マニュアル作成の体制づくり
マニュアル作成の背景となる考え方については、これまでに基本を述 べた。
この章では、すでに述べた基本にしたがい、具体的に、実際どの ように作成をすすめればよいかをまとめる。
マニュアル作成の全体を要約すれば、第一線実務担当者を選抜して、 参加型のマニュアル作成推進体制をつくり、作成者に、マニュアルづく りの必要性と作成の基本方針と方法をよく理解させ、十分な実施計画を 立て、必要な部分から着実に作成をすすめる。
作成にあたっては、 1時 間会合を開催し、1業務(まとまり仕事レベルで)のマニュアルをまと め、上長の承認を得て、推進母体が登録していく。
1時間会合を繰り返 して、複数を作成し、マニュアル群・マニュアル集としていく。
マニュアル作成グループは、第一線業務担当者で編成する必要があ る。
業務担当者が簡単にメモしたようなものはマニュアルとはいえない が、優秀な業務担当者の協力なしに良いマニュアルは作成できない。
な ぜなら、第一線の業務担当者だけが、最も効果的な業務推進方法を知っ ていることが多いからである。
マニュアルがない現状では、業務遂行の ポイントやコツは担当者の頭の中にしかない。
作成にあたっては、まず、マニュアル作成を推進する母体を明確にす る。
全社的な場合と、部門や部署単位での作成とでは、母体の大きさが ちがってくる。
全社的なマニュアル作成であれば、マニュアル作成推進 委員会とマニュアルの作成から登録、改訂までを全社的に管轄する事務 局とが必要となる。
後者は、文書管理を担当している総務部門などが兼 任することが多い。
営業部・製造部というような部門や営業課や総務課 という部署単位の作成であれば、大がかりな組織は必要なく、6人程度 のメンバーでマニュアル作成グループをつくればよい。
部署内での作成など、実際の記述は2~ 3人で行なうことも可能であ るが、作成推進組織は設置して、少人数での記述の支援および事務局機 能を果たす。
このように、第一線の業務担当者参加型の推進体制をつく るのは、マニュアル教育までを考えているからである。
作成段階で複数 が参加すれば、教育段階でも複数の「教師」を確保することにつながる。
作成のステップ
マニュアルを作成するための構想を練る段階は、マニュアルをつくる 必要性を本質から検討して、どの部分を、いつ頃までに作成すればよい かを考え、マニュアル作成の基本案をつくるところまでをさす。
ここま では、時間をかける必要はない。
マニュアルづくりの必要性を最初に感 じたのが会社や部門のトップの場合、作成推進母体の長(たとえば、マ ニュアル作成推進委員長)を別に任命し構想を練らせる。
推進総括者も しくは作成推進母体の長は、短時間で構想を練りあげる。
準備段階は、まず作成を推進する組織を編成する。
マニュアル作成の ためのプロジェクトチームやタスクフォースであり、常設の組織ではな い。
しかし、本格的な作成期間中は継続する組織であり、適切な人材を 集める必要がある。
この組織が中心となって、業務の体系化を図る。
最 初に、業務を機能と関連性の面から演繹的に展開する。
さらに部署ごと に、実際どのような業務が存在しているかを分析(帰納)的に調べさせ て、業務の体系化を図り、まとまり仕事一覧表としてまとめる。
業務の体系化の説明とあわせて、マニュアルづくりの基本を教える簡 単な研修を行なうとよい。
併行して、推進母体では、マニュアルの形態 や様式を検討する。
部署ごとに勝手な形態でマニュアルとするのは困り もので、 1種類に限定する必要はないが、形態や様式の目安を数種類に 絞っておく。
業務の体系化をしてから、マニュアル体系を設定して、マ ニュアルにまとめる必要性の有無と、期間中に作成するマニュアルの優 先順位を決定する。
作成の必要性や優先順位は、マニュアル作成の目的 を明確にすれば、おのずと決まるはずである。
広義のマニュアルの作成は、マニュアルを作成して、一定の様式に記 述するまでではない。
書かれたものを作成グループ、業務遂行担当部署 の上長、マニュアル作成推進委員会が承認して、事務局が登録を行な い、配付するのは、当然「作成」に含まれるのである。
