開発され、企業や販売組織、またスポーツ・チーム向けの研修プログラムまでつくられた。
たとえば二〇〇〇年のオリンピツクでは、アメリカの馬術チームのコーチがサイコ=サバネティクスのテクニックを利用している。
そのコーチは、それまで長いことほかのチームでもこれを使っていた。サイコ=サイバネティクスは、さまざまな意味で独創的な自己改善のための「科学」だ。
私は主に次の三点の理由から、そう断言する。
第一に、マルツ博士は、個人が目標を達成できたりできなかったりする事実が、「自己イメージ」に完全に支配されていることを初めて把握し、著作を通じてそれを説明した。
第二に、マルツ博士以降、「自己改善」について書かれ、語られ、録音され、教えられているものはすべて、彼の著作がもとになっている。
一九六〇年以降、つい最近までの間に書かれた成功や自己改善をテーマとした本で、自己イメージや、それを改善したり操ったりするテクニック(特に視覚化やメンタル・リハーサルやリラクゼーションなど)を論じていないものを探し出すのは大変難しい。
いまなお、マルツ博士の研究成果が非常に重要なことがわかるだろう。
実際、スポーツ心理学というまだ歴史の浅い「科学」は、プロ・ゴルフアーや人気スポーツ選手、コーチ、オリンピツク選手などに大いに利用されており、あまり意識されることはないが、サイコ=サイバネテイクスあっての「科学」なのである。
第三に、サイコ=サイバネティクスは、成功についてただ哲学的に思索するのとは違い、明らかに科学的な手段だ。
単に考えるだけではなく、実行すべきことを示し、きちんと量で測れる結果をもたらすからである。
そしてサイコ=サィバネティクスのユニークな点は、何であれ、それまで難しかったことが簡単になるテクニックを提供してくれるところにある。
重要なのは、『「∽く∩工〇ハ≪∞m力z馴一∩∽』という最初の本が、宣伝や広告をほとんど打たなかったのに驚異的なロングセラーとなり、いまやこの分野の古典となっているという点だ。
一〇年前、二〇年前、三〇年前と変わらず現在も、営業部長は新人に、コーチは選手に、コンサルタントはクライアントに、こう言っている。
「この本を買って読みなさい」今回、私はあえてこの古典を改訂する。改訂にあたって、オリジナルの内容をほぼ反映させることにした。実際、大半の内容は変わっていない。少しばかり言葉や実例を改めた程度だ。
それをマルツ博士のほかの著作と一緒にまとめ、私自身がサイコ=サイバネティクスのテクニックを教えるなかで得た知見や教訓を加えた。
さらに、このテクニックを使っている多くの人から教わったり、このテクニックを参考にしているほかの書物から抜粋したりした例や話も載せた。
それでも全体を通して、本来のマルツ博士の語り口を維持するよう努めた。
一九六〇年以降、マルツ博士やその支持者たちは、サイコ=サイバネティクスの原理と概念を実践的な「メンタル・トレーニング・エクササイズ」に移し替えることに専念してきた。
そこで私は、その多くも取り入れた。
こうしてあらゆる要素を詰め込んだ本書は、これまで刊行されたなかで最も完成度の高いサイコ=サイバネティクスの本に間違いないだろう。
私とサイコ=サイバネテイクスの出会いは少年時代にさかのぼる。その頃、私にはかなりひどいどもリグセがあり、それを克服するためにサイコ=サイバネテイクスを使ったのだ。
そんな私が、いまや二〇年のキャリアをもつプロの講演者で、近頃は三万五〇〇〇人もの聴衆を前にして話し、年間ではのべ二〇万人を超える聴衆を相手に話している。
大人になってからも、このテクニツクに何度も立ち返って、販売やコンサルティングや、ビジネス一般に利用したり、さまざまな執筆活動――九冊の本を著し、毎月ニュースレターを発行し、五〇を超えるオーディオ・プログラムを作成し、それに本職で広告のコピーライターも務めている――に役立てたりしている。
たとえば私は、サイコ=サイバネティクスを利用して、自分の潜在意識にある種の命令を与えることができる。
夜寝る前や仮眠をとる前に、原稿を書くよう潜在意識に指示しておき、目が覚めるとすぐキーボードに向かって「ダウンロード」する。
すると、眠っている間に潜在意識に記されたことが一気に吐き出されるのだ。
また、先頃サルキという一人乗りの馬車に乗りはじめ、レースにも(四六歳で)出るようになったが、これにもサイコ=サイバネティクスのテクニックを大いに利用している。
これまで私は、たくさんの大金持ちの起業家と仕事をともにしてきた。そのなかには貧困や破産状態から身を起こした人もいれば、ゼロからスタートしてあっという間に帝国を築いた人もいる。
その大半の人たちは、サイコ=サイバネティクスのテクニックを使っている。そして多くは私と同様、マルツ博士の教えでそのテクニックを習得している。
私が作家・編集者。発行人としてサイコ=サイバネティクスに直接かかわりだしたのは、一九八〇年代の終わり頃だった。
そのとき私はマルツ博士の未亡人アン・マルツ氏と仕事をし、彼女と付き合いのあった大学とも協力して、マルツ博士の講演やラジオ番組やイン
タビューを収めたオーディオ・テープ集を作成した。
以来、サイコ=サイバネティクスをテーマとした、初めてのセールスパーソン向けの本『相手に嫌がられないセールス術(Nのヽ〇「の∽一い付∞⊃∩のイ〓一Do)』、オーディオ・プログラム『ニュー・サイコ=サイバネティクス(JのZのだっく〔す〇‐∩ヽσの3の生∩い)』、カセットブック・プログラム、一二週間の通信教育コース、月刊ニュースレター、特定の職業や業界や企業にターゲツトを絞ったプログラムや外国語版の作成に携わっている。
