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プロローグ 中期経営計画の基礎

ご利用の前に必ずお読みください本書は紙書籍『マンガでやさしくわかる中期経営計画の立て方・使い方』(ISBN9784820727170)を底本として電子書籍化したものです。紙の書籍とはデザインやレイアウトが異なり、使用環境によりそれぞれ表示が異なります。閲覧方法は、購入したストアの説明をご確認ください。掲載内容は特に断りのない限り執筆時点の情報であり、変更される場合があります。特にインターネットURLの記載がある場合は、底本執筆時のリンク情報のためアクセス時に該当ページが存在しない場合があります。本書は情報提供のみを目的としており、掲載内容の運用結果について日本能率協会マネジメントセンターおよび執筆者は一切の責任を負いません。以上をあらかじめご承諾の上でご利用をお願いいたします。本文中に記載された製品やサービスの名称は、関係各組織の商標または登録商標です。

はじめに前著『中期経営計画の立て方・使い方』(かんき出版)は、自身の実務経験とコンサルティング経験を活かして、いわば卒業論文のようなつもりで1999年に旧三和総研在職中に出しました。精密機械メーカーというモデル企業を設定して、その会社の中期経営計画ならこのように作るべきだろうという想定で、合計22枚のワークシートをすべて一貫性のある事例として記入例を付けて紹介し、併せて巻末にブランクのシート集をCDROMの形で添付しました。幸い実務家の方々から「わかりやすい」とご好評をいただき、2008年の改訂版を含め、今日でも、いまだに読み継がれ、活用していただいています。共著者の稲垣淳一郎さんともども、大変嬉しく思っています。それから長い年月を経ましたが、その間、私は中期経営計画策定支援のコンサルティングをブラッシュアップしながら継続し、その一方で、策定後の進捗管理の支援や、企業内での新任取締役や新任部長研修、公開セミナーでの中期経営計画策定講座等でビジョンと戦略の組み立て方を講義・指導するなどの経験をしてきました。その中で、旧著では盛り込みきれなかった新しい考え方や、要素・ノウハウといったものが出てきました。さらに『マンガでやさしくわかる事業計画書』(日本能率協会マネジメントセンター)で新規事業のビジネスプランを策定するプロセスを、マンガのストーリーで表現するという新たな手法との出会いにより、中期経営計画の策定プロセスについても、具体的に紹介できるのではと思い至りました。私自身、お客様に合わせていろいろな策定方法、策定体制を経験し、それぞれの取り組み方の問題点や課題、それらに対する対応策・解決策というものを工夫してきました。このノウハウを、2つの会社の進め方の例として表現できないものかと思っていたところ、今回、日本能率協会マネジメントセンターさんからお声がけいただき、2つの会社のお話として展開できることになりました。中期経営計画の作り方は、経営者(トップ)の考え方や会社の業種・業態、組織体制、置かれた環境、経営状態、企業規模、スタッフの状況等により異なります。本書では、それを「大和貿易」と「山本電機」という2つの会社に代表させて表現してみることにしました。ベースとなるフレームワーク(枠組み)は、前著『中期経営計画の立て方・使い方』でご紹介している4つのパートで構成するということは同じですが、作り方により取り組む順番が違ったり、考え方やアプローチが異なったりします。その部分を、読者の方々にマンガのストーリーでつかんでいただきたいと思っています。もう一つ、この本にぜひとも盛り込みたかったことは、中期経営計画は「作って、発表しておしまい」ではダメで、その後の遂行・実行につながり、かつ実行フェーズで進捗管理(フォロー)ができるものでなければならないのですが、そのような中計にするにはどのようにしたらよいかということです。多くの会社がたくさんの労力と時間をかけて中期経営計画を策定していますが、実行できるものになっていなければ役に立ちませんし、実行しなければ、成果が上がりません。これまで、中計を作った後の会社も多く拝見し、どのような作り方をしたら実行しやすいか、またフォローがしやすいか、さらにどのようなフォローの仕方をしたら成果が上がりやすいかということを実際に指導しながら考え、やり方を工夫してきました。そうした経験や知見もみなさんにぜひお伝えしたいと思っています。経営企画という部署が存在し、中期経営計画を策定して運用するというのは、日本独特のものではありますが、上手に活用すれば、会社の発展に大変役立つ仕組みだと思います。90年代のバブル崩壊以降、リストラを乗り越え、2000年代以降のグローバル化と企業再編の波を乗り切り、2010年代以降の災害と少子高齢化を克服しようと努めている日本企業には、自社を、自分たちを変身させていく力が内在していると思います。今後も環境変化は続きますが、そうした中で変化し続けられる会社、変化を新しい力に変えていける会社となるために、自己改革力・変革力の習得と進化を、新たな中期経営計画の中に盛り込み、実行し実現していっていただきたいと思います。2019年4月吉日井口嘉則

ご利用の前に必ずお読みください本書は紙書籍『マンガでやさしくわかる中期経営計画の立て方・使い方』(ISBN9784820727170)を底本として電子書籍化したものです。紙の書籍とはデザインやレイアウトが異なり、使用環境によりそれぞれ表示が異なります。閲覧方法は、購入したストアの説明をご確認ください。掲載内容は特に断りのない限り執筆時点の情報であり、変更される場合があります。特にインターネットURLの記載がある場合は、底本執筆時のリンク情報のためアクセス時に該当ページが存在しない場合があります。本書は情報提供のみを目的としており、掲載内容の運用結果について日本能率協会マネジメントセンターおよび執筆者は一切の責任を負いません。以上をあらかじめご承諾の上でご利用をお願いいたします。本文中に記載された製品やサービスの名称は、関係各組織の商標または登録商標です。

マンガでやさしくわかる中期経営計画の立て方・使い方目次プロローグ中期経営計画の基礎Story0検討体制立ち上げ01中期経営計画の基礎02ビジネスモデルを見直し、パラダイムシフト(構造改革)を促すSTEP1ビジネス環境分析パートStory1外部事業環境分析03外部事業環境分析Story2自社経営資源分析04自社経営資源分析STEP2ビジョン設定パートStory3ビジョン設定05ビジョン設定STEP3戦略策定パートStory4戦略検討06戦略策定STEP4活動・計数計画具体化パートStory5活動・計数計画具体化07活動・計数計画の具体化STEP5中期経営計画のまとめと発表パートStory6まとめと発表08中期経営計画のまとめと発表エピローグ中期経営計画の見直しと進捗管理パートStory7エピローグ09中期経営計画の見直しと進捗管理中期経営計画策定用ワークシート集

ダウンロードサービスについて本書の特典として、中期経営計画の策定に役立つワークシート集(本書巻末掲載)を下記のサイトよりダウンロードいただけます。■ダウンロードサイトURL■http://www.iguchiyoshinori.com/chukei●中期経営計画策定用ワークシート集(ファイル名:chukeiws.pptx)(MicrosoftOfficePowerpointプレゼンテーション)

01中期経営計画の基礎▼(1)経営計画をつくる意義/会社を変えていく気構えマンガのストーリーの高知の言葉にあるように、世の中の情勢は常に変化しています。ですから、その中で会社や人も変わっていく必要があります。では、どの程度変わる必要があるのかというと、対象となる会社や人によって異なってきます。変わらなければならない変化の程度を、大きい方から「変革〉改革〉改善」というように3つに分けて考えてみましょう(図表0-1)。

まず、「改善」は今あるものを少しずつ良くするとか、少し安くするなどのように、小さな変化を作り出して行くことをいいます。「カイゼン(Kaizen)」という言葉が英語にもなって海外で広く使われているように、「改善」は日本の企業、特にメーカーのお家芸です。トヨタ自動車は、この改善を全社員が日々積み重ねて世界トップクラスの自動車メーカーになりました。このように、「改善」はみんなが取り組めることなのです。次に「改革」ですが、これは「変革」との違いで対比するとわかりやすいと思います。「ゴーンによる日産の改革」と言われるように、カルロス・ゴーンが行ったことは「改革」に相当します。日産自動車では、日本人経営者の下では、毎年のように赤字となり、会社経営が立ちゆかなくなりました。そこで、外資に出資とともに経営者派遣を依頼し、「NRP(日産リバイバルプラン)」という中期経営計画を作って改革を断行しました。その後、主力の自動車ビジネスで再び利益が出るようになり、さらに競争力が発揮できるようになったのは周知の事実です。一方、「変革」の事例としてわかりやすいのは、富士フイルムです。富士フイルムでは、デジタルカメラ化の流れによって主力の写真用フイルムがなくなってしまう危機に直面しました。事実、世界最大のフイルムメーカーであったコダックは倒産してしまいました。当時富士フイルムの社長であった古森重隆さんは、富士ゼロックスを子会社化したり、イメージ処理装置の方にシフトしたり、医薬品メーカーを買収するなどしてグループを大きく変え、会社を存続させるだけでなく、再び成長軌道に乗せたのです。これが「変革」です。このように、本書では本業が変わってしまうような変化を「変革」とし、本業がそのままの「改革」と、本業すら変わってしまう「変革」とで使い分けることにします。なお、「改善」と「改革」間にも大きな溝があることを知っておく必要があります。変化への対応として「改善」で済むのであれば、通常の活動の範囲内での対応が可能ですが、「改革」となると、これまでとは違う考え方や方法をとる必要があるのです。日産自動車がカルロス・ゴーンの手腕・手法に頼らざるを得なかったのが典型的な例です。通常、企業では「予算」といって1年間の計画を立てます。しかし、予算はこれまでの延長線上で「このままいくとこれぐらいの売上になりそうだ」とか、「これぐらい利益が出そうだ」という予測・推測を中心とした作り方をしますので、「改善」程度の内容しか織り込むことができなくなるのです。それに対して、「変革」や「改革」が必要な場合、単年度では取り組みが難しいため、3年から5年の中期経営計画を立案して取り組むことになります。世の中には中期経営計画不要論もありますが、もし皆さんの会社で改革や変革を求められるようであれば、そのプランを中期経営計画として立案し、実行する必要があります。では、どのような分野で「改革」や「変革」が必要なのでしょうか。これには、図表0-2に示すように、6つの分野があります。

1つ目は「事業分野」です。会社が儲からなくなってしまったり、成長が止まってしまった場合には、本業のビジネスモデルを変えるとか、新規事業やM&A等で新たな成長を目指す必要があります。2つ目は「組織分野」です。機能別組織を事業部制や持ち株会社制等へ組織構造を大きく変えたり、権限移譲や会議体を見直したり、組織の運営方法や意思決定方法を大きく変える方法があります。3つ目は「人事分野」です。戦後長らく続いてきた職能資格制度を見直し、能力や実績に応じて処遇するようにするとか、人材の採用や育成方法を見直す等のテーマがあります。海外で活躍できる人材を増やすとか、女性が活躍しやすい職場や働き方に改めたり、外国人雇用を増やしたりというものも、この分野です。4つ目は「財務分野」です。借入金依存度を下げるとか、遊休不動産を処分するとか、在庫や資産の持ち方などバランスシートの構造を大きく変えるなどがあります。5つ目は「業務分野」です。最新のIT技術などを使って、先進国の中でも効率が悪いと言われるホワイトカラーの生産性を押し上げる等があります。最後の6つ目は「IT分野」です。近年では、AIやIoT等の先進のIT技術が実用化してきていますので、それらを使って自動で作業や業務処理が行われるようにしたり、自宅やリモートで仕事ができるようにしたりする分野が考えられます。以上、6つの分野を紹介しましたが、いずれの分野の改革や変革が必要かは、企業・組織によって違いますので、自社で必要な分野を取り上げ、どのように変えていったらいいかを検討するとよいでしょう。・組織変革の8ステップここで、改革や変革を行う場合にはどのようなステップを経る必要があるかをご紹介しておきましょう。改善は「現状あるものを少しずつ良くする」ということなので、現状から出発することができますが、改革や変革が求められる場合、「このままではいけない!」という現状否定から入る必要があります。ここでは図表0-3に示す、アメリカのハーバード大学ビジネススクールの名誉教授であるジョン・P・コッターの『企業変革力』で述べられている8つのステップが参考になります。最初のステップは「危機意識を生み出す」です。人間誰しも今のままで変わらない方が楽ですから、考え方も仕事もなるべく変えたくないと思っています。ですから、最初に「このままではいけない」「変わらなければいけない」とみんなが思えるようにしなければいけません。このステップがうまくいかないと、次のステップに進めません。2番目のステップは「変革を進めるための連帯」です。「このままではいけない」と感じているだけでは何も変わりません。「ではどうしたらいいのか」ということを問題意識の高い人たちで相談する必要があります。それが変革や改革を進めるための「連帯」なのです。日産自動車の場合には、「クロスファンクショナルチーム(CFT)」を結成して検討を行っています。3番目は「ビジョンと戦略を作る」です。これが中期経営計画に相当します。日産の場合は、前述した日産リバイバルプランをCFTを中心にして作りました。4番目は「ビジョンと戦略を周知徹底する」です。中期経営計画の発表と伝達がこれに相当します。ここまでで前半が終了です。中期経営計画を立案するまでであれば、以上の4ステップでいいのですが、実行して成果を挙げるとなると、それ以降の4ステップも必要となります。5番目は「従業員の自発を促す」です。改革・変革には、公表した中期経営計画に基づいて、受け身ではなく、自分から改革・変革行動を提案したり、実行したりする必要があります。「実はこう思っていました」といった提案を、社内から提起してもらうのです。6番目は「短期的成果の重要性」です。長らく成果が出ないでいると、それが必要なことだとは思っていても、「本当にこれでいいのか?」という疑念が湧いてきます。こうした小さな疑念が発端となって、改革・変革が停滞したり頓挫したりしてしまうのは、避けなければなりません。そのためにも、早い段階で目に見える成果を出せるようにすることが重要なのです。7番目は、「成果を活かしてさらに変革を進める」です。短期的な成果が出せると、「このまま進めても大丈夫なのだ」という安心と自信が芽生え、活動に勢いがついてきます。最後は「新しい方法と企業文化」の形成です。変革・改革活動を続けていると、現状を変えていくことに抵抗感が少なくなり、古い価値観と方法が新しい価値観とその方法に置き換えられてきます。それを続けていくことで、新しい方法と企業文化が生まれてくるのです。まさしく日産の改革はこのように進み、日本の大企業の改革事例としては特筆すべき事例となったのです。その後、多くの日本企業経営者がこの手法をまねていきました。コッターの説は主に欧米の企業・組織を分析対象にしていましたが、日本でこのようなことが実現できたことにより、洋の東西を問わずそれが適用できることが実証されました。皆さんの会社で改革や変革の必要が生じた場合も、この8ステップを経ることとなります。改革・変革は、成功すればその果実も大きいものですが、一方で失敗するリスクもあります。過去、多くの企業や経営者が失敗し、表舞台から消えていったこともまた事実です。とはいえ、大きく変わらなければならないのに変えられないままでいる企業は、やがて世の中から取り残され、退場させられる運命を待つしかありません。どちらの道を選ぶかは、経営者次第です。このように改革・変革はリスクも高いため、成功するためのメソッド、思考法とノウハウ・スキルが必要となります。それらは大きく分類すると、今述べた「変革・改革思考」のほかに、図表0-4に示すように望ましいビジョン設定や的確な戦略立案を行える「ビジョン・戦略思考」や新規事業に必要な「創造思考」、組織を構成員の考え方を含め大きく変えていく上で必要な「マネジメント・リーダーシップ思考」などがあります。

図表0-4の「オペレーション思考」と「改善思考」は、通常業務を行っていても身につけられますが、それ以外の思考法は意識して学び、体験を通じて習得していかないと身につかないものばかりです。それは、戦を行ううえでは兵法の知識が必要なのと同じことです。必要に応じてこの本の中でも紹介していきますので、ぜひ学んでみてください。▼(2)コーポレート・ガバナンス・コードによる要件株式公開企業は、2015年6月から東京証券取引所が定めた「コーポレート・ガバナンス・コード」に準拠するよう求められています。このコーポレート・ガバナンス・コードは、5つの基本原則からなっています。①株主の権利・平等性の確保②株主以外のステークホルダーとの適切な協働③適切な情報開示と透明性の確保④取締役会等の責務⑤株主との対話このうち、④と⑤で中期経営計画や経営目標に関わる原則が述べられています。【補充原則4-1②中期経営計画】取締役会・経営陣幹部は、中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行うべきである。仮に、中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自社が行った対応の内容を十分に分析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期以降の計画に反映させるべきである。【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。これらのことから、中期経営計画を株主に対するコミットメント(必達目標)として捉え、作りっぱなしにせず、事後の振り返りが必要であること、経営目標としては、利益目標だけでなく資本効率も開示する必要があることがわかります。資本効率を表す指標としては、ROAやROEが考えられます。▼(3)中期経営計画の3大要素中期経営計画には、細かく分けるといろいろな要素がありますが、大ざっぱには3つの要素に分けられます(図表0-5)。1つ目は「経営ビジョンと経営目標」です。将来どのような会社・組織を目指すのかということを、定量・定性両面で打ち出していきます。なお、定量的な側面は売上高や利益目標に代表される経営目標を指し、定性的な側面は「〇〇業界世界一」等の経営ビジョンを指します。かつては売上高などの定量目標しか提示しない会社がありましたが、定量目標だけではどのような会社になりたいのかが伝わりません。このため、定性的な目標である経営ビジョンも必要となるのです。2つ目は戦略課題とその解決策という意味での「活動計画」です。経営目標や経営ビジョンを達成するために、作戦としての戦略が必要です。「新たな成長を期すために新規事業に参入する」であったり、「そのためにM&Aを行う」といったものはそうした戦略の例です。その作戦を戦術として具体化したのが活動計画となります。3つ目が「計数計画」です。経営目標に到達するために「各年度別にどれだけ売上高を伸ばしていくのか」とか「どれくらい粗利益率を改善していくのか」「どれくらい販売管理費を抑えて利益を出していくのか」「どの程度純資産を増やして安全性を高めていくのか」といった数値面での計画をいいます。中期経営計画というと経営目標と計数計画しか示さない企業が今でもありますが、それでは「どのような会社になりたいのか」という経営ビジョンや、「どうやって達成するか」という戦略や活動計画がないことになり、重要な要素を欠く中期経営計画となってしまいます。きちんと3大要素が備わったものを作りましょう。▼(4)中期経営計画に求められる10大目次今述べた中期経営計画の3大要素をドキュメントとして整備し、発表しようとすると、図表0-6に示すような10大目次となります。スタッフに余裕がある大企業では、これらの目次を揃えて対外発表するところも見受けられます。一通り見ていきましょう。1番目は「前中期経営計画の振り返り」です。コーポレート・ガバナンス・コードでも求められているように、新しい中期経営計画を立案する前に、それ以前の計画がどうであったのか、所期の成果が得られたのか、やるべきことがやれたのか、できなかったことは何か、なぜそうだったのか、今後何が課題となるのか等を整理して振り返っておく必要があります。うまく取り組めなかったことはその会社の「弱み」でもある可能性もありますので、そういう点が見つかったら、その弱みを克服できるような課題設定と取り組みを行うよう次期中期経営計画に反映させるべきです。2番目は「経営ビジョン関連テーマ」で、先に述べた3大要素のうちの定性目標部分となります。3番目は「業績向上関連テーマ」、つまり経営目標と定量目標を打ち出すことです。4番目は「事業戦略関連テーマ」です。経営ビジョンや経営目標を達成するために事業別にどのような戦略を講じるのか、具体策は何なのかを論じます。5番目は「顧客価値・ブランド向上関連テーマ」です。B2B・B2Cに関係なく、どのように顧客にとっての価値を高め、社名や商品名といったブランド認知度やイメージを高めていくのかを明確化します。6番目は「財務構造改革関連テーマ」です。有利子負債の圧縮や投資資金の確保方法等財務的な課題・取り組みを論じます。7番目は「投資関連テーマ」です。事業戦略と関連づけて、どのような事業や分野にどのような投資を行うのかを明確化します。8番目は「組織戦略関連テーマ」です。組織構造や組織運営方法をどのように変えていくのかということを論じます。9番目は「機能別戦略関連テーマ」です。営業や開発・生産・管理などの機能別組織ごとの戦略を打ち出します。最後は「CSR関連テーマ」です。環境問題、コンプライアンス対応、セキュリティ強化などのテーマがありますが、企業によっては、CSRレポートなどで代替するケースが見受けられます。これら10大目次はすべて揃っていなければならないということではなく、業種や企業規模、あるいは時宜に応じて加えたり割愛したりすることができます。基本的には3大要素が最低限揃っている必要があります。▼(5)中期経営計画策定を成功させるための要素中期経営計画を策定すること自体にある程度の時間と労力が必要となります。このため、この策定作業を成功させるためには、図表0-7に示すようにいくつかの要素を揃える必要があります。