配付後は、その 業務に携わるすべての担当者がマニュアルを読み、さらに試用してみ る。
そのとおりできるか実際に確かめるのである。
書かれたとおりであ れば、後は教育段階、そして維持管理の段階となる。
作成に入る前に、まず教育する
良いマニュアルを作成するためには、マニュアル作成者に教育をして おくべきである。
マニュアルとは何かも教えずに、ただ「担当業務を紙 に書いておけ!」方式では、多くは期待できない。
教育といっても、改 善の基本や層別のしかたを理解するだけでよく、時間としては2~ 3時 間でかまわない。
基本的な理解は、それだけの時間で十分である。
現状をしっかり把握する目が、まず必要であり、これは「問題」のと らえ方として教えておかれるべきことである。
問題とは、困ったことだ けをいうのではなく、期待や目標と現状との格差であることを理解させ ておきたい。
つまり、どんなに現状が高くても、日標がさらに上であれ ば、問題が存在するわけである。
ところが、現状がマアマアであれば、 多くの場合、「問題なし」としてさらに高いところをめざしたり、改善 活動がすすめられることが少ない。
出発点は問題意識の醸成である。
さらに、マニュアルの必要性を徹底的に理解させなければならない。
業務担当者は、自分がいるかぎり、業務遂行には何の支障もないと確信 している人があまりに多い。
このような自信が必要なときもあるが、異 動やなんらかの障害が生じた場合を、企業は見越しておかなければなら ない。
なぜ、マニュアルが必要かを、効率化、活性化、創造化の点か ら、業務担当者によく理解してもらう必要がある。
そのうえで、改善の基本や方法を教える。
問題解決のステップや ECRSなど基本を理解させる。
効率、目的と手段の関係、PDCAなどを 確認するのはいうまでもない。
改善案は、うまくいかないことも考えて 何種類も用意する、まず廃上できないかを検討するなど、基本が理解さ れていないと、作成効率が悪くなる。
多少の時間はかかるが、教育をし ておくことが、より良いマニュアル作成につながるのである。
総まとめとして、層別の考え方と記述について教える。
層別の理解 は、マニュアルづくりの5合目であるといってさしつかえない。
業務を どのように区切り、どのように分解して書けばよいのか、が層別の理解 をとおして得られるのである。
「全く」は「まったく」と記述するなど の表現上のルールも簡単に教え、統一性が保たれるようにするとよい。
マニュアルの使用者を層別する
マニュアル体系を考えるにあたっては、業務体系に加え、マニュアル を使用する対象者を明確にしておく必要がある。
企業は、多くの事業 所・部門・部署からなりたっており、さらに属性を異にする多くのワー カーから構成されている。
業務をはっきりさせたうえ、今度は業務遂行 者を区分してとらえておく必要がある。
つまり、マニュアルの使用者が誰なのかを、はっきり層別しておく必 要がある。
当然のこと、これは企業によって異なってくる。
製造業と非 製造業、製造業でも、生産関連の部門と販売に関連する部門。
小売業で も、(集中)仕入機能のある店とそうでない店など。
ファミリーレスト ランでも、料理をつくるキチン部門と料理を提供するフロア部門と分か れる。
マニュアルの使用対象を、このように層別して考えることが、利 用しやすい良いマニュアルづくりにつながるのである。
とりわけ考慮すべきなのは、管理をする側と管理をうける側のちがい である。
業務遂行のオペレーションマニュアルは立派なものが存在する ものの、その業務を管理する側のチェックマニュアルがないような企業 が多い。
業務遂行者みずからが実施結果を検討(Check)するのは当然 のことであるが、上長の役日、職務が曖味では困るのである。
両者の業 務がかみ合うことが、実際の仕事をより良いものにする。
また、業務遂行者が定時間勤務をするフルタイマーか、短時間の勤務 しかできないパートタイマーかで、担当できる業務に線をひく企業も多 い。
かつては、お金の扱いは正社員しかできないという企業が大半であ ったが、現在では、むしろパートタイマー(学生も含む)の活用が常識 化し、このような区分は少なくなりつつある。
