期中の総合管理をどうするか
目標バランス・シートはできた。目標が設定されたからには、これを管理しなければ意味がない。
管理するからには、期末になってどうだったか、を見ても仕方がない。期中に定期的チェックをして対策をとってゆく必要がある。
それをやるのが「試算表」である。しかし、試算表の勘定科目は、細かく分れているし、預金などでは金融機関別に当座・普通・通知・定期などに、さらに細分してあるために、必ずしも便利ではない。
むしろ、経営計画書の目標バランス・シートを使うほうが便利である。
その使い方を説明しよう。
目標バランス・シートの期中増減の部分を使うのである。毎月この部分に短冊型の紙を、上部だけ糊付けをするのである。この紙には、目標バランス・シートの勘定科目に合わせて、月次試算表から要約した数字を記入するのである。
こうすると、期首と毎月末の残高と、目標バランス・シートの数字が隣同士で二つ対比できるのである。毎月こうすれば期首と毎月末残と目標の対比ができる。そこに目標からかけ離れた数字があればすぐに発見できるのである。売掛金や受取手形が目標値より多ければ、回収状況が悪化しているのだから、ただちに回収強化の指令を出すのである。売上げが日標を下廻っているのに、支払手形や買掛金の残高が多ければ、在庫増大の危険があるかも知れないのである。
これは、利益計画の外部価値の購入が増えている、という裏をとれば、まず間違いはないのである。
B社長は、この対比をするようになってから、『いままで何と馬鹿な金の使い方をしていたかが、いやというほど思い知らされました。お蔭様で、今は異常をすぐキャッチできるので本当に助かっています』と私に語っている。
F社長の感想は『今期に入ってから、月々の決算では可成りの利益を出していながら、資金繰りが苦しいという経理担当者のいい分が、この対比でよく分ります。在庫の増大と受手、売掛金の増加です。無論、手は打ってありますが、いままでだったら、「利益が出ているのにそんな馬鹿なことがあるものか」と思うくらいで、事態を明確にとらえて手を打つことなど、とてもできなかったでしょうね』というものであるc
試算表というものは、どこの会社でも毎月つくられて、これが社長に報告されている。しかし、それを見た社長は、そこから何もつかみ取ることはできない。試算表にのっているのは、今期の実績だけだからである。実績だけというのは経理の情報ではあっても、事業経営のための情報は全くつかめないのである。
単なる経理的情報にしかすぎない試算表が、日標と対比されることによって、素晴らしい経営情報に変るのである。
そして、それは社長に資金運用についての目を開かせるだけでなく、事業経営そのものを深く考えさせるようになるのである。ここで、「資金運用計画を狂わせるものは何か」を考えてみよう。
計画表には、たくさんの勘定科目がのっている。しかし、それぞれの科目がいろいろな要因によって変動するように見えて、その実、本当の意味で動くのはたった四つしかない。それ以外の勘定科目は、社長の方針によってコントロールが可能なのである。
その四つとは、経常利益、受取手形、売掛金、棚卸資産である。
経常利益こそ、事業経営の最重要事項として、社長が全責任をもってこれの完遂に死力をつくすものであることはいうまでもない。それと同時に、資金運用計画のそれぞれの数字を基本的に決めてしまうのである。利益がでない限り、資金運用も資金繰りもあったものではないのである。
ところが、受取手形と売掛金と棚卸資産の三つは、利益がでていてもいなくても、それなりの管理ができるし、しなければならないものである。それは、社長の指導と社員の行動によって、変えることができる。売掛金回収に努力してこれを減らすことはできる。在庫管理のやり方によって、棚卸資産の残高が違ってくる。受取手形は、あなた任せのように見えて、その実、ある程度のコントロールはできるのである。
以上の四つは、社長の指導と社員の行動によって、その数字が決まる。それ以外の数字は、社長と経理担当者によってコントロールされるのである。
つまり、社長を始めとして、全社員の一挙手一投足が、資金運用そのものである。そしてそれがバランス・シートの数字をつくりだしてゆくのである。バランス・シートは、事業活動の結果である。しかし、それは「いろいろやったところ、こうなった」というのではなくて、「人々の意思によってつくりあげる」ものであることは、すでに述べた通りである。
このように、資金運用とは資金担当者のみ関知するものでないことを、社長は全社員によく認識させ、コントロールさせるものなのである。
では、そのコントロールとは、具体的にどのようなものであり、どうすればいいのか、ということになる。それを、これから述べることとする。
固定資金を管理する
固定資金は、事業経営の結果として発生し、基本的にはコントロール不能の税金と、社長の意思によって決定するが、いったん決定すると、それをコントロールできない配当金、役員賞与、投資などと、決定はしても、あとから修正できる設備投資などに分れる。それらをどう管理するかを、「第17表」の固定資金の使途、源泉の順に述べてゆくことにする。