1つ目は「トップのコミットメント」です。会社や組織を大きく変えていこうとする場合、経営者や組織のトップが本腰を入れて取り組む必要があります。「経営企画にお任せ」というような策定方法ではなく、トップ自らがビジョン・目標設定や戦略立案に主体的に関わらなければなりません。2つ目は「参加メンバーの顔ぶれとやる気」です。時に策定プロジェクトに仕事が暇な人があてがわれることがありますが、まったくもって論外です。仮に彼らが選ばれた場合、プロジェクトミーティングで彼らが問題として取り上げるのは職場や上司の不満ばかりです。当然プロジェクトの雰囲気は悪くなり、将来を語るどころではなくなってしまいます。仕事はできる人に集まる傾向があります。ですから、できる人ほど策定プロジェクトに関わり、この会社をどうしたらいいのか、またどのようなことに取り組んだらいいのかについて積極的に発言してもらうべきです。一方で、せっかく実力のある人たちに集まってもらっても、「検討するだけ」とか「提言しても取り入れられない可能性がある」といったことがあると、負担感ばかりが増し、やる気が出なくなってしまいます。このため、実力のあるメンバーによる真剣な議論の結果が取り入れられるようにする必要があります。また、社内にうるさ型の古手の役員がいるケースがありますが、そういう人を疎んじていると、最後の方でちゃぶ台返しを食らう可能性があります。途中段階で意見を聞くなどをしておいた方がよいでしょう。3つ目は「立案フレームワークと進め方」です。中期経営計画は通常3カ月から半年ぐらいで作り上げます。短いようですが途中いろいろな工程がありますので、しっかりした行程表なしに検討を進めると、途中で道に迷って検討がはかどらなくなり、プロジェクトメンバーも業務多忙を理由に参加しなくなります。ですから最初からしっかりしたフレームワーク(枠組み)に基づいて検討を進められるよう、本書で紹介するフレームワークを参考に、自社に合った手順を決めて進めてもらえればと思います。4つ目は「各パートで求められる要素スキル」を揃えておく必要があるということです。本書で紹介する「ビジョン・戦略立案フレームワーク」では、図0-8に示すように①ビジネス環境分析、②ビジョン設定、③戦略策定、④活動・計数計画具体化の4つのパートがありますが、それぞれのパートで求められる知識や要素スキルは異なってきます。その場になってからでは間に合いませんので、あらかじめこれらの知識や要素スキルを学んで身につけておく必要があります。

5つ目は「全体のコーディネーション」です。前出の4つのパートは、会社によって順番が異なる場合があります。自社に適した順番で順序よく進めていくには、ステップバイステップでやり方を決めていくのではなく、あらかじめ最初から最後までの行程を決めて取り組む必要があります。そうでないと、途中で難しい局面になった時にプロジェクト内で意見が分かれたり、最悪の場合、頓挫することにもつながりかねません。これら5つの要素がすべて揃うことで、中期経営計画の策定というプロセスを成功させることができます。マンガのストーリーでは、2つの異なるタイプの会社がそれぞれ違った進め方をしていきます。それぞれの進め方で難しい点や留意点などを紹介していきますので、自社で進める際の参考にしてください。▼(6)各パートで求められる知識・スキルここで、各パートで求められる・スキルを簡単に見ておきましょう(図表0-9)。

①ビジネス環境分析パートでは、データ収集や分析スキル等の分析的な知識やスキルが必要です。スタッフの方々は比較的このパートは得意でしょうが、ただやみくもに情報収集しても、何が重要な情報で何に基づいてどのような判断や課題設定を行うのかということがわかっていないと、情報やさまざまな意見の海に投げ出されて溺れてしまいかねません。例えば、プロジェクトメンバーに職場や仕事の問題点を出してもらいます。そうすると、本人の不平不満をはじめいろいろな事柄が上がってきます。事務局としては、それらを整理して、重要性や緊急性に基づいて課題設定を行う必要があります。マンガのストーリーでは、山本電機の人たちがそのような局面に出くわします。②ビジョン設定パートでは、図表0-9に見られるように価値観や想いの抽出や、目標感の違いの調整等、主にファシリテーションスキルが重要になります。例えば経営目標を設定するということについて、5人に聞けば5つの違った意見が出てきます。最終的には社長に決めてもらうという方法もありますが、社長にも根拠となる判断材料が必要です。このように皆さんから考えや意見を引き出しながらまとめていく手法を「ファシリテーション」といいます。この手法を身につけていないと、このパートをうまくまとめることは難しいです。③戦略策定パートは、戦略やビジネスモデルに関する知識やロジカルシンキングといったスキルがカギとなります。戦略類型については、戦略策定パートで解説していますので、参考にしてください。④活動・計数計画具体化パートでは、戦略を戦術に落とし込んだり、計画化するなど、ブレークダウンスキルが重要となります。どんな戦略も最終的には業務として実行される必要がありますから、「戦略課題課題解決策施策計画」のようにブレークダウンしていきます。▼(7)現状分析先行型かビジョン先行型か将来像や目標を設定する方法に、「現状分析先行型アプローチ」と「ビジョン先行型アプローチ」の2つの方法があります(図表0-10)。

現状分析先行型アプローチは「フォーキャスティング型アプローチ」ともいいますが、最初に現状を分析し、その問題点や課題を抽出し、解決策を検討した上で、解決策を実行したらどこまでたどり着けるかという将来像や目標を設定します。この発想方法は誰でもできる発想方法なので、理解はしやすいのですが、目標が低くなったり、夢のない将来像となりやすいという難点があります。一方、ビジョン先行型アプローチは「バックキャスティング型アプローチ」ともいいますが、最初に望ましい将来像や目標を検討・設定するところに大きな違いがあります。最初に目標設定した上で現状に戻り、そのギャップを分析し、どうしたらそのギャップを埋められるかを検討します。この発想方法の特徴は、ありたい姿先行で高い目標設定や大きな夢が描けるということが挙げられますが、単なる願望や実現方法の見つからない目標の場合は、夢物語に終わってしまう可能性があります。世の中の9割以上の人はフォーキャスティング型の発想に頼り、バックキャスティング型の発想をしません。むしろ高い目標を設定することを躊躇します。目標を達成できずに残念な思いをしたり、上司から叱られりすることを嫌うからです。また、高い目標設定を行うと、その分仕事は大変になります。大抵の人は大変な思いをしたくないので、低い目標設定に甘んじようとします。こうした人のメンタリティーを挙げれば「失敗したくない」「楽をしたい」「叱られたくない」「断られたくない」「責任を取りたくない」といったものとなります。一方、バックキャスティング型で成功してきた企業や経営者を見ると、トップ自身がバックキャスティング型で発想し、大多数であるフォーキャスティング型の人たちや組織を引っ張ってきていることが少なくありません。とはいえ、先に見たように、世の中が変化する中で自社に改革や変革が求められる場合は、このバックキャスティング型で発想する必要があります。改善で済む場合には、みんなができるフォーキャスティング型発想を使って計画を立案し、進めていくことで問題ないのですが、改革や変革を断行しなければいけない場合には、難しい問題に直面することになります。▼(8)策定フローを確認するバックキャスティング型で中期経営計画を立案する場合は、図表0-11のとおり、②ビジョン設定パートから始まり、①ビジネス環境分析③戦略立案④活動・計数計画具体化の順に進めていきます。一方、フォーキャスティング型で立案する場合は、①ビジネス環境分析から始めることになります。

マンガのストーリーで、大和貿易はバックキャスティング型で進め、山本電機はフォーキャスティング型で進めることになりました。フォーキャスティング型で進める場合にも、①②③④の分析先行型1と、①③②④の分析先行型2の2つのパターンがあります(図表0-11参照)。このように見てくると、経営者のタイプと求められる変化の度合いによってどちらの手順で進めるかが決まってきますが、難しいのは経営者の発想がフォーキャスティングタイプなのに、求められる変化が改革・変革の場合です。経営者のタイプに合わせるのか、求められる変化に応じて経営者に発想方法を変えてもらうかを選択する必要があります。バックキャスティング型発想を行える人は世間一般では1割以下ですが、優秀な営業マンなど、バックキャスティング型発想で仕事ができる人に聞いてみると、後天的に身につけた人が大半だということがわかります。ですから、今はフォーキャスティング型の発想しかできない人でも、バックキャスティング型発想を身につけて取り組むということは可能なのです。自社の状況、経営者の受容度に合わせて策定フローを選んでいきましょう。▼(9)策定方法と体制中期経営計画を策定する方法には、大きく分けて4種類があります。①プロジェクト方式これは、経営企画担当役員等がプロジェクトリーダーとなり、社内各部門から部課長クラスがメンバーとして参加し、キックオフから何ヶ月かかけてプロジェクト原案を策定し、経営会議または社長に提案する方式です。社長は「プロジェクトオーナー」という位置づけです。私が指導する場合には、多くがこの形式です。マンガのストーリーでは、大和貿易がこの方式です。②現行組織中心方式これは、役員以上の経営陣で現状分析~ビジョン設定~基本戦略策定までの前半部分の検討を行い、それ以降の後半を各部門の部課長クラスが個別戦略から活動計画までを具体化する方法です。前半・後半での役割分担となっていますので、社内で進める場合にはこのような方式もあり得るでしょう。③経営企画中心方式これは、経営企画が事務局となり、ポイントごとに経営者・トップの意向や考え方を確認しながら事業部や各部門に内容記入や具体化を求め、取りまとめていく方式です。社長の意向に沿った経営計画はできますが、各部署間の議論が不足する傾向にあり、納得性や実現性に難点が残ります。マンガのストーリーでは、山本電機はこの方式とプロジェクト方式のミックス方式で行っています。④合宿研修方式これは、ベンチャーや比較的小規模の企業の経営陣や部門長が週末などに定期的に集まり、合宿検討を繰り返しまとめていく方式です。相互信頼関係があって、参加者が気兼ねなく積極的に発言できるような雰囲気がある会社なら効果的でしょう。・ファシリテーションの必要性日本人は序列やメンツを重視するため、議論を避ける傾向があり、会議を開いても黙りこくって討議が盛り上がらないことがあります。以前、中期経営計画のファシリテーションを依頼された会社では、社長が役員を集めて議論させようとしたのですが、みんな黙ってしまってうまく行かなかったので、ファシリテーションをしてほしいと相談されたのです。そこで、ワークショップの実施にあたってきちんとフレームワークを与え、少人数でグループ討議ができるようにすると、別人のように活発な議論が行われたのです。脇で聞いていた社長も喜んでいらっしゃいました。中期経営計画は、予算などと違い、これまでと違う考え方やアプローチをとる必要性をみんなで議論し共有する必要があるため、きちんと全員が自分の考えを持ち、発言し、議論を戦わせ、合意できる合理的な結論を導き出す必要があります。このため、参加者の議論を促すようなファシリテーションができるファシリテーターが必要となります。社内で議論をさせたいと思ったら、まずファシリテーションスキルを身につける必要があります。▼(10)策定スケジュール策定スケジュールは、通常3カ月から6カ月ぐらいの間で組みます。ただし、その手順はビジョン先行型か現状分析先行型かで異なってきます。図表0-12に示したのはプロジェクト型で、なおかつビジョン先行型で取り組んだ、大和貿易に近いタイプです。

専任で取り組める人は限られているので、兼任の人も、業務に支障をきたさない範囲で、検討会当日のプログラムに合わせた予備検討や宿題に取り組めるよう、時間的余裕を持たせたスケジュールを組みます。なお、検討会では少人数グループに分け、グループ討議を行ってもらいます。▼(11)ワークシートの活用議論の際にテーマだけを与え、フリーフォーマットで議論してもらうと、論点や検討内容がバラけてしまいます。ホワイドボードに書いてもらう方式で行っても、後でまとめるのが大変です。このため、私は高知と同様に、ワークシートを活用しています。それぞれのパートごとにワークシートのフォーマットがあり、事前課題や当日の討議でも、ワークシートベースで記入や議論をしてもらいます。そうすることで一定の枠組みの中で議論が行われることとなり、ワークシートに追加したり、修正したり、削除したりすることでブラッシュアップが行えます。このように、ワークシートを活用することで、生産性が高まるとともに議論も深めることができるのです。また、経営企画としてまとめる際にも、ワークシートベースで行えば、まとめの手間を省けますし、同じフォーマットでまとめてあれば参加者にとっても見やすい資料となります。本書でもいくつか紹介していきますので、参考にしてください(巻末「中期経営計画策定用ワークシート集」参照)。▼(12)実行して成果が上がる中期経営計画の作り方私は、事業会社にいた頃から中期経営計画の策定に携わってきました。そして経営コンサルタントになってからも、さまざまな会社で中期経営計画策定のお手伝いをしてきました。その後が気になって策定のお手伝いをした会社に伺ってみることがありますが、中には社内でPDCAがよく行われ業績が上がった会社もあれば、中には中期経営計画書が机の引き出しにしまわれたまま活用されてない会社もありました。総じて見てみると、中期経営計画をきちんと実行した会社はその後業績が上がり、一方で実行できなかった会社は業績が低迷しているという傾向が強かったように感じました。このことから、「どうしたら実行できる中期経営計画が作れるか」という問題意識を持つようになりました。そしてたどり着いたのが、図表0-13のような6つのステップです。

①まず、かつての中期経営計画といえば経営目標と計数計画のみの会社が多かったので、「どのようにしてそれを達成するか」ということを表現する活動計画の必要性を訴えました。②次に、活動計画を作っても、各部門でバラバラの内容では整合性がとれません。そこで、その元となる戦略をはっきりさせる必要があります。このため戦略に基づいた策定を唱えました。③ところが、戦略や活動計画を作っても、それに対する実現・実行意欲がないと実行に移さないので、目的(Why)や目指す姿(Vision)を明確化すべきだと感じました。④このため事業目的としての理念を明確化し、経営ビジョンを具体化するようにしました。⑤その結果、事後訪問した会社の方から、「活動計画どおり進めたいのですが、具体的に何をやったらいいかがわからない」という指摘がありました。そこで、実行計画までブレークダウンすることを提案し、指導しました。⑥とはいえ、それでもまだ何かと言い訳を言ってサボる人がいるので、最後は危機意識を持たせたり、現場目標を明確化したり、PDCAでフォローしたりしました。そうすることで、ようやく実施でき、成果の上がる計画とすることができたのです。こうしたことから、中期経営計画は、策定して発表するだけではなく、実行できるものにすること、そのためには実行できるような計画にまで具体化すること、さらには、サボらせないように、実行状況を進捗管理することが重要だということがわかりました。このように、「作っておしまい」の中期経営計画ではなく、実行して成果が上がる中期経営計画作りを心がけていただきたいと思います。またそのために、どう考えどのようなことに取り組んでいったらいいかをマンガのストーリーと本文解説でご紹介していきますので、参考にしていただきたいと思います。

02ビジネスモデルを見直し、パラダイムシフト(構造改革)を促す▼(1)大転換の時代──10年後はどうなっているか常日頃から世界情勢や世の中の変化に気を配っている人ならまだしも、今回新たに中期経営計画の立案を担当することになったような場合には、時間軸・空間軸の両面からマクロ的な大きな変化を捉えておく必要があります。図表0-14にある今後10年間で起こる大きな変化の項目はあらゆる業種・事業に共通の前提となりますので、その内容と変化による自社への影響を押さえておきましょう。

また、日本企業は、「ものづくり」を得意としてきましたが、パソコンメーカーが儲からなくなってしまったように、ものづくりの「構造」ともいうべき製品アーキテクチャーが変わってきていることも理解しておく必要があります(図表0-15参照)。