したがって、パートタイ マーを活用するために、フルタイマー用とは別にマニュアルを作成し て、短時間勤務でも、早く基本を習得させ多くの業務を担当させるべ く、パートタイマー向けのマニュアルが作成されるべきであろう。
使用対象者が、経験の少ない初級者なのか、十分な経験ある中級者 か、またベテランの熟練者なのか、あるいは管理する側なのか管理され る側なのか、対象者を明確にしたうえでマニュアル体系を明確にする。
マニュアル体系を作成する
業務体系とマニュアル使用者区分を頭において、マニュアル体系を設 定する。
マニュアル体系は、マニュアルの全体像・全体図である。
どの ようなマニュアルの種類(マニュアル「集」や「群」という)があり、各 マニュアルにはどのような業務や内容が含まれるかを、業務遂行者の区 分との関連で明確にしたものである。
業務遂行者を階層や経験から区分 し、関連する業務や必要となる部分だけを層別して、個別のマニュアル と関係づけておくものが、マニュアル体系である。
ある生産財販売会社の「営業マニュアル」には、ことばづかい・服 装・応接室のルールと、まるで新入社員だけを想定したような項目が含 まれていたが、業務体系とマニュアル対象者がはっきりしていれば、こ のようなことはなくなる。
初級者には、あいさつのしかたなどが必要で も、中級。
上級者には不要である。
個別マニュアルが背表紙2 cm程度で 何十冊と並び、マニュアル集全体で厚さがlmをこえることもある。
そ こで、厚いマニュアル集が活用できるように、マニュアルの種類と各マ ニュアル内容(何を入れ、何を除くか)を明確にし、体系が明確な使い やすいマニュアル集にしなければならない。
体系の設定は、当然、企業の業種・業態、部門・部署によって差がで る。
事務系部署のマニュアル体系は、ほぼ業務体系と同じようなものと なる。
業務遂行者の能力差は比較的小さいのだが、業務が多種類にわた っていることからマニュアルが必要になるためである。
一方、サービス 業や接客部門などでは、経験の浅いワーカーを多く使用せざるをえな い。
このため、ワーカーを経験や能力で明確に区分してから、業務体系 を関連づけ、マニュアル体系を設定していくことになる。
マニュアル集は、個々の業務遂行(オペレーション)を主力とするマ ニュアルが中心となって構成されるが、管理的な業務、つまり業務がう まくいっているかどうかを確認0点検(チェック)する観点からのマニ ュアルが含まれていることが必要である。
たとえば、フアーストフード 店の店長業務マニュアルには、次週のワーカーの勤務予定確認、毎日の 売上金と現金との照合などが組み込まれていなければならない。
マニュアル化の優位順位は?
マニュアル体系を明らかにしたら、ついで個々のマニュアルを作成す る優先順位を決める。
マニュアルの作成というと、すぐ、○○業務につ いて、担当者が個別に記述するのを連想しがちだが、そうではない。
体 系化された業務から、一定の様式に手順を中心として書きだしたマニュ アルにすべきか否かを、まず明確にする。
そして、定められた期間内に どの程度までマニュアルにまとめることができるかはっきりさせる。
われわれのいう「まとまり仕事」レベルで、企業には多くの業務が存 在する。
3,000人ほどの企業では、2,000をこえるまとまり仕事が存在す るかもしれない。
300~ 500人の企業でも1,000程度の業務がある。
まと まり仕事とは、たとえば「納品書を作成する」という程度の一区切りの 業務をさす。
実際の業務遂行にあたっては、納品書の作成も、先方指定 の納品書があるかどうかで、何種類かに作成方法が分かれる。
約1,000 のまとまり仕事といっても、実際にはその数倍の種類の業務が存在する こともありうる。
数多い業務から、まずマニュアル化すべきは、いつまでにどの業務な のかをあらかじめ明確にする必要がある。
投入人員・時間と相談して、 マニュアル化対象業務数を明確にする。
これをまとめたものが、「マニ ュアル化一覧」である。