法人税等は、それを現金で全部一括払いできる会社など例外中の例外である。
利益というのは、それが現金で残ったということではない。決算時点で、総資産と総資本を比較してみた時の差額にしかすぎないのだ。総資本の方が少なければ、その差額を利益として、総資産とバランスさせるし、反対ならば欠損としてバランスさせただけのことなのである。決算時点の現金や預金は、その決算書にある数字だけしかないのである。このことが分らない社長が意外に多いのだから困る。資金繰りが楽だと儲かっていると思い、苦しいと赤字ではないかと心配になるのでは、落第社長だ。
税金は、納税融資をうけるのが普通である。また分割払いにして資金繰りのピークを低くする、というところだ。
配当金と役員賞与は、同族会社などで未払いにすることができる場合には、それだけの資金が浮く。もしも、資金運用計画に盛りこむ場合には、固定資金の源泉に、未払配当金、未払役員賞与とすればよい。これらの未払金は、機をみて資本金に振替える。つまり、増資払込金とするのがよい。
当期予定納税は、上半期の中間決算を税務署に報告することによって減額することができる。季節変動の大きい会社などでは、有効な手段である。長期借入金返済は、コントロール不能。
次は設備投資である。本当の意味でコントロールできるのはこれしかない。資金運用を知っていれば、不急不要の設備投資など絶対にできるものではない。あくまでも我社の事業方針に従って収益向上に直接役立つものを重点とし、それ以外のものは、仕事に大きな支障を来すもののみに限定し、しかも最小限にすべきである。
立派な社長室、広い事務所、バックグラウンド・ミュージック、厚生会館その他の福利施設などは、目の敵にすべきだ。こんなものにかける金があったらこれを借金返済、又は借りたものと見なして、その金利相当分を賞与にでもすべきだ。最近はリースに対する認識が高まって、リースを利用する会社が増えてきたのは、よい傾向である。
設備投資で心しなければならないのは、低利で融資が受けられる場合、例えば厚生会館など、低利という理由で実施してはならない、ということである。
社長族の不思議な習性として、低利だときくと、普通金利との差額だけ儲かるような気がする、ということがある。その儲けを手に入れるために、収益を生まぬ施設に投資する、という誤りを犯しやすいことに心しなければならない。
いくら低利であろうとも、その投資が収益を生まぬものならば、その利息は明らかに損失なのである。もしも、厚生会館や立派な食堂をつくることによって、社員の勤労意欲向上に役立つ、などと考える社長がいたら、その社長は失格である。社員の勤労意欲が、そんな下らない施策で上ると思いこむのは、社員の人間性を侮辱しているのだ。人間べっ視もはなはだしいといわなければならない。
社員の勤労意欲の向上は、社長の正しい姿勢によってのみ可能である。他のどのような施策でも全く不可能なものである、ことを知らなければならないのである。
源泉については、増資と長期借入金が重要である。
増資は、長期的な自己資本充実の方針を決めておき、これに従って行うのである。その方針とはどういうものかは、「経営計画篇」の「日標の設定」( 73頁)を参照していただきたい。
長期借入金についていえば、「借りられるだけ多く借り、返済期間は長い程よい」ということに尽きるといえよう。
設備投資をする場合に、その一部を自己資金で賄える場合でも、全額借入金で賄ったほうがよい。多くの会社で、設備計画をする場合に、設備資金のことは考えるけれども、それに伴って増加する運転資金の計算を忘れていることがほとんどである。設備資金は長期借入、運転資金は短期借入と割引手形という原則はあっても、それは順調なときの原則であって、いったん事ある時には、この原則だけでは乗りきれないのである。
客観情勢の急変― 例えば石油ショックとか、得意先倒産というような事態に直面した時には、短期借入金や支払手形がいかに大きな負担になるかは、経験したものでなくては分らないのである。
また、会社再建の時に打つ手の一つとして、短期借入金を長期借入金に振替える。私も業績不振の会社の資金繰りを楽にして時をかせぎ、その間に業績向上の手を打つために、短期借入金を長期借入金に振替えることを強力に勧告し、私も社長と同行して銀行に頼むこともしばしばなのである。そして、この時に威力を発揮するのが、外ならぬ「経営計画書」なのである。
銀行は金を貸すのが商売である。その銀行が一番心配するのは、貸すことではなくて、返してもらえるか、ということなのである。つまり、返済能力である。それを知りたいために銀行はいろいると手をつくす。しかし、頼りになるのは、銀行用に粉飾しているかも知れない決算書と毎月のように変る資金繰表だけで、その会社の社長が何を考え、どのようにしようとしているかは、社長の話だけではさっばり分らないのである。そこへ、経営計画書が提出されたということであれば、銀行としては願ってもないことである。この瞬間から銀行の態度が変り、金を借りるのが楽になるのである。
