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一 トップの財務認識

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トップの財務認識

企業の最高責任者が財務を重要視しているかどうかによって企業体質の強弱はわかれる。

企業の三目的といえば、公共、堅実、営利であるが、財務が貧弱では一つの目的さえ達することはできない。

また、資金を人体にたとえれば血液、財務管理は心臓ともいえるが、案外軽視するものが多い。生産、販売など主力部門に傾き、財務を単なる決済処理、尻拭い的に考えるからである)。

さらに、昔の武士気風が残っているためか「武士は食わねど高楊枝」を気取るものもある。また、物欲から離れることが聖人君子と思いこみ、かね、もの、儲ける、ためる、など物財にかかわる表現さえ卑しいものと考えているものも少なくない。聖人孔子も、人間というものは、物財を欲し、地位名声を望むものと是認している。

ただ「利を考えるときは、人の道にかなっているかどうかを考えなさい」といっている。

義にかなったことで得るなら、いくら多くともかまわない、ということである。「不義にして富み、かつ貴きはわれにおいて浮雲の如し」と戒めているのも同じである。

渋沢栄一翁の話に「粗飯を食い、水を飲み、肱を曲げて枕とするも楽しみ亦その中にあり」(粗末なものを食い、水を飲み、肱を曲げて枕とするほどの貧しい生活の中にもまた楽しみはある)とあるが、この「亦」を考えれば、理想的な楽しみは豊かな中にある、ということになる。決して貧乏の中にだけ楽しみがある、ということではない、という意味のことがのべてある。

いまの経営者のなかにも、亦を除いて読んでいる人が多い。そのため、財務の話などともなると「どうなっているのか、財務担当に任せっばなしにしているので」といっている。そうかと思うと「社長が財務の部屋などへいくと、よからぬ憶測がでたり、社員が心配するから」というのがある。こういう社長がいるほうが社員にとってはよほど心配なのである。

自分の品位を高めようと考えているのか、人格を損ねるとでも考えているのか、本音と建前を使い分けしている人もある。「当社は別に利益を追求しているわけではない」。それでいながら売上げ、利益ノルマを達成せよ、と尻を叩いたり、節約を徹底せよ、といっている。個人同土でもあること、「かねを貰うために協力したわけではない」というから出したものを引らこめると「なんと、もの知らずなんだろう」とくる。

本音は本音、建前は建前とはっきりしたはうが奇麗に見えるものである。

あいまいにしておくから、財務管理もあいまいになりおろそかになる。そのあいまいは、命令の徹底にも影響を及ぼすことになる。

「売上げを伸ばせ」「商品在庫を減らせ」「支払削減を計れ」「設備を近代化せよ」「生産増加に努力せよ」「残業を禁止せよ」と次々に命令を出す。

出されたはうは、どれから手をつけてよいかわからなくなる。いずれも矛盾したことが多いから、 一つプラスになれば一つがマイナスになる、ということで全体では骨折り損ということになる。

酉年は私のエト。この年の性格は、あれもこれもと手を出して、すべて中途半端になってことは成らない、とある。若いころこれを知って、それなら猪年に生まれ変わればよいと考えた。生涯設計も十年一科目の勉学と定めたのもそのためであった。

経営にあたっても、一石一鳥狙いで、一つの目標を定めたら、それをあくまで貫く主義を通した。

別項でのべた借金返済も、すべてを投げうって目的達成に集中したわけである。十の目的を抱えて、十年で全部を達成するよりも、 一つに集中して一年で一つずつ達成していくはうが会社にとってはプラスになるからだ。

中国の元の名宰相といわれた耶律楚材は「るは一事を減ずるに如かず」といっている。一利を興すは一害を除くに如かず、一事を生ずつまり、一つの利を得ようとするよりも一つの害を取り除いたはうがよい。儲かるからといって一つのことを始めるよりも、損になっていることを止めたはうがよい、ということで、現代経営にも役立つ言葉である。

なるほど企業内には財務の足を引くものが少なくない。それを放任しておいて、新しいことに手を出そうとしている。

かつて、不振会社から経営相談を受けた。取扱い商品を増やしつづけてきたが、売れなくなった商品まで取り扱っている。そのため効率販売もできず人件費も減らない。悪循環が業績不振の原因で、商品を少なくしたら、たちまち収益が好転した。

昔から「器用貧乏」といわれている。なんでもできる人は何にでも手を出す、費用と手数はかかるが、かねにならない、ということである。

「一つの目的を達成するために全知全能を傾注する気力、これが根性である」と自分なりに定義づけているが、「一つの目的」に限って、すべてをかければ不可能ということはない。あれこれ手を出すから不可能になる。

財務が悪化してきたときは、 一つの目的に限って集中させることが大事であり、何に絞るかを見極めるためには、日常から財務というものに関心をもっていなければ、とても一つの目的に集中できないということである。

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