【急所13】絶対に行なってはいけない改善:安全が損なわれることと、お客様に不利益になる改善は、絶対に行なってはならない。
社員皆で改善案を出し合いながら改善活動を進めて行くと、「こうしたら楽になる」とか「一手間減らせる」といったアイデアがたくさん出てくるようになる。
作業が少しでも楽になることは大変喜ばしいことだ。楽になればスピードも上げられるし、品質も安定して良くなるし、手間が減ればコストも下
つか
がるし作業者も疲れない…といいことずくめである。
ただし、手間を減らしたことで作業者の安全が損なわれるとしたら話は別だ。万一、事故を起こしたら、作業者と会社の未来が無くなるかもしれない。安全はすべてにおいて優先される第一条件だ。また品質や納期などを含めて、お客様に少しでも不利益になるとしたら、それは改善とは言わない。単なる省略であり、むしろ改悪である。
【急所14】キレイな職場とは:要るものしかない職場をキレイな職場という。
要るものと要らないモノの区別は難しい。ある人にとって要るモノでも別の人には要らないモノということがある。家庭内のことなら好きに決めればいいが、職場では明確な基準がある。
「スグ使うモノ=要るモノ」「そうでないモノ=要らないモノ」と正しい基準に照らせば、断然、整理・整頓が進めやすくなる。人中心でなく、モノ中心で判断するのでバラツキがなくなるからだ。
ただし、「スグ」という言葉には幅がある。改善を始めたばかりの会社では「一カ月以内」くらいだが、改善の進んだ会社では「今日中に使うモノ」に短縮されることもある。仕掛りから納品まで一年以上かかる会社と生鮮品を扱うところでもスグの基準は違う。いずれにしろ、すぐ使うモノ以外何もない職場はキレイで、誰が見てもすっきりとして使いやすい。
【急所15】整理整頓の基準:理俎的な整理整領された状態とは、叉妥なモノが一動作で取り出せる状態である。
5Sの中に、整理・整頓があるが、業種や業態、また各社によって基準は様々だ。しかし、工場における理想的な整理整頓された状態には基準がある。必要なモノが一動作で取り出せる状態だ。
自宅の場合、普段使わないモノの収納もあるし、捨てられないモノもある。見た目の美しさも重要なので、タンスやクローゼットに色々なモノが詰め込まれているのも普通だ。個人の自由なので好きにやればいい。
しかし、工場においては、棚やロッカーに置くにしても、自宅と違って収納の扉やカバーなどは不要だ。扉がなければ開ける動作が不要で一動作で取り出せる。自宅と工場ではキレイの基準が違うように、整理整頓された状態の理想型も違うのだ。そもそも不要品はあってはならないし、要るモノだけが使いやすい状態で揃っていることが重要だ。
【急所16】清掃。清潔の基準:お客様を、自信をもっておユえできるレベルを、
清掃が行き届いた清潔な状態という。
清掃や清潔のレベルは各社様々だ。タンクをピカビカに磨き上げて鏡のような状態を保つ工場もあれば、もっぱら掃き掃除くらいしかしない機械メーカーもある。業種によって必要度合も大きく違うので、金属加工の工場で、薬品メlヵl並みの基準は常識的には不要だ。だから清掃。清潔の基準をどの程度にすればいいのか悩んでいる工場は結構多い。
しかし、実は基準は簡単だ。自分たちのお客様や、これからお客様になってもらいたい方を工場に招くとき、自信をもってお迎えできるレベルが、清掃が行き届いた清潔な状態の基準値だ。
お客様が工場を見て、「汚いな…」と思うようなら受注は難しくなるし、買い叩かれるかもしれない。そうならないように清掃が行き届いた清潔な状態にしよう。
【急所17】モノの積み方:めせん日線より高くモノを積むな。
モノをやたらに高く積み上げている工場が結構多い。狭いスペースをうくふう
まく使うための工夫と思っているかもしれないが、安全と効率のためにも、工場やオフィスでは、目線より高くモノを積んではいけない。
当たり前だが、日線より高く積むと人の背丈より高くなる。上がどうなっているか見えないし、倒れてきたら下敷きになる。移動させるにも、高く積んだままだと危ないし、フォークリフトでも前が見えないから結局、分けて運ぶしかない。オフィスでも、座った状態で目線より高くモノが積まれていると、互いに顔が見えないので意思疎通が悪くなる。