本格的なマニュアル作成段階に入る前に、必ず マニュアル化一覧を作成して、投入人員・時間と作成マニュアル数、そ の優先順位を明確にしておく。
その後、個々のマニュアル作成に入る。
では、優先順位はどのようにつければよいのか。
重要度、緊急度、頻 度などの観点から総合的、多角的に判断せざるをえないのだが、マニュ アル作成の本質的な観点からは、頻度を重要視せざるをえない。
つま り、年1回の業務よりは、毎日行なう業務を重点として作成をすすめる。
繰り返し性のあるものを優先して、マニュアル作成をすすめるべきであ ろう。
頻度区分としては、年・月・旬・週・日と随時0都度のような区 分が考えられる。
しかし、年1回の業務はマニュアル化の必要がないと いうわけではなく、賃上げ作業のように手順が確定しているものを中心 に、マニュアルを作成すると異動などにもうまく対応できるのである。
マニュアルの形態・様式を統一する
個別マニュアルごとに、最終的に若干の幅をもたせるとしても、基本 的なマニュアルの形態・様式については、マニュアル作成推進委員会で 何種類かに限定する。
そうでないと、まったく体裁を異にするマニュア ルが多くなり困る。
最近はユニークなマニュアルも多い。
海外の空港利 用マニュアルとして、空港内の入国審査場。
税関からトイレ、タクシー 乗り場まで一連を写真にとり、小型写真をラミネート加工し、移動する 順にリングでとじたものを見たことがある。
このマニュアルを手に持っ て、実際に空港内を動くとき便利なようにとの配慮だそうである。
マニュアルの形態とは、マニュアルの形状・外観と大きさのことであ る。
形態は主として、A4サイズのバインダー方式のものと手帳ほどの 小冊子方式に2分できる。
前者は差し替え自由で追加可能である。
どち らが良いかは、マニュアルの使用期間、印刷・配付部数、使い方・置き 方、マニュアルの量(厚み)、コストなどから決まる。
部署内の全員が 持つなら小冊子方式が望ましいし、長期間利用して追加や削除が前提で あればバインダー方式とならざるをえない。
飛行機内で客室乗務員が持 ち、機内放送に使うようなものは、当然小冊子方式となっているし、フ ァミリーレストランの料理作成・提供マニュアルはバインダー方式であ る(メニューは半年で変更が前提)。
マニュアルの様式とは、マニュアル内部のフォーマットやページ内で の書き方などである。
同一マニュアル内の様式は当然統一されているの が前提であるが、他のマニュアルと基本は同じであることが望ましい。
あるもののサイズはA4版で、別のものはB5というのは困る。
また、 横書き、縦長に記述するのが原則である。
どのようなフォーマットを利 用するか、何種類かを基本として定める。
事務業務で実際に使用する帳票までを添付すると、どうしてもA3や B4サイズの大型の様式を使用することになるが、この場合は縮小して とじるのが原則である(ただし横長で天にパンチ)。
大きなサイズは、実 際に使用すると、ページを開くのに不便であることがわかる。
承認や改 訂の場合の方法まで検討して、マニュアルの形態・様式を決めておく。
グループ討論方式で作成する
マニュアルの作成は、原則として6人程度のグループで行なう。
ある 業務の関係人員が多くても、マニュアル作成にかかわる人数は6人程度 でよい。
多すぎると、意思統一がむずかしく、効率的な作成ができな い。
逆に、関係人員が少なく、担当1名という場合でも、上長など2~ 3人が加わっての検討が望ましい。
マニュアル作成の原則は、複数によ る意見交換と検討・確認作業である。
業務の担当者または担当者を代表する数人でグループを編成し、マニ ュアルを作成する。
メンバーは、若年層から高齢層まで、複数の属性を 有するほうが好ましい。
男・女、管理職と非管理職、外勤者と内勤者な ど、複数の視点で業務の適正さを検討する。
当然、意見がくいちがう。
それを調整し、合意して文書としたのがマニュアルである。
合意が得ら れないとすれば、マニュアルにどう書かれていようと、実際には自分の 考えるままで行なわれることになり、ワンベストの共通したやり方など 実現不可能なままである。
