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五 企業の格差はどこでつくのか

人は、生まれながらにして成功者・勇者であったわけではない。孔子ですら生まれながらにして聖人であったわけではない。

世界に誇る現代の大企業も、創業からすでに大を成していたわけではない。いずれも、小や弱から出発しているわけで、スタートの時は違っても、生まれながらにして大という企業はない。

もっとも小売業などは小規模から出発できるが、製鉄・製油・電気や鉄道のように零細では力不足ということもある。

こうした条件を別にすれば、出発の時は違ってもスタート時の条件に変わることはない。

にもかかわらず、次第に大小・強弱の差が大きくついてくる。さらに大には大なりに、小にも小なりにそれぞれに優劣・強弱の差がついていく。では、どこで差がつくのかということである。

これらについて私なりに考えたことがある。

企業に格差が生ずる原因は、つきるところは、人と士心の差ということになるのではないかと。

その最大のものは、経営する人の「志」の差である。「志あれば道あり」とか。小さな目的しかもたない人に大きな道が開かれることはない。大志あってこそ大道は開かれるものである。一家の生活が支えられれば満足という人に、大事業を計画する考えは出ない。高い理想を掲げて努めれば、及ばずとも、水準を高めることができる。

小で満足してしまう者は、満足すれば現状を守ることを重点に考える。進歩に自らブレーキをかけるのに対し、大を志す人は、常に守り三分、攻撃七分の姿勢をとる。ここからも小志に差をつけることになる。また、小さく守ろうとする者は、城を守るにしても、まず、肉 狩親、親戚などを味方にするため、それ以外の者には、経営に介入することを許さない。これでは、将来ある人材の協力を求めることはできない。

大志ある者は、むしろ一家一族を退けても優れた人材を強く求める。ここに人的格差が生じてくる。これは、私情を先にするか、会社の発展という公事を優先するか、経営する者の意識の差とも考えられよう。次に経営者の素質の問題がある。

大、中小企業の経営者に人格、能力、指導力、先見力など生まれながらの素質に後でみるほどの大きな格差があるとは考えられない。問題は、その補給にあるといえる。

たとえば、大企業の場合、役員の交替は、二期四年、三期六年が限度で、短ければ一期二年の短期である。ということは、技術革新時代、国際化時代といえば、それに対応できる人材を登用している。トップの任期も短い。

いずれも「後進に道をゆずる」としているが、端的にいえば「時代に合った人」に、「時代に対応できる知恵と勇気のだせる人」に席をゆずるということである。

日は悪いが、疲れたエンジンを最新エンジンに取り替えるということである。

これに対して、中小の場合は、経営者の任期が長い。いかに優れた人であっても、知力体カにも限界がある。進歩の激しい時代には気力だけでは用は足らなくなる。大企業が、近代的な感覚をもつ、新進気鋭のリレー選手をくり出してくる。

それに対して、長い間走りつづけてきた人間が競走をするのである。長い間走る人間が、新時代に即応するだけの才知を次々に補給しつづけるなら、ついていくだけはできようが、それまで怠っているとしたらその勝敗は明らかといえるだろう。ここで大と小の差はますますついてくることになる。

さらに、中小の大に遅れる理由の一つに、社内における、自己研鑽の差がある。

たとえば、中小の場合、多くは、中間管理職、役員登用についても、社長のおめがねにかなえばよい。長く、まじめに勤めれば役にありつけるぐらいに社員が考えている。社長にしても、良い物を多く生産し、より多く売り、利益を出せばよい、という具合で人の研鑽に不熱心である。昔の徒弟制度そのまま、長幼の差が大きい。これでは、いわゆる職人の親方としては十分といえようが、経営者としては不足である。

しかも、中小の場合は経営者の席は与えられるものであって、かち取るものとはしていない。したがって、社員においても、同僚、先後輩と競争することも少なくてすむ。ところが大企業ともなると、そう単純なものではない。

昔は大卒で課長職にありつける者が七、八十%とかいわれていたが近年では二、三十%に一低下しているだろう。課長を卒業して部長になれる者にかけられる、フルイの目はさらに大きくなる。その目にとまった者が取締役候補者ということになる。それらは、長年切磋琢磨された一騎当千のつわものだけとなる。大企業ともなれば、 一騎当千どころか、 一騎万にあたる者が役員に選ばれる。自然に椅子が回ってくる場とは大きく違ってくる。ここらからも人的格差がついてくるのではないかと思う。

しかし、大企業にも人的に悩みがある。いわゆる精神病の一種で、最近流行の大企業病である。この病気に冒されることなく、大に向かって進むことが最も賢明な策といえるだろう。

いずれにせよ、中小の経営者にとっては、素質補給のハンデを頭に入れながら、その差を少しでもつめられるように研鑽しつづけることが大事ではないか。要は、経営者の士心次第ということになる。

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