とにかく、あらゆる機会をとらえ、長期借入金を借りることにつとめることである。特に政府機関などでは、実績を重ねていくと、しまいにはほとんど無条件に近い融資が受けられるようになるのだ。長期資金を借りまくって支払手形を減らすことこそ、会社の安全度を高めるのである。
運転資金を管理する
運転資金は、常に社長の「頭痛の種」である。固定資金は、いつどのようになるかがハッキリしているからいいが、運転資金は絶えず変動してつかみにくい。しかも、ほとんどの場合に、使途の増加と源泉の減少という、資金不足の方に動くような気がしてならないものである。まったくのところ、運転資金の心配がなければ、社長の苦労は半減するだろうとさえ思われるのである。
その資金繰りについて、社員は全くの無関心であり、経理担当者は不足額を報告するだけで、全くの社長の孤軍奮闘である、というのが一般的である。社長一人の孤軍奮闘を解消し、社員にもそれなりの管理をさせたいのが社長の気持である。それにはどうしたらいいのだろうか。
ここに、日標バランス・シートが登場するのである。その期末目標を使うのである。運転資金の使途の三羽鳥である受取手形、売掛金、棚卸資産の目標数字を、「運転資金残高目標」として、各部門に割付けるのである。「第20表」がそのフォームである。
この表で大切なことは、残高目標を金額でなくて″月商対比クで設定するということである。なぜかというと、月々の売上高が違うのであるから、これによって残高も違うのが当り前である。売上高が多ければ売掛金もそれに応じて多くなるのは当然であり、反対に売上高が少なければ売掛金も少なくなるはずである。これを、絶対額の目標と比較して多いの少ないのというのは誤りである。
正しい判定をするには、回転率を使えばいい。回転率という物差しを目標として使えば、売上高の変動に応じた目標金額が計算できる。この変動目標と実績を比較すれば、正しい判定ができるのである。
しかし、回転率を目標として使うと、実用上計算がややこしくなるので、回転率を「月商の何力月分」という表現にかえるのである。
例えば、売掛金回転率の目標が目標バランス・シートによれば八回転であるとすると、十二カ月に八回転であるから、「月商の一。五カ月分」というように表現するのである。こうすれば、月々の売上高実績にこの一・五を掛ければ、月々の売上高が変っても、その売上げに対応する売掛金の目標金額が計算できるのである。
「第20表」にもどろう。 一番下に会社目標を書き入れる。その上は部門別の目標である。部門別の目標は、それぞれの部門によって事情が違うから、全社目標とは違った目標になることがあるのは当然である。
こうして、各部門に対する目標が与えられ、各部門の責任者はこれによって自らの部門の活動をコントロールする明確な基準とするのである。そして、毎月、自らの部門の実績をチェックするとともに社長に報告するのである。各部門では、この基準にそっている限り、社長からも経理からも、こと、運転資金についてあれこれいわれることはないのである。
ここで考えなければならないのは、「与信管理」である。与信とは、得意先に対する信用供与のことである。信用とは、売掛金と受取手形である。得意先を信用しなければ現金売りをするからである。普通の場合に、得意先の信用度に応じて、「売掛金の限度額」を設定する。
これはこれで結構である。しかし、もう一歩進めて、売掛金と受取手形の合計額に限度を設定して管理すべきである。
K鋼材では、「第21表」のような「与信管理表」をつくり、セールス。マン一人一人に持たせておき、セールス・マンは毎月自らの担当得意先全部について記入させ、社長に提出させている。私は、『大変な仕事ですね』というと、K社長は『なれの問題ですよ。うちの社員で、これを面倒臭いと思っているものはありませんよ。お蔭様でうちでは創業以来大きな引掛りはありませんよ』と、 一本とられたのである。
与信管理で心しなければならないのは、個々の得意先について、月々の限度額オーバーを云々してはいけない。これをやられたら、営業などできるものではない。三割や五割のオーバーは珍しいことではないし、気にかける必要はない。気をつけなければならないのは、限度額を三割以上もオーバーしている月が三カ月以上も続く、というような場合である。これは相手方に「何かある」と思わなければならない。すぐ調査をすることだ。かなりの売上高がある場合には、社長自らのりだすべきである。
与信限度は、得意先の信用度に応じて、A ・B 。Cとでも格付けをし、Aは無制限、Bは先期実績プラス一〜三割、Cは先期実績又はそれ以下というように決めるのである。
とにかく、与信管理を、たとえ売掛金限度額だけでも行っている会社は、「引掛り」が非常に少ないという事実にぶつかる。だから、私としては、単なる注意程度のことしかやっていない会社に対しては、これを「制度」として取上げるように奨めたいのである。制度があること自体、得意先に対する信用度のチェックを定期的に行うだけでなく、知らず知らずのうちに注意するようになるからである。
