マニュアルを使って教育する
マニュアルを使う教育は、教育といっても、知識を教えることではな い。
実際に業務を遂行しながら(実践しながら)、訓練(トレーニング) して、実務を身につけさせるものが主体である。
教育の前段階として、マニュアルの作成段階で望まれることがある。
まず教育の基盤として、企業の基本方針、価値観0思想、考え方がマニ ュアルに含まれていることである。
ついでマニュアルがわかりやすい表 現になっているか、またうっかりすると陥りやすいミスなどまでを対象 として的確に記述されているかである。
教育を行なう以前にマニュアル がうまく作成されていることが大前提となる。
実際の教育段階の第1歩は、ワーカー自身によるマニュアルの読み込 みである。
業務を担当する前に、マニュアルを読んでおくのが原則であ る。
指導者はマニュアルの内容を理解している、というのは早合点であ り、指導者から徹底的にマニュアルを読むことが求められる。
初級者に とっては、具体的な実施事項や使用帳票の理解を中心に、中0上級者は ポイント・コツ、レベルが実際に自分の担当している業務どおりか、か ら読み込みを行なう。
マニュアルの量が多いため、読みはじめるのは関 連ある業務からとならざるをえないが、まとまり仕事一覧表から流れを つかむ。
読み込みは自習・独習が主力ではあるが、上長から積極的な指 示があることもある。
実際の教育は、OJT(計画的な職場内教育・訓練)をとおして実施さ れる。
これは直属の上長やその次の職位にある者(No.2という)が原 則として担当する。
場合によっては、先輩からということもある。
第1 段階は、上長自らが「やってみせる」。
第2段階は、部下に「やらせて みる」、第3段階は、「評価して繰り返させる」である。
OJTとは、反 復訓練を行ない、マニュアルどおり正しく実施できるまで体得させるこ とにつきる。
その後、チェックする。
この場合のチェックは、検討より「監査」・ 「審査」・「監視」という色彩が強くなるが、継続して正しく実施されて いればほめる、間違いは正しい姿に直すことを繰り返す。
能力を把握しながら教える
基本から教育する。
簡単なことから教育する。
けっして難易度の高い 仕事から訓練しない。
短期間に即戦力化をめざすがゆえに、あやまちを おかすことがある。
人間のおろかさのゆえではあるが……。
付随的なことにこだわらないことが、基本の教育を容易にする。
ファ ミリーレストランの接客業務なら、まごころのこもるサービスの提供が 第1である。
企業の経営方針からしても、そうであろう。
温かいもてな しの心が伝わる「明るい」あいさつを可能にすることが第1歩である。
けっして、コーヒーのおかわりへの対応からではない。
来店者に、明る くハキハキあいさつできることから教育をはじめる。
緊急性を要する業務、重要度の高い業務、難易度の高い業務、量が多 い業務からなどが、陥りやすい間違いである。
レジ担当が退職したので 代役をすぐに、が今さしせまっている緊急な業務である。
クレームが多 いのでクレーム処理から、が重要かつ難易度の高い業務である。
しか し、クレームが多いのは基本が守られないからなのに! 量が多い業務 は、半ばは基本的な業務と共通で、半ばは付随的な業務である。
もっと も、事務業務では、比較的「量が多い=基本業務」である場合が多い。
クレームが多い場合も、とくに初級者には基本から教える。
クレーム が発生したら、すぐにわびて、店長にとりつぐのが基本である。
けっし て、細かなクレーム処理の方法ではない。
コーヒーの追加は、確かに業 務量が多い。
しかし、最初は、基本のコーヒーのだし方(提供)から教 える。
コーヒーのだし方は、コーヒーカップのセット方法などを含むの で、コーヒー追加のしかたの半分を包含するといえるからである。
基本から入らないと、後で変化に対応できない。
そして能力の成長と いう、自立化を促進する機能を弱体化することにつながるので、基本か ら教育という原則を強調したい。