つまり、企業を超えた連結がクローズな関係(閉鎖的)で、部品設計の相互依存度が高いインテグラル(擦り合わせが必要)な状態だと、自動車のように組み立てメーカーがリーダーシップを発揮して利益を確保することができるのですが、これがモジュールの組み合わせ(クローズ・モジュラー)でできるようになり、さらに、企業を超えた連結もオープンになってくる(オープン・モジュラー)と、パソコンメーカーの二の舞になってしまいます。一方で、そうした状況でもOSやCPUなど、コアとなる部品で世界シェアを高く取れると状況は一変します。技術は、クローズ・インテグラルからクローズ・モジュラーへ、そしてさらにはオープン・モジュラーへシフトしていく傾向にあります。日本の自動車メーカーがいまだにグローバル競争力を発揮できているのは、自動車の製品アーキテクチャーがクローズ・インテグラルであるからです。とはいえ、この分野も電気自動車化によって大きく変わっていく可能性があります。特にメーカーの場合には、このように製品アーキテクチャーの変化ということを見通しておく必要があります。▼(2)自社のビジネスモデルを見直すローテク分野だけでなく、ハイテク分野においても韓国や台湾、中国メーカーが躍進し、日本を含む先進国のメーカーが苦しめられたり、流通業においては、アマゾンなどネット通販の台頭により、既存の大手流通業が脅かされたりしています。そうした中でただ「ものづくり」にこだわり続けるのではなく、独自のビジネスモデルを構築して生き残ったり、躍進したりしている企業が見受けられます。こうしたことから、既存の企業・事業においても、自社のビジネスモデルを組み替えることにより、競争力を回復したり、収益性を維持できることがわかっています。例えば建設機械業界では、コマツがKOMTRAXというシステムを使って「ものづくりビジネス」にサービスという「ことづくりビジネス」を加えて、競争力を維持しています。具体的には、販売する建設機械にGPSや稼働情報を収集するアンテナをつけ、それぞれの状況をKOMTRAXで収集し、自社と顧客の双方で見られるようにしているのです。このため、稼働率が高い現場へは営業マンが増販活動に出向いたり、故障しそうだったらあらかじめ消耗部品をメンテマンが交換に行ったりすることで、顧客の利便性を高め、顧客の支持を得ることに成功しています。こうした取り組みを「ものづくり」+「ことづくり」(サービス)と呼んでいます。このビジネスモデルは他の業界でも参考にすることができます。実際に、工作機械業界ではこの取り組みを参考に、顧客先での自社の機械の維持・メンテナンスに役立てています。このように、図表0-16にあるような他業種を含めた先進事例を参考にして、自社の新しいビジネスモデルの構築を検討するとよいでしょう。

参考までに、図表0-17にこれまで成功してきたビジネスモデルの事例を日本企業を中心に紹介しておきます(コマツの事例は、#10に相当します)。▼(3)パラダイムシフト(構造改革)のポイントを見つける「パラダイム」とは既存の枠組みのベースとなる考え方のことをいいますが、皆さんの業界でも、歴史上、標準となっているパラダイムというものがあると思います。これを大きく変えていくことを「パラダイムシフト」といいます。「自社で製造していたものを他社からのOEM供給に変える」といったものはパラダイムシフトの例といえるでしょう。日本語では、「構造改革」という言葉が当てはまります。企業の場合、パラダイムシフトの対象となる分野は、図表0-18のように7つほどあります。

例えば、1つ目の事業領域で見ると、「これまで」本業領域中心に取り組んでいたものを、「これから」は、新しい分野に進出していくというように拡大していくことが考えられます。ただし、その際には、「これから」に変えていくための「変革課題」に取り組む必要があります。パラダイムシフトに向けた課題を抽出するには、その他に、②ビジネスモデル、③市場展開の仕方、④競争する相手、⑤商品・サービス開発の仕方、⑥分業構造、そして⑦他社との提携関係のそれぞれについて「これまで」と「これから」という形で事前に検討しておくとよいでしょう。以上で見てきたように、中期経営計画の検討の際には、具体的な分析に入る前に、少し長期的かつ広い視点で物事を捉え、マクロで見てどのような変化が起きそうか、そしてそれに対応するためには自社のどのようなことを変えていく必要があるのかを大きく捉えておくことが重要です。「木を見て森を見ず」という言葉があります。目先の小さな変化に目を奪われていると、大きな変化を見逃すことになるという意味に解釈できます。中期経営計画の場合、「木」(例えば主力製品群)の健康状態や成長も見る必要がありますが、それを抱える「森」(事業部)も、そして「山」(会社)も、また他の山々(競合や業界)やひいては地殻変動(マクロ環境)までも視野に入れておく必要があります。▼(4)視野のスコープ(範囲)設定物事を見る範囲・視野のことをスコープといいます。我々は自分の周辺のことを中心に考えがちですが、中期経営計画の場合、会社を含む広いスコープで物事を考える必要があります。狭い方から順々に見ていくと、①自分の事…自分の業務に関わること、他人とのコミュニケーション・人間関係等マンガのストーリーでは、樹開はまず自分のことで悩んでいますね。②部署のこと…所属部署の役割、業務、目標、計画、業績、雰囲気、コミュニケーション、人間関係、モチベーション等③部のこと…所属する部について、部のビジョンと戦略および部署と同じ項目④部門のこと…所属部門について同様項目⑤会社のこと…会社の業績、経営者、ビジョン、経営目標、強みと弱み、戦略と戦術、経営課題、進捗状況、マネジメントの仕方等⑥グループのこと…企業によっては、グループ会社の一員であることもあります。親会社との関係が重要なこともあります。⑦市場環境…展開地域、お客様の状況、ニーズ変化等⑧競合環境…競合他社の状況、動向、新規参入・退出等⑨マクロ環境…政治・経済・社会・文化・技術・環境問題等の状況と変化⑩世界情勢…国内ばかりでなく、世界に目を向け、世界を取り巻く政治状況・経済変化、民族紛争、環境問題等普段の業務からいったん目を離して、視野を広げて捉えていく必要があります。

03外部事業環境分析ビジネス環境分析パートは、大きく外部事業環境分析と自社経営資源分析に分かれます。前者は主に外部のことについて、後者は主に内部のことについて分析をします。外部事業環境分析については、マクロ環境分析と市場環境分析、競合環境分析の3つがあります。それぞれに情報収集をして分析を行います(図表1-1)。

▼(1)マクロ環境分析(PEST分析)マクロ環境分析では、図表1-2に見られるように、PEST分析という視点から重要な環境変化やトレンドとその影響を捉えます。「PEST」というのは、P(Politics)政治体制の変化や法律制定・運用に関わるもので、与野党が入れ替わったり、税制が変わったり、米国や欧州・中国などの政治体制や政策の変化としてどのようなことが起こり得るかを想定した上で、自社としての取り組み課題を抽出します。新興国に進出している企業としては、政治体制転換やテロのリスク(「カントリーリスク」といいます)なども考慮に入れる必要があります。

作成にあたっては、起こり得る変化を記述するだけでは自社への影響がわかりませんし、さらに自社としてどのような対応をとったらよいのかがわかりませんので、それらの変化に自社がどのような対応をとるべきかまで検討しておく必要があります。このほか、E(Economics)経済・金融情勢の変化、エネルギーコストの変動や、S(Society)社会・文化的変化、T(Technology)技術革新やIT・新技術の普及等があります。以上で一通りPESTなのですが、2つめの「E」として「環境対応」(EnvironmentまたはEcology)が挙げられ、ここでは環境関連規制や環境問題対応等を検討します。マクロ的な変化のリサーチにあたっては、調査機関の予測や未来を予測した文献等を活用するとよいでしょう。最近は、インターネットでいろいろな情報が入手できるようになっていますので、まずはネット調査から始めて、ある程度情報が集まったら、文献収集や必要に応じて専門家にインタビューしたり、依頼するとよいでしょう。最先端のことは、ネットに載っていないことがありますから、自社にとって重要なカテゴリーの情報は、その筋の専門家に確認して情報収集した方がよいでしょう。▼(2)市場環境分析市場環境分析では、参入している市場の成長性や収益性、顧客ニーズの変化、消費動向の変化等を見ていきますが、中には「補完財」や「代替材」といったそれまでの競合製品とは異なるカテゴリーの製品・サービスが市場に新規参入してきたり、既存の市場を奪い取ったりするケースも見られるので、少し視野を広げてウォッチしておくとよいでしょう。例えば、任天堂は、ゲーム専用機を扱っていましたが、スマートフォンによるスマホゲームの普及により需要が激減し、長い間業績悪化に苦しみました。市場環境分析については、複数の事業がある場合にはその事業の分だけ分析を行います。マンガのストーリーにもあるように、事業部に協力してもらう方法もあります。事業部では常日頃から市場をウォッチしていますから、彼らの情報を基に分析を行うとよいでしょう。▼(3)競合環境分析競合環境分析については、主要な競合他社についてその現状と動向、そして今後考えられる動きについて分析します。競合他社の製品・サービスも、市場に出ているB2Cビジネスにおいては分析しやすいですが、製品・サービスとして市場には出てきにくいB2Bビジネスでは注意深く情報収集する必要があります。このように表に出てきにくい情報については、可能な範囲でお客様などから情報を得るなど、工夫する必要があります。競合ないしベンチマーク先情報は、図表1-3のように自社と競合とを同じ項目について比較を試みます。複数の事業がある場合には、事業ごとに複数のシートを作成して比較します。

これらの情報をすべて把握している部署や人はなかなかいませんから、いろいろな部署や人からの情報を集めて、一つにまとめてみるとよいでしょう。断片的にしかわからなかった情報をつなぎ合わせることで、全体像が浮かび上がってくることがあります。競合との比較表では、それぞれの会社の重要成功要因を抽出することが重要です。自社・自事業の重要成功要因のみならず、他社事業の重要成功要因もつかめると、他社の今後の打ち手を推測し、対策を立てやすくなります。図表1-4は外部事業環境分析シートの例です。この例では、本来自社経営資源分析に入る自社の事業分析を、戦略立案のための3C分析の視点(競合:Competitor、顧客:Customer、自社:Companyの3つのC)に基づいて分析している例です。

▼(4)シナリオプランニングとそのメリット外部事業環境分析は、通常このように行いますが、特にマクロ環境については、不確定要素が多く、例えば、為替レートの影響を強く受ける業種の場合、中期経営計画の前提として3カ年の為替レートを○○円/ドルと仮定してみても、当たらないことが少なくありません。このため、重要な前提が崩れてしまい中期経営計画自体を反故にしてしまうこともあり得ます。そうすると、もともと必要であった変革・改革課題への取り組みが中断されたり、従前どおりの予実管理が行われるだけになったりして、当初目的としていた変革や改革が進まなくなることがあります。たった一つの前提の変化で全体の取り組みが進まなくなってしまうのは大変もったいないことですから、少し工夫が必要です。そこで登場するのが「シナリオプランニング」です。シナリオプランニングとは、もともと米軍がキューバ危機の際に使用した手法で、ケネディ政権下で危機回避に有効だったため、その後ビジネスでも活用されるようになりました。その手法は、まず、自社の事業に重大な影響を与える主要な要因を抽出し、その要因の動きについて複数のシナリオを検討します。図表1-5がその例ですが、この場合、大和貿易のような貿易会社を想定して、主要な変動要因として①為替レート、②原油価格、③海上運賃、④入港船数の4つを抽出しました。そして、それぞれの要因について、為替レートであれば「円安か円高か」、原油価格であれば「原油安か原油高か」といったように2通りのシナリオを想定し、それらの組み合わせを検討してみます。

要因が4つで、2つずつのシナリオがあると、単純計算で16通りのシナリオができてしまいますが、その中から主要な組み合わせを選び、ベースとなるものを「基本シナリオ」、その他を「代替シナリオ」として想定し、それぞれのシナリオの場合にどのようなことが起きるか、またその際にどう対処したらよいかをあらかじめ検討しておくのです。もちろん、中期経営計画の前提として複数のシナリオがあると話がややこしくなりますから、ベースは基本シナリオを前提として作成することとし、代替シナリオのような事態が起こった際には、どのように対処するかを決めておけばよいのです。実際に、このシナリオプランニングを中期経営計画策定の際に使ってもらったケースがありました。その会社は、過去4回中期経営計画を策定していたのですが、4回とも為替レートの前提が外れ、途中で中期経営計画を止めてしまっていました。このため、私が担当した第5回にこのシナリオプランニングの手法を活用し、主に為替レートについて円高シナリオと円安シナリオの2つのシナリオを想定しました。こうして途中から円高から円安にシフトした際も「シナリオチェンジ」ということで対処したところ、3カ年の中期経営計画を完遂することができました。その結果、その会社は過去最高売上・最高利益を達成することができたのです。その会社の社長から後日大変喜ばれたのは言うまでもありません。▼(5)シナリオプランニングの活動計画・計数計画への反映方法まず計数計画ですが、影響の大きな外部事業環境要因が変化するので、当然売上高や原価、経費に影響が出ます。このため、まずその影響度合いを推定します。過去に起こったことがあるものであれば、例えば為替レートのように、10円の円高で輸出金額が何%減った等実績データを分析し、その平均値・期待値を推定します。その際、単に定量的に分析するだけでなく、実際にどのような事が起こったのか、どのような影響が出たのかをその時の経験者からヒアリングし、起こった際のプラス・マイナスの波及効果と影響度合いも合わせて推定します。過去に起こったことがないことであれば、その道の複数の専門家の意見を聞くとよいでしょう。専門家によっては楽観的な見通しの場合と悲観的な場合とがあります。両方の意見を聞いた上で判断するとよいでしょう。次に活動計画ですが、活動・計数計画具体化パートにおいては、基本シナリオをベースにブレークダウンします。それをさらにシナリオ別にブレークダウンするのは大変ですから、まず戦略レベルで影響が出るのか出ないのかを判断し、その上で、影響が出るのであれば、活動計画上でどのように対応するのかの方針を決めておきます。策定段階では細かな活動計画までは作成しなくてもよいでしょう。

04自社経営資源分析続いて内部の分析です。自社経営資源分析には、①財務分析、②事業分析、③人事・人材分析、④経営管理分析、⑤業務・情報システム分析、⑥社風・風土分析の6つの視点があります。▼(1)財務分析財務分析については、通常の財務分析と同じ視点で、成長性・収益性・安全性・効率性・生産性とキャッシュ・フロー等の分析を行い、主要なポイントを抽出します(図表1-6参照、通常の財務分析とほぼ同じ項目で、前著『中期経営計画の立て方・使い方』で詳しく紹介していますので、より詳しくはそちらをご参照ください)。

ただし、経営目標を設定したり、より詳細な財務値目標を設定したりする際に活用できるように、図表1-7に示すような実績と目標値が記入できるようなワークシートを用意しておくとよいでしょう。

▼(2)事業分析事業分析では、事業の成長性や収益性、競争力などを分析します。事業分析はもともと事業ごとの戦略立案に役立てるために行うため、「3C」という視点で分析を行います。孫子の兵法では「彼(敵)を知り己を知れば百戦して殆(危)うからず」ということで敵と味方の2者を分析すればよいのですが、ビジネスでは、顧客を競合他社と奪い合うことになるため、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という3者の視点で分析を行います。市場・競合分析については外部事業環境分析の方に入るため、自社経営資源分析のうち事業分析については外部事業環境の方で分析を行います(前出03参照)。こちらも、各事業部が最新の情報を持っているので、彼らの協力を得る必要があります。▼(3)人事・人材分析人事・人材分析については、人員構成や人材の確保状況、人材の成長度合い、離職率、従業員満足度、人件費の水準等の分析を行います。近年、特に少子高齢化により、人材の確保が難しくなっていることや、海外で活躍できるグローバル人材の不足、女性や外国人労働者の活躍によるダイバーシティの確保、働き方改革による労働時間の短縮等が大きなテーマとなっています。▼(4)経営管理分析経営管理分析では、組織構造や会議体とその運営方法、意思決定方法、職務権限体系や予算管理・業績管理等、会社として制度・ルールとして整備されているものについて、その現状と問題点を分析します。予算制度や原価計算、投資回収のルール等は、管理会計制度の対象となるため、同じ会計ですがこちらのカテゴリーに入ります。▼(5)業務・情報システム分析業務・情報システム分析については、業務効率や生産性、IT投資・運用コストや情報セキュリティ、ITの業務効率化・利便性向上への貢献度などについて現状と問題点を分析します。▼(6)社風・風土分析社風・風土分析は「社内の空気」のようなものです。従来の中期経営計画の策定にあたっては、「当然のもの」として、あまり分析の対象になってきませんでしたが、経営コンサルタントの立場でいろいろな会社を見てくると、意思決定や行動様式に大きな影響を与えている事項だといえます。このため、他社からの転職者などの意見も取り入れて分析してみる必要があります。多くの会社で、「内向き」「事なかれ主義」「マイナス思考」「リスク回避」「議論しない」「上の意向に従う」といった日本企業独特の特徴が見られることがあります。以上の自社経営資源分析のポイントを図表1-8と1-10に、また分析事例を図表1-9に示します。

▼(7)自社経営資源分析にあたっての留意点自社経営資源分析を行うにあたっては、いくつかの注意事項があります。以下でご紹介しておきましょう。①事実ベースであること現状や問題点分析をする場合、「社員のやる気がない」といった話が出ることがあります。おそらく、その問題提起者の視点では「社員にやる気がないように見える」ということなのでしょうが、それはあくまで個人の感想・意見であって、必ずしも事実ではない、または、全員がそうではないことがあります。ですから、事実としてどんなことが起こっているのかを確認した上で、取り上げるべき問題かどうかを判断する必要があります。問題提起者になぜそう思ったのかをヒアリングしてみると、「遅刻が多い社員がいる」というようなことが背景にあることがわかる場合もあります。仮にそうであれば、「時間にルーズな社員が多い」とした方がより的確な表現だということになります。ただし、それが中期経営計画の取り組み課題として取り上げるべきものかどうかはまた別物です。②重要性や緊急性が高い問題であること会社の中には問題点がたくさんあります。問題のない会社などありません。仮に「自分の会社・部署には問題がない」という人がいたら、それはその人に問題意識が足りないから、問題が見つけられないのです。かといって、たくさんの問題を取り上げたとしても、それをすべて解決するのは不可能です。人・モノ・カネといった会社の経営資源は有限ですから、重要性や緊急性が高い問題に優先的に取り組む必要があります。また、人によっては日頃の不平不満をこの時とばかりに並べ立て、言いたいことだけを言って去っていく人もいます。時にはガス抜きも必要ですが、それに終始してはいけませんし、それに振り回されてもいけません。③なるべく定量的な表現を心がけること問題点を抽出する際に、「クレームが多い」というようなことが指摘されることがあります。ただ、これだけではどの程度重要な問題なのかが判断できません。「納入先の8割から重大クレームとして指摘されている」というような内容であればその重大性が伝わり、対処すべき課題とすべきだということになります。日本的な組織の場合、内部のまずい点を隠したり、オブラートに包んだ表現をすることがあります。上をおもんばかってのことでしょうが、それでは逆に問題の重要性が伝わらず、対処が遅れることにもなりかねません。ですから、まずいことほど具体的に明らかにして対応策をとっていく必要があります。④単なる問題点指摘に終始しないようにすること現状や問題点分析をする場合、いろいろな問題点が抽出されますが、問題点抽出とその整理で終わってはいけません。そのため、図表1-9にあるように「取り組むべき課題」までを明確にしなければなりません。ただし、どのように取り組むかについては、後ほど出てくる戦略立案と戦略課題抽出のプロセスで、重要性と緊急性の優先順位をつけて別途検討と取り組みを行うことになります。▼(8)自社経営資源分析の際の注意点マンガのストーリーでは、山本電機の経営企画スタッフがこのパートを担当して、「うちの会社は大丈夫か?」と感じる場面があります。実は、これは自社経営資源分析を行う際によく起きることなのです。普段、社員の皆さんは自分の担当範囲内で業務を行っていますから、会社全体の問題点に触れる機会はあまりありません。ところが、今回のような取り組みを行うと、全社的にいろいろな問題があることが見えてきます。事実といえば事実なのですが、問題点ばかりに目が行くと、モチベーションがひどく下がってしまうという落とし穴があることを理解した上で、自社経営資源分析に取り組むとよいでしょう。課題は課題として冷静に捉え、整理した上で次のステップに進む判断力が必要です。▼(9)問題点の目の付けどころ問題意識がないと問題認識できませんが、問題意識の持ち方には、以下のような視点があります。①業務担当者の問題意識上流工程が遅い、データの品質が悪い等②マネージャの問題意識人手が足りない、予算が削られている、他部署と業務が重複している等③会社方針との乖離問題「お客様第一」といいながら、実際にはコストが重視されている等④業務の目的に照らしての問題お客様のニーズを商品企画に反映させるべきなのに、自社シーズ優先の商品開発になっている等⑤業務のQ(品質)、C(コスト)、D(納期・リードタイム)面での問題人件費の高い人が単純作業を行っていて、業務コストがかかりすぎている等⑥出来事や事実としての問題赤字商品が多い、歩留まりが悪い、ライン停止が多い、クレームが多発等⑦競合他社と比較しての問題価格が高い、納期が遅い、成長性が低い、収益性が低い等⑧一般他社と比較しての問題休日が少ない、女性管理職が少ない等事業部などから出された問題点をこうした観点で整理し、重要性と緊急性の観点から優先順位付けを行い、課題設定し、解決策を検討していきます。

