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パート・アルバイト戦力化[完全]マニュアル【オリジナル】

目次

はじめに

この本は1996年2月初版を発行し7刷を重ね、お蔭さまで新たに改訂版を発行することになりました。

パート・アルバイト(P/A)の育成システムを自社で構築する際の基礎知識、マニュアルやトレーニングプログラムの具体例など、実践面で活用できる内容が評価された結果と自負しております。

ここ10年、業種・業態にかかわらず、お客さまの求めるサービスレベルは急速に高度化しています。

また、景気低迷が続く中で全国各地のオーバーストア現象は進行し、販売競争はより厳しさを増しています。

企業のリストラ政策と並行して、全業種でP/Aへの依存度は高まるばかりです。

特に小売業やフードサービス業などサービス業では、今後も少子高齢化が進行する中でP/Aの活用は必須条件です。

410万人を超えるフリーターの存在からも分かりますが、働く側の意識も自己実現欲求をベースにして自分の才能や資質、個性や人間性を生かせる仕事や職場が求められています。

このような背景の中でサービス業は淘汰の時代を迎えています。

「勝ち組」、「負け組」が明確に分かれる中で、その勝敗の決め手は「サービスの質」です。

この「サービスの質」の競争の本質にあるのは「働く人の質」です。

サービス企業として、どれだけサービスに適性のある人を選別し採用できるか。

また、教育・トレーニングを通しそれらの人たちの能力開発を行い、お客さまに対しいかに個別対応ができるかが重要なポイントとなっています。

今後は個別対応により「顧客満足」を超えた「個客満足」を高め、一人ひとりの個客にサービスを通し感動や感激を体験させることが不可欠です。

また、その個客の喜びを自分の喜びとして共有し、共感を生む企業風土や職場環境づくりが必要です。

「ハッピーな従業員がハッピーな顧客を創造する」のです。

本書ではこれらのことを考慮し、新提案を主体に加筆しています。

具体的には、P/Aの個性や人間性をより生かせるような仕組みづくり、より高いサービスレベルを目指した能力開発のポイント、段階別育成に伴う賃金体系などです。

また、教える側に必要なコーチングを活用したトレーニングのポイントやカウンセリングについても詳細な内容としました。

構成は前著の要所を残しつつ、より分かりやすい形にまとめ直しています。

サービス業の店長をはじめ、数店規模の経営者から本部の教育担当者など社内研修のテキストとしても実践的に役立つ内容としました。

また、チェーン展開やフランチャイズ・システムを構築する際の参考資料とすることも可能です。

この本がサービス業界で日夜精勤する店長やP/A双方のお役に立ち、お客さまに喜ばれることができれば幸いです。

最後に出版に当たり、適切なアドバイスや多大なご協力をいただいた、出版第2部石川秀憲部長に感謝申し上げます。

ありがとうございました。

2004年4月吉日清水均※データ類に関しては発行時の内容となっております。

目次

はじめに

第1章P/Aマネジメントの基礎知識(小売・サービス業により重要となるP/Aの役割)

1-1小売・サービス業におけるP/Aの位置づけ

1-2P/Aの働く目的と意識

1-3P/Aマネジメントの3原則

1-4P/A人件費管理の基礎知識

1-5何としても人件費は変動費化せよ

1-6P/A年間採用計画の作り方第

2章良いP/Aの集め方・選び方(募集・面接・採用のポイント)

2-1成功する募集活動のポイント

2-2募集広告の作り方

2-3良いP/Aの選び方

2-4採用が決まったら、これだけはそろえたいモノと手続き

第3章人財育成の基礎(オリエンテーションと初期教育・トレーニング)

3-1人財育成の第一歩オリエンテーション

3-2教育トレーニングの基本であるOJTを正しく行う

3-3接客の基本用語・動作のトレーニング

3-4コーチングを活用したP/Aトレーニングの勧め

第4章マニュアルと教育トレーニングプログラムの作り方(使いやすい・分かりやすい・教えやすいが基本)

4-1マニュアルの基礎知識

4-2ビデオマニュアルの作り方

4-3トレーニングプログラムの必要性

4-4アメリカ式トレーニングプログラムの使い方

4-5ステップ別サービス基礎トレーニングシステム

4-6小売業の作業別トレーニングプログラム

4-7中小店のための教育トレーニングプログラムを活用する7つのポイント

第5章クレンリネスの仕組みとトレーニング法(すべての小売・サービス業は清掃に始まり清掃に終わる)

5-1店舗オペレーションの基本「クレンリネス」

5-2クレンリネスの仕組みづくり

第6章緊急事態の対応マニュアル(小売・サービス業はお客さまの命を預かっている)

6-1緊急時対応の基本的考え方

6-2緊急時の訓練法

第7章より高いサービスを実現するために(P/Aのモラールアップとマインドシェア)

7-1顧客満足を超えた個客満足をつくり出す企業文化

7-2勝ち組の3ポイントとモラールアップを図る朝礼・ミーティング

7-3クレームマネジメント・マニュアルの作り方

7-4場所別・ケース別クレームと対処法

7-5より高いサービスを実現させる仕組みづくり

第8章P/Aワークスケジュールの作り方(P/Aの共感を得て生産性を上げる仕組みを作ろう)

8-1日別売上計画の作り方

8-2ワークスケジュールの作り方

8-3標準労働時間の設定法

8-4P/A労働時間のコントロール法

8-5ワークスケジュールの基本ルール10カ条

第9章P/Aの資格制度と賃金体系の作り方(P/Aのやる気と能力を引き出すために)

9-1女性パートタイマーを戦力化せよ

9-2P/A加点主義の賃金体系の勧め

第10章P/Aの人事考課とカウンセリング(良い人間関係の職場をつくるために)

10-1P/Aの人事考課と育成法

10-2P/A個人面談とカウンセリングの方法

P/Aやってはいけないべからず100

P/Aマネジメントのための基本用語50

 

1章P/Aマネジメントの基礎知識小売・サービス業により重要となるP/Aの役割

1-1小売・サービス業におけるP/Aの位置づけ

低成長時代と高い生産性の経営基盤の必要性低成長時代を迎え、消費者の価値観が大きく変化しています。

その結果、小売業では買い上げ点数と1品平均単価が共に下がる傾向が強く、売上げがダウンし店離れが顕著となっています。

フードサービス業では固定客の来店頻度のダウンが続き、客数が伸び悩み客単価を上げることもできず、売上げが停滞しています。

またAVレンタル店などのサービス業も競争激化の中で、低価格競争が続き経営が圧迫されています。

将来的に見ても、高齢化社会への移行を背景とした先行き不安から、消費者の生活防衛意識と安定化志向はより顕

著となり、低成長は恒常化すると考えられます。

また、企業規模にかかわらず、労働時間の短縮と年間休日の増加は急務です。

その結果、小売・サービス業では業種・業態を問わず、売上げの伸びが停滞する中で固定化した人件費率が増大し、損益分岐点は上がるばかりです。

図表❶-1の[今後、企業に求められる要件]は、低成長時代のなかで企業(店)として何をなすべきかをまとめたものです。

上の大きな輪は、この時代に企業(店)としての個性を鮮明に打ち出し勝ち残るために、あらゆるコミュニケーション活動を通じて顧客側に伝えられるCI(コーポレイト・アイデンティティ)やSI(ストア・アイデンティティ)と呼ばれるマーケティング戦略を表しています。

その中の小さな輪はその核となる3要素です。

左の輪は、CIに関連し自社独自の商品開発と品揃えが必要であることを示し、右の輪はP/Aを含めた従業員一人ひとりの質が経営を左右する重要な要素の1つであることを示しています。

これら3つの輪がバランスよく三位一体(さんみいったい)となり得たとき、企業(店)としての独自の個性が発揮され勝ち残りが可能となるわけです。

また、それぞれの輪の間には相互に関連する重要なポイントをまとめてあります。

ここで重要なのは、それらの基礎として高い生産性の経営基盤が不可欠であることを示している点です。

いくら三位一体となっても、この高い生産性がなければ継続企業としての安定成長は望めません。

そのポイントとなるのが従業員のP/A化です。

小売・サービス業界にローコストオペレーションという用語が定着化してから、久しくなります。

しかし、大手企業を除きその抜本的な対策の1つであるP/A比率の向上による人件費の変動費化は、一向に進んでいないのが実情です。

その理由は、自社にP/Aの採用から育成までの短期戦力化システムが構築されていないためです。

売上げが停滞する厳しい時代を乗り越えるには、何としても自社のP/A比率を高め生産性を向上させる必要があります。

それではまず、あるべき労働条件と人件費の面から、具体的な生産性の目標指標を算出し確認してみましょう。

P/A化なくして人時生産性のアップなし(図表❶-2)は標題にある通り、企業としての目標人件費に対し必要人時生産性と人時売上高の試算を行っています。

前提条件として年間休日を100日としています。

1年間365日からこれを引けば、労働日数は265日となります。

1日当たりの実働時間を8時間とすれば、年間労働時間は2,120時間の実働となります。

ここで注目してほしいのは、この2,120時間です。

1年間365日を1週7日間で割れば、年間は52週間と余り1日となります。

仮にこれを53週とし、平成9年4月1日からの法定労働時間である1週間につき40時間の実働時間を掛ければ、この表と同じ2,120時間となります。

要するにこの時間数は規模にかかわらず、小売業やフードサービス業として目指すべき法定労働時間の基準に合致していることになります。

次に労働分配率を40%に設定してあります。

この数値は一般に健全経営を維持するための適正値の範囲内です。

仮に目標人件費を(例)のように300万円とすれば、年間に必要な荒利益(=年間労働生産性)は750万円となります。

この必要年間労働生産性750万円を、先ほどの年間労働時間2,120時間で割れば、必要人時生産性(1人1時間当たりに必要な荒利益)が算出されます。

さらに、この人時生産性を各荒利益率で割れば、それぞれの荒利益率に必要な人時売上高が算出されます。

例えば、平均目標人件費を先の300万円とすれば、必要人時生産性は3,538円となり、小売業で荒利益率30%なら必要人時売上高は11,793円となります。

また、フードサービス業で荒利益率70%なら必要人時売上高は5,054円となります。

平均目標人件費の300万円は多いように感じるかもしれませんが、月間平均で25万円です。

これから社会保険料や税金を除けば、1人当たりの実際の手取り額は月間平均で18万円前後となり、現状では決して多いとは言えません。

実際に1人当たりの平均人件費で、この数値を超えている企業はたくさんあります。

問題はそれらの企業の多

くが、この必要人時生産性や人時売上高をクリアできていないことです。

アメリカの流通業界では、ディスカウントストアやカテゴリーキラーを中心に作業改善が行われ、倉庫型(ウエアハウス)ストアによる広い売場面積を少数人数で管理するローコストオペレーションが実現され成果を上げています。

日本でもこの表にある必要人時生産性を目指すには、発想の転換による抜本的な改革の時期に入っています。

その最大のポイントは、P/A比率を高め人件費を変動費化することです。

また、ローコスト店舗の開発やサービス形態の見直し、コンピュータなどのハイテク機器や各種省力化機器の導入など、多面的な対応策が検討され実験される必要があります。

P/A活用のための基本対策P/A活用の基本対策は、企業側が勤務日、勤務時間をフレキシブルに設定できるような仕組みをつくることです。

また、店長が各自の働く目的を的確につかみ、月間で各自が望む給与額(=勤務時間数)に合わせてワークスケジュールを組むことも必要となります。

ただし、ここで忘れてならないのは、あくまでも店側の都合に合わせてワークスケジュールを組むという点です。

そのためには①曜日別に標準的なワークスケジュールがパターン化できている②各時間帯の基本作業が標準化、単純化、システム化できているこれらのことが必要となります。

この結果、1日の作業が分業可能となり、その時間帯に入ったP/A各自が責任を果たすことにより、全体として一体化(1日・1週間の運営)が可能となるわけです(図表❶-3)。

さらに③採用から教育トレーニングまで、段階的な育成システムが構築されている④各個人の能力を開発し生かすキャリアアップの仕組みと賃金体系が連動している⑤これらにより企業としても効率的活用ができ、生産性を上げることができるとなります。

生産性を上げる基本対策はP/A化により人件費を変動費化することですが、そのためにはワークスケジュール作成(レイバースケジューリング)と稼働時間管理のための仕組みがあることも前提となります。

※これらのことに関しては、各章ごとに順を追って具体的にまとめてあります。

また、各種アイデアやフォーマット・チェックリストも紹介してあります。

1-2P/Aの働く目的と意識

パートタイマーの実態と関連法改正の動向東京都産業労働局が実施した「パートタイマーに関する実態調査」(図表❶-4-1)を見てみましょう。

パートタイマーを希望する主な理由は、自宅の近くで自分の都合のよい日や時間に働けるからです。

さらに非課税限度額(年間103万円)との兼ね合いで勤務時間や勤務日数が短いことも、大きな要因となっています。

労働省が実施した調査データ「パートタイム労働者通勤時間別割合」(図表❶-4-2)によれば通勤時間19分未満が56.2%、29分未満では72.8%の累計構成比となります。

これは小売業やフードサービス業にとって第1次商圏に住むお客さまでもあることを示しています。

このことは、採用面接・雇用からその店を辞めるまで、常に留意しなければならないことです。

中には正社員としての適当な仕事が見つからず、取りあえずパートをしている人もいます。

しかし、残業のないことやすぐに辞められることを理由に挙げていることからも分かる通り、大半は自分の都合を優先し非課税限度内で程よく気軽に働けるからこそ、パートタイマーをしているととらえるべきでしょう。

平成2年度にも東京商工会議所が同様の調査をしていますが、この2つが大多数を占めています。

また、同調査で「家計の補助」とした主婦は、その理由として子供の教育費、貯蓄、ローンの返済を挙げています。

今回の2回分の調査結果を見ても分かる通り、今後もこれらの就労動機は変わらないと判断できます。

また、「家にいると時間を持て余すため」、それならパートタイマーで働き「視野を広めたり、社会経験を得るため」「自分の経験・技術、資格を生かすため」「社会のために役に立ちたい」となっています。

この背景には女性労働者の高学歴化と少子高齢化の影響があると考えられます。

P/Aに関連する法的な改正の動向についても触れておきましょう。

社会保障審議会と厚生労働省から「年金改革」の一環として、パート従業員等の短時間労働者への厚生年金等適用拡大に関し、適用の条件を「週所定労働時間20時間以上または年収65万円以上」とする案が検討されました。