レジ係が退職したので、フロア接客担 当として採用した新人をフロア体験なしにレジ係にまわすと、自分はレ ジさえできればよいと勘ちがいする。
フロアの「単純」業務はできなく てよいと誤解するのである。
ワーカーの保有能力と成長度をよく把握し て、教育は基本から着実にすすめてゆきたい。
BMPの5原則をマニュアルに活かす
教育にあたつて上司は、これまでの叱りを中心とする指導から脱却し なければならないにもかかわらず、「叱責して部下の根性をたたき直す」 という伝統的手法が復活している。
叱る上司からすれば、相手にいわば 心理的ショックを与えた方が、話し合いによる問題解決法より、即効性 はある。
「それに耐えきれない部下は辞めてもらえばよい、この不況下、 代替要員はいっぱいいるさ」というわけである。
問題は「人間は叱責されて本当に成長するだろうか」ということであ る。
叱責には即効性はあるが、副作用も比例して大きい。
叱責に耐えき れない部下がでてくるだけでない。
根性をたたき直されたように見える 部下も実はたんに「世渡りがうまい」だけで、上司の目が届かないとこ ろではやりたい放題で、「上司にはハイハイ言ってればいいのさ。
単純 なやつ」と心の中ではナメきっていることもある。
とはいうものの、部 下を叱責するのは「相手のことを心から心配している」からであると心 底信じている上司も多いのは事実である。
ここに紹介する問題解決面談マニュアルは、上司が部下のことを思つ て叱責することと、部下を自主的に行動するように育成することを両立 させる第3の方法である。
具体的な手順を示そう。
①上司が本音を言う前に、必ず部下の気持ちを聴いて心を開かせ、上 司の本音を聴く耳をもたせる。
②上司は叱責ではなく自分の本当の気持 ち(心配・イライラ・歯がゆさなど)を部下に伝えることで、自分の本音 を言う。
③どうして、そういう気持ちになったか、部下の望ましくない 行動に関して具体的事実をあげる。
④部下がそういう行動をとったこと で、どんな悪い影響を上司や会社が被ったか、また部下自身の行動につ いて悪い評価がついたか説明する。
⑤今後自分の行動が悪い結果をおよ ぼさないようにするにはどうしたらよいか、部下から提案を求める。
⑥ 部下の提案の良い点を評価し、援助を与えることを約束する。
この方法の成否は上司が「俺が怒りの感情を持ったのはどうしてか」 と冷静になり、怒鳴ることをやめ①のステップからはじめることにあ る。
BMPの第3原則「能動的傾聴」を活かしているのである。
能力開発のしくみにマニュアルを組み込む
能力開発と成果・業績主義を標榜する人事諸制度づくりが花ざかりで あるが、マニュアルもその一翼を担っている。
公正な評価を徹底し、処 遇に差をつけようとするのだから、企業は、評価の基準や成果をだすた めの能力開発の方法を明示しておかなければならない。
職能資格制度の 根幹は、等級ごとに能力開発レベルを定めた等級別「職能基準書」であ る。
職能基準書は、職種・等級ごとに、遂行することができなければな らない業務能力を明示している。
また、まとまり仕事一覧表(第1次) から、担当する業務内容や権限を明示したまとまり仕事一覧表(第2 次、簡易マニュアルとして0414項で既述)を作成しておく。
等級基準書にうたわれていても、能力不足で実際に遂行することがで きない業務が多い。
先輩たちは、何も教えてくれないことも多い。
しか し、職能基準に書かれた基準となる業務ごとに、マニュアルがあれば、 遂行が可能になるものが増加する。
この点から、能力開発を主眼とする 人事諸制度には、マニュアルが必須となる。
職能資格制度、能力開発か ら賃金制度までの諸システムの枠組みに、職能基準書、まとまり仕事一 覧表、マニュアルの関係を位置づけたものが、左の図である。
職能基準書で、この等級では「○○業務をすることができる」と、能 力を明確にしても、実際にできるようになるには、○○業務の具体的な 実施事項、手順、ポイント・コツ、レベルなどが明確になっていること が必要である。