なお、もう一つ大切なことがある。現金回収は、日時の余裕のある限り「通知預金」とすることであり、手形割引はギリギリまでしないことである。特に手形を銀行に預けてある場合には注意をしないと、月末の預金残高を多くするために、銀行で勝手に割ってしまうということがあるのだ。
運転資金のもう一方のク雄クとして棚卸資産がある。過剰在庫に悩まされない社長は少ない。何とか減らそうと試みても、なかなか効果が表われないのも在庫なのである。
菓子間屋のN社にお手伝をした時に、社長の最大の悩みは過剰在庫だった。
社長は、在庫管理システムを作りたいから教えてくれという。私は、それは重要なことには違いないが、その前にあなたの会社の経営計画をつくらなければならない、として、まず経営計画の設定をした。 一段落したところであまり社長がいうので、在庫退治にかかった。私は、在庫管理システムなど、そんなシャレタものは必要ない。在庫を減らしたら、あとは自然に解決すると、まずマネジメント病をいましめた上で手をつけた。倉庫を見せてもらうと、内部は超満員である。通路もギッシリでやっと一人が通れる程しか空いていない。
三階にもギッシリで、梁が湾曲している。このままでは梁が折れて三階が落ちるかも知れないので、補強の柱とトラスが必要だと常務がいう。これでは社長がヤイヤイいうわけだ。多量のデッド・ストックがあることは、すでに棚卸資産回転率が低いことで裏をとってある。
私は社長に、『倉庫の棚割りをして、そこに入るだけのものに限定して、それ以外はいったん返品するより手はない。この時に役立つのが九五%の原理だ』と強力に実施をすすめた。私のすすめに、社長は二晩眠れない程悩んだ。返品したら我社の信用問題にならないか、ということである。その末に口実を考えついた。あまり在庫が多くて昼間は舗道を占領する程なので、警察と消防署から、「このままでは営業停止命令を出す」と警告をうけた、というのである。
そして、思いきって実施した。その結果は上々であった。まず、入出庫が楽になった。いままでは一個一個かかえて運んでいたものが、手押車を使えるようになった。
これで作業者の文句がピタリと止んでしまった。毎日夕方倉庫を見廻って、在庫の少ないものを翌日注文することとしたところ、いままで約一割あった品切れがピタリとなくなって売上げ増大である。補強の柱もトラスもいらなくなってしまった。そして、不思議なことに、大メーカーの商品の粗利益率が一%も上った。大メーカーの営業は、売れない商品を抱き合せで押しこむという阿果なことをやる。それがデッド・ストックの原因の一つになっていたのだ。それらを全部返品されたので、押しこみをあきらめた上に、売れ筋商品の販促に戦術を切換えてきたためである。
しかし、何といっても大きかったのは資金である。仕入れのニカ月分にも相当する貸越しが仕入先にできたために、ニカ月間は仕入れるだけで支払いは零であった。多額の資金が浮き、 一度はやってみたいと願っていた多額一括預金をして、銀行をビックリさせたのである。
在庫減らしの妙薬は、このようなデッド・ストックをまず退治することである。第二には「九五%の原理」による品種淘汰である。そして二番目は仕入れ締切日前の「駈け込み納入」を防いで、締切直後の納期指定とその励行である。
右の三つの基本的な手を打った上で、はじめて在庫管理制度に手をつけていいのである。それらをやらずに、いたずらにシャレタ管理システムなど導入してみても、効果など上るはずはないのだ。
ことを行う場合には、順序がある。その順序をわきまえていないと、いたずらに労多くして効少ない結果に終ることを知らなければならないのである。
実質金利を管理する
金利は、社長の関心の最も高いものの一つである。しかし、それは借入金や預金の利率についてであって、ク実質金利クについての関心は意外な程低い。全く知らない社長も決して少なくないのである。
実質金利というのは「実質の借金に対する実質の利子」である。
今、 一億円の長期借入金をした場合に、二千万円の両建預金をさせられた場合を考えてみよう。利用できる金額は実質八千万円である。ところが、借入金の利子は一億円に対して支払うのだし、預金の二千万円の受取利子は、借入れより利率が低いのだ、とすると、いったい正味の借金八千万円の利子とその利率はいくらなのだろうか。この正味の借金八千万円の利子をク実質金利″というのである。
右は長期借入金の実質金利の説明であるが、では、会社全体の実質金利の計算式はどうかというと、
刈崩諮引」
刈ゞ引」『十咄」劇一革―輝智引」「
葺ン降+咄」劇一中蒻―鴻避趙ゆ
である。
分母が実質の借入金であり、分子が実質の利子である。この算式に入れる数字は次の通りである。分母の借入金。割引手形・定期預金は試算表(又はバランス・シート)の残高である。分子の数字は、それぞれの分母の数字に対する年利額である。年利とするのは、利率は年利で計算するのが習慣だからである。
この計算で、その時点の実質金利(実は利率)が計算できる。