つまり私は、全人生をサイコ=サイバネティクスとともに生き、そのための仕事をし、その恩恵をこうむってきた。
アン・マルツ氏からは「このテーマであなたが書かれたものは、亡夫の書いたものとなかなか見分けがつかない」と評されたcこれは最大級の賛辞だc私は彼女の言うとおりであってほしいと思うし、この改訂版がまるでマルツ博士本人が書いたかのように、彼の言葉としてあなたの心に届くことを願ってやまない。
ダ´ン。S・ケヽ不^アィ
●注記*1サイコ=サイバネティクス…自動制御装置のこと。この装置は人格をもたない。自分自身で設定した目標の達成に向けて、自動的に運んでくれる。
人間は本来、成功するようにできている
世の中の少なくとも九五パーセントの人は、多少なりとも劣等感にさいなまれた人生を送っていることだろう。この劣等感は、成功と幸せに対して大きな障害となって立ちはだかっている。
ある意味、この地球上に住む誰もが、誰かに比べて劣っているといえる。
たとえば私は、タイガー・ウッズにゴルフでは勝てないし、NFLのどのクォーターバックと比べてもまっすぐに遠くまでボールを投げることはできない。
こんな例は挙げればきりがない。また、いくら大勢の聴衆の前で話す場数を踏んでいるからといって、私より巧みに人を惹きつける講演をする人は大勢いる。
それはわかっているが、それで劣等感を感じることはないし、挫折感を味わうこともない。その理由は、単純に彼らと自分を比較しようとしたりしないし、彼らほど上手にできないことがあるからといって自分をだめだとは思わないからだ。
街角の新聞売りから銀行の頭取に至るまで、どんな人に会っても、ある点では私よりその人のほうが優れていることもわかっている。
反対に彼らは、形成外科医の私のように顔の傷を治療することはできないし、ほかにも私のほうが上手な部分はたくさんある。だからといって、どちらも劣等感を抱いてはいないだろう。
劣等感というのは事実や経験に起因するのではなく、事実に対して下した判断や経験に対する評価から生じるのである。
たとえば、私はタイガー・ウッズやジャック・ニクラウスよリゴルフが下手なのは事実だ。だからといって、私が劣った人間になるわけではない。タイガー・ウッズも、形成外科医として見れば私より劣っている。
だが、人間として劣っているわけではない。すべては何を基準にして自分を判断するか。自分はどういう人間になりたいか、にかかっているのだ。
本書は、人間の「成功」とか「目標」とか「人生の豊かさ」といった分野を成し遂げるために、どのように振る舞うたらいいのかということについてまとめたものである。
ではなぜ、形成外科医である私が、畑違いと思われる分野について言及しようと思い立ったのか。私はこれまでに顔などの障害を取り除くため、数多くの患者に形成外科手術を行ってきた。
術後、外見が変わっただけで、まったく新しい人間に生まれ変わったように見える患者がいる一方、外見が変わったにもかかわらず、劣等感の消えない患者もいた(もちろん手術が失敗したということではない)。
この点に、私は非常に興味をもった。私の手のなかのメスで、治療できる患者とできない患者がいるのだ。この患者の心理に注目し、それを解明しようと考えて熱心に心理学を学んだ。
だが、その答えを引き出してくれたのは心理学ではなく、実はサイコ=サイバネティクスという科学理論だった。
心理学は、自己イメージとそれが人間の行動に果たす重要な役割を教えてはくれたものの、自己イメージがどのように人格・個人を形成するのか。また自己イメージが変わるとき、人間の神経系に何が生じるのか、ということにまでは言及してくれなかった。
しかし、サイコ=サイバネティクスは、「鉛筆を拾う」という単純な目標から、「ダイエットをする」、「ゴルフのスコアを上げる」、「売上げを倍増させる」、「大勢の人を前に話せる度胸を身につける」、「小説を書く」といった、ありとあらゆる目標を達成することがなぜ可能なのかを、科学的に解明してくれたのである。
とはいっても、私は本書でサイバネティクスという科学理論を説こうとは思わない。
むしろ個人の目標・願望といったものを達成するためのカギは何か。また、その仕組みや方法を著したいと考えている。
今、世の中にはグズな性格の克服から、ゴルフのスコアの向上に至るまで、ありとあらゆる事柄について、あなたを助けてくれるアイディアや情報、人々が満ちあふれている。
その多くがサイコ=サイバネティクスの理論を採用しているようだ。
なかには私のアイディアは、時代に先行していると言う人もいるだろうし、もう古くさいと言う人もいるだろう。
どう判断されようとも、第一に重要なのは、サイコ=サイバネティクスの基本的な約束事である「難しかったことが簡単に」が、疑いや議論の余地もないほど、確実に実証されているか否かということだ。
今のあなたにとって何が難しかろうと、また何をきっかけにこの本を読んでいようと、きちんとした心理学的な理論と習得しやすいメンタル・トレーニングのテクニックと、いくつかの実践的な手立てとを怠りなく利用するだけで、難しかったことを簡単なことに変えることができる。
なぜなら、人間は本来、成功するようにできているからである。
●注記*1サイバネティクス…「サイバネティクス」とは、「舵取り」を意味するギリシャ語を語源とする。第二次大戦以後、ミサイルの自動制御システムなどに応用された理論。
人工頭脳と訳されることが多いが、正確な訳とはいえない。
制御・通信・情報処理の問題や理論を、機械だけの理論などと枠を作らず、機械にも生物にも当てはまるものとして統一的に解釈する学問をさす。
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