しかし、(社)全国スーパーマーケット協会や(社)日本フードサービス協会など各種協会や団体から猛反発にあい2004年1月末の段階では見送られることになりました。

もし、この法案が通れば一部の零細店(常時4人以下の従業員数)を除き、通常の小売店や飲食店はすべて適用され、社会保険料の事業主負担額は莫大なものとなり経営を逼迫させることは必至です。

また、P/Aにとっても「週所定労働時間20時間以上または年収65万円以上」という適用条件は現実的でなく、社会保険等の自己負担増も大きな問題となります。

さらに配偶者特別控除についても、政府は廃止・縮小の方針を打ち出しました。

影響を受けるのは、年間所得が1000万円以下、配偶者が専業主婦や年収103万円以下のパート労働者の世帯となり、全国で約1300万世帯と推定されています。

厳しさを増す財政事情に迫られた増税策で、国は「女性の社会進出を促す」との効果を期待していますが、廃止後に積み残された課題は多く問題です。

具体的には、平成16年分以後の所得税(個人住民税は平成17年分以後)から適用したいとしています。

いずれにしてもこれらの問題は現段階で流動的な面も多く、施行された時点で企業およびP/A側で最善策を検討し対応する以外ありません。

データに見る学生アルバイトの実態学生援護会が実施している各種調査を見れば明らかなように、学生がアルバイトをする主な目的(図表❶-4-3)は全国共通で「ふだんの小遣いのため」「社会勉強のため」「旅行・レジャー資金づくり」となっています。

この結果は過去10年以上同じ傾向であり、今後も同様に推移すると判断できます。

また、「最も最近行ったアルバイトについて」(図表❶-4-4)も多少の違いはあるもののベスト5は8職種となっています。

「希望する勤務期間」(図表❶-4-5)も首都圏の6カ月くらい~1年未満、1年以上の数値、関西圏の1週間以内と2~3週間位の数値が異なる程度で、全地域ともほぼ同じ傾向となっています。

また、「希望する1週間の勤務日数」は首都圏が全体的に他地域に比較し0.3日程度少ないだけで、首都圏以外の地域は共通しています。

「希望する勤務時間」に関しては高校生が大学生に比較し1時間弱少なめを希望しています。

また、大学生の男子が女子より0.2~0.6時間多く、若干長めの勤務を希望していることが分かります。

「希望する1日の勤務時間」では、全地域とも午後6時~午後9時頃が70%弱~80%弱となっています。

これらのデータは求人活動の参考としたり、彼らの働きたい時間など需要と供給のバランスを考慮して時給体系を構成する際に役立てることができます。

「パートタイム労働者通勤時間別割合」のデータからも明らかですが、通勤時間は29分未満が59.4%、44

分未満では79.3%の累計構成比となります。

アルバイト先の選定は学校と自宅や宿舎との通学範囲を原則とし、できれば30分以内、遠くとも44分以内に設定していることが分かります。

求人情報誌を入れる際に通学手段を考慮し、この範囲を主体に設定することが大切です。

勤務日や勤務時間が調整しやすいことを理由に、大部分が小売業やサービス業を選んでいます。

アルバイトの特性としては学生間で情報網が発達しているため、通勤が便利で、できるだけ楽な仕事、さらに時給のなるべく高い職場を求め、短期間でアルバイト先を変える傾向が強いことです。

しかし、現在417万人いるといわれるフリーターに代表されるように、彼ら若者は「自分にとって面白いと感じる仕事で、自分でなければできないことをやり、誰かに認められたい。

また、そのような仕事や職場なら多少責任が重くとも努力してがんばる」といった思いがあることも事実です。

それは「今後やってみたいアルバイトについて」(図表❶-4-5)を見ると分かります。

自分の個性や特性を生かし、人間性や創造性が発揮できそうな「本当にやってみたい職種」と「何となく楽ができそうに見える職種」が入り混じっています。

フリーターの場合には、その自分を生かせる面白いと感じられる仕事を求め、アルバイト遍歴を重ねるという傾向も強くあります。

従って、アルバイト先で自分のホスピタリティや創造力などが発揮でき認められれば、学校そっちのけでその仕事にハマることもあり、結局、就職してしまったという例も多くあります。

1-3P/Aマネジメントの3原則

CSはESからCSとは顧客満足度(カスタマー・サティスファクション)のことです。

日本では小売・サービス業に求めるCSの期待レベルが高く、笑顔や気配りがないと評価されません。

ESとは従業員満足度(エンプロイイー・サティスファクション)のことで、アメリカでは「CSはESから」とよくいわれます。

つまり、顧客満足度を高めるためには、職場や仕事内容を通して得られる従業員の満足度を、まず高めなければならないという意味です。

従業員とは正社員だけではなくP/Aも含んでいます。

それでは、どうしたらESが得られるのかを考えてみましょう。

まず、前提条件となるのは自分の選んだ仕事や企業(店)で世間並の給与(時給)や労働時間・年間休日数

などの基本的労働条件が満たされているということです。

さらにその企業(店)に知名度があり、かっこいい職場や楽しい(楽しそうな)仕事として仲間や地域から認知されていれば、その企業(店)に勤める上での安心感や安定感が生まれます。

しかし、これだけではESに結びつきません。

ESを高めるには、自分を生かせる仕事そのものの面白さと、共感を生む企業やオーナーの経営理念や使命感といった企業哲学、さらには職場の良好な人間関係が不可欠となるのです。

そのためには、納得できる企業哲学を背景とした、各個人の人間性や創造性を高めるための、能力開発や教育・トレーニングシステム、職場環境が必要となります。

また、前項の調査資料からも明らかですが、P/Aの働く理由の1つに「社会参加」や「社会勉強」を挙げることができます。

職場を社会との接点としてとらえ、働く仲間たちとふれあい、コミュニケーションを取ることで社会的欲求を満たしているのです。

そのため企業(店)としては明るく楽しい職場づくりのため、P/Aの歓迎会やカラオケやボーリング大会など積極的な「ふれあいの場」づくりも必要となります。

さらにP/Aが自己実現を図りつつ、仕事内容の多能化や高度化を順に行えるキャリアアップの仕組みを賃金体系と連動させて作り、やる気のある人やがんばった人が公正に評価されるようにすることも重要です。

これらは[マズローの欲求の段階説](図表❶-5)をベースにまとめられた「アメニティ志向の背景」(図表❶-6)を見れば分かります。

この傾向は、団塊の世代以降ではより顕著な求職者意識の変容であり、小売・サービス業界を支えるP/Aを含めた若手社員の本音でもあるのです。

それではこれらのことを理解した上で、P/Aのやる気と能力を引き出す基本原則をまとめてみると、「ゆとり」「ふれあい」「加点主義」の3つに集約することができます。

「ゆとり」を忘れないP/Aの働く目的は生活費のためもありますが、自分の生活のゆとりのためでもあるのです。

その結果家族旅行や帰省、友人・知人とのスキーや海外旅行などのため、ゴールデンウイークや夏休み・冬休みに連休を取りたがります。

しかし、当然この時期は店の繁忙期と重なることが多く、だからといってここで「行くな!」と語調を強めては、元も子もなくなります。

これをすると人は定着せず、P/Aの募集費がかさむばかりです。

重要なことは、彼らを喜んで送り出す考え方や姿勢です。

「それでは店が回らない……」その通りです。

だから、P/Aでも長期間の連休は事前に書面で申し出るハウスルール(店内規則)をつくり、順にできるだけ公平に、休みたい人が休みたい時に休めるような仕組みをつくるのです。

具体的には例えば、連続休暇申請用紙による1カ月前以上の事前申請で、優先して休みが取れるようにするのです。

また、各自の希望する休みが一覧できる大型の繁忙期連続休暇予定表などを作成して、バックヤードや休憩室など、全員が見える所に張り出すのもよいでしょう。

店舗としては、繁忙期にP/Aの休みが特に集中しやすい週を中心に日別売上計画を事前に立て、名前を空欄としたワークスケジュール用紙を同様に張り出しておきます。

掲示板の上には「みんなで仲良く取ろう、楽しい連続休暇。

でも、店のこともよろしく!」などと書き、自主的にみんなで調整してワークスケジュールを埋めてもらえるようにしておきます。

埋まらない日があれば、P/Aのリーダー的存在の人に根回しして調整を委任したり、最悪の場合は店長から個別に依頼して調整するのです。

こうすることで、P/A間にお互いに譲り合いや思いやりの感情が芽生え、仲間意識のもとに公平に調整が図られます。

このように「ゆとり(時間)」を大切にする、彼らの価値観や自主性を優先した管理を可能な限り行うべきなのです。

ふれあいを大切に

営業形態や立地にもよりますが、経営者自ら店を連休とし夏はみんなで海水浴やキャンプに、冬はスキーや温泉に行くことも効果的です。

実際、中小店で毎年1回全員で海外旅行に行くことを楽しみに、日常の激務に耐えてがんばっている店もあります。

数日分の売上げを取るよりも、みんなの人間関係や一体感を生む共通体験を取るほうが、結果として店内にチームワークが生まれ、継続した客数アップ(売上高アップ)につながる確率は高いものです。

これが「ふれあい」効果です。

P/Aは働くことを通して新しい仲間と知り合い、オーバーに言えば自分の社会勉強や社会活動の一環(職場=気の合う仲間とふれあう接点)にしようとしています。

ここ20年来、大学の運動部が敬遠され、同好会とも言えるサークル活動に人気が集まるのも、がむしゃらにがんばるよりみんなで仲良くといった風潮(価値観の変遷)の現れです。

従って、店長としては少なくとも2カ月に1回はボーリング大会やカラオケ大会、P/Aの歓送迎コンパなどを実施し、ふれあい度を高める必要があるのです。

この積み上げが共感を生み、サービスや作業にコンビネーションをはぐくむのです。

これらの運営に当たっては、幹事をP/Aから相互指名させます。

必ず場を盛り上げるのが得意な宴会係やエンターテインメント担当係が現れ、彼らを中心に結束が生まれ、仕事中にも笑顔が絶えなくなるものです。

大切なことは、店長が自ら良きリーダー的な存在として参加し、自分もしっかり彼らの中に打ち解けて楽しむことなのです。

これらの絆ができれば、ワークスケジュールも自主的に調整されるようになります。

また、付近の競合他店に比べ時給が多少低くとも喜んで勤め、定着率も良くなるものです。

加点主義の勧め仕事面では厳しさが必要となります。

新人P/Aの育成段階から、身だしなみやあいさつなどのハウスルールは徹底して守らせる必要があります。

これらは勤務開始の初日と2日目までで決まります。

教育というよりも躾といった姿勢で臨み、厳しくすることです。

店長としては「決めら

れたことは決められた通り、明るく誇りを持ってやり続ける」という店の営業方針を徹底し、完全に継続する姿勢が何よりも必要です。

そのためには、各作業はマニュアル通りにさせることが肝心です。

もし、間違いを見つけたら「その場で正し、その場で直させる」習慣づくりも大切です。

この結果、リーダー的なアルバイトが育成されるに従い、それらが「店風」に醸成されるのです。

やがて店舗オペレーションに関しては、ベテランP/Aがトレーナーとして、新人のP/Aを店長同様に厳しく指導できるようになります。

この姿勢は、特に顧客満足の原点でもある、商品の品質管理や販売管理に重要な役割を果たします。

サービス面では、まず基本サービスをマニュアルによる徹底した教育トレーニングで教えます。

その上でお客さま最優先の考え方をベースとし、彼らの個性や人間性を生かせるように柔軟性を持たせると効果的です。

最も大切なことは、人とふれあうことが好きで、販売やサービスを通してお客さまに心から喜んでいただくことを自分の喜びとできる人(ホスピタリティのある人)を採用することです。

そして彼らが、自店の各種作業やサービスを通して能力を発揮するに従い、賃金体系面でも、それを認め評価する加点主義の仕組みをつくることがポイントとなります。

1ー4P/A人件費管理の基礎知識

法定労働時間も1週間40時間となり、業種・業態や規模の大小にかかわらず、人時生産性(1人1時間当たりの荒利益)5,000円アップを目指す時代に入っています。

そこでP/A人件費管理の基礎知識とその用い方を解説します。

標準値・目標値などに関しては、業種・業態や規模により大きく異なるため、業界誌などで同業他社と自社を比較検討することをお勧めします。

●人時売上高(売上高÷総労働時間数)

「ニンジ売上高」と読みます。

正社員とP/Aを含めた1人1時間当たりの売上高を示します。

当然、高いほうが良く、生産性も高いことを示しています。

この数値は、客単価が高い業態が有利となります。

各種業態を持つ多店舗展開企業が各店を対比する場合、特にフードサービス業やレンタルビデオ店、美容院、エステサロンなどの場合には、後述する人時接客数(労働指数)も合わせてチェックする必要があります。