この実質金利は、借入金と預金の利率が違うために、借入金の金利よりも高くなる。そして、預貸率が変ると実質金利の利率も違ってくる。この辺のところがどうなるのか、次に試算をしてみよう。
預貸率というのは、定期預金と貸付金との比率で、計算式は、
洲減靭=ふ靱弗靱Ⅷ‐
である。分子と分母を逆にしても差し支えない。
預貸率というのは、明らかに銀行サイドの用語である。企業サイドならばク預借率″だ。会計用語は、このように銀行中心で、企業はク部外者クなのだからいやになる。
今、貸付金(企業から見れば借入金)の金利を年八%、定期預金の金利を年六%と仮定して、預貸率が変ると実質金利がどう変るかをみよう。
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館労かo
このように、預貸率が高くなると実質金利は高くなるのである。これをまとめると、
○実質金利は借入金の金利より高い。そして預貸率が高くなるほど実質金利は高くなる。ということになる。
こうなると、借入金の金利と預貸率との関係によって、実質金利がどう変るかを一覧表にしておけば便利であることに気付かれるであろう。それが「第22表」である。この表の実質金利の数字は、定期預金の利率が六%の場合であって、定期預金の利率が変るとそれにつれて実質金利の数字も変ることに注意しなければならない。
この表は、表頭に左から右に貸付金の金利の変化をとり、表側に預貸率の変化をとっている。貸付金の利率が高ければ実質金利もそれにつれて高くなる。
つまり右に行くほど高くなる。預貸率が高くなれば実質金利は高くなるから、下に行くほど実質金利は高くなる。だから、左上が最も低く、右下が最も高くなる。
この表から、実質金利を低くするにはどうしたらいいかを考えてみよう。実質金利は左へ行くはど低く、上へ行くはど低いから、
一、左へゆく……つまり借入金の金利を下げてもらう。
二、上へゆく……つまり預貸率を低くする。
というようにすればよい。借入金の金利を低くすることは説明を必要としない。
預貸率を低くするには借入れをすればよい。借入申込みの時に「預貸率が低くなった」ことを理由の一つにするのだ。新規借入金をせずに、借入金を返したり、定積をしてゆくと、知らない間に実質金利が上ってゆく。このような場合 ・には、銀行に交渉して借入金の利率を下げてもらうのである。炒郷頁の計算式で説明しよう。預貸率が上って実質金利が一〇%になってしまったのを、預貸率〇三二の場合と同じ九%にするための借入金の利率計算は、
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となる。借入金の金利を七・五%にしてもらえばいいのである。
これは計算上の値であって、これを銀行に交渉しても、敵は「ハイそうですか」と二つ返事で下げてくれるわけではない。相手は金利で飯を食っている人種だ。下げてくれるどころか、実質金利のことを企業人に教えることはクタブークになっているのだ。当り前である。儲けの種を明かすバカはいないのだ。だからそこは交渉の腕である。その交渉の武器として、定期積金の減額又は一時中止、最後の場合は定期預金の解約である。
銀行という弁慶にも、泣きどころが二つある。実質金利をつかれることと、定期預金の解約である。定期預金の解約は最後の手段であり、銀行との縁切りだからおくとして、実質金利を大いについて、銀行にイヤな顔をさせられれば一人前である。
銀行にイヤな顔をさせても、銀行から敬遠される心配はない。反対に、そこまで考えている社長にかえって信頼感を抱くのである。これは、立場をかえてみたら分ることである。
実質金利を管理するには、毎月末の実質金利を計算するところから始めるのである。これは、会社全体と、各銀行毎と両方をやるのである。会社全体は「我社の現状」を知るためであり、各銀行毎は、実質金利引下げのための情報を手に入れるためである。
銀行毎の実質金利は、その差が大きいのに驚くはずである。高いのは一三%以上というようなことも決して珍しいことではないのだ。銀行にしてやられていた証拠である。
この証拠をつきつけて銀行と交渉するのである。この時に、演出効果を高めるのは、「第22表」を持っていって、これを広げることである。この交渉によって、実質金利を○ 。一%や〇・三%引下げることは、それほど難しいことではないのである。私のセミナーで、この話をきいたH社長は、毎日銀行にいって、ついに○ 。二%の利率引下げに成功し、『お蔭様で、 一倉さんのセミナー料の一年分以上に相当する金利引下げに成功しました』と私に話してくれた。
経理担当者の給料くらい浮かせるのはわけはないし、私の経験では、社長の給料を浮かせたことも決して珍しいことではないのである。五日間毎日銀行にかよって相場よりT五%も低いレートを実現した会社もある。この時の銀行の感想は、あきれると同時に感心したそうである。
銀行は、こういう会社を信用するものなのである。それを、「世話になっている銀行にそんなことはいえない」というような社長は、金利を損するだけでなく、銀行から甘く見られ、信用がつかない、ということになるのだ。
