ポイント ❶ B/ Sはストックの情報としてとらえる ここからは、 B/ Sの理解をさらに深める、5つのポイントのうち1つ目「 B/ Sはストックの情報としてとらえる」について見ていきましょう。 ここでお伝えするのは、 B/ Sの読み方というよりは、 B/ Sのとらえ方です。 P/ Lが限られた期間の会社の事業成績、つまり「フローの情報」であるのに対し、 B/ Sは創業以来の蓄積された財務の成績、すなわち「ストックの情報」を表します。 B/ Sには、会社創業以来、会社の経営者がどのようにお金を調達し、何に使ってきたか、その結果、どんな財産が会社に今あるのか、創業から B/ Sを出したその時点までの、すべての結果が示されています。 B/ Sの変化を具体例で説明しましょう(左の図参照)。
山田太郎という社長が、自己資金 1億円を出して、ある製造業の会社 A社を創業したケースです。 B/ Sの右側の「お金の調達方法」には、「資本金」 1億円と記録されています。 そして、山田社長は創業と同時に、自己資金 1億円から、居抜きで 6000万円の工場兼社屋を購入(建物・土地は各 3000万円とする)します。 さらに、 1000万円かけて、その他の設備や什器などの準備を整えました。残りの 3000万円は、仕入れや人を採用する資金として、銀行の当座預金口座に入れてあります。 B/ Sの左側の「会社の持ち物」には、何を買い、それが今どんな形で会社にあるのか、買わなかった分の残りの現金・預金などが記録されているわけです。 どんな会社も、創業時の B/ Sは、おおむねこうしたシンプルな形です。 A社の場合は、資金調達はすべて自前、山田社長自身のお金なので、資本金(自己資本)が 1億円で、借金(負債)はゼロです。 つまり、創業時の会社の全財産は 100%自分のもので、正真正銘の無借金です。「自己資本比率」は自ずと 100%となります。 ●事業活動を進めると B/ Sの形が変わっていく 創業から 2、 3年たつと、健全な会社であれば必ず事業を進め、さまざまな投資も行います。商品販売や製品製造、設備投資、未来への投資でさまざまなお金の出入りがあるので、時がたつにつれて、この B/ Sの形は変わります。 次ページには、創業 3年目を迎えた A社の B/ Sを示しました。矢印は、一連の購買行為(以下の設備投資によるもの)の流れを示しています。
山田社長は、生産力を一気に上げるため、銀行から長期の借入金 3000万円を調達し、そのお金で生産のための機械(設備)を購入したところです。いわゆる、生産拡大を狙った設備投資で、生産のキャパシティを上げて事業拡大を狙っています。山田社長としては創業以来、はじめての「長期借入金」となります。 B/ Sの右側の「長期借入金」は、「 1年後から返済を始める」という条件で借りたので、この時点ではまだ返済は始まっておらず、まるまる 3000万円の借金(長期借入金)が残っています。このお金で、生産のための機械を 2800万円で買ったとしましょう。 買った機械は会社の財産なので、 B/ Sの左側に「機械・装置」として 2800万円分が加算されます。 A社ではまだ投資したい設備があるので、残る 200万円を銀行の普通口座に入れました。「現金・預金」は 200万円増えることになります。「長期借入金」 3000万円が B/ Sの右側(お金の調達方法)に記録され、「機械・設備」 2800万円が左側(会社の持ち物)に書かれます。「現金・預金」に 200万円が追加され、「現金・預金」の欄はほかのこれまでの行為(たとえば借金の返済や売掛金の入金など)と合算された累計額で表示されます。 このように、 A社の B/ Sは、創業時とは様変わりしていることがわかります。 しかし、 B/ Sの基本的な構造そのものは変わりません。 右側には「お金の調達方法」(負債や自己資本)が記録されていますし、左側には「会社の持ち物」として、購入した会社の資産、購入しなかった分の残りのお金などが記録されています。 そして、創業から 2年目、 3年目ともなると、右側の「お金の調達方法」もさまざまになってきます。これは2つに大別されます。 1つは、借りたお金や人に支払うべきお金による調達、つまり「負債」です。 もう1つは、自分のお金による調達、つまり「資本金」や「利益剰余金」などの「自己資本」です。 A社では、資本金の 1億円が「自己資本」に当たり、創業時から変わっていませんが、「負債」が増えているので、「自己資本比率」は創業当初に比べてだいぶ下がり、このときは 40%台となります。 このように、 B/ Sでは歴代の社長がどのような経営をしてきたかがわかります。 B/ Sは毎年積み上げるものなので、過去の会社の歴史や歴代社長の性格がにじみ出るのです。貸し付けをする金融機関は B/ Sを丹念に見て、融資の判断をします。
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