マニュアルが存在してはじめて、基準書が要求する能力 を確実に習得させることができるのである。
まとまり仕事一覧表にある「難易度」の区分は、一般的に5区分にし ている。
これ以上区分しても、高い業務・低い業務に該当するものが、 あまりないためである。
区分は、定型・非定型、習得までの経験年数、 管理業務か否か、などを総合的に判断して決定する。
難易度の高い業務 は、当然資格が高くなってから遂行できるようになればよい。
現実に は、等級があがっても難易度の低い業務しか習得できていないことが多 い。
これでは、能力開発をめざした人事諸制度づくりとは、とてもいえ ない。
マニュアルを能力開発の有力な手段にする理由はここにある。
職能基準書とマニュアル
職能基準書は、ある業務に関して、その遂行能力の成長過程を明らか にしながら、等級ごとに要求される遂行能力を明示するものである(通 常、「○○を行なうことができる」と表現)。
要求能力は、主として業務内 容と対人影響力に関するものに2分される。
前者は、「○○ (業務)を 完全に独力で実施することができる」ことをいい、後者は「部下や後輩 に指示や支援をして」実施させることができる、ことをいう。
能力の成長過程を明らかにするという以上、職能基準書の内容が、た とえば6等級で、突然「人事管理(全般)を行なうことができる」では マズい。
「人事管理」ということばが幅広すぎて、どこまでをさすのか 不十分であるし、5等級までは「人事管理」に関して、何もできなくて もよいわけではないからである。
ある業務に関し、能力の成長していく 過程が、職能基準書の中で表現されなければならない。
職能基準書は、 実施する業務すべてを記述するものではない。
ある等級に属するのを端 的に判断できる、「重要単位業務」という業務をとりあげて、能力が成 長するさまを重点的に記述していくのである。
このように理解すると、マニュアルと職能基準書のちがいを明確にす ることができる。
職能基準書は、等級判定に特色となる業務に絞って、 等級ごとに重点的に記述されているが、マニュアルは、業務の実施に関 する手順が網羅的に記述されている。
前者には手順が必要なく、後者に は必要である。
前者は、等級ごとに、瞬間でも実施できる能力内容が記 述され、後者に記述される内容は、いつでも、誰によっても、順序どお りに実施されなければならない。
職能基準書は、「もし異動したら、半 年から1年以内に実施できる能力を保有しているか」という面までも含 む、「できる=能力」を問うものである。
一方、マニュアルは、実際に、 記述どおり業務がそのまま実施されることを要求する。
職能基準書は、等級ごとに保有すべき能力の目安であり、マニュアル は、実際にその業務を実施するための手順書である。
両者は相補う関係 のものであり。
双方を整備することで、自己啓発と現実の業務遂行の両 面で教育を促進し、企業が期待する水準での業務遂行が可能となる。
承認、登録、更新のステップ
作成、改訂されたマニュアルは、まず、その業務主管部署の上長の承 認をうける。
上長は、実際の業務内容とマニュアルに記述されたものを 比較・検討して、承認を与える。
事務処理のように、上長も実際の処理 手続きを詳しく知らない場合は、複数の業務遂行者に基本を確認して、 承認することになる。
この場合、業務遂行者が実際はこのように実施し ています、とひと通りの説明をして、理解を促す形にならざるをえない。
次に、事務局に提出して承認をうける。
この場合は、「審査」により 近い意味合いでの承認となるが、手続きとしては、形式や関連する規程 類との整合性が主な審査項目となる。
事務局が、実際の業務をすべて知 っているはずもなく、おのずと、そのような形とならざるをえない。
つ まり、上長と事務局による2度の承認は、前者が主として内容を、後者 が主として形式と諸規程との関連性を審査した結果である。
承認をうけたマニュアルは、事務局で登録されて、マニュアル番号を 得て、マニュアル台帳に記載される。
マニュアル台帳への記載によっ て、はじめて正式なマニュアルと位置づけられるのである。