具体的な実施事項と手順に関しては、比較的まとまりやすい。
しか し、その実施事項をどの程度まで要求するかの期待レベルとなると、合 意が得られにくくなる。
たとえば、電話応対において、受信音は何回ま でに受話器をとればよいとするのか。
ある者は、お客様第一主義で1回 でとるべきだと主張し、他の者は3回までなら許容されると現実的な立 場から主張するだろう。
このような考え方のちがいが、実際の業務遂行時 に個人差を生じさせる。
また、ポイント・コツについても、作成者によ って差が大きくなることがあり、これらの「適正化」が求められる。
マニュアル作成をグループで実施するのは、マニュアル作成そのもの が、業務遂行に関する教育になるからである。
つくることが教育するこ とにつながる。
他者の作成したマニュアルであれば、それを遵守しよう とする気持ちが薄れる。
作成に参加することは、マニュアルをもとに教育 できる能力のある者をふやすことにつながっているのである。
担当者が 単独で記述せざるをえない場合は、複数の上長が多角的によく検討した うえで承認する。
役立つマニュアルは多角的な検討のうえに存在する。
マニュアル作成会合の開き方
マニュアル作成活動は、 1時間の会合を開いて1業務(まとまり仕事 レベル)のマニュアルを完成させることの繰り返しである。
素案を検討 し、最終的にまとめるまでが1時間であり、素案作成の時間は会合には 含まれていない。
素案はメンバーのうち1名が、あらかじめ作成して、 会合に提出する。
その案を検討し、合意するまでが1時間である。
この ような方式をグループ討論方式という。
これまでの、担当者が書きだせばマニュアルが完成したという考え方 とは、まったく逆である。
書きだしをするのは、やはりその業務の担当 者がよい。
しかし、それが、そのままマニュアルにはならない。
1時間 会合で、他者の目にふれ、よく意見交換され、会合参加者が、手順やポ イント・コツ、そして期待レベルまで合意するステップが組み込まれて いることが必要なのである。
正確にいえば、素案作成者はマニュアル化一覧にしたがい、ある業務 に関するマニュアルの素案を作成して、会合に提出する。
他の会合参加 者(少なくとも1名、多くても5名程度)が、その業務の具体的な実施事 項、実施順序、それぞれのポイント・コツ、レベルを多くの角度から検 討する。
問題があれば、その業務のあるべき姿を明らかにして、グルー プで調整をする。
そして、 1時間の会合内で合意をする。
素案作成者 は、合意案を持ちかえり、修正して、次回会合までに回覧しておく(遅 くとも提出する)。
次回の会合冒頭で、全員で承認して、実施を担当する 部署の上長が最終承認するのが流れである。
2~ 6人程度のグループで1時間の会合、素案作成に約1時間、素案 の修正。
最終案の作成に1時間、最終案の読み合わせ・承認に数分とい うマニュアル作成の所要時間は、 1業務(まとまり仕事レベル)で3~ 4時間という程度ということになる。
1時間会合で、ほんとうに検討し 終えるのかというと、はじめこそ時間がかかるものの、_慣れると1時間 以内で確実にすむようになるし、そうしなければならない。
複数の作成グループには、その業務の実施経験者が2名ほどいること もあり、単独の作成より客観性のあるマニュアル作成が可能となる。
条件区分をまず行なう
マニュアルを記述するための原則の1つは、「幹→枝→葉」という記 述順序である。
「幹」つまり根本から説明せず、細目である「葉」から はじめるとわかりにくい文章になる。
「木を見て、森を見ず」というこ とわざがあるが、大きなものから順に小さなものに焦点を合わせてい く。
「幹→枝→葉」とは、「大→中→小」にほかならないが、さらに細分 化は「幹→枝→葉→例外」という順になる。
例外から記述するのは、特 殊な場合だけである。
「大→中→小」と考えたら、今度は「小→中→大」 と逆に戻って検討する。
小から論理をたどり、大につながるかを確認す ることが大切である。
層別でいうと序列0時系列法にあたるが、流れを 両方から検討することで、整流化がすすむ。
