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五年後の無借金会社を目指して配分目標を設定する

次は、金融配分である。過去三期は六%←七%←八%と上昇しており、これが利益を圧迫

している要因となっていることが容易に読み取れよう。ここで一三二頁のバランスシートを

もう一度見直していただきたい。流動比率が五〇九%という非常識な数字になっているが、

その大きな原因が、D精機の借入金が短期借入金ではなく長期借入金であること、それが約

一〇億円にも達しているという点にあることは歴然としている。つまり、金融費が大幅に増

えている主な要因は、借入が増えていると同時に、高い金利のお金を借りているということ

だ。そこで、何とかこれを返済し、無借金経営にしたいというのがD社長の夢になったので

ある。ということであれば、できるかできないかはともかくとして、金融配分を五年後にゼ

ロにしたい。これは社長でなければできない大英断であろう。五年後の金融配分〇%という

数字は、そういう社長の夢を表現した数字である。

次の安全配分はどうだろうか。これは過去三期、一一。九%←二・〇%←〇。九%と大幅に

減少している。利益が薄くなっていることがこれへの配分を少なくしてきた原因だが、製造

業の場合は、これは問題だろう。たとえば、 一〇〇個の製品のオーダーをもらったときに、

一〇〇個分の材料で完璧に一〇〇個の製品ができるということはありえない。最低一%分の

ロスは見ておくべきだろう。そういうロス化する分も経費として準備しておかなければなら

ない。あるいは、機械は日進月歩する。普通の工作機械であれば一二年で償却するものを、

まだ償却期間がこない内に新しい機械と入れ替えなければならなくなることもあろう。その

とき出る売却損にも備えておかなければならない。製造業の場合は、そういうことへの備え

が二%というのが常識だ。逆に二%を大きく超えれば管理状態が放漫ということになるし、

それ以下の備えでは少なすぎる。やはり二%というのが常識的な数字であろうということか

ら、D社長は五年後の安全配分を二%としたわけである。

低下しているといえば、次の社会配分も、過去三期において一一。九%←八・九%←七・

二%と下がってきている。これは意識して下げたわけではなく、利益が減ってきたことによっ

て必然的に下がってきたわけだが、最低でも過去の利益を上回る会社にしたいということで

あれば、 一番利益の出ていた時期の社会配分である一一。九%を上回る税金は覚悟しなけれ

ばならないだろう。そこでD社長としては、舗装した表通りを堂々と歩きたいという夢を描

きつつ、 一五%という数字をここに書き入れてみたわけである。ただし税金というものは実

際に税金計算をしてみるまではよく分からない。したがってこの数字を導き出したのは、はっ

きりいって社長としての勘である。もっとも、現在の税率からみて蓄積配分を若千上回る配

分は必要となる。

次の資本配分も、過去三期は○ 。四%←○ ・四%←○ ・三%と推移してきているが、これ

からも積極的な資本の参加を求めて設備投資などを増やしていこうと思えば、従来の数字に

少しでも上乗せした配分にしていきたい。その思いが表に書き入れた○ ・五%という数字に

なったわけである。

また、次の経営者配分については、五・四%←五・三%←五。一%というように過去三年間は低下してきている。常識的にいえば、中小企業の場合、五。一%というのが経営者配分

としては妥当な線だろう。D社長は、利益の出る会社にしたいということから、絶対額を増

やしながらパーセンテージは下げていきたいという考えに立ち、五年先は四・〇%ぐらいに

してみたいと一応設定してみた。

そして最後に、これまで書き入れてきた付加価値配分比率の合計を、全体の一〇〇%から

引いた残りが蓄積配分ということになる。それが一四・五%という数字だ。

これまで述べてきた配分の比率については、会社の業種や企業の規模によって相当の変化

がある。製造業なのか商社なのか流通業なのか、あるいは人を大勢使う会社なのか人を使わ

ないですむ会社なのか、設備をたくさん使う会社なのか使わない会社なのか、会社によって

かなり異なってこようc

ただ、どの会社にも共通しているのがこの蓄積配分である。第二章でも指摘したように、

これは家庭における貯金を考えてみれば分かりやすい。もちろん収入の多い人と少ない人と

では若千の差はあるだろうが、将来に備えて貯金をするというのであれば、私生活において

は、だいたい年収の一〇%というのが常識的なアベレージではなかろうか。

企業も同じだ。それほど常識から外れたことはありえない。将来に対する備えとして、で

きれば一〇%ぐらいの貯蓄は毎年していきたい。これが企業として考えるべき最低の蓄積配

分ということになろう。

そこで、自分の会社を標準以上のいい会社にするためには、蓄積配分を少なくとも

一二%、あるいは一五%にしたい。D社長は、いろいろ試行錯誤しながらそう考えていたわ

けだが、五年後の蓄積配分が一四・五%というのは、そういう意味では一応妥当な数字とい

えるだろう。それに、この表には出ていないが、過去の一時期においてD精機は、 一〇%の

蓄積配分をした実績をもつ会社なのだ。そういう実績からいっても、 一四・五%というの

は、やや高めとはいえ、希望としては決して常識を外れた数字ではない。 一気に二〇%とか

三〇%にもっていこうというのであれば問題だが、そうではない。そこで訂正することなく、

蓄積配分を一四・五%としたわけである。

こうしてD社長が五年後に目標とする付加価値配分比率はすべて書き入れられ、その合計

が一〇〇%となったわけである。

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