●人時接客数(来店客数÷総労働時間数)主にフードサービス業界で使われる指数ですが、レンタルビデオ店や美容院などサービス業で用いれば有効な指標となります。

「労働指数」、「接客生産性」と呼ぶ企業もあります。

正社員とP/Aを含めた1人1時間当たりの接客人数(対応人数)を示します。

従って、人時接客数×客単価=人時売上高となるわけです。

例えば、ファミリーレストランの客単価が1,100円、喫茶店の客単価が800円とします。

人時接客数はどちらも4人とした場合、ファミリーレストランの人時売上高は4,400円、喫茶店は3,200円となります。

業態により人時売上高と人時接客数の双方でのチェックが必要となるのは、このためです。

●労働生産性(月間荒利高÷換算人員)換算人員は正社員数+P/A合計労働時間数正社員月間平均労働時間(180~200時間)として算出します。

しかし、よりきめ細かな人件費管理を目指すためには人時生産性(1人1時間当たりの荒利益)=月間荒利高÷総労働時間数を基準値として用いたほうが便利です。

理由は大手から中小店まで、企業規模により実働時間や変則勤務体制など労働条件が大きく異なるためです。

また、業種・業態により客単価やサービス形態が異なり、荒利益率と荒利益高がさまざまに変化するからです。

現状では業種・業態や規模により標準値が異なりますが、高いほど良いのはいうまでもありません。

1人当たりの実質上の稼ぎ高を示し、労働分配率同様、中短期など経営計画を作成する上で基本指標(目標)の1つとなる重要なものです。

また、人時生産性=人時売上高×荒利益率として表すこともできます。

(例)人時売上高15千円×荒利益率30%=人時生産性4,500円月間実働時間180時間なら、労働生産性(月間)は810千円となります。

今後の労働時間短縮、完全週休2日制などの導入を考えれば、どの業種業態でも月間での目標値は80万円以上を目指す必要があります。

●売上高対人件費率(人件費÷売上高)恒久的な若年労働者の人手不足から、今後も人件費の高騰が続くことが予測されます。

また、売上げの絶対額、地域、業種・業態、企業規模などによる格差があるため、標準値は異なります。

通常、従業員の給料・手当、賞与、法定福利費・福利厚生費、退職金(各引き当てや繰り入れも含め)などを人件費としています。

しかし、チェーン企業の多くは、このほかに役員報酬、求人費や教育研修費なども含め人件費としてとらえています。

●労働分配率(人件費÷荒利益)荒利益に占める人件費の割合を表します。

長・中期の経営計画を作成する上で最も大切な基本指標(目標)の1つとなります。

業種・業態や企業規模により異なりますが、一般的に35%以下が目標値、35~40%が適正値となります。

自店が標準値に収まっていない場合、荒利益率(原価率)と人件費率のバランスをもう一度、見直してみる必要があります。

企業によっては、標準店設計や店舗レイアウト、配送やオペレーションシステムなどすべてに関する抜本的な改善が必要となります。

これらの標準値や目標値を達成する上でポイントとなるのは、基本的には従業員のP/A比率を増加させ、生産性を上げることです。

そのためにはP/Aの採用から育成まで、自社における教育トレーニングのシステム化を図る必要があります。

また、賃金体系も見直し、「多能化して、やる気や責任感のある人」が時給アップや資格給により、高給を得られる仕組みをつくり上げることが急務です。

今まで一般的に

行われていた、在籍年数により自動的に時給がアップする手法は、早急に見直しを図らなければなりません。

多能化とは、接客販売担当が接客だけをするのではなく、継続した教育トレーニングを行うことで棚卸し・発注・検収作業、新人のトレーニングや特定時間帯での正社員代行などもできるよう、能力開発により育成を図ることです。

フードサービス業の場合には、サービス担当者がサービスだけでなく、キッチンの仕込みや調理作業もできるように、互換性を図ることも含まれます。

この結果、生産性がアップし総体としての人件費が下がります。

しかしP/Aの質が向上するため、各自の給与はアップ可能となります。

また、社員の労働時間短縮や年間休日数の増加など、企業としての労働条件の改善も可能となるわけです。

1-5何としても人件費は変動費化せよ

P/Aの固定化した労働時間から脱却せよ大手ナショナルチェーンは別にして、ローカルチェーンでもよく見かけるのがP/A人件費の固定費化です。

例えばP/Aを雇用した際に、山田さんは毎日10時~15時、鈴木さんは12時~17時などと固定化してしまっているのです。

これでは売上げが下がったり停滞しても、人件費が固定的にかかるため、コントロールができず損益分岐点は下がりません。

それでいて、このような店ではP/A各自の都合によって勝手に休みを取られることが多く、肝心の日曜日や祭日、夏休みなどに人が不足し、販売チャンスを逃したりサービスが行きわたらないでいます。

このような店の場合、各時間帯の固定作業の見直しを行い、標準化を図る必要があります。

具体的には、だれにでもできるような各作業の道具や手順、範囲や量、完了後の質的なレベルを定め(マニュアル化)、作業に要する必要人時(マンアワー)も測定し、標準時間を決める必要があります。

また、売上予測や利用客数に合わせて変動する作業(仕込みや準備作業、接客適正人員など)も、自店の標準(例えば売上高5万円ごとの仕込み量や適正人員など)を定めます。

さらに現在のP/Aの個人別レベルの考課(各作業の習熟度を見極め、現状の個人別作業レベルやサービスレベルを把握すること)を定期的に行い、期待レベルを定め本人にも納得させて教育トレーニングすることも必要になります。

これらを基にして、適正な時間数、適正なP/Aの組み合わせ(例えば新人とベテランを組ませ、サービスレベルを維持するなど)を行い、各自の勤務可能曜日や時間帯を調整して、週間でワークスケジュールを組みオペレーショ

ンを行います。

大変なように見えますが、店長などを中心に(中小店の場所は経営者自らが主導し)、とにかくできる範囲で決め事をつくり実施することです。

後は店舗を運営しながら調整すればよいでしょう。

ポイントは、必要最小限の人員でワークスケジュールを組むことです。

多少荒療治ではありますが、結果的には必要最小限の人員になるため各自が育っていき少数精鋭となります。

今まで何もしていない、させていなかったことに気づくことになります。

精鋭が少数集まってオペレーションして少数精鋭となるのではなく、このような状態が精鋭をつくり出すことになるのです。

また、固定時間制から変動時間制への勤務システムの変更は1カ月前よりP/Aには通達します。

さらに、労働契約書や短時間労働者雇入通知書を使用し、勤務時間欄には「労働時間は週間でワークスケジュールに明示」とすれば、契約更新時に変更できます。

それなら辞めますというP/Aも出てくる可能性もありますが、正社員がその分がんばって何とかするくらいの覚悟がなくては、改革は実施できません。

今すぐに決断し、やらざるを得ない店もあるはずです。

タイミングとしては2月、6月、9月~11月といった売上げが少なく、人の入れ替わりやすい時期がよいでしょう。

1-6P/A年間採用計画の作り方人件費コントロールの基本P/Aは各自が月間で稼働可能な時間数には限りがあり、その中で一定額以上の給与を目標として働いています。

従ってP/Aの労働時間数をコントロールするには、各月により大きく変動する売上高を予測し、各月ごとに必要なP/Aの適正人員を把握することから始めなければなりません。

恒常的な人手不足に対応するためには、これらの適正人員を基に年間で採用計画を立て、常に事前に手を打てるこ

とが要求されます。

それらを具体的に示したものが、人件費コントロールの基本とも言える「P/A年間採用計画表」です。

作成は以下のように行います。

①各月の月間計画売上高を算出する②P/A(1人当たり)月間目標給与÷P/A平均時給=P/A(1人当たり)平均月間稼働時間数③各月の月間計画売上高÷計画人時売上高=各月の月間計画労働時間④(各月の月間計画労働時間-社員月間労働時間)÷P/A(1人当たり)平均月間稼働時間数=各月のP/A必要人員数[具体例A]①〇月の売上計画15,000千円とする②P/A(1人当たり)月間目標給与65,000円、平均時給650円なら65,000円÷650円=100時間→P/A(1人当たり)平均月間稼働時間数③計画人時売上高10千円とすると15,000千円÷10千円=1,500時間→〇月の月間計画労働時間④正社員月間労働時間数を200時間×3人=600時間とすると(15,000時間-600時間)÷100時間=9人→〇月のP/A必要人員数この作成方法は人時売上高を基準としたものです。

1人当たりの売上高や生産性を重視する場合には、この方法が適切です。

P/Aが入れ替わる月や定着率が良くない店の場合、④で算出したP/A必要人員数からその月の在籍予定P/A人員数を引き、算出されたP/A不足人員数に10~20%増で、採用予定とすることも忘れてはなりません。

オペレーションを重視したP/A年間採用計画

フードサービス業などでオペレーションを重視する場合、人時売上高ではなく人時接客数を基準として「P/A年間採用計画表」を作成すると便利です。

また、売上規模が小さい場合や店内の動線が悪く人海戦術を取らざるを得ないような店の場合、人時接客数を基準としたほうが実務的です。

その場合、前述計算式の①、②は人時売上高の場合と同じですが、③、④が以下のように変わります。

各月の月間計画売上高÷客単価÷計画人時接客数=各月の月間計画労働時間[具体例A′]具体例Aを基準に客単価1,500円、計画人時接客数4人とすると③′15,000千円÷1,500円=10,000人→計画客数10,000人÷4人=2,500時間→〇月の月間計画労働時間④′具体例A同様に社員月間労働時間数を200時間×3人=600時間とすると(2,500時間-600時間)÷100時間=19人→〇月のP/A必要人員数AとA′では必要人員数が10人も異なってしまいました。

これは小売業などに比べてフードサービス業のほうが荒利益率は高いのですが、労働集約型のためです。

仮に具体例A(小売業)の荒利益率を35%、具体例A′の荒利益率を60%とすると人時生産性はAの荒利益売上15,000千円×35%=5,250千円Aの人時生産性5,250千円÷1,500時間=3.5千円単純には(Aの人時売上高10,000円×荒利益率35%=3.5千円)A′の荒利益売上15,000千円×60%=9,000千円A′の人時生産性9,000千円÷2,500時間=3.

6千円となります。

人時生産性では同じ売上高で100円の違いですが、使用する労働時間に大きな差があることが分かります。

しかも、フードサービス業のピーク時間帯は食事時間となるため、ランチタイムとディナータイムの間が5時間以上空くことになります。

また、営業時間も小売業と比較して長くなります。

このため30年以上前から、ピーク時間帯を主体にP/A比率を高め、人件費管理を行ってきたのです。

さらに小売業に比べP/Aの定着率も通常低いのです。

その結果、P/Aの短期戦力化のための教育トレーニングシステムや人件費コントロールのための稼働時間管理システムなどのノウハウが発達したのです。

この本では各章に分け、これらのノウハウやポイントを紹介しています。

人件費率を重視したP/A年間採用計画人件費率の管理を重視する場合や人時売上高、人時接客数といった指標がない企業の場合には③″各月の月間計画売上高×計画人件費率=各月の計画人件費④″(各月の計画人件費-各月の社員人件費)÷P/A(1人当たり)月間平均支給額=各月のP/A必要人員として同様に算出できます。

店長として営業形態や規模の大小に合わせ、算出方法を決め「P/A年間採用計画表」を作成してみましょう(図表❶-8)。

作成後は「P/A年間採用計画表」に従い、現状の在籍人員数や個人別の作業レベルを常に把握し、前月や前々月といった早めの時期に必要人員を確保できるように手配することが、店長の人件費管理に関する重要な職務となります。

第2章良いP/Aの集め方・選び方募集・面接・採用のポイント

2-1成功する募集活動のポイント

P/Aに対する認識を変えよう「パート」や「アルバイト」という呼び方には、雇用する店側だけでなく雇用される側にも、仕事に取り組む姿勢にどこか甘えが許されるような響きがあります。

しかし、今後のP/Aに対する概念は、「正社員と同じ作業をしているが1日の実働時間が短い従業員を指す」言葉として定着させる必要があります。

実際、時間当たりの支給額を20歳代の正社員と比較すると、P/Aのほうが高い場合も多いようです。

従って、雇用側と雇用される側の意識を革新するために、店内での呼び名を「パート/アルバイト」ではなく「パートナー(共同者、仲間)」「メイト(仲間)」「クルー(乗組員)」などに改める必要があります。

また、これらの呼び名をなぜ用いているのかをオリエンテーションや初期教育の段階で繰り返し教育することで、仕事に取り組む姿勢や意識に自覚を持たせ、P/Aだからといった甘えがなくなるようにしたいものです。

このことが、結果的に店内での人間関係づくりや担当部署に対する責任感などを醸成することにつながっていくのです。

P/Aを募集する際は、どんな手法を取るにせよ最低必要条件は、時給を地域の相場に合ったものとすることです。

できれば時給は、現状の地域の相場並プラス30~50円で募集し、良い人を選んで確保したいものです。

問題は時給が高いことではなく、その時給に見合った仕事をしてもらえるかどうかにあります。

各種調査からも明らかですが、パートの通勤時間は15分以内が60%弱、15分を超え30分以内が約15%となり、全体の75%が30分以内の通勤時間です。

アルバイトの場合も自店の立地環境や学校からの距離にもよりますが、30分前後が圧倒的に多いことが分かっています。

従って、募集活動は自店から時間距離で30分以内の地域と学生が通過する駅などの周辺を選び重点的に行います。

主婦パートの場合には、地域版新聞折り込み求人案内が一般的で一定レベルの効果は期待できます。

募集媒体以外の効果的な募集手段は①勤務するP/Aから、知人・友人、学生の場合は同じクラブ部員や後輩などを紹介してもらう②近隣のガソリンスタンドや美容院など、行きつけの店にお願いして、募集ポスターを掲示させてもらう③学校内の掲示板や町内・団地・公園などの掲示板を利用する④近隣のカルチャークラブや地域サークルへのアプローチ⑤団地内などの洗剤や化粧品などの無店舗販売の代表者に紹介を依頼する⑥面接での採用保留者や勤務者リストから拾い出しアプローチするなどがあります。

この中で最も有効で忘れてならないのは、①の友人・知人の紹介です。

ただし条件があります。

それは現在、自店に勤務するP/Aがその職場の人間関係や仕事自体に満足し、楽しさや面白さを感じているかどうかということです。

そうでなければ、とても紹介は期待できません。

アメリカではCS(顧客満足度)はES(従業員満足度)からとよく言われます。

要するに、P/Aを含め店で働く人々が、その店の労働条件や労働環境、人間関係や仕事自体に対する満足度が低ければ、顧客に対するレベルの高い個別サービスや気配りなどができるわけがなく、顧客満足度はおのずと低下するという意味です。

当然、自分の友人・知人を紹介する気にはなれないということです。

いずれにしても、どれか1つでは効果がないため、募集予算内で通勤時間30分を目安とし、最も有効な費用対効果が期待できる募集広告媒体の組み合わせ(メディア・ミックス)を計画し実施することが重要です。

2-2募集広告の作り方

●時給時給は地域の同業者の時給を調べ、相場の最低時給は確保し表示します。

また、単純に時給を決めるのではなく、大手ナショナルチェーンの時給体系などを参考に、曜日・時間帯別や仕事の種類別なども参考にして手当などを決め、表などにして分かりやすく表現すると効果的です。

開店募集などの際には、相場より20~30円高い時給で募集できれば応募も増え、良いP/Aを選別することも可能となります。

●勤務時間「1週間に2日から3日、1日4時間くらい働ける方。

日曜・祭日だけの勤務も可能」などとし、P/Aの都合に合わせた勤務が可能という印象を与えます。

ポイントはできるだけ多くの募集者を集め選考することです。

そのためには、自店の売上予測を平日、土曜、日・祭日などに分け、各曜日・時間帯別に売上高や来客数の予測を行います。

さらに発注作業や検品作業などの量(必要時間数)も割り出して、サービスおよび作業の必要人員のワークスケジュールを作成し、不足する時間帯と人員数を的確に把握する必要があります。