05ビジョン設定▼(1)企業理念を確認する企業理念は、その会社の存在意義や大切にしている価値感を表明したもののことをいいます。他に「経営理念」や「社是」「社訓」、あるいは「ミッション・ステートメント」等の名前で呼ばれることもあります(図表2-1)。創業者が制定したものや、その後、何かの機会に経営者によって制定されたものが多いです。

四角い額に飾られたまま忘れられているようなケースも見受けられますが、近年その重要性が増しています。海外展開などをする際に、現地の人たちに「我が社はこのような考え方のもとで事業を行っています」と説明する際に必要になるのです。また、「ウェイ(英語のWayが語源で、理念に始まりその会社の仕組みや仕事の仕方までを含む)の浸透」ということで、自社の事業・業務の考え方、やり方を現地の人たちに浸透させる際に、ベースとなる価値観・考え方が示されているという意味で理念が重要となっています。国内の事例では、稲盛和夫さんがJALを立て直す際に京セラフィロソフィーを参考にJALフィロソフィーを作らせ、元からいたJALの人たちの考え方を改めさせた例があります。戦後の日本は、戦前の全体主義の反省から、自由と民主主義・個人主義の傾向を強めたため、個人の価値観・考え方にまでは立ち入らない風潮となりました。しかし、ジェームズ・コリンズなどの研究成果『ビジョナリーカンパニー』において、長く繁栄を続ける企業に共通する特徴として、基本理念を共有していることが分かったのでした。その結果、理念の共有と浸透の重要性が認識されたのです。理念に使われる言葉の特徴として「価値を提供」とか「信用を旨とし」といった抽象的な表現が用いられる傾向があります。このため、これらのキーワードに説明を加えたり、理念が書かれたカードを配布したり、定期的に唱和したり、人事の目標管理の項目に加えたりすることが行われています。しかし、実際に浸透しているかというと、せいぜい「知っている」レベルにとどまっていることが多く、「理念に基づいて行動している」までは到達していません。それは、これらの施策が間違っているということではなく、「知っている」以上に浸透度を高めようとすると、別の施策が必要となってくるからなのです。では、その「別の施策」とは何でしょうか。それは「ストーリーテリング」です。これは「物語を語る」という意味ですが、この場合は、「理念に基づいてとられた会社の施策や個人の行動をその話を再現するように語って聞かせる」ということです(図表2-2)。

実際に、JALでは定期的に従業員が集められ、自身の理念に基づいた行動や行いの体験を話し合うことで、理念の共有・浸透を図っています。これは、誰にも立て直しができないと言われたJALが再生できた理由の一つとなっています。▼(2)経営ビジョンを設定する「経営ビジョン」とは、「企業理念に基づいて実現したい将来の姿」です。「ありたい姿」「あるべき姿」ともいわれますが、この「ありたい」と「あるべき」の違いは何でしょうか。「ありたい」の方が願望や意欲を表し、「あるべき」の方が、当然または必然という意味を持ちますが、「ありたい」の方が若干ニュアンスが弱く響き、「あるべき」の方が強く聞こえます。私自身は、経営者の意欲を表すという意味で「ありたい」の方を使っています。経営ビジョンの要素としては、①市場・社会でのポジション、②事業運営の将来像、③組織と人のあり方・関係の3つとなります(図表2-3)。

まず、①市場・社会でのポジションでは、「〇〇業界のリーダー」のように、世の中または業界の中で何と呼ばれたいかということを比較的短いキーワード・フレーズで表現します。次に、②事業運営の将来像では、①で表現した会社になっているとしたら、社内・事業はどのように運営されていたらよいかということを、いくつかのキーワードやフレーズで表現します(例:「先進的な技術開発」「社外との積極的なコラボレーション」等)。③組織と人のあり方・関係では、②のような会社になっているとしたら、従業員は、どのようなやりがいや働きがいを持って、生き生きと仕事をしているかを、こちらもいくつかのキーワードやフレーズで表現します。プロローグで述べたように、世の中にはフォーキャスティング発想をする人が多いため、中計の3年後というと、1年目、2年目、3年目と順序立てて考えることで、「3年くらいじゃあまり変わらないですよね」と、現状と大差ないような将来を想像してしまう人がいますが、変える気になれば、3年あれば結構変えることができるのです。ですから、あらかじめ「10年後」のような長期ビジョンを検討する方法があります。「10年後なんて予想がつかないですよ」と言われますが、「予想がつかないから、どうなりたいかを想像するのだ」と返せばよいのです。普段予測しかしていない人に「どうなりたいか」を想像させるのは少々手こずりますが、誰しも想像力は備わっているので、検討できないわけではありません。逆に、10年後のありたい姿が想像できると、実現意欲が湧き、3年後の目標をより高く設定することができるようになります。経営ビジョンは図表2-4の例のように短い文章で表現しますが、文章をみんなで推敲するのは難しいので、プロジェクトメンバーなどで議論する際にはキーワードとその意味するところを中心に議論し、最後の文章化は、文章が得意な人に作文してもらうとよいでしょう。

経営ビジョンを策定する上でのチェックポイントは、以下の5つとなります。①志は表れているか②キーワードは適切か③過不足はないか④当社らしさが表れているか⑤社員の理解と共感が得られるか①の志は、経営者、あるいは会社として高い志が感じられるものである必要があります。また、④の「当社らしさ」については、自社の経営ビジョンですから、どこの会社にも当てはまるような言葉・表現ではなく、「我が社ならでは」の部分があるといいと思います。⑤の社員の理解と共感は、会社は大多数を占める社員の人たちのやる気・意欲で支えられていますから、彼らが理解でき、かつ共感して、実現への意欲が湧いてくるような表現が必要です。▼(3)優れたビジョンの条件前出(プロローグ「組織変革の8ステップ」)のコッターによれば、変革を成し遂げた組織には優れたビジョンがあり、その共通の条件は図表2-5のように6点あるとのことです。

私は、この中でも特に最初の2つを重視しています。1つ目の「将来のイメージが明確であること」については、私はこれを「イメージ可能性」と呼んでいます。そして2つ目の「関係者とWinWinの関係になれること」については、私はこれを「共感性」と呼んでいます。つまり、聞く人・受け取る人にイメージを想起させ、なおかつ「それはいいですね」と言ってもらえるような表現ということです。この点で、多くの日本企業が提示する経営ビジョンに目線を移すと、「顧客からの信頼が高い企業」のような、抽象的で、どちらかといえば「かっこよさげ」に聞こえる表現にとどまっていて、優れたビジョンの最初の2つの条件に当てはまらないものが多いように感じます。これには、多分に「経営ビジョン」という言葉が導入された背景に原因があるように思います。もともと欧米の企業では、MVⅤ(Mission,Vision,Value)という3点セットで企業理念やビジョンを表現する習慣がありました。一方、日本の企業では戦前から「社是」「社訓」というものがあり、「社是」はどちらかというとMission(使命)に相当し、「社訓」はValue(価値観)で表される行動規範に相当する内容でした。そこで欠落している「ビジョン」を付け足すことになって、そのまま英語表現を取り入れてみたのですが、ビジョンがどのようなものであるべきかの議論はあまりなされず、外資系企業が使っている言葉をまねた表現が使われるようになったからではないかと思われます。言葉の背景はさておき、再生を目指す会社やM&Aで訴求力のある新たな企業像を打ち出す必要がある企業、海外に出て異なる言語・文化の人たちを束ねていく必要がある会社にとっては、それが重要であることには変わりありません。優れたビジョンとしての要件が備わるように工夫を凝らす必要があります。▼(4)ビジョンをイメージ化して伝える望ましい将来像のイメージが伝わるようにするには、イメージが喚起できるような表現を使う必要があります。例えば、マイクロソフトのビル・ゲイツは、「コンピュータをすべての机と、すべての家庭に」をスローガンに掲げました。そして21世紀の現在、彼の掲げたスローガンは見事に実現しています。イメージが伝わる言葉にするには、ビジョンを打ち出す提案者自らが、自分でイメージをして、その見えた様子を「人に伝わるように」表現する必要があります。その見えた様子を伝えるために、私は「ビジョン・ストーリー」という手法を使っています。望ましい姿を想像して、その様子をストーリーで表現するのです(図表2-6)。

マンガのストーリーにもあるように、実際にいろいろな企業でビジョン・ストーリー作りに取り組んでもらっていますが、作った人たちはモチベーションが上がりますし、そのストーリーを聞いた人たちからは、「わかりやすい」「共感できる」等の感想が聞けました。ビジョンがビジュアル化できることのメリットは、社員の実現意欲が湧いてくるということです。本田技研でASIMOのプロジェクトが発足した時の指示は、「鉄腕アトムを作れ!」だったそうです。手塚治虫が描いた日本初のアニメである「鉄腕アトム」は、その当時のプロジェクトメンバーにとって、格好のビジョンイメージとなったことでしょう。このように、ビジョンはイメージが伝わるように表現する必要があるのです。▼(5)事業領域を定義する──広がりと具体性の両立ビジョン設定パートの3つ目の要素は事業領域の設定です。事業領域は英語で「ドメイン」といい、どのような分野で事業を行っていくかを表現します。ドメインの検討には2つのアプローチがあります。一つはアンゾフのマトリックスを使って顧客や市場、製品・サービス群を広げる検討であり、もう一つはドメインを要素分解して、新たなドメインコンセプトを作る方法です。いずれにしても、企業はゴーイングコンサーンとして利益を増やし続けなければなりませんから、売上を拡大するためには何らかの意味で事業領域を拡大する必要がありますので、その検討に役立てます。まずアンゾフのマトリックスからですが、イゴール・アンゾフが考え出したマトリックスで、図表2-7にあるように縦軸に顧客・市場、横軸に製品・サービスを置き、両者とも既存&既存の市場深耕からスタートし、縦に市場開拓、横に製品・サービス開発、斜めに多角化の方策を具体的に検討していくものです。中期計画のみならず、新製品新規事業の検討にも活用できます。

アンゾフのマトリックスを検討する際に、既存の市場深耕、市場開拓、製品・サービス開発、多角化のそれぞれのセグメントについて、売上高や利益目標を設定します。これにより、事業別にどの程度伸長させる必要があるか、またどのような新規事業が必要かを具体化することができます。次にドメインの要素分解ですが、ドメインの要素には①対象顧客・市場、②独自能力、③提供価値の3つがありますから、それらをいったん別々に検討し、その上で3つの要素を盛り込んだ少し広がりのある表現の言葉・フレーズを作ります。図表2-8の事例は、キッコーマンをイメージして作ったものです。日本独自の調味料や発酵手法を用いたものを世界に広げるという意味が込められています。このように表現することで、現在の製品群よりもより広い範囲で製品・サービス開発を行うことができます。

実際の事例としては、ネット通販のアスクルがあります。「アスクル」という名称は、「明日届く」という意味で、ドメインの3要素の中では提供価値を表しています。これを社名にしているため、顧客はオフィスに限定しないで展開できますし、製品・サービスも文房具に限定する必要はありません。このように、自社の独自能力や顧客への提供価値を軸にして事業領域を広げられるようなドメインコンセプト設定ができるといいと思います。▼(6)経営目標を設定する──ストレッチ目標か堅実目標か経営目標の設定方法には、①ビジョンリード型、②目標達成型、③積み上げ型、④成り行き型の4種類があります(図表2-9)。

おすすめなのは、経営ビジョンと経営目標を整合性をとって打ち出す①ビジョンリード型ですが、実際にはビジョンを持ち出さないで経営目標だけを打ち出す②目標達成型や、事業部の見込み値を足し算する③積み上げ型の企業が多いように見受けられます。④成り行き型は論外としても、③積み上げ型では経営者の志が感じられませんし、②目標達成型では目標の意味・意義が伝わりにくく、訴求力のない経営目標となってしまいます。ここで、目標の立て方について少しお話をします。成り行き目標がなぜいけないかというと、「成り行き」とは「このまま行けば」ということなので、新たな努力をしないことになってしまいます。一方、競合他社は虎視眈々と市場や顧客を狙っていますから、「成り行き」でやっているとジリ貧となってしまいます。世の中は競争社会ですから、高い目標を持って日々努力する者が報われます。ですから、会社も個人も、今のままではできそうにない高い目標を設定して努力を続ける必要があるのです。ではどのレベルの目標がいいのでしょうか。ここでは、3段階で考えてみるといいと思います。図表2-10に示すように、上から①最高の目標、②標準の目標、③絶対に達成できる目標の3段階があります。目標は混乱や誤解を避けるため最終的には1つに絞る必要がありますが、それには検討する順番が重要です。一見すると最高の目標から入るのがよいように見えますが、一概にはそうとは言えません。個人の場合であれば気が大きい人は最高の目標から入っても差し支えないのですが、組織や集団の場合、目標を提示した際にメンバーに与える心理的な影響を考慮に入れる必要があります。いきなりあまりに高い目標を提示されると、普通の人はおじけづきます。そして、失敗を恐れて実力すら発揮できなくなります。ですから、大勢の人を対象にするのであれば、まず③絶対にできる目標から入って心を落ち着かせ、その上で①最高の目標を提示してやる気を出させ、最終的には時の運もありますから、リスクも考慮に入れて②標準目標に落ち着かせます。このように、心理的影響というものを考慮に入れて目標を設定するとよいでしょう。

私が目標設定を指導する場合は、経営ビジョンで述べたように、まず10年後の経営目標から検討します。そしてそれを中期計画の3年後に引き戻します。こうすることで、フォーキャスティング型発想の人にもバックキャスティング型発想をする機会を与えられます。経営目標は、会社全体の目標とその内訳としての事業別の目標を併せて検討します。その際に、アンゾフのマトリックスで検討したセグメント別の売上高目標を参考にして設定します。なお、経営者の通知表は財務諸表ですから、売上や利益だけでなく、バランスシートやキャッシュフロー計算書のことも考えておく必要があります。具体的には、ビジネス環境分析パートの自社経営資源分析で紹介した図表1-7にあるように、3年後の主要な経営指標を、損益計算書系のものと貸借対照表系のものと、キャッシュフロー計算書系のものにそれぞれ分けつつ、かつ整合性をとりながら目標設定するとよいでしょう。最近では、コーポレートガバナンスコードによって資本効率目標が求められるようになっています。具体的には、ROAやROE等の指標の目標値で示します。

06戦略策定経営戦略策定の予備作業として、まず強みと弱みの分析と、成功パターンの分析を行います。▼(1)強み・弱みと成功パターンマンガのストーリーにあるように、自社経営資源分析を行うと、自社・自事業の問題点ばかりが見えてしまい、「お先真っ暗」な気分になってしまうことがあります。しかし、皆さんの会社がある程度の年月存続できてきたということは、それなりに長所や強みがあったはずなのです。欠点ばかり見ていても、展望が開けません。このため、強みと弱みの分析や成功パターンの分析を行って、戦略代替案を検討します。①SWOT分析・クロスSWOT分析──活かせる強みはどこだまずはSWOT分析です。SWOT分析は、かつてハーバードビジネススクールのアンドリューズ教授が、経験の浅い若手ビジネスマンのために考え出した手法で、誰でもステップを踏んで検討できるので便利だということで広まったものです。具体的には、図表3-1にあるように、まず内部要因である「強み」(Strengths)と「弱み」(Weaknesses)を抽出します。この際、なるべく客観的な裏付けのある事柄をピックアップするように心がけます。必要に応じて、外部や顧客にインタビューをするなどして客観的な意見を取り入れるのもよいでしょう。

次に、外部要因である「機会」(Opportunities)と「脅威」(Threats)を抽出します。要因の中には、捉え方によって機会になったり脅威になったりする事柄もあり得ます。ここで注意すべきは、単純に抽出すると、強みよりも弱みが多く出てきたり、機会よりも脅威の方が多く出てきたりすることがあります。これは、抽出している本人たちがマイナス思考に陥っていたり、リスクに敏感になっていたりするためで、物事のプラス面やチャンスにあまり目を向けようとしていないことの現われといえます。ですから、左右の分量のバランスをとるように注意しましょう。一定量が抽出できたら、次にクロスSWOT分析に進みます。クロスSWOT分析では、SWOT分析で抽出した4つの要素のうち、主要なものを3つから5つ選択し、図表3-2のように周辺に配置します。そして、強みを機会に活かせる組み合わせを「SO戦略」として複数記述します。この際、複数の要素同士を組み合わせても構いません。同様に、弱みを補完して機会に活かすWO戦略、強みで脅威に対処するST戦略、弱みと脅威を最小化するWT戦略というように組み合わせを検討していきます。