そもそも、モノが高く積み上がっているということは、在庫や部品、仕掛品や書類など、それだけ何かが滞留している証拠で、そこに問題が潜んでいると考えるべきなのだ。
【急所18】モノの数え方:かぞ数えるな、形にして見よ。
現場で作業を観察していると、数を数えている場面に頻繁にでくわす。出荷前になって数が合わないとか、最終確認といって二、二人で何度も数え直しているということも珍しくない。
人間は数を数えるのが得意ではない。少しの数ならともかく、 一〇を越えるような数を正確に数えようとすると、とたんに難しくなる。
一〇個の部品が必要なら、 一〇の仕切りの箱を用意すれば九にも一一にもならない。箱を積むにも決まった置き方と順番を決めておけば、形を見ただけで数が分かる。
そもそも、数えるのは造った数が分からないか、できあがりの数にバラつきがあるかのいずれかだ。基準になる材料の数とできる数が一致すれば数えなくて済むし、最終確認も形で確認すれば済む。
【急所19】資材の買い方:ロットで買うな、妥るだけ買え。
子供にお使いで「一箱一〇〇円のティッシュペーパーを買ってきて」と頼んで、「一〇〇箱のまとめ買いなら一箱五〇円で得だった」と言って、巨大な箱を持って帰ってきたらヵめるだろうか。
確かにいつかは使い切るだろう。だが、当面そんな量は不要だ。置き場に困るし、湿気で悪くなるかもしれない。たくさんあれば粗雑に使いはじめるし、何より一〇〇円で済んだ出費が五千円に膨らんだ。
個人であれば誰でも簡単に理解できることが、会社だとなぜか単価の安さに目がくらむ。そして現場には使われない購入品が山と積まれ、運搬と管理、ムダ使いと廃棄を生み、会社のキャッシュを減らす。
見かけのコストダウンにごまかされてはいけない。当面要るだけを安く買うことが、最も効率よくムダがない買い方なのだ。
【急所20】工場を歩くときの視点:かたきボルトを見たら親の仇と思え。
工場の床は、品質と安全のバロメーターである。通路がしっかりと確保されていて、モノも出っ張っていなければ衝突事故は起きないし、ゴミやモノが一切落ちていなければ、品質問題はまず起きない。工場で一番落ちていてはならないのがボルトやナットだ。製品に取り付
ゆる ころ
けたものが緩んだか、組み付け忘れたものが床に転がったか、設備の機械や運搬道具などの一部が故障して出てきたのか、いずれにしてもボルトが転がっているという事実は、大問題を意味しているのだ。
たかがボルト一本と甘く見てはならない。ボルトを見たら親の仇と思って、徹底して原因を究明することだ。金属破片一つ入っただけで食品工場なら会社存亡の危機になる。床に何が落ちているか、掃除をすることも重要だが、落ちていたモノの原因を考えることはもっと重要である。
【急所21】身体の活用:腰が入っているか。
プロとアマチュアの違いは腰の入り方である。武道はもちろん、スポーツでもへっぴり腰では上手くならないし勝てるようにならない。モノづくりでもまったく同じだ。現場を歩いて作業者の様子を見てみれば、どんな作業をしていても、後姿だけで熟練度はすぐに分かってしまう。
一流の作業者は、すべての動作において必ず腰が入っている。ネジ締めやバリ取りなどのちょっとした作業でも、上手な人は決して手だけの作業ではなく、しっかりと腰を入れて仕事をしている。
腰が入らず、腰をかがめたり逆にそり返った姿勢で仕事を続ければ、余計に疲労するし微妙な力の入れ方も難しくなる。作業の習熟で腰が入るようになるのが一番だが、足をふんばり易い作業台の導入など、誰でも自然に腰が入れられる作業状況をつくることも大切である。
【急所22】改善の優先順位:優先順位は、安全第一、口”賃第二、リードタイムとコストは三の次。
安全第一を掲げている工場で、熟練の作業者が危ない仕事をしている。リードタイム優先だからと、検査をすっ飛ばして出荷してしまう。優先順位が決まっていない会社は、そのつど判断がぶれるので、事故を起こすし全体の改善活動のスピードも遅い。
