「才は徳に及ばず」という言葉がある。「才」は才能の「才」である。才能がどんなに備わっていても、徳には全くかなわないという意味だ。
事業経営の根本に社長の徳がなければ、成ることも成らない。徳を欠く者が、人たる者の長となり、事業を興しても、永続繁栄を導くことなどできるわけがない。
偶然のいたずらで目先の繁栄は築けたとしても、やがて人が去り、財物が失われ、 一切がうたかたのごとく消えてしまう。徳をもたない小人が事業をもてあそべば、天の報いを受けて、悲惨な最期を遂げることの方が、むしろ圧倒的に多い。それは、古今東西の歴史が雄弁に物語っていることである。
昔は、火鉢というものがあって、その中に「五徳」を据え、ヤカンを乗せてお湯を沸かしたものである。いまの人はほとんど知らないだろうが、ちょうど五本の足があって、ヤカンを乗せても倒れない。安定しているのだ。これを五徳といった。
五徳とは、文字どおり「五つの徳」で、 一つ目が「温」、穏やかで優しいことである。二つ目が「良」、質がいいことで、幾代も徳を積むことによって、質がだんだん高まっていく。三つ目が「恭」、人を敬うことで、そうすることによって、自分も敬われるようになる。四つ目が「倹」、倹約をすることで、五つ目が「譲」、譲ることである。この五つを五徳という。徳を積むとは、 一言で言えば、人を助けることである。
村長さんのことを先に書いたが、社長であれば、自分の懐に飛び込んできた社員たち、あるいは社員の家族や自分の親族を助けていくことが、要するに、長たる者の務めである。
そうでなければ、徳を積んでいないことになる。世の中、ずいぶん変わって、日本でも多方面にわたってボランティアが出てきているくらいに、人助けが注目されるようになった。
資本主義の大きな欠点は、貧富の差が出ることである。それをどうやって補っていくか、また、自分の懐に飛び込んできた人たちをどうやって助けていくかということが、すなわち徳を積むことの第一である。社長業のコンセプトの第一に、徳を積むことがなくてはならない。
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