社長たるもの、強心臓で実質金利低下を銀行に交渉すべきである。
支払手形を退治せよ
B社にお手伝いした時である。バランス・シートを見ると、短期借入金がごくわずかしかない。かなりの割引手形があるが、まだ預貸率や含み資産から見て借入れの可能性は十分ある。
一方、受取手形の八割以上の支払手形をかかえている。
『あなたのところは、もっと借金して支手を減らさなければならない』というと、『父親から、「借金をしてはならない」と、よくよく教えこまれたので、借金をせずに支手を発行している』という返答である。
私は『それは間違いだ。支払手形というのは、借金の証文なのだ。借入金は金融機関からの借金であり、支手は取引先からの借金だ。この支手は、銀行を通じて期日には何が何でも返さなければならないものだ。つまり、ク待ったなし″である。期日に預金不足を起したら、ク不渡手形クとなって、その瞬間に会社はつぶれてしまう。こんな恐ろしいものはない。借金なら、期日に返済できない場合には待ってもらうことができるのだ。
本当のところ夕つなぎ資金クを単名手形で借入れても、期日に返済できない時は、手形書替えによる″ころがしクをやり、これが実績となってずるずるとクころがし単名クとしてしまうことができる。借金がどれだけあろうと、会社はつぶれない。
いくら赤字を出しても会社はつぶれない。会社をつぶすものは不渡手形しかない。その恐ろしい不渡手形を出さない方法は支払手形を発行しないことなのだ。だから、借金をして、支払手形を減らすことは、会社を倒産の危険から遠ざけることなのだ』という説明をした。
「支払手形の恐ろしさ」の認識が、 一般的に薄いのはどうしたわけなのだろうか。むろん、それは恐ろしさを経験しないことによるのだろうが、経験してからでは遅いのだ。
会社をつぶさないことこそ、社長の何をおいても真っ先にやらなければならないことなのだから、この支手をなくすことを、社長は真剣に考えなければなある経理担当重役から、『支払手形を発行していても、それが受取手形以下であれば心配ないのではないか』という質問である。
この質問は、 一応もっともではある。しかし、やはり危険がある。それは、不況などで売上げが低下した時である。この時に真っ先に減るのは受取手形であって、支払手形ではない。(支手減少は仕入れ減少によるものだけに、数力月間先になる)たちまちに、支手決済のための手形割引の源資が減るのだ。だから、売上げが減ってゆく時が、資金繰りの最も苦しい時である。この危険をさけるには、やはり支手をなくすことなのである。支手を減らすために借金をすることこそ、社長として大切な心構えの第一なのである。
この場合に、金利負担は増えないのだ。なぜかというと、支手を落すためには手形を割引かなければならないからである。支手がなければ、これを落すための手形割引がなくなるのだ。これが借金の利子と相殺されるからである。
もっとも、厳密にいえば、支手のサイトに相当する期間の利子だけは増えるし、信用金庫などでは、割引料の方が借金の利子より安いということはある。
しかし、社長たるものは、このような小さな理屈にはとらわれずに、大所高所から物を見ることが大切である。そして、右のような僅かな金利負担増は安全のためのク保険料″と考えるべきである。
ところが、金利が増えるどころか、支手を減らすことによって儲ける手があるのだ。それは、支手支払いを現金支払いにかえることによって、安く買うことができるからだ。これは至極当り前なことだ。支手をもらった相手は、それに金利がかかる。現金ならばこの金利負担がなくなる。だから、この金利負担減に相当する値引き又は値下げは当然なのである。 ・
この「現金払い作戦」は、二つのことに留意することが必要である。その一つは、現金支払いを受けた会社は、その分だけ、手形のク割引枠´があく、というメリットがある。この分の計算をすることだ、ということは、現金払いを受ける会社は、金利減と手形割引枠あきと二重のメリットがある、ということである。
実質金利は、まず年一〇%以上だから、その分として一カ月当り一%の値引き、それに手形割引枠のクあき賃″として一%の値引きをやらせるのだ。
例えば三カ月手形を現金払いにする時は、三カ月分の三%と割引枠空き料一%の計四%の値引きということになる。いささかガメツイ考え方ではあるが、筋はちゃんと通っているのだ。この理屈をふまえて、あとは″腕クの問題なのである。
もう一つの留意点は、現金払いを条件として値決めをしてはいけない、ということである。ある会社で、現金払いを条件に値下げをさせたが、だんだん値段が戻って、結局もとの値段になってしまって、現金支払いだけが残ったということがあった。
これは、 一般社員の金利音痴によるものだ。営業員は、金利についてはあまり関心がないのが普通なのだ。そのために、「安値で売った」ということだけを考えて、初めの金利負担減による値下げが忘れられてしまい、売価回復を考えて攻勢に転ずるからである。買う方でも金利音痴、値段だけを考えているから、いつの間にかそれに負けてしまったからである。