どの要素同士を組み合わせたかが後でもわかるように、要素に番号をつけておくとよいでしょう。また、一人で行うと組み合わせが思いつかないとか煮詰まってしまうことがあります。複数のメンバーでの集団発想法を活用してホワイトボードなどに記述してみるとよいでしょう。なお、SWOT分析は、事業別に行うケースと事業横断的に行うケース等があります。目的に応じて使い分けるとよいでしょう。この際、重要なのは、これまでにない新しい組み合わせを思いつくことです。人によってはすでにある組み合わせを記述して満足しているケースが見受けられますが、それは単に事後確認しているに過ぎません。新しい組み合わせを抽出するように心がけなければなりません。私のワークショップでは、既存の組み合わせの場合には黒字で、新しい組み合わせの場合には赤字で記述し、どれだけ新しい組み合わせを考え出すことができたかを一見してわかるようにしています。ただし、ビジネススクールでSWOT分析を学んでも、新しい組み合わせが考えられない人もいるようです。そういう場合は、別途アイデア発想法を学んだ方がよいでしょう。「新しいアイデア」の基本は「既存の要素の新しい組み合わせ」ですから、そのような発想法を学んだ上で、SWOT分析に取り組むとよいでしょう。クロスSWOT分析では、SO戦略、WO戦略、ST戦略、WT戦略という4種類の組み合わせが出てきますが、この中で最も経営上プラスのインパクトが大きいのは、SO戦略です。なぜなら強みはすでに保有していますし、機会はそこにあるので、実現可能性が高いからです。一方、WO戦略は、弱みを補完しなければならないため、補完できるまでに時間がかかりますし、場合によっては補完しきれない可能性も否定できません。このように、良い戦略代替案を導き出したいと思ったら、有効な強みと有望な機会をしっかり捉えることが重要なのです。しかし、すでに見たように、経験が浅くマイナス思考が強い人は弱みや脅威にばかり目を奪われて、本来必要となる強みや機会をうまく見つけられないことがあります。有望な機会を見つけるには、常日頃アンテナを高く張っておく必要がありますが、忙しく業務に埋没していると、ついついアンテナが低くなり、微弱な機会情報を見逃しがちになります。SWOT分析を行う際には、いったんアンテナを高くして、幅広く情報を集めるようにしましょう。②成功パターンの分析──再現性と継続性のある「型」があるかSWOT分析は、戦略代替案の抽出に有効ですが、図表3-2のSO戦略「低コストを武器に新興国市場に参入」の場合、参入するまではよいのですが、果たしてその後成功できるのかというと定かではありません。このため、企業としては再現性のある成功パターンを持っておくと有効です。ただし、成功パターンをいきなり作るのは難しいので、まずこれまでで成功したことのあるパターンを分析してみます。継続企業であれば、これまで何らかの成功パターンがあったからこそ存続できてきたはずですので、その部分を知っている人にも参加してもらい、成功パターン分析を行います。成功パターンの記述方法は、図表3-3にあるように、事業別に(矢印マーク)と+(プラスマーク)を組み合わせて表現します。矢印マークは順番を、プラスマークは要素の組み合わせを表しています。この組み合わせが多ければ多いほど、他社が真似しにくいものとなります。

戦国時代、毛利元就は孫子の兵法の「百戦して百勝するは善の善なるものにあらざるなり。戦わずして人の兵を屈することこそ善の善なるものなり」をもとに「戦わずして勝つ」はかりごとを駆使して、国人領主から戦国有数の大大名になり、豊臣政権下では孫の毛利輝元が5大老に名を連ねるまでになりました。これは、「はかりごと」(調略)という成功パターンを繰り返し実施して成功した例です。現代のコンビニ業界では、長らくセブン・イレブンが1位の座を維持していますが、それは「ドミナント出店」という出店方法と「オリジナル商品」という商品企画方法を組み合わせた成功パターンを駆使しているからです。1日の店別販売高を「日販」といいますが、いまだにローソンやファミリーマートは追いついていません。成功パターンには、事業としての成功パターンだけでなく、会社としての成功パターンというものもあります。例えば、A事業で成功した経験とノウハウをもとにB事業に進出したり、C事業の顧客をもとにD事業に進出したりすることなどが考えられます。よく「過去の成功パターンにとらわれすぎてはいけない」と言われますが、まず「過去どのようにして成功したのか」を冷静に分析することは、将来を考えるのに有意義なことです。これまでの成功パターンが分析できたら、それをもとに今後の成功パターンを描きます。その際には、今後の環境変化や技術革新、新しい取り組みなどを取り入れて描いてみるとよいでしょう。なお、成功パターンが描け、社内で共有できると、以下のようないくつかの好影響が得られます。①ベクトルが合う:みんなが同じ方向を向けるようになる②ブレない:よけいなトライアル&エラーが減る③スピードと効率性が増す:成功パターンが共有できていると、何か新しい提案があったときに、「あのパターンで取り組めばいいな」と社内の意思決定が早くなり、スピードをもって物事に取り組めるようになる。事実、マクドナルドなどチェーン展開しているところには、不動産会社から新しい物件情報がすぐに入ってきます。それはこうした会社が、社内に物件判別の方程式を持っていて、短期間にイエスかノーかの判断ができるからです。以前、幹部の出自が異なるために意見が割れていたある大手の機械メーカーの子会社をサポートしたことがありました。サラリーマン出身者が多いため、経営目標設定にあたっては当初保守的な意見が多かったのですが、クロスSWOT分析や成功パターン分析を行ったら、経営目標がぐんと高くなりました。マンガのストーリーでの山本電機の人たちも、自社経営資源分析では暗い未来しか描けていませんでしたが、このクロスSWOT分析と成功パターン分析で希望が見えてきたのではないでしょうか。戦略代替案が出てきたところで、ここから正式に戦略策定パートの戦略立案に入っていきます。手順としては、まず目標と実績のギャップの分析を行ってギャップを埋められるような基本戦略を検討し、その後事業別の事業戦略、組織機能別の機能別戦略、組織構造や組織の運営方法を扱う組織戦略(この3つを「基本戦略」に対して「個別戦略」と呼びます)を具体化します。▼(2)ギャップの抽出──定量・定性の両面で捉えるビジネス環境分析パートのビジネス環境分析とビジョン設定パートのビジョン設定ができたところで、現状と目標とのギャップを抽出します。ギャップは、定量と定性の両面で抽出します(図表3-4)。

①定量ギャップ売上高や利益率のような3年後の経営目標に対して、直近の売上高や利益率のギャップを算出します。この際、目標から実績を引いて、不足分がプラスで表現されるようにします。例えば、売上高目標が400億円で、直近の売上高が300億円の場合、ギャップは+100億円となります。「それだけ増やさなければならない」という意味で、あえてプラス表現にします。②定性ギャップ定性ギャップは、6つの側面で見ていきます。⒜事業面ビジョン設定で行った事業別の売上高目標や利益と直近の事業別の売上高・利益実績とを対比して、定量的なギャップのみならず、地域的な広がりや製品・サービスの整備拡充、生産キャパシティなど、定量的には表しきれない定性的なギャップを抽出します。また、新規事業が必要とされる場合には、どのような分野のどのような新規事業かの具体化度合いや、必要とされる技術やノウハウなど、現状とのギャップを抽出します。⒝技術・ノウハウ面業績を伸ばそうとする際に、技術やノウハウ面で不足する内容について記述します。特許関係もこのカテゴリーに入ります。⒞対外面・ブランド面経営目標を達成しようとする際に、より知名度を高めたり、ブランドイメージを統一したりする必要がある場合に、どのようなことが不足しているのかを抽出します。ホームページの拡充関係もここに入ります。⒟組織面業績拡充を図ろうとする際、組織構造や組織の運営方法・情報共有の仕方・意思決定方法等が足枷となる場合、そのポイントを記述します。⒠ヒトの面事業拡大を図ろうとする際に、海外要員や新規事業要員が不足する場合や年齢階層別に見て若年層が不足する場合など、自社経営資源分析で抽出されたポイントなどを参考に、重要ポイントを記述します。⒡業務・システム面「業務効率が悪い」「システム化が遅れている」「仕組みが不効率」など、ビジョンで求められるレベルと現状のギャップを抽出します。▼(3)基本戦略──「FromTo」をはっきり次はいよいよ基本戦略です。基本戦略は、ビジョン設定パートの経営ビジョン・経営目標と自社経営資源分析パートの現状とのギャップを埋められるような大きな戦略設定をします。基本戦略は、3~5本位の柱を打ち出します。基本戦略の要素は、図表3-5のように①既存事業の事業展開(地域軸・顧客軸・商品軸)に関わる戦略、②新規事業の分野や展開に関わる戦略、③機能強化(開発・製造・購買・営業など)に関わる戦略、④経営基盤(財務・人事・経営管理・情報システム等)強化に関わる戦略、⑤企業グループの組織編成に関わる方針、⑥その他(時々のテーマに応じて)の6つとなります。すべてについて言及しなければならないわけではありませんが、ギャップを埋めるうえで重要となる戦略を上位から順に選択します。

企業によっては、「基本戦略」ではなく「基本方針」などの表現をするケースもあります。日本企業は「方針」という言葉を好みますが、「戦略」に比べると曖昧性が残るように感じます。基本戦略のポイントは、「FromTo」をはっきりさせることです。図表3-6の例にあるように、これまでとこれからの違いをはっきりと提示します。記述の仕方としては、FromToの部分のToの方を基本戦略として記述します。

ここで、プロローグで検討したパラダイムシフト(構造改革)が生きてきます。構造改革しなければならない項目のうち、今回の中計で特に強く打ち出さなければならない事項を、基本戦略として打ち出すのです。基本戦略のチェックポイントは、「仮にこの基本戦略が成功した場合、前項で抽出したギャップが埋められ、経営ビジョンや経営目標が達成できる可能性があるか」です。もしその見通しが立たない場合には、基本戦略自体を見直す必要があります。▼(4)戦略類型ここで、戦略類型についてご紹介しておきます。戦に勝つには兵法を知っていなければならないのと同様に、ビジネスで成功を収めるには、ビジネス戦略に通じている必要があります。ビジネス戦略の歴史は100年ほどありますが、その中の主要なものをここで紹介しておきます(図表3-7)。

まず戦略のタイプは、大きく①ポジショニング派と②ケイパビリティ派、③アダプティブ派、④その他に分けることができます。①ポジショニング派ポジショニング派の特徴は、外部環境を重視することです。日本で考えるなら、高齢者人口の増加を背景に、高齢者向けの事業に新たに取り組むとか、海外であれば新興国での伸びを期待して新興国に進出するとか、成長性が高く、将来利益拡大が見込める市場への参入や攻略を狙います。ポジショニング派の代表格はマイケル・ポーターの競争戦略です。ポーターは大胆にも、一般的に競争市場での戦略は⒜コストリーダーシップ(低価格戦略)、⒝差別化戦略、⒞フォーカス戦略(集中戦略)の3つに分けられるとしています。⒜コストリーダーシップ戦略コストリーダーシップ戦略は、図表3-8のようになるべく広いマーケット、またはマーケット全体を対象にして、低コストを武器にマーケットシェア獲得を狙う戦略です。自動車業界では、トヨタ自動車がカンバン方式などに代表されるトヨタ式生産方式と関連部品メーカーを三河周辺に集結させることにより、競合他社よりも低コストで車の生産ができるようにして国内マーケットシェアを拡大していきました。他社よりもコストを低く抑えられるので、価格を抑えたり、価格競争になった際に値引きで対抗する余力が生まれます。

コストリーダーシップ戦略を成り立たせるには、量産化によるコスト低減など、競合他社よりも安く商品を生産できる能力を備えている必要があります。⒝差別化戦略(差異化戦略とも)「差別化」とは、英語の「differentiation」の訳で、「差異化」とも呼ばれています。差別化戦略の基本は、競合する製品に対して、顧客から見て有意な違いを生み出し、その違いに魅力を感じて購入してもらうということです。差別化戦略も、マーケット全体を対象とする点でコストリーダーシップ戦略と対象範囲は同じです。自動車メーカーでは日産自動車や本田技研が採用してきた戦略です。差別化戦略のポイントは、顧客にとって意味のある差別化を行うことによるコストが余分にかかるため、そのコスト以上の価値を認めてもらう必要があります。コストが余分にかかっているのに価格が同じであれば、その分利益は下がりますので、後の競争力が落ちてしまいます。また、差別化した商品がヒットすると、マーケットリーダーをはじめ他社がまねをしてくることになります。この場合、どうしたらよいのでしょうか。その答えは、「さらに別の差別化を試みる」ということです。「まねされたら価格を下げる」のは邪道です。マーケットリーダーよりもコストが高い分、さらに利益率が悪くなります。このように、差別化戦略の要諦は「差別化し続ける」ことなのです。⒞フォーカス戦略(集中戦略)フォーカス戦略のポイントは、マーケット全体を対象にするのではなく、特定のマーケットだけにフォーカスすることです。そうすることによって、特定のマーケット固有のニーズに応えることができます。自動車メーカーでは、スズキやダイハツなどが軽自動車をはじめ小型自動車を中心に、比較的車両価格が安く燃費のいいクルマ作りに励んでいます。その結果、地方での軽自動車比率は非常に高くなっています。自動車以外でも、象印やタイガーなどは、魔法瓶をはじめとした家庭用電化製品のニッチな市場を押さえています。なお、マイケル・ポーターは、後にフォーカス戦略をさらに「コスト集中」と「差別化集中」に分けました。家電製品で低コストを売りにしてきた船井電機などはコスト集中といえますし、自動車でポルシェなどはスポーティーカーで差別化集中戦略をとっているといえます。ここで、ポジショニング派の一派ともいえる「ブルーオーシャン戦略」を紹介しましょう。2000年代にフランスの欧州経営大学院インシアード(INSEAD)のW・チャン・キムとレネ・モボルニュは共同で研究を行い、東西のさまざまなビジネス戦略を分析し、競合と直接競争をしない土俵を作って事業拡大させる手法を導き出しました。マイケル・ポーターの競争戦略の世界を、激しい競争によって赤字が出ることから「レッドオーシャン」と呼び、自分たちの手法を、競争しないで海が青々としているという意味で「ブルーオーシャン」と名付けたのです。彼らの提言するブルーオーシャン戦略の長所は、戦略キャンバスやERRCアクションマトリックス等の戦略立案ツールを使うことにより、ブルーオーシャン戦略構築ができることです。日本の事例では、ソニーのプレイステーションと競合していた任天堂がWiiを導入して、もともとゲームをしない人たちにまでユーザーを拡大して業績を拡大した例や、QBハウスのように理容業界では当然のように行われていたシャンプーや髭剃りを省略し、「カットのみで10分」という時短サービスを駅ナカや駅近で展開した例などがあります。図表3-9はQBハウスをERRC(Eliminate:取り除く、Reduce:減らす、Raise:増やす、Create:付け加える)アクションマトリックスで分析したものです。

見方によっては、ブルーオーシャン戦略はマイケル・ポーターのいう「差別化」を強くした形態と見ることもできます。自社でブルーオーシャン戦略をとるかどうかは別にしても、戦略検討の際に、自社の事業でブルーオーシャン戦略をとったらどうなるかを検討しておくのもよいでしょう。②ケイパビリティ派(内部能力重視派)ケイパビリティ派は、市場の魅力度よりも、自社の内部能力を重視します。つまり、たとえ国内で高齢者市場が伸びていっても、自社にその市場で戦えるノウハウや能力等が不足していれば、参入しない方がよいという判断になります。新興国についても同様です。これまで国内市場中心であったためにまだ海外事業を成功させられるノウハウがないという状況であれば、進出しても成功を収める可能性は低いということになります。⒜コア・コンピタンス論ケイパビリティ派の一番古いものは、コア・コンピタンス論です。自社の強みは何かを分析し、その強みが活かせる市場かを判断して市場参入を決めます。例えば、昔のソニーは小型化することが得意でした。大ヒットしたウォークマンも、持ち歩きにくい大きなラジカセが中心の市場に、手のひらサイズの再生専用機を作って打って出たのです。図表3-10は、皆さんもご存知の会社のコア・コンピタンスと思えるものをピックアップしてみたものです。

コア・コンピタンスになり得るかどうかは、実現できる顧客価値、独自性、企業力の拡張性(将来の商品・サービスイメージ)の3つの観点があります。⒝VRIOケイパビリティ派の2つ目はVRIOです。オハイオ州立大学で教鞭をとっていたジェイ・B・バーニーは、持続的競争優位(サステナビリティ)を確保するには、ケイパビリティが重要性であると唱えました。そのケイパビリティを表すキーワードの頭文字がVRIOです(図表3-11)。

Vは「Value」(経済価値:市場で受け入れられ、脅威や機会に適応できる経済的価値がある資源)、Rは「Rarity」(希少性:少数の競合企業しか所有していない希少な資源)、Iは「Imitability」(模倣困難性:競合企業にまねされない模倣困難な資源)、Oは「Organization」(組織:VROのような資源を活用できる組織)を表します。このVRIOの4つの要素がすべて揃うと、持続的競争優位が保たれ、業績は標準以上となります。一方、例えばⅤ(経済価値)だけしかないという場合は、他社にまねをされて競争均衡に陥り、業績は標準並みになります。研究者の間では、「ポジショニング派をとるか」「ケイパビリティ派をとるか」という議論がありますが、実務家の観点では、ポジショニング派の視点でマーケットや競争環境を捉え、ケイパビリティ派の視点で「新規参入して競争優位性が保てるか」や、すでに参入している市場では「今後さらに持続的競争優位性が構築できるか」という視点で判断していけばよいと思います。③アダプティブ派(適応重視派)アダプティブ派の基本は試行錯誤です。インターネットの世界のように、3カ月程度で状況が変わってしまうような市場の場合、じっくりと戦略を練るなどと悠長に構えることはできません。日々刻々と変化している市場や競合に対応しながら打ち手を打っていく必要があります。LINEを立ち上げた森川亮さんが、「事業計画書を作ったことがない」と言っていたことがアダプティブ派であることの証左です。④その他の戦略類型その他にも、上得意客を囲い込んで離さない囲い込み戦略や、事実上の標準を形成するデファクトスタンダード化戦略、顧客が利用するプラットホームを形成してその上にいろいろなサービスを取り揃えるプラットホーム戦略、セブン・イレブンのエリアドミナント戦略で見たような流通業固有の業種別戦略、ビジネスモデル派生の戦略等があります。図表3-12で過去100年間にわたる経営戦略論の略史を紹介しますので、参考にしてください。

◆技術革新への対応技術革新が業種業態を大きく変えていくことがあります。かつてのレコードはCDに取って代わられ、さらにCDは音楽ダウンロードに取って代わられ、一時はiPodのような携帯音楽プレーヤーが普及しましたが、今は大半の人がスマートフォンで音楽を聴いています。ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターは、イノベーション(技術革新)を「創造による破壊だ」と述べましたが、技術革新によって古い技術や事業者が破壊されて、市場から去っていきます。エベレット・M・ロジャースは、そのイノベーションの普及プロセスにある法則があることを見つけました。それは、市場には「革新的採用者」と呼ばれるイノベーションを最も早く取り入れる人が全体の2・5%ほど存在し、続いてその技術革新を採用する初期少数採用者が市場に13・5%ほど、その後採用に動く前期多数採用者と後期多数採用者がそれぞれ34%ずつ、そして採用遅滞者が16%程度存在するという分布ですが、これは統計学でいう「正規分布の分布状態」(標準偏差の間隔で分布している)と同じになります(図表3-13)。