記述にあたって、具体的な実施事項を書きはじめる前に、マニュアル でとりあげる「まとまり仕事」に条件設定が必要かどうか考える。
まと まり仕事までは、仕事を機能面から大中小と細分化してきているから、 論理的に整合性がある。
しかし、記述しようとするまとまり仕事の内容 が、条件によって、具体的な実施事項レベルで変化する場合がある。
「納品書を作成する」というまとまり仕事を例にすると、得意先指定 の納品書があれば、自社の納品書に加え、得意先の指定納品書を作成す る業務が追加される。
このように、先方指定の納品書がある場合とない 場合とを区分して考えないと、同じまとまり仕事でも、別の実施事項が 生じる。
場合によっては、別のまとまり仕事とする必要もでる。
電話の応対は、名指し人が電話にでた場合は、基本的な受け方でよ い。
しかし、名指し人がすぐに電話回にでられない場合や不在の場合、 また間違ってかかった場合まで条件を別にして考えておく必要がある。
不在時は、①遅出・直行・一般外出、②早帰・直帰、③社内他部署、④ 会議・研修・食事、⑤遠距離出張、⑥休日などに区分して対応する必要 がある。
最近では、例外がむしろ重要であり、例外を例外にしてはなら ない。
つまり、「不在」は例外ではないのである。
このように条件分け をうまく行なうことが、正確な記述につながる。
その後、具体的な実施事 項と手順、ポイント・コツ、レベルを記述していくと、明解な記述となる。
手順、ポイント・コツ、レベルを書く
まとまり仕事レベルのマニュアルに最低必要なのは、具体的な実施事 項と手順そしてポイント・コツ、レベル(あるべき水準)である。
具体的な実施事項とは、そのまとまり仕事を実施するにあたって、実 際に行なう細分化された作業である。
実施する順序どおり、モレなく記 述する。
基本は、時間どおりに、あるいは大・中。
小・例外の順に記述 する。
細分化にあたっては、少なくとも自分で実際に業務を行ないなが ら書きだすか、確認してみる。
人によって順序がちがう場合は、あるべ き姿を想定する必要がある。
具体的に行なうことを、その手順どおり書けばよいといっても、あえ て別の具体的な実施事項に分ける必要がないこともある。
その業務遂行 者の能力によって異なるのだが、前後のどちらかの実施事項に含んでか まわないほど、わかりきっているものも存在する。
ただし、何かを検査 する、照合する、測定するような場合は、別の具体的な実施事項とする のが原則である。
表現は、「○○ を△△する」と「名詞(目的語)+動 詞」で記述する。
たとえば、「集計表を準備する」であり、「集計表準 備」とは書かない。
ポイント・コツは、具体的な実施事項を行なうにあたっての、カン (勘)、呼吸・手際、特殊な知恵などをいう。
熟練者ならば、すでに頭に 入っていることであるが、初級者は理解していないため、その業務をう まく行なうことができない。
マニュアル作成者は、実際に熟練者がその 業務を行なうのを見ながら、あるいは自分が熟練者ならば、実際に勘ど ころを声にだしながら業務を実施して、書きとめるとよい。
抽象的な表 現とならないように気をつけたい。
レベルは、具体的な実施事項ごとに期待される水準である。
また、ポ イント・コツの具体的な水準・程度であり、数値的にさらに明確にした ものである。
ポイント・コツ、レベルは、あわせて「急所」とも表現さ れていたが、ポイント・コツとレベルに2分することで、具体的な実施 事項の確実な遂行がより容易になる。
具体的な実施事項、ポイント・コ ツ、レベルを明確にすることでマニュアルづくりの名人になろう。
用字・用語を統一し、定義する
マニュアルという以上、正確で統一された記述を心がけたい。
協働作 業でマニュアル作成をする関係で、統一された記述がむずかしい面もあ る(本書についても同じことがいえる)。
マニュアル作成推進委員会で用 字・用語についての統一ルールを作成しておくことと作成されたものを 何度も繰り返して読むことが、正確で統一された記述につながる。
間違った記述はいちばん困るが、内容のちがいは「適正化」という視 点で多角的に検討すればなくなる。