また、立地や業種・業態により、深夜や日・祭日など集めにくい時間帯があれば、時給と合わせて、より有利な条件で設定する必要があります。

●資格高校生、大学生などの表現はそのままでよいのですが、女性パートを募集する場合には、採用したい年齢の幅に多少、含みを持たせた表現を使った方が効果的です。

例えば、35歳までの人を採用したいと考えていても「35歳くらいまでの女性。

明るく、笑顔のすてきな方」などと表現した方が募集しやすくなります。

採用の際の印象で若々しく・さわやかに見えたら、年齢が多少上回っていても採用すればよいのです。

●仕事(職種)できるだけイメージの良い言葉で表現したいものです。

例えば、「洗い場」ではなく「キッチンヘルパー」としておけばイメージも広がり、洗い場だけでなく仕込みの手伝いもしてもらいやすくなります。

同様に店員ではなく「サービススタッフ」や「〇〇アドバイザー」などと表現すると、仕事に自分の個性が生かせるような感じになります。

また具体的に「店内イベントやフェアの企画にも参加できます」などと書き添えると、単なるP/Aの仕事より夢がふくらみます。

●その他の注意点できれば自店の特性を表現し、応募者にプラスに作用するキャッチフレーズを入

れます。

例えば、「この地域に初めてオープン!開店スタッフとして……」「働きながらキャリアと収入を手に入れる」「通勤便利!〇〇駅から〇分」「あなたのやる気に収入がこたえます」「あなたのスケジュールに合わせて勤務できます」「休みが多いから、仕事と家事の両立ができます」「職場隣接の施設託児所でお子さまをお預かりします」などが考えられます。

また、明るく・楽しく・ふれあいのある職場というイメージを伝えるために、「2カ月に1度はカラオケ大会やボーリング大会などで盛り上がってます。

あなたも仲間にすぐなれます」など、小さくても書き添えると好感が伝わります。

応募者はできるだけ多く集めたいものです。

そのためには、面接日時などをあまり限定せず「電話後、履歴書持参でお越しください」「電話後、すぐ面接します。

履歴書不要」としておき、電話が入った際に応募者の希望と面接担当者の都合を調整し、できるだけ早い機会に面接が行えるように配慮します。

店や面接会場が分かりにくい場所の場合は地図を入れると親切です。

会社名もロゴマークを用いて表現すると効果的です。

※開業時のP/Aの募集・採用・育成フローチャートを掲載してありますので、全体の流れを確認してください(図表❷-4)。

2-3良いP/Aの選び方

面接のポイント面接のポイントは、限られた時間にどれだけ応募者の適性と可能性を見いだせるかにあります。

そのためには場数を踏み、多くの面接を重ねて応募者の採用時の印象と採用後の仕事ぶりや段階的な成長度を比較し、自分自身のケーススタディとしてインプットを積み重ねることです。

これはと思った人がいい加減だったり、どうかと思った人が真面目でしっかりとしていたなどのケースはよくあります。

面接で大切なのは段取りです。

せっかく自店を選び、縁あって応募してくれた人ですから、店側も大切に扱いたいものです。

また、P/Aの応募範囲を見れば分かることですが、大多数が15~30分以内であり、自店の主要顧客の来店範囲である商圏と重なることを忘れてはなりません。

なぜなら、仮に結果として不採用の場合でも、主要商圏内の大切なお客さまの1人であるからです。

従って、店や面接者であるオーナーや店長の第一印象や応対が大変重要なポイントとなります。

面接の手順①面接する場所を決めておく自店のどの場所で面接するのがベストか、応募者にはどこに座ってもらい、面接者はどこに座り話を聞くのがよいのかも事前に考えておく必要があります。

例えば、よく応募者を面接者の正面に座らせますが、応募者によっては威圧感や緊張感からあがってしまい、本来の良さが短時間では現れないこともあります。

面接者と応募者がテーブルのコーナーを挟んで、L字形に座り必要に応じて目線を合わせられるようにするのも効果的です。

②面接は短時間にしっかりと行う応募者1人当たりの面接時間は15~20分くらいが適当です。

これより短くてはなかなか判断できません。

かといって長ければ面接に集中力や良い意味での緊張感を欠くことになり、応募者にも迷惑です。

③導入は応募に対する感謝と自己紹介から面接の導入は、「このたびはご応募ありがとうございました。

私が店長の〇〇で

す」と応募に対する感謝の意を心から伝え、自己紹介から始めます。

さらに相手をリラックスさせることを心掛け、パートなら今日店へ来るまでの交通機関や、学生アルバイトなら所属するクラブの話題など、身近で気軽なものから入ります。

④できるだけ応募者に話させ、しっかりと相手を見抜く面接のテクニックとしては、できるだけ「はい」「いいえ」で答えられる質問は避けます。

例えば、「当店には何回かお越しになったことがありますか」「当店の印象はいかがですか」など、できるだけ応募者に話をさせるような質問をして相手の言葉遣い、表現力、アイコンタクトや表情、態度などを観察します。

このときに、応募者が持参した履歴書や[応募者面接アンケート]を活用すると便利です(図表❷-5)。

⑤自店と仕事内容を分かりやすく説明する次に「それでは当店の営業や募集している仕事の内容を簡単に説明します」と、自店に関することや扱い商品の紹介、仕事内容、時給や待遇面などを具体的に分かりやすく伝えます。

このときに、難しい専門用語や店舗オペレーションなどの英語表現を用いて応募者を戸惑わせたり、あいまいな仕事内容の説明から相手に不信感を抱かせないように注意することが大切です。

⑥応募者に質問する機会を与える最後に「一応説明させていただきましたが、そちらから何か聞いておきたいことがありますか……」と相手に質問させる機会を与えます。

もし、質問があれば1つずつ丁寧に答えます。

このときに店長の人間性や誠意が応募者に伝わり、信頼感と安心感が生まれることが多いのです。

⑦最後にもう一度、応募に対する感謝の意を伝える。

採用の場合はその場で伝えてもかまいません。

その際に「今、お話をうかがっていても明るい笑顔がすてきですし、前のご経験からも……」など、応募者の面接の印象や適性の可能性などを具体的に伝え、採用した理由を説明します。

このことで応募者は納得しますし、自分が選んだ店で働くという意欲がわきます。

新規開店を控えた面接などのように、多くの候補者から選別が必要な場合や、保留や不採用と判断された場合には、原則として翌日連絡を取ることを約束して連絡時の応募者の都合を確認します。

いずれにしても、最後に今回の応募に対する感謝を再度伝え、面接を終わります。

⑧面接で決してしてはいけないこと面接の途中で不採用と判断した場合でも、応募者にそのことを悟られては絶対にいけません。

応募者に対し大変失礼ですし、面接者の人格も疑われます。

若い店長や未熟な店長の場合に起こしがちな過ちですが、面接を急に省略したり、途中から応対が雑になり応募者に対する言葉遣いや態度がいい加減になることは、絶対に避けなければいけません。

なぜなら、応募者は最も近くに住む大事なお客さまの1人なのです。

面接での確認事項●本籍と現住所学生アルバイトの場合、地方出身者か地元かを確認します。

地方出身者の場合、夏休みなどの長期休暇に実家に帰り、当てにできないことがあるからです。

また、地元でもアパートや寮などで暮らしている場合、働く目的(家賃の足しなど)や門限の有無なども聞きます。

パートの場合も夏休みなど帰省の可能性を確認

する必要があります。

●家族からの承諾高校生の応募者の場合は、家族の承認は特に重要です。

家族欄から両親や家族の話をしながら、アルバイトに対する考え方や応募したことを知っているかなどを聞き確認します。

●通勤の手段と時間自宅や学校から店への交通手段や所要時間を聞き、無理がないかの確認が必要です。

また、家庭や寮の門限や勤務予定時間によっては、帰宅時の交通手段なども聞いておきます。

さらに店から通勤手当を支給する範囲かどうかを判断し、交通費の支給の有無と理由を明確に応募者に伝えます。

●勉強時間や試験期間、クラブ活動など学生アルバイトの場合、勉強に必要な時間の割り振りや授業の曜日による変動など聞いておきます。

また、同じ学校からの採用が多いと試験期間も重なり、ワークスケジュールに支障を来します。

採用に当たっては注意が必要です。

さらにクラブ活動などに所属している場合、不都合な曜日と合宿予定なども聞いておきます。

面接チェックシートの使い方[面接チェックシート]を作る場合、とかく抽象的なチェックポイントとなりがちです。

しかし、内容や表現は図表❷-6のように、具体的なレベルに落としこまなければ、実際の面接では活用できません。

チェックすべきポイントは各項目を見れば分かりますが、主要な項目の目的と要点を述べてみます。

③の髪形・化粧は女性の場合には、採用後、特に問題となりやすいものです。

面接時に自店のハウスルール(店内規則)などで決められた「身だしなみ」規準に抵触する場合、具体的に指摘して採用後に直せることを確認する必要があります。

この時点で注意しておかないと、後では取り返しがつきません。

それができないと言った場合には当然、採用しないことです。

最近は、男性でも髪を染めたりピアスをしていたりする場合もあり、同様の注意が必要となります。

⑥の「あいさつ」や「ハイ」の返事も重要です。

面接時にできなかったり、声が小さいようでは、採用後に自分からあいさつしたり大きな声が出ることは少ないものです。

また、声の大きさは応募者の活力や快活さを一番よく表現します。

⑦の「若々しいか、キビキビしているか」は、面接時の歩き方やいすへの座り方、姿勢や動作などで判断します。

年齢が若くても姿勢や歩き方が弱々しく、顔色が悪く表情が乏しいようではサービス業には向きません。

⑧の「やる気はあるか」は質問への受け答えで判断します。

そのためにも「なぜ、当店を選んだのですか」「以前にこの店を利用したことはありますか」「自分の良い所を3つあげてください」などと質問して、応募者の反応を見ることが大切

です。

前述の面接アンケートの項目も応用できます。

自店へ応募した明確な理由が、利用して楽しそうだったから、自分に向いていて興味があるなどと答えたら、より具体的にどの点が……、とさらに聞き出し、前向きに表情豊かに応答できるなら適性はあると判断してよいでしょう。

⑩の本人の希望している職種や条件は、逆に応募者の要望をしっかりと聞き出し、対応しなければなりません。

特に希望する月額や働きたい時間帯などは、いい加減にしていると採用後に初めの約束と違うなどのトラブルとなり、ほかのP/Aへ与える影響も大きくなります。

できないことは、面接時にはっきりと伝えるようにしなければなりません。

例えば、本人が平日の夜の動務だけで月間5万円は最低欲しいと言った場合、「現状の希望時間帯で月間5万円は、以前から勤務するほかのP/Aもいるため難しいですね。

平日だけで3万円までは保証できますが、取りあえず日曜・祭日なら長くワークスケジュールが組めるので2万円の不足分が補えます。

いかがでしょうか……」と、店の都合を優先して交渉することも面接では重要です。

チェック項目の残りは、自店用に独自のチェック項目を作成し評価するとよいでしょう。

採点は、YESの項目数を質問数で割れば100点満点で採点できます。

開業時に応募者が多く、後で採用を決定する場合などに便利です。

また、評価は寸評でよいから文章で残しておくと、後で選別する際に、各応募者のことを思い出しやすくなります。

大切な面接後のフォロー面接後、明らかに不採用の応募者以外は保留とするとよいでしょう。

電話で「昨日はご応募ありがとうございました。

あなたの希望している時間帯がちょうど集中しているため、先に応募のあった方から採用することにしました。

当店ではせっかくご応募いただいたので保留という形を取り、その時間帯に欠員がでましたら直ぐに連絡いたしますが……。

もちろん、連絡した時にほかにお勤めの場合は当方であきらめますので……」とし、保留者リストを作成して登録しておきます。

このようにして保留者リストをしっかり保管しておけば、急な欠員が発生した場合でも改めて募集費をかけず、保留者に順に電話し確保できる可能性は高くなります。

また、採用者に対しては初出勤の日時と店の誰を訪ね、店のどこから入るのか、靴や学生証や銀行の口座番号など個人が持参する物も連絡します。

初めて来る人はそれなりに不安がつきものです。

誰を訪ねるかを明確にしておくと安心します。

採用者に対する受け入れ段階でのポイントは、初日の対応とオリエンテーション、初期教育にあります。

初日の対応とは、本人の名札やタイムカード、ユニホームの準備を指します。

オリエンテーションとはオーナーや店長が新人のP/Aに対して自店の経営に対する考え方や、地域のお客さまへ商品やサービスを通し、どのように喜んでもらいたいのかを熱心に語りかけることです。

自店の経営哲学や経営理念、自分の商売にかけるロマンなどを語ります。

次にハウスルールを説明します。

具体的には店長や先輩に対するあいさつの重要性やユニホームに着替えてから出勤時のタイムカード打刻・ユニホームを着用したままでの退勤時の打刻、急な遅刻や欠勤する際の連絡の仕方、ワークスケジュール表の見方などとなります。