最近、これに加えて「キャズム」という考え方が出てきました。「キャズム」とは「深い溝」という意味ですが、技術革新もマーケット全体に普及するものと一部のマニアにしか普及しないものとがあります。その境目がキャズムで、初期少数採用者と前期多数採用者の間に存在しています。AppleWatchなどがそれに相当すると思われますが、前期多数採用者に採用されるには、コストパフォーマンスが重要だということがわかっています。どの戦略類型を参考にするか、はたまた自社独自のオリジナルな戦略でいくのか、これまでのビジネス戦略史が示す過去の事例と、自社の得意技やリソース、現在置かれた状況と今後の環境変化等を総合的に判断して取り組んでいくとよいと思います。戦国時代、播磨の国の小領主の家臣であった黒田官兵衛は、歴史的には親毛利派であった領主と家臣を、時代の先を読んで織田方に方向転換させて羽柴秀吉の家臣となり、天下統一に大きく貢献し、息子・長政の代には江戸時代を通じて続いた福岡藩(=黒田藩)の礎を築きます。このように、時流を読む目が大切なのです。▼(5)個別戦略を具体化する個別戦略は、先に述べたように事業ごとの事業戦略、組織機能別の機能別戦略、組織構造とその運営方法を決める組織戦略の3つからなります。基本戦略と事業戦略・機能別戦略の関係を示すと図表3-14のようになります。全社の戦略的方向性を表すのが基本戦略、そして事業別に事業戦略があり、事業を横串にする形で機能別戦略があります。基本戦略は「全社戦略」と呼ばれることもありますが、企業グループの場合には「全社」というと親会社のことだけを指すこともあるため、一般には「基本戦略」と呼んでいます。

①事業戦略──どの事業戦略パターンをとるか事業戦略は、事業別に設定します。事業戦略の軸は3つあります。⒜事業戦略のパターンこれは「戦略類型」のことをいいます。図表3-15に示すようにSWOT分析や成功パターン分析からその事業に適した戦略的な代替案が想定されますから、既存事業・新規事業にかかわらず、どのような戦略パターンで進むかを選択ないし独自のアレンジを行います。最近では、事業拡大を図る際にM&Aを活用する例が多く見られます。かつては「社風の違い」を理由に敬遠されていたM&Aですが、最近ではさまざまな背景から多用されるようになっています。

⒝セグメント化の切り口競争戦略で見たように、マーケット全体を対象とするのか、一部のセグメント化されたマーケットを対象にするのかにより戦略パターンは異なってきますが、そのセグメンテーションの切り口に何を使うかも重要です。図表3-16にあるように、価格帯や性能ばかりでなく、用途や流通経路等もセグメンテーションの切り口に使われます。コンビニ専用商品のような場合には、コンビニという流通ルートをセグメンテーションの切り口に使っていることになります。

⒞マーケティングミックスマーケティングミックスは、通常、Product(商品・サービス)、Price(価格)、Place(流通チャネル)、Promotion(広告・宣伝)の4つの「P」で表現します(図表3-17)。

その事業で扱う商品サービスの特徴はProductで定義し、価格戦略はPriceで明確化し、どの流通ルートを使うか、はたまた複数の流通ルートを組み合わせで使う等のチャネル戦略はPlaceで具体化し、Promotionではどのように認知度を高め購買意欲をそそるかをメディアミックスで組み合わせて計画します。事業戦略の記述にあたっては、図表3-18のようなワークシートを活用するといいでしょう。これは軽自動車をイメージして作成したものです。事業別に既存と新規の区分を行い、それぞれについて、対象市場・顧客と事業戦略のパターン、対象セグメント、マーケティングミックス(4P)の各要素について、整合性が取れるように記述します。対象市場・顧客については、括弧内に、顧客ニーズを記述します。また、事業戦略のパターンについては、単にパターンを記述するだけではなく、括弧内に具体的にはどのようにしてそのパターンを成り立たせるのかを補足して記述します。事例では、新興国の工場で部品を安く生産し、それを輸入して組み立てることでコスト削減を図ろうとしています。図表3-18は概略ですので、詳しい部分はこれに付け加えて作ってもらえればと思います。

②機能別戦略──機能別に展開するとどうなるか機能別戦略は、組織機能別の戦略なので、図表3-19に示すように、基本戦略をベースに開発戦略、生産戦略、営業・販売戦略等のように記述していきます。その際、外部事業環境変化や自社経営資源分析で抽出された取り組むべき課題や経営ビジョン・経営目標で設定された望ましい将来像を実現するために必要な取り組み課題、ギャップ分析から抽出された定量・定性ギャップなどを考慮に入れながら、重要かつ緊急性の高い戦略課題設定を行ってきます。人事や経理・財務、広報、情報システムなど間接機能の部分は業種を超えて共通しますが、メーカーでいえば開発や生産などの直接機能の部分は、業種や業態で異なります。図表3-19と図表3-20では、メーカーの事例と流通業の事例を示していますので参考にしてください。

◆海外との文化の違いを理解し、対応する近年、グローバル対応が重要なテーマの一つになっています。ここで、グローバル対応の条件として一つ述べておくと、「ローコンテキスト社会への適合」が一つのキーワードとなると思います。日本は世界でまれに見るハイコンテキスト社会です。「コンテキスト」とは「文脈」という意味ですが、「ハイコンテキスト社会」とは、「文脈共有度が高い」、つまり、「あまり多くの言葉を使わなくても意思疎通ができる」ということです。例えば、「あうんの呼吸」とか「以心伝心」「忖度」などはハイコンテキスト社会に特有の事象です。ところが、海外はローコンテキス社会が基本です。黙ってただニコニコしていても何も伝わりません。会議で発言しなければ「何も考えていない人」だと軽視されます。日本では子供の頃から人に合わせることを求められますが、仕事に就いてからも上司の意見や考えに合わせ続けていると、自分の考えというものがなくなってしまいます。そのような状況で海外に出ると、その人個人の意見が求められているにもかかわらず、ついつい日本人の代表のようなつもりで「WeJapanesethink…」「OurCompanyis…」のように話し始めてしまいます。場合によっては、こうした日本の「わざわざ言葉にしなくても伝わる」こと自体をなぜかと質問を受けることもあります。こうした場合に対応するためには、当然と思われること、前提となっていることについても「なぜそうなのか」を説明できる言葉と能力が必要になります。「なぜ日本人は、新年になると初詣に行くのですか?」「それは神社でもお寺でもどちらでもいいのですか?」という海外の方からの質問に、あなたならどう答えるでしょうか。図表3-21に、日本と海外の文化や習慣の違いと、それにより起こりやすいトラブル、対応策をまとめていますので、参考にしてください。

③組織戦略──将来の望ましい組織図は組織戦略については、「組織構造をどうするのか」という組織構造論と「組織をどのように運営するのか」という組織運営論とがあります。組織構造については、代表的な組織形態である「職能別組織」(「機能別組織」ともいいます)と「事業部制」「カンパニー制」「持ち株会社制」等があります(図表3-22)。メーカーは職能別組織であることが多く、開発と生産・営業等職能別組織間での壁が問題になりやすいという特徴があります。事業部制については「事業部にどこまで機能を持たせるか」という議論がありますが、本来の事業部制は開発と生産と営業が一体になった組織をいいます。カンパニー制の特徴は、事業部長よりもカンパニー長(通常「プレジデント」と呼びます)により大きな権限を持たせ、損益計算書だけでなくバランスシートにまで責任を持たせるというものです。本来の事業部制は、P/L、B/S両方について責任を持つというものでしたが、だんだん事業部の責任範囲が狭まり、P/L責任だけになっていたので、カンパニー制でB/S責任まで持たせるようにしたのです。

パナソニックで事業部制を解体した時は、事業の単位が小さすぎたため、より大括りなカンパニー制に変更しました。カンパニー制そのものはソニーの発案ですが、その後多くの電機メーカーで採用されています。カンパニー制をさらに進めたのが持ち株会社制で、戦後、財閥解体とともに純粋持ち株会社が禁止されていましたが、90年代以降の事業再編の枠組みの一つとして、97年に50年ぶりに解禁されました。「○○ホールディングス」と名前のついている企業グループは、純粋持ち株会社制を採っていることになります。純粋持ち株会社の特徴は、事業を別会社として切り出し、毎年財務諸表を作らせるので、事業再編の際に売買がしやすいというメリットがあります。ただし、100%子会社でないと連結納税ができないなどの制約があり、導入は一部の企業グループに偏っています。以上の組織構造に対し、組織運営については、例えば、ガバナンスを働かせるために社外取締役を増やすとか、取締役会の議論を活発化させるために取締役の人数を絞るとか、実質的な意思決定機関となる経営会議を月1回から週1回開催にしてスピードを速めるとか、権限委譲して事業部長の意思決定権限を強化するなど、いろいろなポイントがあります。組織論については、一般的な議論をしても仕方がないので、自社の現状の組織上の問題点を抽出して、それが改善・解決できるような組織構造と運営方法を決めていく必要があります。組織についてはさまざまな論点がありますが、中期経営計画を策定するうえでの一番の近道は、「現状はさておき望ましい組織の将来像を組織図で表現してみる」という方法です。社内のいろいろな人に望ましい将来の組織図を書いてもらってみてください。そうすると彼らが何を望んでいるかがよくわかります。もちろんその通りにするということではなく、困っていることや期待値・希望を把握するのに役立てるということです。◆組織が先か戦略が先か「組織は戦略に従う」という言葉と、「戦略は組織に従う」という一見相反する言葉があります。さて、どちらが正しいのでしょうか。答えは、組織に明確な戦略がある場合には組織は戦略に従いますが、明確な戦略が打ち出されていない場合には、下部組織で勝手な戦略を考えます。そうすると「戦略は組織に従う」となります。例えば、会社としての基本戦略や方針を打ち出さないまま、事業部に中計素案の提出を求めると、事業部ごとに考えた事業戦略が前提となり、基本戦略はその寄せ集めとなってしまいます。そうすると結果として「戦略は組織に従う」となってしまうので要注意です。日中戦争の泥沼や、また東南アジアの戦線で大失敗を犯した日本軍の行動を分析した『失敗の本質──日本軍の組織論的研究』(1984年、ダイヤモンド社にて初版)では、そうした「戦略は組織に従う」の典型的な悪い事例を示しています。歴史上、日本人は「戦略は組織に従う」を犯しやすい民族である、つまり、本社に明確な基本戦略がなければ、事業部が勝手に事業戦略を遂行して既成事実作りをしてしまうおそれがある、ということを理解しておいた方がいいでしょう。

07活動・計数計画の具体化活動・計数計画の具体化パートでは、戦略策定パートで策定した戦略の戦術化と、それを計画に落とし込んだ活動計画、中計の3大要素の一つである計数計画立案へと進んでいきます。▼(1)KPIと連動した活動計画を立てる戦略策定パートでいったん戦略立案を行いましたが、それがビジョン設定パートの経営目標達成につながるかを確認するために、KPIツリーを作成します。KPIとは、「KeyPerformanceIndicator」(重要業績評価指標)のことをいいます。KPIをさらにKGI(KeyGoalIndicator:重要目標指標)とKPI(KeyProcessIndicator:重要プロセス指標)に分ける方法もあります。KPIツリーの事例(流通業の事例)は図表4-1のとおりですが、売上高や利益目標を一番左に置き、まずは損益計算書の財務諸表構成に従って経営目標のブレークダウンを行います。図表4-1の事例では、売上高営業利益率目標を売上高と粗利益率に分け、さらにそれを売上高の内訳や、原価率・販売管理費率等に落としていきます。財務的なブレークダウンが終わったら、その財務値目標を達成するための戦略と戦略目標にブレークダウンしていきます。ROEやROAを経営目標とする場合には、それらの指標が一番左に配置されます。

通常、財務目標のブレークダウンパートはKGIとし、戦略やその打ち手のブレークダウンパートは、「プロセスのKPI」と呼ぶ場合が多くあります。このKPIツリーを作ることによって、戦略策定パートで打ち出した諸戦略が必要十分であるかの検討ができます。よく見受けられるのは、KGI(左)からKPI(右)へのブレークダウンはできているのに、右から左にさかのぼろうとすると不足が生じるということです。左から右へは「必要条件」と呼び、右から左へは「十分条件」と呼んでいますが、必要条件が備わっていても十分条件が備わっていないケースがよくあるのです。経営目標を達成するには、必要十分条件を揃えなければなりません。このため、KPIツリーを作成して、立てた戦略が必要十分条件を満たしているかを確認し、不足していれば追加を検討することになります。◆分野別KPI指標の例図表4-2に示したのは、メーカーの機能分野別の指標例です。これがすべてではありませんが、一般的によく使われている指標ですので、KPIを検討するときの参考にしてください。

▼(2)戦略課題の整理KPIツリーの作成により戦略の過不足を確認し、補足ができたら、戦略課題を一覧表に整理します。マンガのストーリーでは、KPIによる必要十分条件の確認が課題解決策検討の後とされていますが、過不足の確認ステップは実務上は多少前後しても問題ありません。課題の整理は、①事業別に事業戦略系の課題、②機能部門の機能別戦略系の課題、そして③組織戦略上の課題の3類型で個別戦略全体をカバーすることになりますが、分類が難しいものがあれば、「④その他」として扱います。こうした戦略課題の整理は、企業規模・事業数によって複数枚にまたがることがあります。次に、以下のようにそれぞれの課題に重要性や緊急性の観点から優先度をつけます。【重要度による分類】・◎:業績等への影響大・○:業績等に影響あり・△:業績等への影響は大きくはないが、取り組みは必要【緊急性による分類】・◎:速やかに着手し完了させることが必要・○:1年以内に着手し、期間中に完了させることが必要・△:期間中に着手が必要▼(3)戦略課題のブレークダウンどのような戦略も最終的には業務として遂行されることになりますから、戦略から戦術へ、そして施策へと具体化していきます。マンガのストーリーの山本電機の事例にあるように、戦略課題の具体化は事業部に任せるという会社もありますが、任せたままにすると、「実行時に考えよう」ということで具体化が後回しになり、結局は考えられることのないまま実行されないということがよく起こります。このようなことを避けるためにも、中期経営計画策定プロジェクト活動の期間中に戦略課題のブレークダウンまでを行う必要があります。山本電機の社長は、前回の中期経営計画の反省としてそのことを指摘していたのです。もちろん、プロジェクトメンバーだけでブレークダウンまで行う必要はありません。必要に応じて事業部を巻き込めばよいのです。なかなか他人の作った計画を真に受けて実行する人はいませんから、この段階から事業部主体に作ってもらうとよいでしょう。事業部側も、計画作りのこの段階から参加できれば参画意識が高まると思います。◆課題の施策化戦略課題は、次のようなステップで具体化していきます。図表4-3では、課題例として「新興国市場開拓」を挙げていますが、これに対して課題解決策を検討します。事例では「タイで現地生産・東南アジア地域で販売」と単純に書いていますが、実際の検討にあたっては、自社の課題に対して最も有効と思われる課題解決策を抽出する必要があります。

次に、課題解決策を施策に落とし込みます。事例では、「バンコク近郊の工業団地に現地法人設立」としましたが、その課題解決策を実行するのに最も有効な施策を複数検討した上でベストな施策を選びます。次は「計画化」です。「〇〇年に現地法人設立」としました。戦略課題なので、実行が急がれるものであるはずですから、計画開始のタイミングは実行可能な最も早い時期を選びます。その後は、この計画を活動計画に落とし込んでいけばよいのです。このブレークダウンの考え方に基づいて作られたのが、図表4-4のワークシート集です。

左上の戦略課題として掲げられているのは機能別戦略シートの記入例です。中期経営計画として必要になる活動計画部分は、それに続いて課題解決策検討シート、活動計画シートまでとなります。さらに右の部門年度事業計画書は、事業部ないし部門別に作成する年度ごとの事業計画です。予算作成に合わせて作ってもらえばいいのですが、初年度については、フォーマットに慣れる意味も含めて中期経営計画の1年目として計数計画とも整合性をとって作るとよいでしょう。事業計画の要素としては、①部門方針、②計数計画、③部門KPI、④活動計画の4要素となります。活動計画をさらにブレークダウンしたのが、その右のテーマ別実行計画書です。活動計画のうち新たに取り組むものについては、どのように実行したらよいかがわかりにくいでしょうから、遂行責任者または実行リーダーが、あらかじめこのような実行計画書を作っておくとよいでしょう。意外ですが計画を作らずに実行するケースも少なくなく、「結果としてこうなってしまった」というような報告が行われることが多く見受けられますので、注意が必要です。▼(4)課題解決策検討課題解決策は、図表4-5のような課題解決策検討シートを使って検討します。

それぞれの課題に対して、①課題名、②目標・将来像、③現状・問題点、④ギャップ、⑤解決策の順で検討していきます。普段、皆さんに課題解決策を検討してもらうと、図表4-5の左の方から順番に記述していく傾向があります。この方法では、現状を分析し、思いつく解決策案を書き出し、その解決策案を実施したらどの程度の目標が達成できるかという考え方となります。これは以前述べた「現状延長型」、つまり「フォーキャスティング発想」そのものですから、達成できる目標も低くなってしまいます。このため、ここでも「ビジョン先行型・バックキャスティング発想」を使って目標設定と解決策を立案するのです。バックキャスティング型の順番で取り組むと、目標レベルが上り、それを達成するための解決策も当初は思いつかなかったものが思い浮かんだりすることがあります。なお②目標・将来像については、定量目標と定性目標の両方を記述するようにします。定量目標がいわゆる目標に相当し、定性目標が将来像に相当します。▼(5)活動計画作成課題解決策が検討できたら、それを3カ年の活動計画にブレークダウンします。なお、活動計画は事業別・部門別に作成します。シートの様式は、図表4-6にあるように将来像・目標を一番右に配置し、それに至る3か年の活動を、初年度については上期と下期に分けて、施策とともにその期間に達成したいKPIとその目標値をセットで配置します。KPIは、KPI指標とその達成目標を記載しますが、定量化できないものについては、「いつまでに完了させる」という期限を明示する方法(マイルストーン法)で記述します。事業系の活動計画シートは売上高や利益の目標が入りますが、機能部門別活動計画シートはそうした欄がないものとなります。