これを防ぐためには、値段は手形払いのままとしておき、「現金支払いの時は何%の値引き」という取決めを、相手方の経理を含めてしておくのである。
こうしておくと、都合の悪い時は手形払いをしても約束違反にならず、現金払いをすれば安く買える、ということになるからである。こうすれば、支手は減るし、安値仕入れはできるし、 一石二鳥である。いや、もう一つ大きなメリッ卜がある。それは会社の信用度の向上である。支手がゼロといったことになったら、信用絶大である。
だから、私は借金を増やして支手を減らすことに、社長は熱意を燃やすべきである、といつも言っているのである。
『借りて借りて借りまくれ。その限度は支手と割手がゼロになるまでだ』ということになるのである。
とはいっても、担保力と預貸率の関係で、借入れ可能額には限度がある。その限度いっぱいまで借りるのである。
ところが、世の多くの社長は、支手を減らすことに意欲を燃やすことをしない。逆に支手に逃げようとする。当面の資金の源泉として、これほど易しいものはないからである。手形用紙に数字を書いてハンコをつくだけでいいのだから、その誘惑に負けてしまう。これが会社の危険度を増すことは知っていても、深く考えようとしない。
そのくらいならまだいい。追いつめられると融通手形で切抜けようとする。こうなったらもう終りである。
「支手を減らせといわれても、そう簡単にいくものではない」と思われる方もおられるだろう。それは確かにそうではある。しかし、心掛け次第でできるのだ。
チャンスを待つのである。そのチャンスとは、金融緩和期である。昭和四十六年から四十七年頃の超金融緩和時代に、金融機関は必死に貸出しを図った。
その時に、多くの会社では間に合っているからといって、借入れの絶好というよりは、千載一遇のチャンスを逃してしまったのである。この時に、Y社では積極的に借金をした。しかも金利を叩いて、長期借入金を短期よりも低い利率で借りることさえできたのである。この借入金で支手の大部分を退治し、割手を減らして、手持手形をゴッソリと確保したのである。こうして流動比率を大改善してしまった。その見返りは長期借入金の増加である。これは長期適合率の低下――つまり好転である。長期借入金はユックリと返せばいいのだから楽である。Y社長いわく、『このごろ資金繰りが非常に楽になりました。
支手の決済に頭を悩ますことはないし、手持ちの手形はゴッソリある。金が足りない時には、割引枠は余っているから、少しばかり割ればいい。資金繰りはまさに天国ですよ』と。
心掛けさえあれば、Y社のようにチャンスを活かすことができるのである。金融緩和のチャンスを待て、そしてそのチャンスを活かして支手を退治せよ、というのが私の主張なのである。
しかし、心掛けてチャンスを活かさなくとも、バランス・シートを見る目があれば支手を退治できる会社に、かなりの頻度でぶつかるのである。A社は貿易商社であった。
バランス・シートの預貸の関係は、固定預金十億円、支払手形四億円、短期借入金二億円、割引手形少々である。長期借入金は固定資産で十分すぎる見返りがある。これでは面倒なことは何もない。預担で四億円借りて支手を退治できるのに、A社長はそういうやり方を知らなかったのである。
T社は、家電製品の小売業で、十五程の直営店をもっていた。固定預金二億円、通知預金一億円、支払手形二億五千万円、短期借入金三千万円、長期借入金は固定資産で悠々カバーできる。T社長の方針は、支払いはなるべく手形で、しかもサイトは長く、というのであった。全くの誤りである。
私の勧告は、『今すぐにでも二億円の借金ができる。固定預金二億円、通知預金一億円がその見返りだ。短期借入金の三千万円など無視していい。あなたの会社にはそれができる力がある。そして支払手形を退治すべきだ』というのであった。
T社長は財務に疎く、このようなことは全く知らなかったのである。とはいえ、 一挙に二億円借りて支手を減らすのでは急激すぎるので、まず小手調べに五千万円を借りて、これで支手退治のトレーニングをすることにした。メーカーと交渉して、建値は百日決済の支手とし、現金払いの場合は三%引き、さらに年間仕入額保証によって三%、計六%の値引きに成功した。あまりうまくいきすぎて、全くウソのようである。この分が年間六回転として、一千八百万円の仕入値引下げである。これを一年間やってみてから来年の方針を決めることとした。もう一つは、この固定預金を見返りにして、「ローン」の設定である。これも小規模から始めて徐々に増枠とすることとした。これで販売促進の有力な武器ができた。
支払手形退治と仕入値引きと販売促進の同時進行である。資金は運用の仕方でこんなにも違ってくるものだ。
T社の例で、支手退治とは別に、重要なことがある。現金仕入れもローンの設定も、一挙にやらずに徐々にやった、ということである。初めてやることは、それがいいと思っても、また一挙にやる力があっても、初めから大々的にやらないほうがよい。「どこに、どんな落し穴があるか分らない」と思うべきであるし、不慣れのためのミスが発生するかも知れないからだ。だから、初めは徐々に、あるいは小規模にやってみて、様子を見るのである。大丈夫と分った時に拡げるのでぁる。