さらに雇用契約書(第9章図表❾-9)を作成し、時給の説明や支払日、支払方法、休憩時間や食事、交通費の有無など必要事項を説明します。

また自店では採用登録簿を作成し、緊急時の連絡先や学生証のナンバー、ユニホームなど店からの貸与物やサイズなども控えておくと便利です。

初出勤日の前にオリエンテーションの日を、採用者の都合を調整して設ける企業もあります。

2~3時間でここまで行ない、初出勤に備えるのです。

原則として時給・交通費は支払いません。

まさしく採用者のやる気を再確認する入社のためのオリエンテーションだからです。

これらが終了した後に、基礎訓練として発声練習やサービスの基本用語と用い方、待機の姿勢など基本動作のトレーニングに入ります。

その後、作業やサービスのトレーニングに入り、段階的に継続して育成していくことが大切です。

2-4採用が決まったら、これだけはそろえたいモノと手続き

①雇用契約書(第9章❾-9参照)短時間労働者法(通称パートタイム労働法)が平成5年12月に施行されています。

賃金や労働時間、休憩などの労働条件は書面で採用時に明確に伝える必要があります。

P/Aの有給休暇なども発生します。

規模や業種にかかわらず、労働基準法は順守できるよう努力と工夫が必要です。

②ユニホームユニホームで店の印象や店格が変わります。

P/Aが自分から着たがるような、店のコンセプトにあったユニホームを採用することも大切です。

予算や適当な物がなければ、業態によってはデザイナーズブランドのTシャツやエプロンでもかっこうはつきますし、モダンなユニホームもあります。

地域で話題になる可能性も大です。

③ネームタグ(名札)初出勤時に自分のユニホームや名札が用意されていれば、店に対する信頼感も高まります。

身だしなみの基準やその他のハウスルールに対するモラルも醸成できます。

名前は汚い字でいい加減に書くのではなく、パソコンなどを使い同じ書体できちんと作り、準備しておきます。

④タイムカード学生アルバイトに、お金を稼ぐ社会人としての自覚を促すには、タイムカードは分かりやすいツールの1つです。

ネームタグ同様、しっかりと準備して初出勤に備えたいものです。

また、初めてのアルバイトのために、オリエンテーション時の打刻練習用のタイムカードを1枚作っておくと便利です。

⑤ハウスルール(店内規則、第3章-1参照)ハウスルールは規模にかかわらず必要です。

それは、公平で明るく楽しい職場づくりの基本であり、トップ(店長)の経営に対する考え方や姿勢の自己表現でもあります。

できれば、印刷物としてサービスハンドブックに載せたり、拡大コピーしてバックヤードや休憩室にも掲示します。

⑥身だしなみ基準新聞紙大の紙にイラストで描いた身だしなみの自店基準を2枚作り、従業員の出入口と休憩室に掲示すると効果的です。

写真よりもイラストのほうが基準を明確に示せます。

身だしなみはハウスルールの基本原則の1つであり、これが徹底できないようでは、高品質な商品やサービスが生まれるわけがありません。

身だしなみは、クレンリネスの基礎でもあります。

⑦等身大の鏡身だしなみのチェックには、大きな鏡があると便利です。

バックヤードにあれば仕事に就く際の身だしなみチェックだけでなく、新人P/A入店時のサービス基礎訓練の基本動作や、姿勢のセルフチェックにも活用できます。

また、一番大事なスマイルの練習も可能です。

「身だしなみチェックシート」を作成し、店長が1つずつ基準に合っているかチェックする企業もあります。

⑧採用登録簿(図表❷-8参照)P/Aの人事管理も重要です。

何かあったときにも困らぬよう、個人別に採用登録簿を作成すると便利です。

緊急時の連絡先や学生証の番号、給与の振込先銀行のナンバー、店からの貸与物やユニホームサイズなどを記入します。

履歴書も一緒に綴じておくと、カウンセリングの際や退店時など、後で何かと役立ちます。

⑨外国人労働者に関する注意事項近年各地で増加している外国人労働者の場合には、「就労VISA」の取得が必要です。

面接時に「外国人登録証明書」(90日以上在留する外国人)の提出を求め、写真と期限のチェックを行い、コピーを取り市区町村の担当課へ確認することです。

不法就労は罰則もあり、注意が必要です。

留学生の場合には「資格外活動(アルバイト)の許可」を入国管理局から受ける必要があります。

この場合でも、勤務許可時間は1週28時間以内(長期休暇中は1日8時間以内)となります。

第3章人財育成の基礎オリエンテーションと初期教育・トレーニング

3-1人財育成の第一歩オリエンテーション

新人P/Aへのオリエンテーションを必ず実施しよう新人P/Aが入店するとすぐにトレーニングを実施しがちですが、これが大きな間違いなのです。

本部で採用したP/Aの場合でも、確認の意味も含め、店舗で改めてオリエンテーションする必要があります。

新人P/Aを有力な「人財」として戦力化できるか、単なる「人数」で終わらせてしまうかのポイントが、このオリエンテーションにあるのです。

担当は、中小店の場合にはできれば経営者、少なくとも店長が当たる必要があります。

しかし、難しく考えることはありません。

内容的には自店の商売に対する考え方や目指していること、地域社会にどのような形で貢献したいかなどを分かりやすく、自分の言葉で熱く話せばよいのです。

また、自店の歴史や具体的にお客さまから喜ばれた実例などを示して見せることができれば、オリエンテーションがより効果的になります。

新聞や業界誌での紹介記事、創業時の店の写真や当時の地域の様子を示す写真なども併せて見せれば、よ

り効果が上がります。

簡単なアルバムやカタログファイル風にまとめると、ビジュアルで効果的に表現でき便利です。

新人P/Aへのインパクト(好印象)も強く与えることができます。

このように、オリエンテーションの本質は動機づけにあるのです。

さらに、ハウスルールについて要点を説明します。

給料の締め日や計算方法、支払い日はもちろんのこと、出勤時間の厳守、仕事場や休憩室へ出入りする際のあいさつ、店からの貸与物の管理など、この時点で徹底することが教育トレーニングを成功させる大きな要因となります。

最後に店内見学(ストアツアー)と案内を実施し、職場に慣れさせるとともに上司や先輩P/Aを紹介します。

新人P/Aと上司や先輩P/Aは、お互いに明るくあいさつし自己紹介を行います。

大切なことは、分からないことや困ったときに誰に相談したらよいかを伝えることと、安心して働ける労働環境を、店全体を巻き込んでつくることなのです。

これらのことは店の規模にかかわらず、どんなに小さな店でも実施しなければなりません。

新人P/Aに社長や店長が、「わざわざ自分のために時間を割いて熱心に店や仕事のことを語ってくれた。

よい店を選んだ。

私もしっかりとやらないと…」と感じてもらえれば、オリエンテーションは大成功です。

オリエンテーションで教えるべき内容については、図表❸-2の「採用時基礎教育(オリエンテーション)チェック表」に掲げてあります。

以下の点を確認しながら進行してみましょう。

①の「採用登録簿」(第2章図表❷-8)の記入と説明に関しては、内容を自社に合わせ作成し実施します。

②の自店や業界が期待するP/A像については、トレーニー(新人)に質問しながら進行します。

例えば「お客さまはどんなことを期待してご来店すると思いますか」、「その通りですね。

それではそのお客さまに対してどんなサービスが望ましいと思いますか」、「それでは当店のお客さま第一主義について説明します。

……」などです。

大切なことは、対象者のレベルに合わせ分かりやすい言葉や例を挙げて説明することです。

③は第7章1に出てくる「信頼のブランドを築く企業文化」を先に読むと、トレーナーとして伝えるべき内容と意味がよく理解できます。

④~⑫と⑭⑮は備考にある内容をポイントとして説明します。

⑬は特に重要です。

これはフードサービス業の例ですが、どの業界にも必ず毎日発生し、量も多く時間のかかる単純な作業でどちらかといえば皆が嫌いがちな「汚れ仕事」があるものです。

それらの仕事で危険がないものを、このトレーニング開始初日の段階で教え込み、少なくとも1~2時間経験させるのです。

この結果、新人にとってそれらの作業は、やって当たり前のこととなるのです。

仮に1週間経ってから教えようとしても、「それは私の仕事ではありません……」といったことになりかねません。

ディスカウントストアなどでは段ボールを主体とする廃棄物の分別、書店では書籍の返品作業、酒店では空ビン処理や自動販売機への商品補充がこれに当たります。

3-2教育トレーニングの基本である

OJTを正しく行う次は、いよいよ教育トレーニングです。

基本はまず、マンツーマン(1対1)で現場の具体的な作業をトレーニングし、新人がそれを1人でできるようになるまで教えるということです。

トレーナー(教える担当者)は新人P/A(トレーニー)に自己紹介し、これからトレーニングする店内での作業の全体から見た位置づけや目的、具体的な作業の流れを口頭で説明します。

そして、具体的にトレーナー自身が説明した正しい作業のやり方の手本を示します。

また、なぜそうするのかも必ず説明します。

次に同じ作業をトレーニーにやらせてみます。

当然、トレーナーのようにうまくはできません。

そこでトレーナーは、トレーニーが間違った手順や用具の使い方を優しく具体的に手直しします。

また、ポイントやコツをこのときに教え、トレーニーが理解しやすくすることも重要です。

そして、もう一度トレーニーに同じ作業を実際にやってもらいます。

できれば具体的に何が良かったのかを褒め、次のステップに進みますが、できなければ始めに戻り手本を見せ、トレーニーができるようになるまで繰り返します。

重要なのは、この段階では正確さを優先することです。

トレーニーが実際に現場で毎日、同じ作業を繰り返せば、スピードはおのずとついてきます。

トレーナーは、トレーニーが慣れてきたら目安となる各作業当たりの標準時間は示しますが、この初めの段階で要求する必要はありません。

3-3接客の基本用語・動作のトレーニング

サービスの心と形接客の基本用語・動作のトレーニングに当たっては、トレーニーに初めからサービスの心を理解させようとしても難しいことが多いものです。

従って、形から入ることが重要です。

1つの定型動作を、繰り返し繰り返しトレーニングする内に、その動作の意味が真から理解できればサービスの心も分かり、応用もできるようになります。

接客時の言葉遣いなどは学生アルバイトにとっては、すぐには慣れにくいもので

す(図表❸-3)。

例えば、「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」はあいさつの基本として、頭を下げたときに一呼吸し、静かに上体を起こすようにトレーニングします。

トレーニーは当初、何のことか理解できずにいるでしょうが、繰り返しトレーニングすることでお客さまの前でも、頭を下げたときに一呼吸し、静かに上体を起こすことができるようになります(図表❸-4)。

完全にできるようになったところで、今度は「ありがとうございました」を言う際、静かに上体を起こすときに「お客さまの心に自分の心を添えるつもりでしてみなさい」とアドバイスします。

トレーニーは実践で何回も繰り返すうちに、「お客さまへの感謝」というサービスの心まで理解できるようになるのです。

このレベルまで到達すると応用が利くようになり、お客さまへのちょっとした動作や態度にもサービスの心が表現されるようになるのです。

ディズニーランドでは、子供と接するときに目線を合わせるため姿勢を低くすることが原則(定型)です。

また、写真を撮っているお客さまに「お写しいたしましょうか」と声を掛けることがマニュアル(定型)となっています。

その繰り返しを通して子供やお客さまの喜ぶ顔を見て、自らもホスピタリティ(心)を理解するようになるのです。

この場合も形から入り、心が理解され、応用ができるようになったわけです。

サービスの要素は「態度」、「表情」と「言葉遣い」の3つです。

これらはすべて自分自身を表現することになるのです。

従って「サービスは人格である」と言うことができます。

毎日の接客サービスを通して働く人々の人格が磨かれ、すべての人に対して温かい愛の心で接するよう努力する店が増えれば、サービス業は正にホスピタリティ・ビジネスということができます。

P/Aは接客マニュアルを基本(最低限のレベル)として育成します。

接客サービスに関しては、このことが短期間で戦力化を図るための基本となります。

定型を完全にマスターし経験を積むことで、第7章のテーマでもある個別対応のできる、マニュアルを超えた心からのサービスが提供できるようになります。

その結果、お客さまの心をとらえ固定客を増やし、来店頻度を増加させることになるのです。

さらにP/Aにはサービスの楽しさ、やりがい、誇りなどを見いださせてくれるものです。

接客の基本用語と動作のポイント[接客サービス8大基本用語]の使い方を分かりやすくするため、レストランでの使用例でまとめてあります(図表❸-6)。

トレーナーはポイント・イメージをしっかりとトレーニーに理解させた上で、声と動作をつけてOJT(OnTheJobTraining)します。

第4章のステップ別サービス基礎トレーニングチェック表「基本ステップ」(図表❹-10)も併せて見ると基礎トレーニングの理解が深まります。

また、第4章ではファミリーレストランから一クラス上の位置づけにある、ファミリーディナー・レベルのレストランを想定し、仕事の流れに沿って、接客用語・動作に関するよりよいサービスのポイントをマニュアルとしてまとめてあります(図表❹-5)ので、参照してください。

3-4コーチングを活用したP/Aトレーニングの勧め

コーチングを活用したトレーニングの実践優秀なトレーナーはトレーニングに際し、必ず次の4ステップを実践します。

トレーニングの4ステップ1.導入……トレーニーを習う気持ちにさせるトレーニングする内容についてトレーニーに興味を持たせることです。

そのためには上手に質問したり、関連する知識やうんちくを話して聞かせることも大切です。

2.提示……トレーナーがやって見せるなぜそうするのかを解説しながら手本を見せ、話し合いながら正しい手順を確実に教えることが重要です。

評価……的確にフォローアップするトレーニーがどのくらい理解しているか、できたかを具体的にチェックし、フォローアップに結びつけます。

それでは各ステップのポイントをコーチングとコミュニケーションにも触れながら、詳細に説明してみましょう。

●1・導入トレーニーをリラックスさせることが重要です。

例えば生まれて初めてアルバイトをする高校生がいます。

採用が決まりお客さまではなく初めて店に勤めるとき、どんな気持ちか想像してみてください。

もちろん張り切ってはいるでしょうが、反面やっていけるかなという気持ちもあります。

さらにどんな人が一緒に働くのか、自分でもできる仕事なのか、店長は恐くないか、今日はどんなことをするのだろう、何時に帰れるのか、怒られたらどうしよう、おいしいものが食べられるのかなど、やる気と不安が交錯しているのです。