ほかの間違いは、誤字・脱字の類で ある。
これは、作成者・作成会合の参加者0上長0事務局と複数で何度 も読み返すことで防止できる。
要は、その時間を見込んで、作成を早め 早めに行なうことである。
グループによる複数の作成なので、用字・用語について統一されたル ール(あるいはガイドライン)を設けることが必要である。
規程ではな いので、さすがに条・項0号の区分があいまいということはないが、付 番体系(番号のつけかた)は明確にする。
左にあげた原則を遵守する。
パートタイマーはじめ初級社員に理解できない専門用語が多い場合 は、用語集をつくる必要がある。
また、「漢字」についても、配慮が必 要である。
「拭く」「詫びる」などを第一線業務遂行者が読めなかった例 もある。
これは、「ふく」と「わびる」と書くべきである。
動詞は平仮 名にすべきものがある。
多少長くなるのは承知で、むしろ平仮名を基本 にしたほうがよいと理解すべきであろう。
同時に「ふく」とは、どのよ うな行為なのかを定義する必要もある。
「ふく」ために何を用い、どの ように実施するかを明らかにする。
副詞・前置詞・接続詞などは、平仮名が原則である。
「厳しく叱る」 は「きびしくしかる」、「或る」女は「ある」女、「及び」は「および」、 学校に行く「為に」は「ために」と書く方が好ましい。
しかし、名詞は 確実に漢字で読め、かつ書けるようにしておきたい。
と同時に、難解な 漢字にはルビをふるような工夫も必要である。
また、横文字のカタカナ 表現も、基本的なものに限り、乱用は好ましくない。
マニュアルは多く の属性を異にするワーカーの使用を前提に作成すべきである。
図表・フローチャート・イラストを入れる
ことばですべてを伝達することは、どんな名文家でもむずかしい。
そ こで、文字より絵で説明するほうがよい場合がある。
「絵」は短時間で より多くを効果的に語ることができる。
さらに、学習意欲を高める作用 もある。
もちろん文字も、正確に短時間で伝達できるような記述を心が けるのはいうまでもない。
視覚の長所を利用することで、業務の正確か つ迅速な遂行に相乗効果を期待できるのである。
ひとくちに「絵」といったが、表や図、イラスト(マンガ)、写真、 フローチャートと実際には多くの種類がある。
マニュアルは、見(読 み)やすくするために、絵をとりいれる必要がある。
数値などを見やす く並べたものが表である。
現に「表」とは何か、われわれはイメージと して理解できるものの、ことばで正確に記述するのはむずかしい。
図や表を利用すると、文字情報の伝達をいっそう効果的にする。
だら だら続く文章も、図表に整理すると、たちどころに内容が理解できる。
文章に、イラストやマンガを加えると、全体の表情が豊かになり、読み 手を気楽にとりくませることなる。
不思議なことであるが、2~ 6人の マニュアル作成グループには、最低1人は上手にイラストを描ける人が いる。
文字はうまくなくても、イラストやマンガならという人が必ず存 在する。
業務の関連を明確にしたものが、業務の流れ図つまリフローチャート である。
どんな名文家でも、フローチャートほど的確に、業務の関連や 実施手順を文章で表現することはむずかしい。
事務業務を中心とするマ ニュアルにぜひ利用したい。
写真も、コピー機の性能が向上した最近で は、手軽にマニュアルにとりいれることができる。
このような図表0イラストをはじめとするビジユアル化がマニュアル には求められる。
そうでないと、マニュアルはかつての「要綱・要領」 的な堅苦しいものになってしまう。
「こうしなければならない」という 強制力ばかりめだつ、おもしろみに欠ける手順書になる危険性がある。
図表やイラストを使い、ビジユアル化をすすめることが、遊びの要素と かさなり、自発的に学習しようとする姿勢の原動力につながる。
簡易マニュアルですます法
業務の体系化を実施したが、本格的なマニュアルを作成する余裕がな い場合、まとまり仕事一覧表に、遂行(責任)者と具体的な実施事項や ポイント・コツ、レベル、参照規程類、使用帳票などを追加するだけ で、かなり質の良い「簡易マニュアル」をつくることができる。