安全と品質は経営の大前提だ。ケガや事故は起きてからでは遅く、安全はすべてにおいて最優先されるべきなのだ。また、品質が下がれば、どれ
つく
だけ速く造ってコストダウンに成功しても、不良が増え、返品が増え、信用は下がり、儲けはなくなる。
安全も品質も犠牲にせず、両方とも今のレベルを維持、あるいはより良くした上でリードタイムやコストを下げるのだから難しいが、ここで逃げてはならないのだ。
【急所23】コミュニケーションのとり方
コミュニケーションは、現場で現物を前に、声を出して行なえ。
人間は、自分が何を知らないかすら知らないし、ましてや他人が何を知らないかなど到底分からない。だから、「このことは知っているだろう」という思い込みによるミスや混乱が生じたりする。
どんなモノもたった一人では造れない。多くの人が関わって製品となる。だから、コミュニケーションは「現場で現物を前に声を出して行な
さんげん
う」ことが重要なのだ。「現場。現物。現実」これを三現主義という。現場に集まり、 一つの製品を前にして、指さしたり触ったりしながら話
ごかい ぼくめつ
をすれば、あいまいな事がなくなり、思い違いや誤解も撲滅できる。
さらに、現場で真面目な雑談をしていると、驚くような意見が何気なく出てくることがある。三現主義によるコミュニケーションは、原則であると同時に、アイデアを生み出す原動力なのだ。
【急所24】会社を変える改善:会社を変えるのは立派な改善ではない。
誰でも実行できる、簡単な改善やモノマネ改善こそが、会社を変える。
改善において大切なことは「実際に行なわれる」ことである。どんな簡単な改善でも良いし、モノマネでも良い。むしろ、モノマネを
しょうれい ほ
奨励して実行した人をどんどん褒めてあげるほうがいい。良いモノマネを皆が実行することが出来れば、あっという間に改善が広まり、同時に従業員全員に会社変革の役割と方向性が明確になるからだ。改善は全員でやることが重要だ。全員が達成感を持つことで、作業者の
い いっしゅん
居場所もでき、 一瞬で会社が変わっていく。
改善をやるからには効果が出なければ意味がないとか、改善として認められるためには独創的でなければならない、などと言って改善を難しく考えていたり、社員に感じさせているとしたら、まずその考えを改善すべきである。
【急所25】実行力
一〇〇の理屈やアイデアよりも、一つ、その場で実行する方が、一〇〇倍価値がある
現場改善の最大の敵は評論家である。世の中にはアイデアを出すことで満足し、誇らしげにしている人がいるが、実行を伴わない理屈やアイデアは高みの見物客と同じで何の役にも立たない。
世の中やってみなければ分からないことばかりで、想定外の事が起きたりもする。成功の前例がなければ足がすくむものだ。だから、失敗を恐れず、実際に実行した人はアイデアだけの人より一〇〇倍価値がある。現場改善に本当に必要なものは、チエと筋肉である。思いついた改善アイデアや、すぐにできそうなことは即やってみることだ。
もと もど
では失敗したらどうするか?・その時は元に戻せばよい。自分の手足でやつたことだから簡単に元に戻る。そしてその過程を通じてチエが生まれ、前に進める。チエはこうして生まれる。
【急所26】改善に必要なこと改善に叉要なことは、
自発的な量とスピードと継続性である。
改善とは簡単に言えば、物事を良くしていくことである。
だから、改善案が少なければ良くなる箇所も少ないし、モタモタしていたら効果も出にくい。 一過性の活動ならアッという間に元に戻ってしまう。改善には、量とスピードと継続性が必要なのだ。
小さな改善案でも月に一〇件実行したら、年間一二〇件もの改善になる。三〇人で行なえば、三六〇〇件にもなる。取るに足らないような小さな改善でも、膨大な積み重ねにより会社は大きく変わっていく。そして強い会社ほど、これを一〇年、二〇年、三〇年…と続けていく。
全社をあげて、進んで改善案が出される仕組みになっているか、進んでスグ実施される仕組みになっているか、進んで継続していく仕組みになっているか…。強い会社には必ずこの三点が揃っている。
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