その後、必 要部数の「マニュアル」が印刷され、関連部署に配布される。
マニュア ル原本は、事務局が保管する。
業務主管部署が持つのは、例外的であ る。
なお、マニュアル作成推進委員会が解散して、事務局も存在しなくな ると、登録は、文書管理主管部署である総務部などが引き継いで行なう。
配布されたマニュアルは、マニュアルのつづりにとじられ保管され る。
新規のものは追加してとじる。
更新された場合は、古いものを廃棄 し、差し替えることになる。
マニュアルは、グループ全員の目にふれる ように置かれている必要がある。
社外の目にふれるのはマズい面もある が、自分たちの目にふれやすく、グループメンバーが知っている定位置 に置かれなければならない。
追加や差し替えがあった場合は、その変更 内容をかいつまんで説明することが望ましい。
時間がなければ、変更が あったことを回頭で伝達する必要がある。
このような形でマニュアルの 変更を周知徹底させる。
その後、新たなマニユアルを試用してみる。
そ して見直しを実施する。
これら全体を、マニュアルの維持管理という。
マニュアルの維持と管理
マニュアルの維持管理がされているか否かを調べると、そのマニュア ルが組織内において有効に機能しているかどうかの見当がつく。
ひいて はそれに関連する業務のレベルや会社のレベルまでおよその見当がつい てしまう。
マニュアルが存在しても実際の業務のやり方とは差があった り、新しい版が発行されているにもかかわらず、その存在すら知らされ ていない状況であったり、維持管理システムが整備されていないとさま ざまな混乱やムグな状態が発生する。
維持管理をもう少し細かく見るために維持と管理の2つに分けて考え てみたい。
維持とは、“業務のあり方は永遠に変化し続ける”という前提に立ち、 マニュアルをつねに、現在よしとされている業務のあり方に修正を加 え、組織活動に価値ある存在としてあり続けるようにすることである。
これは、業務課題を顕在化させ、検討・改善案作成・実施・標準化の一 連の業務故善システムのサブシステムとして位置づけられる。
一方、管理とは、“情報は無分別に伝達されたり、逆に必要な対象に 対して伝達されなかったりしがち”な事実に対して、正しく使いやすい 状態で情報を伝えたり、情報がもれないように伝達のしかたに制限を与 えたりすることをいう。
また、情報が破損することのないように保護対 策をすることも管理の範疇に入る。
管理項目としては、マニュアル番 号・マニュアル名称・発行日・発行者・保管部門・使用部門・改訂履 歴・配付方法・機密保護対策・ファイリング方法等が主なものである。
これらを、マニュアル台帳の記載のもとに管理することが基本とな る。
さらには、一定期間ごとに、ルール化された管理システムが確実に 運用されているかのチェックとフィードバックのシステムまで整えてお く必要がある。
また、マニュアル自体のハードについても、扱いやすさ や破損防止等を配慮して、マニュアルのサイズ。
紙質・紙厚・パンチ穴 の数等を決定したい。
最近の情報処理・通信機器の発展と浸透にともな ってその形態は今後も変貌をし続けるものと考えられる。
時代に応じた 方法を構築していくことも今後の課題となろう。
ボトムアップ型のマニュアル改訂
マニュアルの改訂は業務改善システムのサブシステムとして位置づけ ることを前項でふれた。
ここでは、業務遂行部署から改善提案がなさ れ、標準化のツールとしてマニュアルを作成する過程について述べる。
マニュアルと業務遂行者の関係を考えたときに、2通りのタイプが存 在する。
1つは、“マニュアルどおりにやつてください”といつた考え になじみやすいタイプ。
しばしば“マニュアル人間”という表現で否定 的な意味合いで使われることが多いが、組織的に即効性をもって立ちあ げる段階においては、このタイプのとりくみや人間も必要である。
とく に、アルバイトやパートを即戦力として活用するケースはこのタイプと ならざるをえない。