▼(6)計数計画作成経営計画を立てる際に、「計数計画を先に立てるか」「活動計画を先に立てるか」という議論があります。マンガのストーリーでは、山本電機では、経営企画室長の判断で計数計画を先に作り、活動計画が後回しとなりました。中期経営計画が経営目標と計数計画だけであった時代は、経営目標を先に立て、その計数計画を作るという手順で進められましたが、近年は、それらに経営ビジョンや経営戦略、さらにそれを具体化した活動計画まで立案するようになっています。なお、そうした中で経営戦略まで立案した後、活動計画から始めるか計数計画から始めるかという議論になると、私は断然活動計画を先に作る方をお勧めします。すでに見たように、KPIツリーの作成などで経営目標を達成するための大きな戦略や方策はもれなく立案されています。ですから、先に述べたように戦略課題課題解決策施策というようにブレークダウンができていれば、活動計画を立案するのは容易です。そして、活動計画ができていれば、それによってどの程度の計数計画が達成できるかを見当を付けることができます。一方、戦略立案後に計数計画を作ろうとすると、計数を変動させる要因には、単価の上げ下げ、数量の増減による売上高の変動、原価の増減、経費の増減等、利益を変動させる要因があり、変数がたくさんあることになります。その中から一定の組み合わせを都合よく選んで計数計画とすれば、立案した戦略との間に齟齬が生じかねません。ですから、これまでの検討結果と整合性を持たせて活動計画と計数計画を立案しようと思ったら、多少遠回りではありますが、活動計画を作った上で計数計画を立案した方が作りやすいのです。▼(7)計数計画の作り方計数計画を立案するのに、図表4-7にあるように、①システム・データ面、②管理責任面、③計数の作り方面のように大きく3つの論点があります。

①システム・データ面については、専用のパッケージソフトを活用する方法と年度単位の予算システムを応用する方法、損益計算書やバランスシートのような財務諸表から出発する方法と3通りがあり得ます。パッケージソフトについては、一度あるクライアントで使おうとしたのですが、使い勝手が悪くうまくいきませんでした。このため、お勧めとしては予算システムの応用か、財務諸表の引き伸ばし法がよいでしょう。②管理責任面については、事業部の数値については、事業部が責任を負い、経費については、本社の経費主担当が責任を負う方法がよいでしょう。③計数の作り方面については、⒜予測方式、⒝積み上げ方式、⒞逆引き方式と⒟⒜~⒞の組み合わせがありえますが、各社の実情に応じて応用してもらえればと思います。活動計画が先に作られていれば、計数計画でいじる部分は相対的に少なくなり、比較的短時間で作成することができます。これは私が指導した実績からもいえることなので、心配しないで取り組んでもらえればと思います。①計数計画策定ステップの事例図表4-8の事例は、小売業での計数計画作成ステップの例です。手順としては、⒜標準となるベースの計数作りを行った上で⒝バリエーション設定を行い、⒞見直し&シミュレーションを行います。

⒜ベース計数作りまず企画部署サイドで進め方と前提条件(為替レートや対前年伸び率等)を決めます。小売業では店舗展開が基本となりますので、店舗ごとのフォーマットや規模に応じて類別を行い、店舗の出店や閉店計画を立て、「食品部門を強化する」「衣料品部門を縮小する」などのように商品の部門構成や展開方針を決めます。フロア面積や商品点数(アイテム数)等各小売業で使われている基準を使用するとよいでしょう。その後人件費などの経費展開を行い、それらを総合して基準となる損益計算書を作ります。計数は、予算システム等を使って初年度1年分を作成し、Excel等の表計算ソフトに計数データを吐き出し、そのうえで前提とした伸張率等を基に2年目、3年目分を追加して3カ年の基準計数計画とする方法と、予算システムなどを使用しないで最初からExcelデータを作成して取り組む方法とがあります。各データは、売上高に応じて変動する変動費や変動が少ない店舗の賃借料等固定費、営業時間などに応じて変動する水道光熱費などの準変動費等費用の性格によって変えられるように条件設定しておくと便利です。また、Excel等で作成・シミュレーションする際には、目的とする財務諸表だけでなく目標とする経営目標や財務指標(例:売上高、営業利益率、ROAやROE、D/Eレシオ等)も同時に算出できるように計算式を組み込んでおくとよいでしょう。⒝バリエーション設定売上が伸張するMAXケースやダウンするMINケース、原価低減を進めるケースや効率化を進めるケースなど、何通りかのあり得るバリエーション設定を行い、試算します。Excelベースであれば、試算結果をシートないしファイルに分けて保存することでケース結果とその内訳を取っておくことができます。新たなケース設定に連動して他の変数も変えられるようなアルゴリズム(手順を形式化したもの)を作り、マクロのプログラムとして使う方法もあります。ただし、あまり手の込んだものを作ると、他の人がいじれなくなり、特定の人しか操作のできないものになりかねないので、注意が必要です。⒞見直し&シミュレーションベースとバリエーションの試算結果を受けて、前提条件設定や店舗展開、商品展開の見直し等を行い、当初の経営目標に到達可能か、あるいは前提条件と展開方針と活動計画との整合性や妥当性があるかを確認して、いったん、第一次の試算結果として報告します。この後は、経営会議等のしかるべき会議にかけるなどの会社で求められた手順に従って検討と見直しを行っていき、確認が取れたら最終化します。その際に注意したいのが、「何を変えるとどこに影響を与えるか」ということをきちんと理解し、データと論理の整合性がきちんととれるようにしてあるかということです。PowerPointの表形式では計算式が入れられませんので、一度ある数字を直すと他の数字も手直しの必要がでてきてしまい大変です。数字と表計算ソフトの扱いが得意な人の助力を得るようにした方がよいでしょう。②計数計画の成果物計数計画の成果物については、売上利益計画、投資計画、人員計画、資金計画等があります。ベースは売上利益計画なので、それらから順に作っていくといいと思います。投資計画についても、活動計画が具体化されていれば、それに基づいた投資計画が年度別に立てられます。中期経営計画の計数計画用のExcelのワークシートは、拙著『中期経営計画の立て方・使い方』付属のCDROMに収録されていますので、そちらを参考にしていただければ幸いです(以下一例)。図表4-9全社利益計画(売上・原価・販管費・利益)の書式例図表4-10キャッシュフロー計算書方式による全社資金計画表の例

③投資回収計算設備投資には、⒜拡張投資や⒝取り替え投資、⒞製品・サービス投資、⒟その他投資などがありますが、「投資が回収できるか」という、いわゆる「経済性計算」の対象となるのは、⒜~⒞の3種類です。設備投資や新規事業の投資回収計算は、教科書的には、正味現在価値法(NPV:NetPresentValue)や内部収益率法(IRR:InternalRateofReturn)等がありますが、実際にはいまだにキャッシュフローベースではなく、会計上の利益計算ベースで試算しているところが多いようです。国内だけや社内だけの範囲で議論している間はそれでも通るのですが、海外や海外企業とやりとりをする際には、今紹介したような手法を使う必要があります。◆設備投資のキャッシュフローを用いた評価方法~正味現在価値法の例示(図表4-11)

正味現在価値法では、まず前提としてキャッシュフローで計算します。そして、初期投資と将来のキャッシュフローを0年度(初期投資を行う年度)時点の現在価値に直して差し引き計算します。「現在価値」とは、お金の時間価値を考慮することになりますので、今年の百万円と来年の百万円とでは価値が違うという前提に立ちます。どの程度違うかについては、企業では、単純に金利ではなく、「資本コスト分違う」という考え方を取ります。つまり、「今年手元にある百万円を事業につぎ込んだら、来年には、百万円+資本コスト分以上になっていなければならない」ということです。なお、「資本コスト」とは、バランスシートを維持するために必要なコストのことで、金利などの負債にかかるコストと、株主が所有する株主資本コストとの合計となります。この資本コスト率(例:5%)を使って、将来のキャッシュフローを複利計算で割り引くのです。そうして出された将来のキャッシュフローの割引現在価値と初期投資との差を算出し、プラスが出ていれば、「投資価値あり」と判断することになります。昨今では、Excelの関数になっているものもありますので、考え方と見方がわかっていれば計算できるようになっています。▼(8)グループ全体の計数計画計数計画を自社単体のものだけでなく、グループで連結して作成する必要があるケースもあります。その際は、図表4-12にあるように、まず事業別法人別に損益計算書(必要に応じてバランスシートやキャッシュフロー計算書も)を作成します。

続いて、グループ会社間の取引が消去・相殺できるように連結財務諸表に計算式を組み込みます。例えば、国内グループ企業のD社の売上高がC事業部の仕入れとなるような場合は、相殺されて0円となります。その際に、子会社については全部連結となり、売上・原価・費用すべてが足し算の対象になりますが、持ち分法適用会社については、出た利益の持ち分のみを加算することになるので、注意が必要です。一方、海外法人があり、決算期がずれているケースがあります。日本法人は4月~3月決算なのに対して、海外法人の大半は1月~12月決算というケースです。決算日が3カ月を超えていなければ、各社ごとの決算期に応じた計数計画を連結しても問題ありません。ただし、管理会計として、グループ会社管理の一環として決算期を合わせて見たいのであれば、各社の計数計画を四半期ごとに作成し、四半期ずれを補正して足し算する方法もありますが、その際は、海外法人に追加で最後の年の第1四半期(1~3月期)の計数計画を作ってもらう必要があります。▼(9)活動計画と計数計画の整合性の確認計数計画はこのように作っていきますが、一通り作り終わったら、「活動計画と計数計画が対応しているか」「活動計画の成果が出てくるタイミングと計数計画が合っているか」「活動計画の成果見込みが適正に見積もられているか」などのように活動計画との整合性を確認します。営業目標は往々にして現実的でない「意気込み」が盛り込まれているケースがありますので、注意が必要です。

08中期経営計画のまとめと発表▼(1)発表と部門へのブレークダウン(目標と方策)と責任体制中期経営計画は会社の重要な計画であるため、「経営者層での共有管理者層での理解と共有一般社員層での理解と共有」という3階層に分けて捉えていく必要があります(図表5-1)。経営者層での共有は比較的容易ですが、管理者層・一般社員層への共有・浸透については、伝わりやすい工夫と仕組みが必要です。

①社内向け発表の目次「中期経営計画の基礎」01(4)(図表0-6)で紹介した10大目次は、主に社外向け発表を前提とした目次例ですので、社内向けに発表する際には、少しアレンジして図表5-2のような目次構成で活動計画等も具体的に紹介するとよいでしょう。

②発表方法中期経営計画の発表方法は、図表5-3に示すように、対象者によって発表の場と発表内容を分ける必要があります。

部長クラスや課長クラスに対しては、幹部会や部課長会などの場を通じて、全社のビジョンと戦略だけでなく、担当する事業部や部課の取り組むべき目標や課題も示す必要があります。熱心な会社では、一般社員に対しても「第〇回中期経営計画書」のようなタイトルで冊子化して配布・説明するような会社もあります。著者のこれまでの調査によれば、中期経営計画を策定し、社内発表している企業においても、思いのほか社内に計画が浸透していないようです。実行してもらうことを考えたら、作った後の社内浸透にも力を入れるべきだと考えます。③課題・方策のブレークダウン中期経営計画が、活動計画・計数計画・KPIという形でまとめ上がったら、その取り組み課題や方策を、部門や部・課にブレークダウンしていく必要があります(図表5-4)。

中期経営計画で取り組むべき課題を一般的に「テーマ」と呼んでいますが、テーマ別の責任部署や責任者を設定したり、年度の目標に落とし込んだり、課長クラスや一般社員層をテーマ別のプロジェクトメンバーにアサイン(指名)したりします。▼(2)グループ・個人へのブレークダウンと目標管理目標管理は、「MBO」(ManagementByObjectives)といい、ピーター・F・ドラッカーが提唱し、外資系企業から日本企業に広まりました。もともとの考え方は、社員一人ひとりにまで目標を持たせ、やる気を出させようというもので、日本では主に人事部が管掌し、半年に一度程度の頻度で自ら目標を立て、上司の承認を得て遂行し、半年経ったらレビューを行っています。会社によっては、個人別の達成度に応じてボーナスなどに差をつけるところもあります。人事部管掌という背景から、MBOは経営企画管掌の中期経営計画とは連動性が薄いケースが多く見受けられますが、経営企画と人事が連携を取り、中期経営計画の目標達成のために個人のMBOと中期経営計画の取り組み課題とを紐付けることができれば、非常にパワフルな仕組みとなります(図表5-5)。

ここで留意すべき点は、中期経営計画の取り組み課題は粒度が大きい傾向にあるため、個人に落とすにはかなりのブレークダウンが必要だということです。ある商社で中計課題とMBOの紐付けを実施したことがありますが、管理職・担当者に一緒に一堂に会してもらい、中計課題の個人目標までのブレークダウンの仕方を、ワークショップ形式できめ細かく指導する必要がありました。実際に慣れるまでは、文書1枚での展開は難しいでしょう。▼(3)実現イメージの創出と伝達中期経営計画の発表会を実施しても、しばらくすると忘れられてしまうことがよくあります。その原因の一つに、「内容が印象に残りにくい」ということがあります。経営企画などの立場からすると、会社にとって重要なことで、自分たちが一生懸命まとめ上げ、対外・対内的な発表会も行っているので、中計の存在は非常に重要・重大なものと思っています。ところが、それを受けとめている一般社員にとっては、「経営目標」や「戦略」といった、普段の業務とは直接的な関わりがないことが紹介されますので、半ば上の空です。ですから、すぐに忘れられてしまうのです。一般的に、物事を人の記憶に残りやすい順に挙げると「感情〉イメージ〉数字〉言葉」となります。印象に残るものにしたいと思えば、感情やイメージに訴える必要がありますが、多くの中期経営計画発表資料は、数字と言葉だけなので、かなり印象に残りにくいのです。ビジョン設定パートでもご紹介しましたが、優れた経営ビジョンの条件には「イメージ可能性」と「共感性」がありました。この2つを付与するために著者が行っているのが、「ビジョン・ストーリー」作りという方法です。例えば、プロジェクトメンバーで10年後の長期ビジョンを検討し、その描いたイメージをビジョン・ストーリーの形で記述するのです。そして、その中から2つか3つ、一般社員にも将来のイメージが湧くようなストーリーを抽出し、経営計画発表会で紹介します。マンガのストーリーの中でも、ステップ1の「大和貿易の第1回ワークショップ」で、代表的なビジョン・ストーリーが紹介される場面があったかと思います。私が中期経営計画の策定指導を行う場合は、ビジョン・ストーリーを社員の皆さんに書いてもらい、そのうちの代表作を経営計画とともに発表してもらっています。経営者はもとより、一般社員にも、「イメージが湧きやすい」と好評です。ビジョン・ストーリーは、このような発表会の場だけでなく、ビジョン・ストーリー集として冊子にしたり、代表者の朗読録音によりCDなどに焼きつけて配布する方法があります。人は、実現イメージが湧くとついつい実現したくなるものです。配布してみたらストーリー通りに物事を進めようとしたり、一風変わった例では、自分の特技である作曲ノウハウを活かして「社歌」(案)を作曲してくる人等もいました。皆さんの会社でも、ぜひ取り組んでみていただければと思います。▼(4)バランスト・スコアカードを使ったフォロー方法「バランスト・スコアカード」とは、管理会計の研究者であるロバート・キャプランらによって提唱された管理方法で、図表5-6に示すように①財務的視点、②顧客の視点、③社内ビジネス・プロセスの視点、④学習と成長の視点という4つの視点からなっています。

経営者の通知表というのは、財務の視点で測られる利益額や利益率ですが、大きな会社になると業務が分業で行われているため、自分たちの仕事・業務が結果としてどれだけ売上高や利益に貢献しているかということがわかりにくくなっています。このため、この4つの視点をうまく使って、「どのようにしたら売上高や利益を増やせるのか」について関係者が集まって検討します。そうすることで業務と業績の因果関係がわかり、業績を上げるためにはどのようなことに取り組まなければいけないかがわかってきます。そのことを、因果関係を表す戦略マップとその戦略の遂行度を表すKPI(重要業績評価指標)に表現し、戦略共有や経営管理を行っていくのです。KPIは、前に述べた手法でも設定可能ですが、戦略マップを作成することで業績との因果関係がより明確になり、理解度が高まります。KPIと合わせて活用してみるのもよいでしょう。▼(5)中期経営計画の内容別浸透レベル自社の中期経営計画がどの程度社内に浸透しているかということを把握するのに、図表5-7のようなチェックシートを活用してみると、簡単にわかります。

どの階層や部門で浸透度が低いのかが一見して確認できるため、「浸透度合いを高めるために全社的に行わなければならないことは何か」あるいは「部門別や階層別に取り組まなければならないことは何か」などがつかみやすくなります。さて、あなたの会社では、どんな結果になるでしょうか?

