分社経営の強み
なぜ分社するか……会社には、業績的にみて適正規模というのがあるからだ。誰が何と言おうとも、適正規模がある。
年商三十億円ぐらいの規模で儲かる会社もあれば、百億円ぐらいがベストで、それを超えるとあまり儲からなくなるという会社もある。そういうことで物事を判断して、常に儲かる規模にしておく。
分社には、いろいろな含蓄がある。なぜ、A社では三十億円が儲かる規模で、B社では百億円が儲かる規模で、C社になると十億円が一番いいということになるのか……それは、それぞれの社長の性格や世界観によって違いがでてくるからである。
つまり、十億円ぐらいまでは社長一人が機関車になって走っていけば、会社はうまくいく。ところが、三十億円ぐらいになると、社長だけではうまくいかなくなる。社長と役員の力が相侯って、会社が動いていくようになる。
会社の規模が二十億円を超えて六十億円ぐらいまでになると、社長個人と役員にプラスして部課長クラスに優秀な人間がいないとだめになる。
つまり、規模の拡大によって、社長の主要な役割である決定さえもある程度まで分業化していく必要性が起こる。スムーズに決定できないくらいの規模になったら、分社したほうがいい。そういうことが、分社する理由の一つである。
もう一つ、分社は、本来、業績をよくするためにやるのだが、もちろん、業績が良くても分社したほうがいい場合がある。
百億円を超えると、仕事の分担を大きく変えていかなければならなくなる。社長は、理念とか長期計画の分野に専念する。役員は一年ぐらいの戦略を立案し、実行を部長以下に任せる。
三百億円以上になると、会議で決めることがますます多くなる。社長は、政治的に動くことが仕事の中心となる。そのように、自分自身も変えていかなければならない。自己の変革が嫌だとか、あるいはもっと事業を活性化して、どんどん多角化していこうというのであれば、分社を積極的に進めていくことが必要だ。
分社は、手法的には社内分社からスタートするとやりやすく、確実である。子会社をつくる時には、まず社内で株式会社と同じような独立したセクションを設け、そこの責任者を「社長」と呼ばせる。しかし、実質的にはまだ分社していないという形を一年ぐらい続ける。それから、独立をさせて、正式に分社することが重要なポイントとなる。
なぜかと言えば、分社しても自分がオーナーを続けたい場合は、そこの社長が自分に対する忠誠心をもっているかどうかを見極める必要があるからだ。
人格的に底が浅くて、オーナーを立てないようなら、分社の社長にするなどもってのほかである。だから、社内分社で一年間くらい様子を見て、もし、不適当だと判断したならば、分社しなくても構わない。人物、人となりをよく見てから分社すべきだ。
分社する場合でも、自分が会長をやり、少なくても五〇%以上の株をオーナーとして持っておくようにする。これは、大切なポイントである。持ち株の比率はオーナーの地位にかかわるからだ。
分社で独立した社長に、株を全く保持させなくても一向に差し支えない。持たせる場合でも、一〇%以内とする。たとえば、一〇%持たせたとして、その株を退職時に時価評価で買い戻してやれば、最初、五百円株だったものでも何十倍になって本人の退職金に上乗せされるから、決して悪い待遇ではない。
分社していく方針なら、今後、子会社がたくさんできていくわけだから、最初からそういう規則をきちっとつくっておく必要がある。社員持ち株制度を導入する際にも、 一〇%以下が大原則である。その場合にも、必ず白紙委任状を取る。要するに、退職する時、すべての株を時価評価できちんと買い取ってあげる。絶対、第二者に回さないようにさせる。万一、ヤクザなどに回ったなら、それこそ一大事だ。そんなことがないように、自紙委任状を取って、条件を書いておく。
それから、配当優先株というのがある。これは、株主としての議決権を一切持たせないという株で、発行株数の三分の一まで発行できる。この株をもっていても、議決には参加できない。したがって、本当の株主ではない。議決権は持てないが、あとから時価評価で買ってもらえるメリットはある。議決権がないものであれば、 一〇%を越えても多少はいい。
いずれにしろ、社員にあまりたくさんの株を持たせてはいけない。多く持たせるほうが悪いのであって、ものの勢いでだんだんエスカレートしていく。二〇%なんていうのは論外だ。オーナーを続けるためには、そういうことが大切である。分社した会社が、社長の経営能力不足で潰れた場合に、オーナーはどう対処すべきか。
独立採算制の社内分社で、二、三年やってみたが、赤字をだしたという場合には、そこの「社長」を一旦、本社に戻し、もう一度二、三年かけてしっかり実力をつけさせてやると、本格的に独立してやっていけるようになることも多い。そういう対応が大切だ。いきなり独立させた場合には、分社が潰れたら潰れたで、迷わず潰す以外にない。その場合、社員はすべて引き取る。借金もすべて本社が持つようにすれば、どこにも迷惑はかからない。分社するからには、予めいざという場合の周囲に対する影響を考えておく必要がある。
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