もう1つは、“マニュアルを基本としてとりくみな がらも、つねに業務のあり方を見直し、改善を促進してください”とい った姿勢でどんどん業務改善にとりくむタイプ。
今後も、企業間の競争 激化の一途を考えると、このタイプの姿勢や人間のウエイトを大きくし ていくことが重要であろう。
後者の活躍に大いに期待し、また、活躍で きるようなシステムにしておく必要がある。
マニュアルどおりに仕事を 遂行するだけでなく、仕事内容の向上が問われている。
人間が業務を遂行する中で、いろいろな疑問や発想が生じるはずであ る。
これがうまく吸い上げられ、検討され業務に反映されるしくみが必 要である。
方法としては、業務改善提案書を常設する。
組織体制として は、業務改善推進事務局・業務主管部署・マニュアル管理部署・マニュ アル作成部署0マニュアル使用部署の明確化が必要である。
業務改善シ ステムの流れとしては、業務改善提案書が業務改善推進事務局で受け付 けられ、業務主管部署に検討を依頼する。
業務主管部署では、関連部署 を集め検討・合意をする。
これに関連するマニュアルの洗いだしをし て、改訂の指示等をマニュアル管理部署とマニュアル作成部署(者)に 対して行なう。
業務改善提案書に対する検討と反映のタイミングについ ては、一般的には1年か半年程度の間隔で行ない、例外として緊急度を 要するものに対しては、その都度行なうものとする。
その判断は業務主 管でもって実施する。
トツプダウン型の業務管理システム改善
改善は永遠でありそれに連動したマニュアルの改訂もまた、永遠であ る。
同時に、1度確立されたマニュアル管理システムも、気をゆるめる となにかと崩れやすい懸念がある。
これを防ぐために、マニュアル管理 部署や管理職がチェックをすることによリルールと運用状況の維持改善 を行なっていく必要が生じる。
チェックをする目的として大きく2つが考えられる。
1つは、マニュ アルなど標準類にもとづく業務の指導徹底と業務改善である。
もう1つ は、マニュアル管理システムにもとづく活動の指導徹底とそれの改善で ある。
それぞれについてPDCAを明確にし、とくに、計画(P)段階に おいては5W2Hで考えることにより整理しておくことが重要である。
左頁には、その一例を示しておく。
マニュアルなど標準類にもとづく業務の指導徹底と業務改善を目的と してチェックを行なう場合、誰がそれを行なうかにより大きく意味合い が変わってくる。
チェックの対象となる関連業務から独立した組織が行 なう場合には、監査的色彩が強く、関連業務に関係する組織が行なう場 合には、改善的色彩が強くなる。
外と内との双方からチェックを実施す ることにより、正しくバランスのとれた運用が可能となつてくる。
ま た、それぞれにチェックを実施する頻度や対象とするサンプリングの方 法、場所の巡回順序などを戦略的にとらえ、計画を行なう。
一方、マニュアル管理システムにもとづく活動の指導徹底とそれの改 善を目的としたチェックは、マニュアル管理部署がマニュアル管理ルー ルを基準として、マニュアル保管部署とマニュアル利用部署に対して行 なっていく。
いずれも、チェックリストにまとめ計画を実行し、チェックの結果を 目的にそつた形で組織的にフィードバックできるシステムにしておく。
チェックも、どこまでやれば完壁になるかというと際限がなく、綿密 にやることばかりが効果的ではない。
目的と効果をつねに念頭に置き、 また、そのときどきのレベルにより強化したり、ゆるめたりするべきで ある。
文書化はIS09001における要
維持管理をきわめて明確に規定しているものに「IS09001」がある。
認証取得にとりくむ企業も多い。
1970年代後半に欧米諸国において、品質管理および品質保証の重要性 についての認識が高まり、多くの国で関連する規格が制定された。
その後、国際的な通商活動の円滑化のため、これらの規格を統合して 国際規格を制定する動きがおこり、1987年3月に品質管理および品質保 証のための国際規格である「IS09000シリーズ」が、ISO(International OrganiZatiOn fOr Standardization:国際標準化機構)によって制定され た。