09中期経営計画の見直しと進捗管理▼(1)中期経営計画を見直す場合とキープする場合ここからは、中期経営計画を作った後の見直し方や進捗管理の仕方についてお話していきます。①既存の中期経営計画についての経営企画の悩み中期経営計画が走り出した後、半年から1年ほど経つと、経営企画の方々は以下のような悩みを抱えることがあるようです。⒜経営目標が高すぎ、実績と大きく乖離⒝中計を見直すべきか、維持すべきか⒞中計をローリングすべきか否か⒟中計が予算に反映されていない⒠中計で掲げた課題への取り組みが進んでいない⒡中期経営計画が忘れられている以下、それぞれの状況について触れていきましょう。⒜経営目標が高すぎて、実績と大きく乖離している⒜はオーナー系の会社や、精力的な経営者が実力以上の高い目標設定を要求するような場合によく見られるケースです。経営側はそうすることによって幹部・管理職等を鼓舞する意図があるのですが、当の幹部・管理職の人たちは、「そんな目標できるわけがない」と最初から諦めてしまいます。実際に1年目が走ってみると、予想したとおり乖離が激しく、その差がどんどん広がっていきます。月次でPDCAを行っていても、差が大きすぎて途方に暮れてしまいます。⒝中計を見直すべきか、そのままにしておくべきか⒜のように目標が高い場合ばかりでなく、何らかの外部環境の変化で経営目標が達成できなくなりそうになることがあります。そうした際に中計の目標そのものを見直すべきか、あるいはそのままにしておくべきかといったことに悩まされることがあります。⒞中計をローリングすべきか、フィックスで進めるべきか中期経営計画の策定方法には、毎年3カ年を作り直すローリング方式と、一度3年先を決めたら、3年経つまでそのままにしておくフィックス方式とがあります。それぞれメリットデメリットがあります((2)中期経営計画をローリング(期中修正)する方法としない方法にて後述)が、フィックス方式の会社は「ローリング方式の方がよいのではないのか」と、逆にローリング方式の会社は「フィックス方式の方がよいのではないか」と悩まされることがあります。⒟中計が予算に反映されていない3月が決算期の会社であれば、中期経営計画は前年の12月末までくらいに作成し、年度予算案は3月末までにまとめます。中計と予算の作成時期にはわずか3カ月の差しかないのですが、その間に状況の変化があり、初年度から中計と予算がずれるということも起こり得ます。こうした場合に、「ずれたままにしていてよいのか」と悩まされることがあります。⒠中計で掲げた課題への取り組みが進んでいない中期経営計画では、さまざまな新しい課題にチャレンジする旨がうたわれますが、いざスタートしてみると、なかなかそれらの課題への取り組みがはかどらないことがあります。こうした時、経営企画の方々は「みんな現業に一生懸命で、中計課題に取り組むつもりがないのでは」と心配になるでしょう。⒡中期経営計画が忘れられている「忘れられている」というと、ショックが強いかもしれませんが、実はよくある事象です。4月頃に中計を発表した頃は「新しい中計が出たか」と社内の注目を集めますが、半年ほどすれば、皆さん「中期経営計画」という言葉すら口にしなくなります。まるで「人の噂も七十五日」を地で行っているようです。これら6つの悩みは、いずれも中期経営計画の作り方や運用方法に端を発している問題です。そこで、このパートでは、作った後の中期経営計画をどうするかについて論じていきたいと思います。②中計を途中で大幅に見直した事例/中期経営計画を見直さずそのまま着地した事例ここでいったん、実際にあったA・B・C3社の事例を紹介して、中計を見直すべきかについてのポイントを見ていきましょう。⒜事例A社A社は、創業100周年に向けて長期ビジョンを掲げ、その第一期として中期経営計画を策定し発表しました。ところが、途中でリーマンショックのように過去経験したことがないような大きな外部事業環境の変化があり、中期経営計画だけでなく長期ビジョンも併せて見直しを行い発表しました。しかし、幸いなことに当初予想されたよりも短期間で事業環境が好転したので、再度前広な長期ビジョンと中期経営計画を打ち出しました。ところが、その後また、大きな事業環境の変化があったので、再度中期経営計画と長期ビジョンの見直しを行うことにしたのです。結局Aは、事業環境の変化のたびに、長期ビジョンと中期経営計画を見直すことになりました。【解説】この事例の好ましくない点は、中期経営計画を見直しただけでなく、長期ビジョンまで見直してしまったことです。経済環境の変化は日々起こり得ます。そしてそれはプラスに働いたりマイナスに働いたりします。このため、単年度は当然ながら中期での見直しが必要な場合はありますが、10年先の長期まで一緒に見直す必要はなかったのではないでしょうか。あまりコロコロと数字を変えると「また変わるのでは」と、外部・内部双方からの信用を損ないかねません。⒝事例B社B社は、比較的好景気の時期に「10年後は売上を2倍に伸ばす」という長期ビジョンと、連動した中期経営計画を発表しました。同社は国内中心でやってきた会社であったため、売上を大きく伸ばすには海外に進出する必要がありました。このため、中期経営計画では海外の同業・類似他社を積極的にM&Aする計画となっていました。実際に中計が走り出すと、思いのほかM&Aが進展し、2年目で中期経営計画の売上目標を超過達成してしまう見通しとなりました。このため、2年目の終わりに3年目の目標を上方修正して発表しました。しかし、実際の3年目には、外部事業環境がマイナスに働き、新たに設定した目標が未達成に終わってしまいました。さらに、その後はM&Aも手控えたため、数年経過して長期ビジョン自体が未達成となる可能性が高くなり、長期ビジョン自体を先延ばしすることにしました。【解説】この事例は、長期ビジョンを打ち出して海外に積極的に出て行った点や、さらに2年目で3年目の目標を超過達成しそうになったことにより目標を見直

したこともよかったと思います。ただし、海外で買収した会社を立て直し、業績をアップするまでは達成できていません。いわゆるポストM&Aインテグレーション(PMI:M&A後の統合)がうまく行っていないようです。M&Aを行う際には、あらかじめPMIノウハウを身につけておく必要があったでしょう。⒞事例C社C社は、中期経営計画の最終年度で外部事業環境の大きなマイナスに見舞われてから、もう3年目となっていたことから、、中期経営計画を見直す余裕もなく、大きな赤字を出して、いったん終了しました。C社は3年ごとのフィックス方式で中期経営計画を作成している会社であったため、「次の中期経営計画をどう打ち出すか」という問題はあったのですが、景気回復が見通せず、次期中計は「中期経営計画」という形ではなく、暫定的な「緊急対策と構造改革」という名目で取り組むこととなり、事態が収まった後に、再度3カ年ごとの中期経営計画を作成し、運用することになりました。【解説】C社の場合、最終年度に大きな事業環境の変化が起こったために見直しには至りませんでした。これがもし初年度や2年目であれば、見直しが必要となっていたことでしょう。次期中期経営計画については、見通しがつかないまま作成・発表するのでは外部からの信頼性も低くなってしまいますので、緊急対策的に取り組んだことはよかったのではないでしょうか。以上3つの事例から、中期経営計画を見直すべきかどうかの論点が見えてきます。具体的には、以下の4つのポイントで考えるとよいでしょう(図表6-1)。

1.急激かつ大きな環境変化による中期経営計画の前提条件の崩壊:中期経営計画で前提としている外部事業環境が大きく崩れた場合には、見直しが必要になることがある2.目標機能の喪失(超過達成・大幅未達成を含む):B社のように2年目で超過達成になると、3年目の目標の意味がなくなる(=「目標機能の喪失」)ため、見直しの必要が発生する3.外部内部へのシグナル効果(+/両面で):A社のように経営目標を頻繁に変えると、外部・内部双方からの信頼性や求心力が失われるため、内部・外部への影響を考慮した対応が必要となる4.タイミング(残りの年月等):その事象が中期経営計画の何年目に発生したかによって、見直しの要否が決まる▼(2)中期経営計画をローリング(期中修正)する方法としない方法中期経営計画を作成した後、その後の運用をどうするかで大きく2通りの方法があります。1つは、1年経ったら見直しを行い、再度次の3年間の中期経営計画を作り直す方法で、「ローリング方式」といいます。(図表6-2)

もう一つは、一度3カ年の計画を作ったら、3年目の目標は変えず、1年目・2年目・3年目…と予算を作って運用していく方式で、「フィックス方式」と呼びます。調べてみるとフィックス方式の会社が多いようですが、エレクトロニクスなど外部事業環境変化の激しい業界では、3カ年フィックスとはなかなかいかないようです。①ローリング方式で起こりがちな問題点・課題事業会社で中計の策定に携わっていた頃、ローリング方式を採用していたので、中計を毎年作った経験があります。一方で、フィックス方式の経験もあり、それぞれのメリットデメリットを整理すると図表6-3のようになります。

ローリング方式は、環境変化を柔軟に取り込めるというメリットがあるのですが、その反面デメリットもあります。一番の問題点は、毎年作成するために、手間を省いて計数計画中心の経営計画になってしまいがちだということです。また、毎年作り直すので、2年目・3年目の目標が軽くなり、中期的な取り組みが弱くなります。②ローリング方式のデメリット対策こうしたローリング方式のデメリット対策として、図表6-4に示すような対策案が考えられます。

作業量の多さについては、一定の書式を決めて見直すようにすれば負担軽減にもつながりますし、目標や達成意欲の希薄化については、コミットメント方式を採用したり、年度ごとのマイルストーンを明確化したりするなどの対応策が考えられます。いずれにしても、中期経営計画は対外発表も行い、株主に約束するものでもありますので、責任感のある運用を心がけてほしいと思います。③フィックス方式のデメリット対策フィックス方式のデメリットは、大きく分けて、「見直しが必要になる」ということと「フォローしないと途中から忘れられる」ということです。見直しのポイントについては、(1)②で紹介した3つの事例に基づいた4つの見直しポイントを参考にしてもらえればと思います。また、「フォローしないと忘れられる」という問題点については、後述します。▼(3)中期経営計画から年度予算・部門別予算への落とし込み方年度予算の編成方法の具体的な進め方については、図表6-5にあるようなステップを拙著『マンガでやさしくわかる経営企画の仕事』で詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。

ポイントは、中期経営計画では、1年目、2年目、3年目のそれぞれの計数計画目標がありますから、それと見合わせながら、最終的には3年目の経営目標が達成できるように、各年度の売上・利益の目標を立てていくことです。そして、戦略的な課題への取り組みとしての活動計画、その中間指標としてのKPIを進捗状況に応じて見直し、再設定を行いながら、軌道修正を行います。最終年度の予算がどうしても中期経営計画の経営目標を達成できそうにない場合は、その都度状況判断をしつつ内外に発表していきます。▼(4)中期経営計画と予算のフォロー(進捗管理)方法先に触れましたが、中期経営計画は「フォローを行わないでいると、忘れられてしまうもの」です。中期経営計画についてフォローを行うべき項目は、図表6-6のように①経営目標、②計数計画、③KPI、④活動計画の4種類となります。経営目標と計数計画は、おおむね財務数値であることが多いため、そのまま運営していても財務実績が上がってくるためにフォローが可能ですが、KPIと活動計画は、あらかじめフォローができるように作っておく必要があります。

例えば、KPIは戦略的に重要な指標を設定するものですが、通常の情報システムではそのデータが取れないことがあります。例えば、流通業での接客率などは、接客担当者がデータを入れない限り取得できません。とはいえ、それが重要な指標であれば手作業ででも取る必要が出てきます(私が指導した企業でも、手作業でやってもらったケースがあります)。ただし、継続的にかつ自動で取れる必要があるものであれば、中長期の施策としてシステム化することも検討対象となり得るでしょう。一方、活動計画は、フォロー(進捗管理)を行うには「誰がいつまでに何をやり遂げる必要があり、それをどうやって把握するか」ということをあらかじめ決めておかないと、フォローができません。ですから、前述のように、活動計画を半期ごとなどの区切りをつけて作成しておき、半年ごとに計画どおり取り組みが行われたか、その成果が出たかを確認する必要があります。①PDCAの行い方経営目標、計数計画、KPI、活動計画の4要素をフォローしていくには、図表6-7に示すように「Plan」「Do」「Check」「Action」のサイクル(PDCAサイクル)の中で連動して捉えていけるようにする必要があります。

具体的には、計数予算作成に合わせて、活動計画立案とKPI設定を行い、月次の進捗会議で、その3つの進捗状況を確認できるようにする、ということです。②KPIの設定と見直し中期経営計画の策定時点でKPIの設定を行い運用しますが、データが取りにくかったり、KPIそのものが適切な指標でなかったことなどにより、見直しが必要になることがあります。KPIは戦略の遂行や業績の先行指標などになるものですが、最初に設定したKPIを金科玉条のごとく守り通そうとすると無理が生じることがありますので、目的に沿って適宜見直しを行うようにしましょう。KPIの見直しとそれを達成するための施策の見直しの関係は、図表6-8に示すように、「KPIが適切か」「データが取れるか/運用できるか」、そして「活動計画としての施策が適切か/実行したか/成果が出たか」というように枝分かれして対応が分かれていきますので、参考にしてください。

③PDCAのレベルPDCAの取り組み方については、図表6-9に示すようなレベル感があると考えます。

・レベル1:予算としての計数計画を作っても、活動計画を作らず、計数の進捗管理のみを行うレベル。このレベルでは、売上・利益などの数字が毎月達成しているかということだけ議論される・レベル2:計数の差異分析までを行う。予算と実績で差異の出た部分を分析し、何処に差異が大きかったかが議論される・レベル3:差異分析の結果、当月ないし次月以降の修正行動が議論され、指示されるレベル・レベル4:計数計画だけでなく活動計画も作成され、計数の差異が活動計画と紐付けられて議論され、活動計画の見直しや修正行動が行われるレベル・レベル5:計数計画・活動計画に加えてKPIが設定され、三者の関係が分析され、適宜活動計画の見直しやKPIの見直しが行われるレベル・レベル6:レベル5のPDCAが継続的に行われることにより、だんだんとマネジメント(経営管理)が進化していく最上位のレベル最上位のレベル6に到達すると、改善や改革が進み、会社がどんどんよくなっていきます。本書で推奨しているのはレベル5ですが、世の中の多くの会社は、レベル3程度(計数計画しか作らず、活動計画やKPIがない状態)にとどまっているようです。新しい中期経営計画の策定とともに、PDCAの行い方も改めて見直してはどうでしょうか。④予実差の分析の視点予算や計画と実績の分析を行う際には、図表6-10に示すように、予算達成度Bに対してその要因を因数分解して捉えることで、適切な対応策・修正行動につなげられます。

要因は環境要因(E)、活動計画要因(C)、KPI要因(K)に分けて捉えます。例えば、特定顧客の工場の稼働率が高いことを前提に予算を立てていたものの、それが下がったことによって未達成となるような場合には、環境要因(E)がマイナスに働いたと捉えられます。また、新規顧客開拓活動を予定していたにもかかわらず、既存顧客のトラブル対応で実行できなかった場合は、活動計画要因(C)がマイナスに働いたことになります。さらに、新規顧客の口座をKPI設定どおり取ったものの、その分の予算が未達成であった場合、KPI設定(K)が不適切であった可能性がありますので、必要に応じてKPIの見直しを行います。このように、3つの要因に分けて予実差異を分析すると、より適切な対応策(M)が導き出されます。ある商社でこのように因数分解して取り組んだことがありますが、支店別のPDCAがより適切に回るようになり、予算達成度がアップしました。世の中の多くの会社は、計数計画だけを立てて、個々人の思い付きの活動計画を場当たり的なマネジメントで実施していることが多いように見受けられます。計数計画だけでなく、それを達成するための活動計画とそのパフォーマンスを表すKPIを設定し、三位一体のPDCAができるようになって、マネジメントを進化させていってもらいたいと思います。⑤中期経営計画のフォロー分野中期経営計画でフォローを行うべき分野は、図表6-11に示したように「年度の予実のフォロー」「新規の取り組み(問題解決型課題への取り組み・ビジョン達成型課題への取り組み)のフォロー」「PDCA方法自体のブラッシュアップ」「その他テーマ(必要に応じて)」の4系統に分かれます。

特に、「新規の取り組み(問題解決型課題への取り組み)」については、通常の業務を行いながら兼務で取り組む人が多いため、そのままにしておくと通常業務にとらわれすぎて一向にはかどらないということが起こります。新しい取り組みを成功させるには、図表6-12にあるような8つの要件を整える必要があります。

ここで最も重要なのは、「コミットメントとオーナーシップ」です。トップ自身がやる気を出さなければ誰も実行しようとしません。また、兼務で取り組ませる場合には「体制整備・リソース確保」も重要事項です。リーダーを含めたしっかりした体制の整備とメンバーの時間確保は欠かせません。「早期成果出し」も重要な要素の一つです。新しい取り組みの成果がなかなか出ないでいると、その取り組みの要否に疑念が湧いてきます。そうすると、足取りが鈍ったり、内部で意見対立が起こるなどして思うように進まなくなります。上に立つ人、あるいはリーダーとなる人は、そうしたことをよく理解して、新しい取り組みに立ち向かう必要があります。このように、4分野について適切かつ円滑なフォローに行うには、中期経営計画策定の時点で、どのようなフォロー体制をとるのかをあらかじめ決めておかなければなりません。

まとめ今回、中期経営計画の策定プロセスを、山本電機はビジネス環境分析パートから始め、大和貿易はビジョン設定パートから始めるというストーリーでご紹介しました。それぞれのタイプで進める際に出くわす問題点やその対応策もある程度ご理解いただけたと思います。一方、策定プロセスにおいて、社内の事業部門との関わり方でいうと、まず事業部からたたき台を出させる①集約・積上型と、上から方針や目標を出して事業部に振り分ける②目標提示割振り型とがあります。①集約・積上型の場合、事業部からは達成が容易な低い目標が出てくることが多くなることと、事業部間関連の考え方が弱くなるという弊害があります。②目標提示割振り型は、ある程度経営の意向は反映させやすいですが、事業部の実態と乖離したり、目標設定における事業部の自主性・自発性を削いだりするおそれがあります。このため、上下左右で意見交換を行い、全社的視点でビジョンや戦略が共有されている③ビジョン・戦略共有型となることが望ましい姿です。そのためには、大和貿易が行ったようなプロジェクト型で進めてみるのが一つの選択肢だと思います。また、実行して成果が上がる中期経営計画とするためには、策定段階において、活動計画まで作り込み、進捗管理が行えるようにする必要があります。何事も段取り、準備がいいほど本番(中計の実行段階)がうまくいくと信じて、取り組んでみてください。皆さんの成功を祈ります。

ダウンロードサービスについて本書の特典として、中期経営計画の策定に役立つワークシート集(本書巻末掲載)を下記のサイトよりダウンロードいただけます。■ダウンロードサイトURL■http://www.iguchiyoshinori.com/chukei●中期経営計画策定用ワークシート集(ファイル名:chukeiws.pptx)(MicrosoftOfficePowerpointプレゼンテーション)

著者紹介井口嘉則(いぐちよしのり)株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット代表取締役オフィス井口代表岐阜県出身。東京大学文学部社会学科卒業、シカゴ大学MBA。日産自動車にて情報システム部門、海外企画部門を経験、中期計画・事業計画を担当。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)にて、中堅~大企業向けに中期経営計画策定支援をはじめ、数多くの経営コンサルティング案件を手がけ、10年で100案件をこなす。その後、IT系など複数のコンサルティング会社を経て、2008年にオフィス井口設立。2009年から株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット代表取締役。中央大学ビジネススクール客員教授、立教大学経営学部講師、対外経済貿易大学客員教授(中国・北京)等を務める。クライアント企業の中期経営計画策定や新規事業企画コンサル、ワークショップ方式の企業研修講師を多く務める。研修・講師実績多数。研修・セミナー等は年間150回ペースで実施。■著書『これならわかるマンガで入門!新規事業のはじめ方』(ダイヤモンド社、2015年)『中期経営計画の立て方・使い方』(かんき出版、2008年)『マンガでやさしくわかる経営企画の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター、2018年)『マンガでやさしくわかる事業計画書』(日本能率協会マネジメントセンター、2013年)『ゼロからわかる事業計画書の作り方』(日本能率協会マネジメントセンター、2009年)『経営戦略のフレームワークがわかる』(産業能率大学出版部、2011年)ほか。オフィス井口のホームページに最新のセミナー情報、事例、顧客・受講者の感想等を掲載http://www.iguchiyoshinori.com/

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