実際トレーニングを受け、タイムカードを押すことでさえドキドキするものです。

それでは、トレーナーをはじめ店舗の従業員はどうしたらよいのでしょうか。

基本は相手の立場になり、自分ならこう対応してほしいと思うやり方で相手に接することです。

これを[ゴールデンルール]といいます。

また、初対面では明るく、元気にさわやかにこちらからあいさつしたいものです。

MOT(Momentoftruth)という有名な言葉があります。

「真実の瞬間」という意味ですが、人は初めて会った最初の15秒間で相手に対する認識(どんな人物かと見定めること)が決まると言います。

一生の中で後にも先にもない、ただ一度だけのお互いの出会いだから、真実の瞬間と呼ぶのです。

第一印象が悪いと、後々それを払拭することは難しいのです。

今日から一緒に働く仲間です。

だからこそ、まず最初に先輩のP/Aから素晴らしいあいさつをすべきなのです。

また、店長やトレーナーは新人の名前をしっかりと覚え、〇〇さんと呼びたいものです。

あいさつにしても名前を呼ぶときも、スマイル&アイコンタクトを忘れてはいけません。

ホスピタリティ・ビジネスに従事する人の基本です。

これらのことを先輩のP/A全員が店舗ですれば、新人(トレーニー)の不安はいっぺんに解消します。

店に対するMOTも好印象が残り、働くことが楽しくなります。

これらはトレーニーに対し、店長が行うオリエンテーションで行われるストアツアーで、全P/Aが心掛けるべきことです。

また、店長は単に名前を紹介するだけでなく、新人と先輩P/Aを相互に[あいさつプラス一言]を添えた自己紹介をさせるとよいでしょう。

これらのことによりトレーニーは、それぞれの基礎トレーニングをリラックスして安心して受けることができるようになります。

次に実際に行うトレーニングについての全体から見た流れや重要性を説明します。

例えば「水グラスを持つ位置は3分の2より下を持ち、お客さまの右前に置きます。

山田さん、どうしてだと思いますか?」といったようにするのです。

簡単に見える作業やサービスの一つ一つが、実は重要な意味を持っていることを理解させ、興味をわかせるようにします。

●2・掲示ここで重要なことは、トレーナーはモデル作業者としてマニュアル通りの正確な手順や道具の使い方をしなければなりません。

トレーナーとして、大切なのは一流の模範演技を見せることです。

トレーナーが二流の演技では、トレーニーは四流以下の作業しかできません。

あいさつや身だしなみ、時間厳守、清掃作業など、これらのことはトレーニング期間中のすべてに言えることです。

基本的なことや簡単なことこそ大切に、高いレベルの模範を基準としてトレーニーに見せ続けることです。

長い作業の場合には、一つ一つの手順を区切り、確実にトレーニングすることが大切です。

いっぺんにたくさん教えても、何も残らないものです。

従って、重要なポイントを絞り込み教えることです。

例えば、先ほどの水グラスの提供であれば、[①氷は3、4個、水は8分目まで注ぐ②グラスを持つ位置は3分の2より下③お客さまの右前に音を立てずそっと置く]と一つの動作や作業に対し3点を強調し、方法や手順の理由も説明して教えると、分かりやすく印象にも残るものです。

なぜが分かっていると、トレーニーはその作業やサービスをマニュアル通りに継続して行います。

そのためにもタイミング良く質問し、トレーニーに考えさせ回答させます。

このことで興味が継続でき、仕事の面白さも実感できるものです。

重要なポイントは、トレーナーだけが1人でしゃべりすぎないことです。

また、この段階では必要最小限の専門用語を使います。

トレーニーにその作業やサービスの意味を正確に理解してもらうことが、ステップ2の掲示の目的です。

●3・適用実際にトレーニーにやってもらいます。

その際に先程トレーナーが説明した3点を、作業やサービスをしながらトレーニーに解説してもらいます。

ポイントは手順・方法・道具の使い方とその理由です。

この結果、トレーナーはトレーニーの理解度を確認できます。

ここで大事なポイントがあります。

それはどんなにトレーニーの覚えが悪く、手順がぎこちなくとも顔に出したり、嫌味や批判を言わないことです。

もしそれをすれば、トレーニーからの信頼はいっぺんに吹き飛んでしまいます。

トレーナーとして大切なことは、常に自分の説明や教え方に問題があったと反省する姿勢です。

人に教えることは、その人から(自分自身のことを)教わることであり、結局は自分の成長につながることなのです。

もし、3点のポイントや手順やその理由があいまいだったり間違っていれば、トレーナーはきちんと一つずつ説明し、正しい手順に訂正します。

その際のポイントは、あれが違う、これが駄目といった否定から入らず、一つでも良かったことを先

に挙げ真剣に褒めることです。

トレーニーの潜在能力を信じ「認める・励ます・褒める」ことは、コーチングの基本姿勢です。

コーチングとは欧米で実践され成果を上げている、マネジメントとコミュニケーションに関するスキルです。

相手の自発性や自主性を促し、行動に結びつけるための技術です。

近年、日本でも業種に関わらず大手の各企業が盛んに取り入れています。

ホスピタリティ・ビジネスでは特に有効なスキルであり、店長やトレーナーとして部下やトレーニーに接する際の基本姿勢でありメソッドです。

訂正や是正されることは誰でもプライドがあり、不愉快なものです。

従って、相手の話をしっかりと聞いた上で、本人に気づかせるようにトレーナーは的確な質問を展開すべきです。

これもコーチングの基本です。

なぜなら、本人が自主的に気づき自ら訂正や是正することができれば、一番プライドを傷つけずにすむからです。

従って、人前で訂正や是正をすることは絶対に避けるべきです。

トレーニーが自ら思いつくようにするには、原則として拡大質問・未来質問・肯定質問の形式をとります。

拡大質問とは限定された答えではなく、さまざまな答え方ができる質問です。

先ほどの水グラスの例なら、「お客さまに満足していただくためには、水と氷の量はどのくらいが適当と思いますか?また、客席で提供するにはどんな持ち方や置き方がいいと思いますか?」となります。

ちなみに使ってはいけない対極にある特定質問であれば「水の量は7分目で正しいか、間違いか、置く位置は右か左のどちらか」といったようにハイやイイエで答えられたり、相手に考えさせる余地がなく、答えが初めから限定されるものです。

これでは自主的に考えるまでには至らず、行動にも結びつきません。

また、未来質問であれば(今日実施したトレーニングが仮に覚えが悪く、うまく行かなかったとしても)、「山田さん、明日のトレーニングでは今日の復習もするけど、他にチャレンジしたいサービスや作業は何かな?」となります。

対極にある過去質問では「一昨日も昨日も覚えていなかったけど、どうしてだめだったのかな」といった、過去形となる質問です。

これでは明日に向かっての自発的な努力や工夫も生まれません。

肯定質問とは「このトレーニングはどこまで分かっている?」となります。

対極の否定質問では否定形のないが入ってきます。

「このトレーニングはどこが分からない」となります。

これでは初めからマイナスの暗いイメージが浮かんでしまい、前向きなプラス発想にはなれません。

これらの質問を繰り返し、できたところを「認める・励ます・褒める」ことで根気よくトレーニングを進行します。

難易度の高いトレーニングでは、ポイントとなる手順や方法、理由を何度も繰り返し説明させ、一人で正しく理解しできるようになるまで反復練習をすることです。

●4・評価できることを確認できたら正確性を優先して、取りあえずトレーニーのペースで繰り返しやらせ続けます。

毎回、正確に完全にできるようになったら標準時間を徐々に意識させ、目標設定をして日々スピードアップを図ります。

また、トレーナーはどんなに簡単な質問でもしやすい雰囲気を常につくり、真剣

に誠意をもって応えます。

そのためには笑顔を絶やさず、明るい表情と態度を意識してつくり、話し掛けることです。

相手が自分に何を求めているかを聞き出したり、察知することも大切です。

トレーニーが話し掛けてきたら、一生懸命に心と眼と身体を相手に向け傾聴することです。

この傾聴もコーチングの基本です。

相手の話にうなずいたり、積極的にコーチングの基本を生かした3つの質問形態であいづちを打ったりします。

特にアイコンタクトを保ちながら、相手の態度と表情を観察します。

それは相手の理解度を察知するためです。

もし、混乱やあいまいな点があれば、トレーニングの手順や内容をゆっくりと言い直したり、別の言葉で言い換えたりします。

フォローアップとは、どのような仕事ぶりかを本人に正しく伝えることです。

よくできていることを正しく伝えれば自信となります。

教育トレーニングを通し、トレーナーは常にうまくできたら褒めることを忘れてはいけません。

また、できなくても何度も同じことを教え直すがまんや丁寧さが必要です。

この繰り返しが互いの信頼関係を深め、コミュニケーションを良くして人間関係を円滑にするのです。

何回も教え直してくれるトレーナーの情熱や仕事に対する姿勢にトレーニーは感謝し、作業がマスターできたとき心から褒められることで、喜びをトレーニーとトレーナーが共有し、共感が生まれるのです。

このことは単純な作業教育から、より複雑な判断や技術、経験を要する高度なサービスや作業教育まで一貫して必要な教育トレーニングの本質でもあります。

人間は誰でも人から認められ、自分がそこに必要な存在であると確認したいものです。

褒めるという行為は相手の存在価値を認める重要な人間としての行動なのです。

できるだけ具体的にどこが良かったかを褒めると、トレーニーも素直に納得して喜んでくれます。

そして、さらに次のステップ(トレーニング)へと挑戦意欲を自主的にわかせることができるのです。

人は教育トレーニングで育つのではなく、正しい評価によって育つことを忘れてはなりません。

そしてトレーナーであるあなた自身も、いつの間にか一回り大きく育てられているのです。

このトレーニーの無限の可能性を信じ、教え合い一緒に育つことこそコーチングを活用したトレーニングの本質なのです。

参考文献:「部下を伸ばすコーチング」榎本英剛著PHP研究所発行

第4章マニュアルと教育トレーニングプログラムの作り方 使いやすい・分かりやすい・教えやすいが基本

4-1マニュアルの基礎知識

「マニュアル」ではなく「マニアウ(間に合う)」でよい多店化を目指すと、自社でも各種作業マニュアルが必要になってきます。

また、それらを活用してP/A比率を高め、より効率的な経営をしたいと考える経営者や中堅幹部は多いものです。

その際に一番手っ取り早い方法としてよく行われているのは、同業他社のマニュアルを入手しコピーして、必要と思われる個所を自社用に書き換え導入してしまうことです。

しかし、結果は[三日坊主]か長くて1週間で使われなくなる(機能しないことに気づく)ことが多いようです。

その主な理由は、マニュアルの内容が一部は使えても全体としては自社の作業内容に即しておらず、つじつまが合わないからです。

しかも、自社には運用のための仕組みや継続して活用するためのルールがないからです。

要するにトータルシステムになっていないのです。

また、トップが本部要員の中から優秀な担当者を抜擢して作ったマニュアルも使われないことが多いものです。

それは労力と時間を掛けて自社用に制作したつもり

でも、内容が優秀(理想的)過ぎて、現場の実態からかけ離れたものとなっていたり、ただ文章が長々と続くだけで内容や表現の仕方に工夫がなく、マニュアルの仕様や形態としても不適切だったりするためです。

ところがマニュアルがないと思っている中小店でも、現場のバックヤードやレジの裏側などに張ってある簡単なメモや表は全員が便利に用い、継続して使われています。

それは必要に迫られ、間に合わせで作ったため簡素化されており、必要な場所に張ってあるからです。

「マニュアル」ではなく「マニアウ」でよいという意味はこの辺にあるのです。

使われてこそマニュアルというわけです。

このことは実はマニュアルの本質を示しているのです。

マニュアルの本質とは使いやすい・分かりやすい・教えやすいことです。

マニュアルとは本来「便覧、ハンドブック、手引き」といった意味であり、内容や形態も使いやすく、使われやすくなければならないものなのです。

店舗での1日のオペレーションや各作業、新人P/Aへの教育トレーニングの中で実際に活用されてこそ、その真価を発揮するのです。

それでは自社用の「使いやすい・分かりやすい・教えやすい」マニュアルの基本的な作り方をまとめてみます。

また、表現方法のアイデアや実際の運用と継続のための仕組みづくりも併せて提案します。

自社で埃をかぶっているマニュアルがあれば、これらを参考にあらためて見直し、作り替えてみることをお勧めします。

マニュアルの作り方マニュアルは現場での各作業を標準化し、単純化することによりシステム化を図った具体的な作業指示書ということができます。

従って、現場の実務担当者が集まり作業ごとに検討し、取りあえず仮決定する必要があります。

複数店で営業している場合には、各店ごとに各作業の最も良いやり方を検討させた後、各店の代表を選出し一堂に会します。

そして現場で実際に行っている各店流の作業方法や手順を進めながら、相互チェックして最も良いやり方(ベストワン・ウエイ)を決めるのです。

このベストワン・ウエイを見つけることを「標準化」といいます。

できれば清掃作業や仕込み作業などは、各作業の適正な時間(標準時間)も仮設定するとよいでしょう。

このことが結果的に新入社員やP/Aをトレーニングする際の目安となります。

また、各作業は新人でもできるように分かりやすい方法・手順・道具を選び、簡素化した仕組みにします。

このことが単純化なのです。

仮決定したマニュアルは、正式に全店に導入する前にモデル店を決めテスト導入を行ってみる必要があります。

その際にポイントとなるのは、できるだけ各作業を知らない不慣れな新人で試すことです。

そして仮決定したマニュアルのスムーズに行えた点、分かりにくい点、当初予想したレベルに到達するまでのトレーニング必要回数や時間なども測ってみることが必要です。

これらのことを繰り返す結果、不

備な点が改正され実態に即した、より良いマニュアルの作成が可能となるのです。

これらのマニュアル作成作業はできれば自社でプロジェクトを組み、中小店の場合にはトップ主導で行う必要があります。

トップはできるだけ具体的なマニュアルには口を出さず、プロジェクトの担当者間の意見が分かれたり、迷ったりしたときに「取りあえずこれでやって見よう」と決定を下すことが重要な仕事となります。

また、各作業は体系的に整理し相互に関連した仕組みにする必要があります。

まず、当初の段階で自社に必要なマニュアルをすべて洗い出し、作業ごとに「マニュアル原案」と「トレーニングプログラムの原案」を作成する責任者を決めます。

そして同時進行で取り組みながら、最終的には全体としてのトータルシステム確立を目指すようにします。

マニュアルの表現方法と仕様マニュアル作成に関し大切なことは、それらをどのように表現するかです。

できるだけ長い文章では表現せず、個条書きを基本として絵や写真、チャートや一覧表などにより、分かりやすく工夫することが大切です。

表現形態も統一したフォーマット(書式)を用い、作業の流れやポイントが分かるように一覧できる方が便利です(図表❹-1)。

また、1つの作業は1枚のページに収まるようにするとよいでしょう。

もし、収まりきらなければ、全体の流れやポイントを1枚にまとめたチャートを初めのページに付けるようにします。

マニュアルの仕様や形態についても工夫が必要です。

例えば、主要部分を手帳形式とし携帯性を高め、1年ごとに改定版としたり、バインダー形式にして各マニュアルをカード式に管理し、改定するたびに入れ替えるという方法も取れます。

スーパーマーケットや外食産業などで仕込み作業場や調理場などで使用する仕込みマニュアルは、各商品別に使用食材や準備する調理器具や機器、仕込み工程や保管方法、保管期限なども入れ1枚にまとめ、ラミネート加工をすると熱や水にも強く大変便利です。

