MENU

事業の安定を続ける

次に、安定である。やはり、安定にも二つある。安定とは、数字であらわすものではない。数字は、過去とか未来のことだ。くて、現実はどうなっているかを考えるということである。

自分が売っている商品とかサービスを、同じお客様が十年でも、二十年でも、絵空事ではな

三十年でも、五十年でも繰り返し繰り返し買ってくれることを安定という。それ以外の安定は世の中にない。同じお客様ということが最大のポイントである。いつでも新規開拓しなければならない会社は、長く続かない。

たとえば、TBSブリタニカがある。ブリタニカは、アメリカからサッと来て、サッと引き揚げていった……なぜか。

高額な大英百科事典、全セットで百万円を超えるようなものを買う人が、人口一億二千余りの日本の中で何人いるだろうと計算し、歩合給の営業マンをつかって猛烈に売らせた。同じものを三セット買う人はいないから、やがて売り尽くしたら、そこでパッと会社をたたんで、引き揚げていった。これが定石である。

同じお客様に永久に買っていただくためには、商品自体がある種の繰り返しを起こさなければならない。その点、消耗品は楽である。自然に繰り返しが起こるからである。

しかし、繰り返さない商品を扱っていたらどうするか。耐久消費財のような繰り返す頻度がないとか、少ない商品を扱っていたら、実にむずかしい。その場合は、必ず商品を組み合わせていくことを忘れてはならない。いくつもいくつも、絶えず商品を組み合わせていって、事業の安定存立の基盤をきちんと守る。

つまり、商品自体の繰り返しだけではなく、「繰り返すシステム」を事業のなかに取り入れなければならない。

たとえば、電話機の業界でプッシュホンを売っている会社を指導したことがある。プッシュホンは、 一回買えば、お客はしばらく買わない。 一万戸の住宅地にどんどん売って、 一万個売ってしまえば、会社はそこでおしまいになる。だから、業績が落ちて、社長が私のところへ駆け込んで来た。

「繰り返してずっと買ってもらえる別の商品を探さないと、行き詰まってしまう」「いや、そうじゃない。繰り返さないものでもいいから、組み合わせなさい」と言って、同じ家庭に何を売ればいいかを考えさせ、ピックアップしたものがカラオケとか、ワープロである。そういうものを同じ家庭に次々に売っていって、プッシュホン以上に売り上げ、業績がよくなった。こういう戦略を採ることが「繰り返すシステム」を採るということである。

消耗品は、そのまま繰り返していく。化粧品とかヤクルトとか新聞とかは、みんなそうなっている。

ヤクルトは、訪問販売が主体である。繰り返し購入する商品なのに、なぜ店頭販売をしないのか。それは、日替わり商品で、今日はのどが渇いていて買うかもしれないが、明日は渇いていないから買わないかもしれない。このように上下波動があって不安定だからである。

それにもかかわらず、プロ野球のチームを持つぐらいに儲かっている。なぜヤクルトが安定的なのかといえば、ヤクルトおばさんという営業レディを採用し、要するに飲んでも飲まなくても毎日毎日コンスタントに売れるシステムをつくっているからである。

私は出張が多いのだが、美人のヤクルトおばさんが私の自宅に勧誘に来たので、ついつい契約したとする。たまの日曜日に冷蔵庫を開けたら、そこに二十本もヤクルトがたまっていた。それでも、契約しているから、月末になると、飲んでも、飲まなくても、ヤクルトおばさんが集金にやって来て、丸まる一か月分を払わぎるを得ない。次の月も、次の月もである。

ヤクルトは、飲んでも飲まなくても払ってもらうシステムを、確実に取り入れているのだ。ホテルでも、毎日、宴会が詰まっているとは限らない。部屋も空いている時がある。売上をあげるには、宴会場も、部屋も詰めないといけない。非常に不安定である。景気が絶えずいいとは限らない。昨今のように景気が悪いと、法人は創業何周年とか社長就任のパーティーなどの行事をあまりやらない。

そこで、「ホテルは不安定だからやりたくない。同じ資本投下をするのだったら、賃貸のアパートやマンションをつくる」と言って、新事業に乗り出したとする。

そうすると、ホテルのようにフロントマンも営業マンも、何にも必要ない。最初、地元の非常に有力な不動産の流通業者と提携して、入居者を集める。入居者を入れてしまえば、ホテルのような日替わり。時間替わり商品ではなく、月替わり、あるいは年替わり商品になる。入居者が海外旅行して帰ってきても、「十日間いなかったから、十日分、家賃を引いてくれ」なんて言わない。いつも銀行から家賃が自動的に引き落とされる。それで、安定的に売上があがる。

こういうのは、全部システムだ。そういうシステムの研究が、社長たちは、非常に遅れている。

それから、安定の二番目は、売り物を磨くことである。

売り物には、商品とかサービスとか、値段が安いとか、納期とか、品質とか、デザインとか、親切とか、いろいろある。とにかく、これらをライバルよりも磨く。ライバルよりも数段磨くことで、お客様が繰り返し買ってくれるということを次代に教える。

安定の二番目は、お客様第一主義である。究極は、お客様に好かれるすべてのことを行うことである。そうすれば、お客様は繰り返し買ってくれる。

私は、東京では皇居前のパレスホテルによく泊まる。なぜかというと、フロントでもドアマンでも、スタッフ全員が私を知っていて、「牟田様」と私の名前を呼ぶ。泊まることになって、部屋へ入ると、スリッパに「牟田様用」と書いてある。浴衣にもパジャマにもみんな名前が書いてある。こうなると、よそへ泊まりに行かない。どこの会社でもこのような対応をして欲しいが、それが無理ならば、最低限でも、お客様の名前を呼ぶくらいは全社員に徹底しておかなければならない。そういうことを、きちっと教えるべきだ。以上をまとめると、安定にも、やはり二つある。

「繰り返すシステムを構築すること」「売り物を磨くこと」「お客様第一主義でやること」、この二つがある。

成長にも二つあった。これを必ず教えてほしい。 一種の哲学として、社長自身が必ず教え続ける。成長拡大と安定を、幾代にもわたって教え続けるべきだ。成長拡大と安定というコンセプトは、二つとも、私が長い問コンサルティングをやってきて会得したものだ。

拙著『社長業のすすめ方』を読んでいただきたい。

未来永劫に亙って自社の繁栄を築くとは、成長拡大と安定を同時にやり続けることである。どんなにたくさんの会社をみても、繁栄の究極は、そういうことだとしか感じられない。そのこと以外の何物でもない。

だから、成長拡大と安定を、徹頭徹尾、追求して欲しい。永久に増客をする。永久に売価と粗利と数量を検討する。永久に経営の体質を検討する。永久に繰り返すシステムを研究する。永久に売り物を磨く。永久にお客様第一主義を貫く。

ただし、お客様第一主義という安定だけをやっていたら、会社は大きくならない。いい会社にはなっても、やがてじり貧になっていく。そうかといって、成長拡大だけをやっていたら、お客様はライバルに奪われてしまう。だから、両方を同時にやる。念を押すが、是非とも両方を同時にやってもらいたい。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次