いつの時代でも一番トップの位置にいる者と、リスク負担の責任を遂行していく者だけが
利益を得られる。機能、商品ともになんら他と特別の差異も発揮せず、他社の後からついて
いく者は、手にする利益が薄いのは当然である。
小売業でも卸売業でもメーカーでも、垂直志向で、上流を目指して商品化、商品づくりに
努めるべきである。その望ましい方法は「自らの企画」「自らの仕様書」「自らのストーリー(理
由)」、さらに「自らの個性」「自らの計算と判断」をもとに、「他の技術」「他の土地・建物、機械、
設備」「他の人材」を利用させてもらって、「自社の新商品。改良商品L自社のブランド・責任
商品」を育成していくことである。
バブルがスタートする直前の昭和六三年(一九八八)から私は著書の『先効果・後効率主義
の経営』で、チェーン展開する場合の要件の一つとして、価格を業界常識である通常価格の
七〇%くらいまで下げることが鉄則だとした。しかもその七〇%価格で、 一定以上の品質を
維持し、利益が十分に確保できることが必要である。
この理論は、チェーンストアだけでなく、他の業態の店でも商品価格設定に際しての基本
とすべきことである。小売業でも、卸売業やメーカーにしても、安ければ売れるとは限らな
いが、価格破壊ができる体質にしなければならない。また、それだけのコストダウンをしな
ければ、粗利益高も獲得できないと申し上げてきた。
価格破壊は、大量生産。大量販売体制を前提にしており、その効果が、①店舗(得意先)増
大能力←システムの完成← マネジメントの完成、②顧客吸引力←コストパフォーマンス値(品
質・―.価格)の拡大― となって威力を発揮する。この条件に絶えず磨きをかけていかないと、
販売量は増えず、売上げも上がらない。これでなれけばコンスタントな価格破壊はできない。
ここで注意していただきたいことは、「安売り」と「価格破壊」は違うという点である。「価格
破壊」は常識的な市場価格が一〇〇円である商品を七〇円で売り、なおかつ適正粗利益率を
確保できるシステムなり管理体制が出来上がっていなければならない。小売業でも、飲食サー
ビス業でも、また問屋業、メーカーでも、価格破壊を行なおうとすれば、川下にまた川上に
との垂直志向を実践しなくては実現できない。さらに必要ならば、直接に産地や海外の加工
地まで出かけていかねばならない。
例えばいま、外食産業のなかのハンバーグ戦争で考えてみよう。価格破壊だからといつて、
ハンバーガーチェーンが、パンメーカーにバンズを安くせよ、ハムメーカーにパティを安く
せよ、さらにチーズメーカー、ソースメーカー、青果問屋にこれこれの価格以下でないと仕
入れないといった具合に、もっばら卸売業者やメーカーを胴喝するようなやり方だけで、永
続的な価格破壊がやれるだろうか。
量、価格のうえで大きな割合を占めるパティとかバンズについて、自らがマーチャンダイ
ジングを行ない、科学的な方法でコストダウンを追求、実現してこそ、真の価格破壊は達成
される。これを怠れば、かつては流通革命の旗手として安売り。価格破壊で消費者から支持
されたが、いまでは安かろう悪かろうで顧客からソッポを向かれて、ただの単なるメーカー
や問屋いじめの大型小売店になり下がってしまったスーパーと同じ運命をたどることになろ
う。
力に任せて仕入れ値を買いたたくだけの安易な自社ブランド商品(PB)作戦は、大手メー
カー製品(NB)の軍門に下るという無残な結果に終わってしまう。
伝統ある家具業界も、前述した日本酒の業界と同じく流通チャネルが長く、また複雑であ
る。そのなかにあって、家具のニトリ・IDC大塚家具。イケアの大手家具小売店は、図表
611に示したように、これらの革新的フロンティア家具、産地問屋(輸入商社)と消費地問

屋(専門問屋)、および大型小売店の
各々の機能をすべて取り込んだ大型
商業施設を展開している。また、今
日では、取扱商品の六〇%が海外輸
入品であり、商品企画、ロット発注、
直接輸入、そして運輸のすべてを垂
直方式で行ない、直接小売業者が店
頭での顧客のニーズを吸収した高級
商品をより安く提供する、革新的な
ビジネスシステムに挑戦している。
川下、川上へ手を伸ばす方式は垂
直拡大(プロセスミックス)と呼ば
れ、図表61 2のように素材メー
カーが最終商品にまで、消費財メー
カーが原材料の仕入れ分野まで手を
拡げることである。
この方式をとることにより納品スピー
ド(回転率の速さ)、商品・製品の差別化、
開発力、マーチャンダイジングカの強化
が図れ、私は、コスト低減はこれしかな
いと信じている。
しかし、仕事の仕組みや流し方、つま
リビジネスコミュニケーション手段(情
報伝達手段)が各部門や各企業だけにス
トックされ、情報が部門間、企業間でせ
き止められてしまう情報のバッチ処理方
法では、かえってコストアップになる危
険性を含んでいることに留意する必要が
ある。これを解決するには、図表613
のように情報が上流から下流、下流から

上流へ自由に往き来できる、情報のネットワークづ
くりが必要だ。
こうしたプロセスミックス、つまり垂直思考で川
上や川下へ手を伸ばし、それを効率よく、コストアッ
プにならずに展開するためには、川上や川下で発生
するあらゆる情報を自社の情報として十分に活用し
きることができるか否かにかかっている。例えばコ
カ・コーラの場合、どこの自動販売機で何個売れた
かという末端の情報が、即刻、工場などの生産現場、
さらに営業、物流部門で把握できる。
川上、川下部分を自社でなく他社が行なっている
場合には、情報のシステム化など迅速なコミュニ
ケーションがとれる体制づくりが必要になってく
る。これまで存在をゆるされた家具小売店は、これ
らの大手にその地位をうばわれ、家電小売店と同じ
運命をたどる。
機械工具問屋のミスミは、全国の機械工具メーカーと情報ネットワークを構築して、それ
ら製品をカタログで販売している。カタログ販売なので商品在庫はいっさい持たず、客から
の注文があれば、その商品のカタログの品番(コードナンバー)をメーカーに連絡し、物流業
者を通じて顧客のもとへ配送する。機械工具業界の常識を破った、 一個売りなどのバラ売り
も行なっている。ミスミが、このような無在庫営業ができるのも一〇万種類以上にも及ぶ商
品の単品管理システムを実現しているからである。
プロセスミックスを目指し、川上へ、川下へ手を伸ばすためには、こうしたキメ細かな管
理システムや効率的な情報伝達ルートのシステム化、イノベーションを実践したからである。
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