IS09001において文書は、ピラミッド型の階層により体系化される。
品質システムの全貌をまとめた最上位の文書を「品質マニュアル」とい う。
この品質マニュアルはその会社の品質システムのトビラを開けるカ ギと考える。
全体の枠組みを規定する最上位の文書であり、通常20~30 ページ程度のもので、関係者全員に理解できるように、平易な文書であ らわす。
上から2階層目の文書は、通常規定と呼び、部門間にまたがるような ものである。
3階層目の文書は、作業標準・指示書等、それぞれの部門において活 用するものである。
なお、これらの文書は、文章で書かなければならな いというものではなく、図・絵。
マンガ。
フローチャート・コンピュー タ画面・VTRなど、できるだけ活用しやすいように工夫する。
文書管理は、これらすべての文書を対象とする。
ただし、文書管理は、 ムグな文書をなくし、必要な文書のみを管理し、業務の効率化を図るこ とが重要であり、このへんを踏みちがえないこと。
IS09001では、4.1項~8.5項までの要求事項が明示されているが、4.2 項には、「文書化に関する要求事項」として、システムを構築し文書化 するうえでの方向づけがなされている。
多くの場合、これらの文書化がしっかりしていれば、その会社の品質 マネジメントシステムもうまくいっている場合が多い。
IS09001における文書の承認および発行
IS09001では、品質システム要求事項において、「4.1 -般要求事 項」として、文書化した品質システムを確立し、維持することが要求さ れている。
文書化は、品質システムの根本である。
そして、この文書の 管理を厳密に行なうことを、「4.2.3 文書管理」の条項で要求してい る。
まず、文書の発行にあたっては、これに先立ってその適切さについて承 認し、発行し、廃止された文書の誤使用がないようにすることが規定さ れている。
これには、それぞれの文書の起案・審査・承認・発行・配付 (写しの保管場所)・改訂および廃棄のルールを明確にすればよい。
どこ の部署で起案し、どういうメンバー(会議)が審査・承認し、発行はど の部署が行なうのか、また、コピーをとり、どの部署に配付し、改訂の 場合は、1日の文書の撤去等と最新版の配付をどう行なうかを決める。
文書の管理にあたっては、「文書管理規定」をつくり、文書の管理方 法0管理の責任者。
管理の内容・保管の場所・見直しの時期などを盛り 込む。
文書はその識別が明確にできるように、文書番号・文書の名称・ 発行日・発行者・承認者・版数・改訂日等をつけ、最新版管理ができる ように台帳等で管理する。
これらの目的は、必要な部署に適切な文書が利用できるようにするこ とである。
ところが、このあたりまえのことがおろそかになっている会 社がけっこう多い。
文書管理機能の欠如である。
このような会社では、 どこにどんな文書があるのか把握されていないし、配付された方も現在 の実状に合っていないので、活用していないことが多い。
あやふやな中 で、何とがコ々の仕事をこなしているといったところだろう。
反面、やたら官僚的になっている会社もある。
ありとあらゆる文書を 作成し、細かな手続きなしでは仕事がすすめられないようになってい る。
文書管理の目的は、正確で効率的な仕事をすることにあるのだか ら、ムダな文書をなくし、必要な文書のみを管理すべきである。
また、 それぞれの文書の重要度づけを行ない、重要度に応じた審査・承認など のルール決めを行なうとよい。
IS09001における文書の変更
IS09001では、条項4.2.3に「文書の変更に関する要求」が規定され ている。
文書の変更は、原則として発行時に承認した同一の組織の責任 者が行なうことが要求されている。
たとえば、ある文書があったとすると、発行の承認はあるか、その承 認者は変更の場合も同一の組織の責任者か、その文書が最新版であるこ とがどのようにして確認できるか、などが即座に答えられなくてはなら ない。