さらに 詳細なものが必要ならば、必要に応じて本格的なマニュアル作成を順次 すすめていけばよい。
簡易マニュアルですまそうとする場合、まとまり仕事一覧表の完成度 が問題となる。
本格的なマニュアル作成では、まとまり仕事一覧表に不 備があったとしても、マニュアル作成時に再度まとまり仕事を確認する ことができる。
簡易マニュアルの場合は、まとまり仕事が確実に整って いることが重要である。
まとまり仕事一覧表(0307項参照)の作成は、 通常の業務調査の方法で実施する。
そして、業務調査を実施したグルー プが主力となって、調査したまとまり仕事に、具体的な実施事項やポイ ント0コツを追加すればよいのである。
まとまり仕事一覧表の完成度とは、第1に業務の網羅性・整合性であ る。
まとまり仕事レベルでのモレがないわけではない。
第2にまとまり 仕事の実施順序の統一化である。
担当者ごとに業務遂行順序は大きく異 なることも考えられる。
まとまり仕事の完成度が高い簡易マニュアル は、投入時間のわりに得られる効果が大きい。
実施すべき業務の一覧 化、遂行者の明確化、指示・命令系統の明確化、実施にあたっての勘ど ころなどは、あらゆるワーカーに役立つ。
しかし、この簡易マニュアルには弱点もある。
業務調査の所産である まとまり仕事一覧表は、網羅性の反面、厚く、形状が大型になる弱点を もつ。
実施事項やポイント・コツを加えれば、B4やA3サイズが中心 とならざるをえず、現場で使いにくいのは事実である。
とくに店舗内な どでは、持ち運びという点でマイナスである。
レジ台まわりに置くのも 見苦しいので、バックヤードを中心に置かれることになる。
しかし、簡易マニュアルは「業務調査プラス釣の産物であり、本質 的には、事実上は「ほぼマニュアル」であり、効果は大きいといえる。
マニュアル台帳の作成と管理
どの業務のマニュアルができているか、急いで作成しなければならな いものはどれか、業務改善され更新するものはどれか、配布先の部署は どこかなどに対応するため、マニュアルはその原本を1か所で登録して 集中管理しなければならない。
そして、各部署から要請があれば、すぐ とりだせるようにしておく必要がある。
そのためには、個々のマニュア ルにコードNo.をつけて管理するとよい。
それでは、どういうコード体系にすればよいのか。
まず、経営機能レ ベルで、その具体性があらわれはじめる中機能を出発点とする。
中機能 は10進分類して作成するので、0~ 9までのコードを打つ。
次に、小機 能もそれぞれの中機能ごとに、10進分類するので中機能のコードの後 に、それぞれの0~ 9までのコードを打つ。
そうすると、00から最大99 までのコードがつく。
単位業務も10進分類するので、同様に処理する と、000から最大999までのコードが打てる。
10進分類のメリットは、機 能や業務がタテ、ヨコのマトリックスに示すことができ整理しやすく見 やすい。
分類体系が統一されてわかりやすい。
数字だけの、しかも桁数 のコードが組めるなどである。
通常、マニュアルを作成する業務のレベルは、個々の単位業務ごとで ある。
1つの単位業務において、 1つのマニュアルならば単位業務のコ ードNo.をマニュアルNo.としてそのまま使用できる。
しかし、単位業 務を部署別とか顧客別、製品別などに層別してマニュアルを作成する必 要がある場合や、10進分類の制約から単位業務を大きく設定した場合な どには、さらにマニュアルごとに2桁のコードをつけ分割する。
したが って、マニュアルには、それぞれ5桁のコードNo.がつくことになる。
なお、このマニュアルNo.は、業務体系図の中のまとまり仕事No。
と混 乱しないように、マニュアルNo。
であることを示し、「M-53201」のよ うにする。
マニュアルの管理は、会社の中で文書管理を行なっている部署(通常 は総務部とか管理部)が、すべてのマニュアルの作成(作成依頼)や関連 部署への配布、改廃などを統括して行なわなければならない。
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