ところで、支手を現金払いに切換える場合には、大企業相手であれば、まず間違いなく乗ってくるし、金利分の値下げも可能である。しかし、相手が小さい場合には、これに乗って来ない場合がある。この場合の相手の言い分は、『廻し手形にするのだから、現金払いをしてくれなくともよい』というのである。
なまじ、現金で値引きする必要はない、というのである。これに負けて現金払いが進まない、という会社によくぶつかる。
このような場合はどうしたらいいかということになる。それは相手を説得することである。『廻し手形といっても手形には変りない。万一の場合は責任をとらなくてはならない』ということ。もう一つは、『金利差益をとれ』ということである。『我社で三%値引きの現金払いをするから、あなたのところで四%値引き仕入れをすれば一%の金利差益がとれる』という要領である。しかし、これでもなかなかうまくいかない。気長な説得しかなさそうだ。
小企業の社長というものは一%の金利差益には乗って来ないくせに、信用金庫などでは単名と割手の金利が、割手の方が〇。一%か〇・二%安いといって、単名借入れをせずに手形を全部割るというようなことをするから不思議である。 一%の差益に目をくれず、○ 。一%に関心を示すとはどういうことなのであろうか。しかも受手をほとんど全部割ってしまって、手持手形がなくて、単名のない場合と、単名は多いが、手持手形をゴッソリ持っている、という二つの場合に、ギリギリの土壇場に来た時に、どちらが銀行に対して強いか、を考えてみるべきである。
何といっても、見せ金、つまり手形をもっている場合の方が強いのである。
この面からも、私は同額の借金(割手もその本質は借金である。なぜかというと、不渡りの時は買い戻しをしなければならないからだ)ならば、単名依存度を高く、割手依存度を低くすべきである、と主張している。たとえ単名の方が金利が高くともそれはごく僅かであり、安全のためのク保険料クと考えよ、というのである。
とにもかくにも、あらゆる機会をとらえ、知恵を絞って支手を減らし、我社の安全を図ることこそ社長の大切な仕事の一つなのに、これに関する一般的な関心も認識も薄いのはどういうわけなのだろうか。
それは、手形決済の安直さにあるのだ。そのために、これを決済する苦労も、倒産の危険も忘れられてしまうのである。「手形王国日本」ともいうべきであろつか。
長期資金運用
長期資金運用は、短期資金運用に劣らず重要である。
これを誤ると、長期にわたって資金繰りに苦しんだり、ちょっとした売上げの変動や資金繰りのピークなどで資金不足を起したり、場合によると事業計画そのものの遂行に支障を来すからである。
長期資金運用で重要な点が二つある。 一つはク固定資産投資資金ク、もう一つはク長期運転資金クである。
第一の、固定資産投資は、営業所や工場などの用地、設備、保証金など、会社にとっては収益面で大きな力となる反面に、資金面では大きな負担となる。だからこそ固定資産投資は効用だけを見ずに、慎重な上にも慎重を期さなければならない。
その慎重さとは、
一、投資の効用の内輪の見積り
二、状況の変化、又は見込み違いへの事前の対応策
三、固定費増加の余裕をもった見積り
四、タイミング
五、投資資金の確保
六、長期借入金総返済額
七、運転資金の増加量
などが主なものである。
右のうち、果してどれだけの事柄が十分に検討されているだろうか。甚だ心もとないものである。私のぶつかる例でいうと、せいぜい投資効用とタイミング、投資資金の確保が十分に検討されるだけで、それ以外は甚だ怪しかったり、全く考えていなかったりすることが多いのである。
特に、資金についての検討は、いい加減というよりは、ほとんど分っていない、といったほうがよさそうだ。
一番問題なのは、借入金の返済である。せいぜい新規借入れについてだけ「何年返済で、月当りいくらになる。これくらいなら大丈夫だ」という程度である。
新規借入金だけについてなら、たしかにその通りである。しかし、資金とはそんな簡単なものではない。すでに発生している長期借入金の返済もあれば、運転資金もふくれ上る。金利も増える。利益が伸びれば、それにつれて税金も多く納めなければならないのだ。それらがどうなるのかを、正しくとらえておかないと、大変なことになる危険がひそんでいるのである。
そこに、倒産という悲劇が発生するかも知れないのだ。「放漫な設備投資」というのが、しばしば倒産の原因とされているが、これは過大投資や不急不要な投資だけでなく、資金のことが分らないためのものがかなりあるのを知らなければならない。
ここに、長期資金運用計画の重要性がある。長期運転資金についても、固定資産に劣るものではない。ここで、次章に移り、長期資金運用の解説を行うこととする。
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