ビデオマニュアルに関しては次項の「ビデオマニュアルの作り方」を参照してください。

マニュアルは人事考課の対象となるトレーニングプログラムに沿って、各P/Aはマニュアルによる自社の正しい作業を順にマスターしていきます。

各作業はマニュアル以外の例外(異なった方法や手順)は認められません。

従って、各従業員が作業を正しく(マニュアル通り)行

っているかどうかをチェックすることで人事考課が可能となります。

作業の内容によっては、前述した作業の標準時間も重要な考課の要素となることは言うまでもありません。

一定期間ごとに人事考課は実施されますが、その結果は時給や手当のアップとなって各P/Aに反映されなければなりません。

マニュアルという基準があることで、店長は各P/Aに問題点を指摘できるわけです。

マニュアルを体系化することにより、P/Aの賃金体系も明確にすることができます。

このことをより大きくとらえれば、結果的に正社員のキャリアパスプランにまで発展させることも可能となります。

小売・サービス業におけるマニュアルは、人材育成の仕組みづくりの母体とも言えます。

また、定期的な人事考課の結果、「誰が何ができて何ができないのか」といったことも店長は把握できます。

各個人に対する育成テーマが明確となるため、より具体的にトレーニングを通し店全体としてのレベルアップも図れるわけです。

店長を筆頭とした社員の認識としては、マニュアルビジネス=トレーニングビジネスと理解する必要があります。

同様に店長に対する評価も、これらP/Aを含めた部下の人事考課を適切に行い、個人別に正しく指導育成しトレーニングを行っているかどうかが上司から人事考課されるのです。

この結果、マニュアルを通して組織が活性化し、レベルアップすることになります。

従って、マニュアルは社員の自己育成の重要なツールととらえることもできるのです。

マニュアルは変わるべきものマニュアルは環境の変化や時流に対応し、変わっていくべきものです。

例えば、自社が通常のレジからPOSシステムを導入すれば、おのずと作業内容は変化を来します。

また、顧客の求める商品やサービスに関する質の変化に伴い、作業内容は順次改定されます。

作業内容の変更はマニュアルの変更を意味すると同時に、トレーニングプログラムの変更や改定の必要をも意味しています。

また、導入したマニュアルに不備が生じた場合も同様です。

前述したようにマニュアルの仕様や形態は、ブック形式ではなくバインダー形式のカード式とし、追加、補充、廃棄などが簡単にできるように初めから決めておくと便利です。

マニュアルを改訂する際の手続き、決定方法、決定者も明確にしておかなければなりません。

多店化の初期段階ではこの辺から崩れていく場合が多いので、特に注意が必要となります。

具体的には「悪法も法なり」として、不備のあるマニュアルであっても各店や各個人の判断で勝手に変更させない(できない)仕組みでなければなりません。

例えば、複数店の場合にはスーパーバイザーやエリアマネジャーを通し、書面で本部に伝えることを原則とすべきです。

改訂に当たっては迅速に問題点(事実)を確認し、対応策を検討しベストな改善策をまとめあげた上で、具体的な改訂マニュアルを各店に伝達し導入しなければなりません。

マニュアルに関する管理は改訂時の伝達文の形式や本部の承認印の必要性なども決め、自社における絶対のものとして権威づけるとともに、常に徹底する意識が社員全員に必要となります。

これらのことが整って初めて継続した運用が可能となるわけです。

マニュアルに関してさまざまな角度からまとめてみましたが、難しく考えず、とにかく自社のマニュアルを自社のメンバーで作成することから始めて見ましょう。

お客さまを最優先にと思うトップの意志が、マニュアル作成を通して社員全員に伝わり、意思統一されて現場の隅々にまで反映されることが重要です。

そして、これらのことが継続されれば、結果として業績は必ず伸びるものなのです。

4-2ビデオマニュアルの作り方

自社で作ろうビデオマニュアル接客サービスやフェース管理など作業によっては、ビデオの活用が効果的です。

特にカラーテレビが生まれたときからあった昭和40年代以降の世代には、分かりやすく有効です。

ビデオマニュアル制作のポイントは、作業ごとにビデオ各1本にまとめることと、1本当たりの時間も長過ぎると集中力が欠けやすくなるため、できるだけ15分以内に適切にまとめることです。

この15分は人間が集中力を継続できる限界と言われています。

自主制作する場合には[ビデオマニュアル制作チェックリスト](図表❹-2)を参照にすると便利です。

また、撮影だけプロの手を借り外注することも可能です。

結婚式場などで活躍するビデオ撮影のプロに依頼するとよいでしょう。

ローカルチェーンのスーパーマーケット・書店・レンタルビデオ店などでは、社員やP/Aから有志を募る手もあります。

ある程度の規模以上になると、映像好きのマニアックな若者たちが何人かはいるものです。

プロジェクトを組む際に声を掛け、計画段階から参画してもらい参加意識を高め、彼らのアイデアも生かしながら制作すると効果的です。

自分たちで制作したマニュアルは自分たちで守るものです。

ビデオマニュアルの場合にも確認とトレーニングを目的とした、補完のための簡単な書式でのマニュアルは必要となります。

内容的には重要なポイントを整理し、まとめるとよいでしょう。

また、映像の中で特に重要なシーンは、映像から写真を起こし添付するとシーン(場面)イメージが再現されやすく効果的です。

ビデオマニュアル制作と進行管理の要点①ビデオマニュアルの[企画・制作チェックリスト]の各項目を検討し決定する(図表❹-2)。

②各マニュアル別に「あらすじ」を組み立てる。

③「あらすじ」に沿って簡単な台本を作成する。

※作業を工程順に撮り、技術のポイントや注意点を訴求するためのビデオマニュアルの場合には、台本なしに直接④を作成してもよい。

④台本に沿って「シーン・カット割付表」のたたき台を作成する。

Ⅰ.シーンをナンバー順に決める。

Ⅱ.場面を想定し各シーンにカットを割り付ける。

※各シーンとも5カット以内とし繁雑さを避ける。

Ⅲ.カットごとに場面イメージを簡単に書き添える。

Ⅳ.各シーンの登場人物、撮影場所、大道具、小道具を書き入れる。

Ⅴ.照明や音響をどのようにするかを決め、注意点があれば備考欄に記入しておく。

Ⅵ.全体としての仕上がり時間(原則は15分以内)を設定し、各シーンの優先順位や各カットの予定収録時間を考慮し、トータルで調整を行う。

⑤④で作成した、たたき台を基に全体の構成を見直し、実際の撮影用の台本と「シーン・カット割付表」を作成する(図表❹-3)。

⑥各カットのポイントを「カット別絵コンテ表」(ストーリーボード)にまとめる。

左の枠にポイントとなるイラストを4コマ漫画風に描きイメージを構成する。

演出・カメラアングル・音響・その他の要点をまとめ、撮影中に抜けのないようにする(図表❹-4)。

※例えば、作業の中でズームアップして表現した方が分かりやすくなるような個所や、カットの進行に従いマニュアルが順に理解されやすくなるような映像構成のポイントなどをイラストにするといい。

⑦原則として各シーンの各カット順にリハーサルを行いながら撮影する※ストーリー性のあるドラマ仕立てのビデオマニュアルを制作する場合などには、同一のシーンだけを選び出して撮影する方が効率は良いが、単純な作業マニュアルの撮影程度なら、あまり凝らない方が無難に仕上がる。

※ビデオ編集を行わない場合には、このような一つひとつのカットを予定収録時間内で順に撮影し、映像を撮影後確認しながら積み上げていく。

そのためにもリハーサルは必ず行い、カメラアングルや照明などを確認する。

特に演技が伴う撮影を社員やP/Aで行う場合には重要となる。

⑧全体を通して見ながら大まかな編集を行い、カットの順序を入れ替えたり、不必要な部分をカットする。

最悪の場合は必要なカットの撮り直しを行う。

※マニュアルの使用目的(何のために・誰に・どんなタイミング・どんな頻度で見せるのかなど)を再確認しながら編集する。

⑨ナレーションや音響、タイトルや文字スーパーなどを入れる。

⑩完成したオリジナルビデオ・テープ(マザーテープ)からコピーを必要数ダビングする。

責任者と保管場所を決めマザーテープはしっかりと管理する。

4-3トレーニングプログラムの必要性

マニュアル実行に欠かせないトレーニングプログラムP/Aの自社での活用を前提とした場合、マニュアルだけが出来上がっても不完全と言えます。

マニュアルを新人のP/Aにも順に正しく理解させ、より高度な技術を身につけさせるには、教えるための仕組みづくりが必要となるのです。

このP/Aの短期間戦力化を目的としたカリキュラムをマニュアルのトレーニングプログラムといいます(図表❹-6)。

マニュアルとなった作業をトレーニングプログラムとして、毎日発生し作業量が多く(時間がかかったり絶対量の多いもの)正社員でなくてもできる作業から順に並べ、1日に4、5時間を教育トレーニングの目安として、まとめたものが[ステップ別トレーニングチェック表]です。

具体的には後述する[ステップ別サービス基礎トレーニングチェック表]を参照してください(図表❹-10~11、14~15)。

通常、「新人基礎トレーニングプログラム」は3~5日間で実施されるようにします。

その後、一定の実習期間(通常1~3カ月間)を経て、より高度なトレーニングプログラムに移行するようにカリキュラムは設定されるべきです。

これらのトレーニングはOJTの原則に従い、マンツーマン[教育担当者(トレーナー)1人に対し新人(トレーニー)1人]で実施します。

トレーニングプログラムにはマニュアルの要点がチェック表となって表示されていますが、それぞれの項目に関し必ず大切なポイントを2、3整理しトレーナーが確実に伝えると効果的です。

また、なぜそうしなければならないのかをトレーニーに適切に説明できるように、事前にトレーナーに対する教育がなされていなければなりません。

●第1日目のポイントはオリエンテーション具体的なマニュアルのトレーニングに入る前に、初期教育の基本として必要なのがオリエンテーションです。

どのP/Aも働く目的があって、あなたの店を選んだはずです。

初めから辞めようと思って入ってくるP/Aは一人もいません。

そこでまず、会社の経営理念や仕事の使命、会社の歴史や地域への貢献度の説明、職場のルール(ハウスルール)、ストアツアー(店内案内)、教育トレーニングの方法、作業内容、時給・手当のアップなどの説明を通して、新人にどこまで「動機づけ」できるかがポイントとなります。

第1日目はオリエンテーションの後で、接客に関する基本動作と用語のトレーニ

ングを行い、さらに毎日の決まり仕事となっている清掃や整理などの単純な作業を教えます。

とにかく、まず店に慣れてもらうことが重要となります。

●第2日目、第3日目のポイント第1日目と同様にトレーニングプログラムに従ってOJTは進行しますが、出勤時のあいさつ、ユニホームの着方、名札の位置など職場のマナーや身だしなみのチェックをトレーナーが毎日きちんとトレーニング前に行うことが重要です。

トレーニング以前に「躾」をきちんと行うことがポイントとなるわけです。

次に、前日トレーニングした内容に関する復習と、トレーニーから疑問点を質問してもらいます。

特に質問のない場合、トレーナーは各チェック項目の大切なポイントを逆に質問し、答えの確認を行うのがいい方法です。

また、3日間を終了したら、自社に関することや基本作業についての簡単なペーパーテスト(図表❹-12、13)をすると知識の確認ができ効果的です。

※作成手順は(図表❹-6)を参照してください。

4-4アメリカ式トレーニングプログラムの使い方

トレーニング項目チェックと合否の評価トレーニングプログラムとは、自動車教習所で教官が教習後に毎日チェックする指導カリキュラムのようなものです。

トレーニングは各項目の内容に沿って、上から番号順に行います。

各項目のトレーニング方法はOJTが主体となりますが、内容により特定のテーマについてトレーナーとトレーニーが話し合うことで、トレーニーに考えさせ理解を深めるものもあります。

トレーニングプログラムは作業の難易度にもよりますが、原則として1日1枚20項目のトレーニングを4、5時間のペースで進むように構成されています。

多くても1日当たり30項目までが限界となります。

これらの項目は、「トレーニングプログラムの必要性」で述べたように、各コースにおけるトレーニーの段階的な育成目標のレベルを先に決め、トレーニングの予定日数(合計時間数)に合わせ、1日1枚20項目程度に作られているのです。

トレーニーの習熟度に合わせてトレーニングの進行は調整しますが、初回は1日1枚20項目程度のペースで行い、評価欄の評価によりフォローをします。

評価は1日に行ったトレーニングの終了前15~20分を使って行います。

具体的には、その日に実施した各トレーニング項目をトレーナーがトレーニーに質問したり、トレーニングした実技を重点的に確認することで復習しながら習熟度をチェックします。

評価の表記方法は下図をご参照ください。

合否の判定は、マニュアルに従った正しい動作による標準作業やサービスが標準時間内で完了できたかどうかで行います。

ただし、初めは正しい動作で作業することを優先します。

理由は繰り返しトレーニングする間におのずとスピードがつき、標準時間内での達成が可能となるからです。

しかし、トレーナーとして適正な標準時間を作業ごとに当初より意識させることは重要なポイントです。

月日の欄があるのは、初回トレーニングの実施日を記入するためのものです。

何らかの事情で本来1日1枚のペースで終了すべき初回トレーニングが中断された場合、終わった項目までの日付を入れ、後は翌日(次回)以降に持ち越します。

この場合にも合否の判定は終わった項目まで行い、残りのトレーニング項目は次回に引き継ぎます。

従って、トレーナー欄のサイン(担当者)が変わることもあります。

トレーナーはトレーニーとともに1日のトレーニングプログラムに相互サインをつけた後で、初回トレーニングにおけるトレーナーの所感を簡単に記入しておきま

す。

例えば、「Aの項目に関しては得意だが、Bに関しては次回再トレーニングを行い、Cの部分は確認し強調する必要がある」などとなります。

アメリカ式トレーニングプログラムの効果アメリカでチェーン展開する企業の多くは、このトレーニングプログラムの形式を採用しています。

その理由は、作業やサービスを1項目ずつ確実にトレーニングできるからです。

また、トレーナーとトレーニーが毎日のトレーニング終了後、相互にサインすることで「確かに教えました」「確かに教わりました」という一種の契約関係が成立するからです。

この結果、トレーニーが実際の作業中にマニュアルで標準化した方法以外の動作や手順などをとった場合、店長としてはチェックが可能となります。

それは、誰がトレーナーでいつ教えたかをトレーニングプログラムで確認できるからです。

担当したトレーナーに対しては、その作業に関する作業手順や教え方を確認できますし、トレーニーに対しては誰からどう教わったかを確認できるからです。

どちらに問題があっても、標準化した正しい手順にすぐに修正でき、次回からは統一できます。

また、何人ものトレーニーが同じ作業の同じ個所で問題を生じさせていれば、そのトレーニングに関する項目の組み方、内容、教え方などを修正する必要があることが発見でき、本部としては早急な対応も可能となります。