ある印刷会社でこのようなことがあった。
版下を作成するのに最近で はワープロ入力をもとに行なうが、原稿を入力した後校正があるので、 一時、データをフロッピー2枚にバックアップして保管する。
校正がで きしだい更新するが、2度、3度と校正が入ると、最新のフロッピーが どれだかわからず、いちいちプリントアウトして探したり、間違って古 いものを使ったりして、ムダやミスが発生していた。
文書をとり扱うプ ロでさえこのような状態である。
台帳などを作成して、管理がきちんと 行なわれていれば、このようなことはおこらない。
文書は、変更があるものだという認識で、改訂の手順をとり決めなけ ればならない。
改訂は、改訂の理由の明確化、改訂版の発行、承認、配 付、保管、1日版の撤去の手順で行なわれる。
この手順は、できるだけ簡 単な手続きで、頻繁な改訂に対しても即座に対応できるようになってい なければならない。
一般のマニュアルにも同じことがいえる。
業務の改善は企業活動にとって重要であり、改善が多く行なわれるほ どその評価が高い。
そのたびに、文書の改訂を行なっていたのでは、効 率が悪くなるという意見がある。
しかし、これは文書の種類により改訂 の手続きをとり決めればよい。
たとえば、作業標準などのその部署にの み適用するものに関しては、その部署で原本を保管し、管理すればよい。
写真を撮り表現してもよい。
文書管理の目的は、必要な部署の、必要な 人に、つねに最新版がタイムリーに行き渡るようにすることである。
このようにIS09001における文書管理のしくみは、一般のマニュアル づくりにも大いに参考になる。
明日からのマニュアルづくりのために
マニュアルについて、われわれが誤解している部分が多くある。
何冊 もファイルが並び、膨大な量の文書があれば良いマニュアルといえるの か? 厚いマニュアル集には、明確な体系が必要となる。
体系が不明確 なマニュアルは、活用できない。
異動が定期的な、主として大企業は、 マニュアルが整備されている。
異動がない企業こそマニュアルが必要な のに、信頼できる担当者がいるから、マニュアルは不要だと考えてい る。
マニュアルを作成すれば、それで終わりで、実際の業務の遂行に利 用された形跡のない企業がある、などなど。
このような状況を知りつつ、われわれはマニュアルづくりをすすめて きた。
もちろん、こんな状況にならないような配慮をしながら。
業務の 体系化から業務の適正化をへて、マニュアルの記述・作成そして教育・ 維持管理という流れが、われわれのすすめ方の概要である。
グループ方 式の作成で、活用しやすい状況を生みだす点も特徴的である。
ただ作成 するのでなく、教育・周知徹底を前提とするマニュアルづくりには、 1 時間会合の繰り返しによるマニュアル作成が有効と思われる。
人と仕事のアンバランスが業務遂行を非効率的にしている。
しかし、 このアンバランスこそ、業務の遂行に効率化・活性化・創造化をもたら す福の神と思いたい。
反面教師が必要となる場合がある。
各種の規程類 とマニュアルとの非整合性、作成しても読まれない、大切な部分が欠落 したマニュアルこそ、自分たちの職場を映す鏡ではないだろうか? そ のくせ、人間は欲張りである。
やれ、株式上場をめざした規程の整備だ、 それISO認証取得のための品質マニュアルづくりだと。
日常を、もっと 地道に見つめ直すことこそ基本ではないのか。
いつたん作成したら、後 は省みられない「マニュアル」や「規程」など作成に時間を要するばか りで、本来の目的から考えると作成する必要はないのだ。
多くの職場に共通する業務だけでなく、ある職場に1名の担当しかい ない場合でも、マニュアルづくりが現状を見つめ直すよい機会になる。
われわれの考えるマニュアルは、人を活かすためのものである。
人がイ キイキ仕事するためのマニュアルこそ求められてしかるべきである。
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