このことは、特に新し

いシステムを導入した当初や急速に展開するチェーン企業に有効です。

4-5ステップ別サービス基礎トレーニングシステム

トレーニングチェック表の用い方この項では具体的な「ステップ別トレーニングチェック表」を紹介していますので、各項目に合わせて確認してください。

①トレーナーはトレーニングの各ステップに入る前に、ステップ別トレーニング進行表(図表❹-7)を事前に読んでください。

②必ずチェック表の順に従ってトレーニングしてください。

③原則としてチェック表は、各ステップの初日にその日の分を全項目実施してください。

④トレーナーとは教える側、トレーニーとは教わる側を指します。

トレーニングが済んだ段階で、その日のうちに必ず双方のサインまたは印をチェック表に記入し、教えたこと、教わったことを確認してください。

⑤トレーナーは、トレーニングステップ実施中に気のついたことをチェック表末尾の「トレーナー所感欄」へ記入してください。

⑥メニューの出し方やおしぼりなど、店によって異なることもあります。

(店により省略)とあるものについては自店の方法に手直ししてください。

⑦トレーニーの能力により、要領がよく覚えの早い人がいますが、各ステップの日数を短縮してはいけません。

分かりきったことでも、確実に身につくまで我慢してやらせ通すことが大切です。

短縮した場合、そのトレーニーからサービスの定型が乱れるものです。

OJTの進め方OJTとは、OFFJTに対比する用語です。

「OnTheJobTraining」の略であり、現場での実務的なトレーニングのことを言います。

OFFJTとは、会場や教室を用い集合教育により、知識や会社の理念など理解させるためのトレーニング方法のことです。

OJTは原則としてマンツーマン(トレーナーとトレーニーが1人対1人)で行います。

またトレーニーができるようになるまで、繰り返し繰り返し教え、体得し

てもらいます。

進め方は、①トレーナーがやってみせる。

※なぜ、そうするのか、そうすることが一番良いのかを説明する。

②トレーニーにやらせてみる。

③トレーニーのやり方の中で、間違っているところを修正し教える。

そこの際にポイントやコツを教える。

④もう一度トレーニーにやらせてみる。

⑤できるようになったら、次に進む。

何が良かったか、褒める。

できないときは、もう一度1へ戻り、トレーナーがやってみせる。

※OJTのポイントは、何回も反復して練習することと、トレーナーがトレーニーをうまくできたときに褒めることです。

分かるまで、何回でも繰り返してください。

第3章-4「コーチングを活用したP/Aトレーニングのすすめ」参照。

4-6小売業の作業別トレーニングプログラム

P/Aが店舗で最初に身につけなければならないのは、店舗で毎日行われている各種作業です。

企業によっては、これらの作業を店舗オペレーション(運営)と表現する場合もあります。

店長にとって、各作業に関する知識と具体的な作業の技術や方法をできるだけ短期間にP/Aにマスターさせ、即戦力とすることが重要な職務の1つです。

そこでP/Aトレーニング用に店舗オペレーションに関する各作業を分類し、基礎知識と実務での基本的な作業ポイントをまとめてみます。

業種・業態ごとに異なる作業や各店舗での個別作業もありますが、それらは自店でまとめ補完することをお勧めします。

作業分類と基礎知識店舗オペレーションの各種作業は毎日実施される固定的作業と、曜日や時間帯によって予測される売上高や来店客数により作業頻度(作業量)が変わる変動的作業とに分けられます。

店舗オペレーションの基本原則の1つであるクレンリネス作業(清潔な状態を維持すること)=清掃などは、週間や月間で決められた曜日や日で行われる作業を含め、前者の固定的作業であり、スーパーマーケットなどの青果、鮮魚、精肉部門で実施される食材の調理加工、パック詰め、ラッピングなどは後者の変動的作業となります。

これらの各作業は、「標準化→単純化→システム化」された仕組みとなっていることがP/Aを活用する際の原則となります。

標準化とはその作業をする方法や手順が一番良いやり方で決められており、適正な作業時間も明示されていることです。

また、単純化とは機械や道具などの利用により、誰でも簡単にできるようにすることであり、その結果、誰がやっても同じ成果が出せるシステム化が可能になるという意味です。

こうしておけば、マニュアルとトレーニングプログラムによりトレーニングでき、P/Aの比率を高めることで人件費の削減も可能となるわけです。

以下に各作業のトレーニングをする際のポイントをあげてみます。

●清掃作業(クレンリネス)いくら素晴らしい商品を売っていても、店舗に清潔感がなかったり棚や商品が埃をかぶっていたのでは台なしです。

商品の品質まで疑われる恐れもあります。

清掃

作業は、やる気があればP/Aでも確実にできる作業であり、習慣化することがポイントとなります。

店舗オペレーションで行われるクレンリネスは大掃除ではありません。

タイムリー(適時)、デイリー(毎日)、ウイークリー(毎週)、マンスリー(毎月)といった清掃サイクルに従い、ある一定レベル以上の清潔度(お客さまが満足するレベル)を営業中のどの時間帯でも維持し管理できていることが重要となります。

※クレンリネスに関する詳細は、第5章「クレンリネスの仕組みとトレーニング法」を参照してください。

●検品作業検品作業は、発注した商品が間違いなく自店に納品されたかをチェックする作業であり、品質管理の基本となる重要な作業です。

発注書を基に納品書と納品された現品の3つで照合することが基本です。

検品と収納を検収作業と呼びますが、P/Aにしてもらうこの作業のポイントは以下のようになります。

①発注量と納品書の数量、現品の数量のチェックおよび納品単価と計算の確認②現品の品番、サイズ、入り数の確認③品質の劣化した商品、パッケージの汚れや破損、納品期限が過ぎた商品などの有無の確認④納品が指定した通りの時間、方法で行われたかの確認⑤欠品、数量不足、不良品などがあった場合の上司への報告と処理⑥担当者として納品、受領伝票へのサインの実施生鮮食材を扱うP/Aの場合にはさらに、鮮度や熟成管理に関する知識も必要となります。

検品を徹底するためには、後述する「品出し、陳列作業」などを通じて自店の商品を覚えさせることです。

その結果、正確でスピーディな検収作業が可能となるのです。

P/Aといえども清掃作業同様に、プロとしての厳しい検品の実施を習慣化すべきです。

また、収納に当たっては自店の商品分類や商品の特性、形状やサイズなどに従い定位置管理を習慣づけます。

食料品の場合には「先入れ先出し」などの基本原則を徹底して教え込むことも重要です。

●値付け作業検品作業終了後、品出しの前に実施されるのが値付け作業です。

値付け間違いや漏れがあった場合、お客さまは店に対して不信感を抱くようになることを教育トレーニングでは強調します。

また、値付けの不備は、レジ作業の混乱を招くことになります。

ピーク時にレジで会計に手間取ると、結果的に販売チャンスロスにもつながることを、具体例を挙げてOJTで説明するようにします。

さらに、待たされたお客さまからの苦情の原因となることも多く、正確に漏れがないよう、値付け作業を実施しなければならないことを理解させます。

トレーニングのポイントは、商品ごとに決められた位置に決められた方法で値付

けすることを教えます。

また、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、バーコードによりPOSレジで管理する場合には、バーコードの上に値札を張ることは厳禁となりますが、このこともトレーニンプログラムで触れることが大切です。

さらに値札の印字の不鮮明なものや汚れ、ハガレなども品出しの際に再確認するようトレーニングを通して習慣づける必要があります。

●品出し・陳列作業売場にお客さまの求める商品が品出しされていなかったり陳列されていなければ、当然、購買には結びつかず売上げはあがりません。

また、通過客の来店率や固定客の来店頻度を上げることもできず、客数がダウンし、結果的に不振店ともなりかねません。

品出しの基本は売れ筋商品や高回転商品を把握し、欠品したり品薄となっている商品を優先して陳列することです。

また、鮮魚や精肉、冷蔵・冷凍食品など温度管理を要する売場のP/Aには、これらを最優先で品出しすることをトレーニングで強調します。

先入れ先出しを原則として補充商品の品出しは実施しますが、トレーニング期間中も終了後もピーク時間までに確実に陳列し、出し忘れや品薄状態をつくらないように再三注意することが大切です。

そのためには売場の陳列スペースを常にチェックし、商品をグループ別に把握し管理することを上級者(パートリーダー)やトレーナーのトレーニングで学ばせます。

また、バックルームの整理整頓にも常に留意させ、陳列スペースに合わせグループ別に商品を管理すると分かりやすいことを実感させるべきです。

新人P/Aのころから売場、バックルームとも、どのような商品がどこにどのくらいあるかを常に把握する習慣をつけさせます。

書店や陳列スペースが比較的小さな靴や鞄などの売場を担当するP/Aの場合、お客さまの要望に即座に対応するためにも重要な作業です。

お客さまが求めた商品を即座に探し提供した結果、お客さまが心から喜ぶ顔を見ることで仕事への興味と張り合いが生じ、自信をつけさせることも可能です。

こうなればしめたもので、自分から商品知識なども身につけるようになります。

●陳列直しと鮮度管理作業お客さまが求める売れ筋商品や高回転商品、店として売りたい商品を見つけやすく、取りやすく、買いやすくする工夫が陳列には重要な要素となります。

陳列直しはお客さまに満足を与えながら、自店で意図した売上構成を達成し維持するための作業でもあります。

毎日ピーク時間前にはP/Aに実施させた後、売場責任者や店長がチェックし確実に時間内に実施させる習慣をつけておかなければなりません。

また、ちょっとした手空き時間にも指示を出し陳列直しを行います。

やがて指示がなくてもP/Aが自主的に常にチェックできるようになればトレーニングは成功です。

また、陳列直し作業のポイントは、この作業を単独で実施するのではなく、常に

ほかの作業も並行して実施するようにトレーニングし指導することです。

一般的には、商品や販売什器などの清掃作業が並行作業として実施されますが、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの場合に行われる鮮度管理は特に重要な並行作業です。

冷蔵・冷凍食品用のケース、弁当・惣菜用の保温ケースの温度チェック、デイリー商品のチェックなどが陳列直しとともに実施されるべき定時の鮮度管理作業となります。

具体的な作業としては、「商品補充」「値札チェック」「売価変更処理」「日付チェック」「エンド陳列」「ケース温度管理」「衛生保持」「フェース清掃」「前出し作業」「POPの取り付け」などとなります。

P/Aにトレーニングを通して、徹底してマスターさせなければならない基本作業はこれらの内容となります。

参考としてこれらの基本作業と一般的なレジ操作に関する[小売業・作業別トレーニングチェック表](図表❹-16~20)を紹介します。

接客サービスに関しては前項の「フードサービス業ステップ別トレーニングチェック表」の基本ステップも参照してください。

このほかに棚卸し作業や発注作業などもありますが、業種・業態により扱い商品や発注方法が異なるため、これらのトレーニングチェック表を参考に自社独自のものを作成し、活用することをお勧めします。

また、ステップ別に育成する場合の参考として「スーパー・グロサリー部門段階別作業分類表」(図表❹-21)を紹介します。

4-7中小店のための教育トレーニングプログラムを活用する7つのポイント

教育トレーニングの重要性を認識せよ中小店の中には、教育トレーニングなど必要ないと思っている経営者がいます。

また、うちの店はたいして広くもないし単純な仕事だから、いちいち教えるまでもないと考えている店長がいます。

そうでしょうか。

実際には中小店だからこそ、限られた経営資源である人・物・金・情報・時間を生かすため、取り組むべき課題が教育トレーニングなのです。

なぜなら、今後ますます人の質がサービスに差をつけ、結果として他店との差別化や客数アップの決め手につながるからです。

人が働く目的には賃金を得ることが挙げられます。

しかし、ただ賃金を得るだけならP/Aの中には自宅からもっと近い、時給の高い所もあるはずです。

P/Aが働く場所としてあなたの店を選んだのは、少なからずあなたの店の経営姿勢や従業

員の雰囲気に共感を持ったからにほかなりません。

また、あなたのほうでも縁あってそれらのP/Aを選んだのです。

店の規模は大きく売上げや店数が多く、仕事も特別に大変でもないのに常に人手不足に悩む店があります。

逆に売上げも小さく1店しかない、しかも仕事も何でもやらせて結構きついのに人で困っていない店があります。

それらの店では、多少時給が低くても従業員が生き生きと働いていることが多いものです。

その理由は、その店で店長(経営者)やほかの従業員(P/A)と働くことが楽しいからです。

なぜ楽しいのでしょうか。

それは働く人自身が、その仕事にやりがいや興味を持ち、自分を生かせることで、結果としてその店やその仕事に誇りと意義を感じているからです。

しかし、それらのP/Aは採用以前から誇りや意義を感じていたわけではありません。

縁あって採用したP/Aに経営者や店長が一生懸命、店の考え方やその仕事の果たす役割を教え、その結果として誇りや意義を感じてもらえるようになったのです。

それらのP/Aに対し、店や仕事の接点となったのが教育トレーニングです。

また、教育トレーニングには職場内の人間関係を良くする効用もあるのです。

それが結果として、明るく楽しく公平な職場をつくり出したのです。

それでは、中小店でもできる教育トレーニングの具体的な仕組みづくりとやり方を、7ポイントにまとめ提案します。

①P/A向け主要作業を分類し棚卸ししよう店内で行っているさまざまな作業には、新人のP/Aでもすぐに取り組める作業と新人のP/Aには取り組めない(取り組ませるべきでない)作業があります。

前者の代表的な例が清掃作業であり、後者の例が苦情処理などです。

P/A向け作業を分類し棚卸しするときのポイントは、作業に関して必要な知識、技術、経験、判断力、お客さまへの責任、仕事の発生するサイクル(適時・毎日・毎週・毎月)や頻度、作業量、作業時間などです。

P/A向けの主要作業を分かりやすく表せば、新人に3日間から1週間で教えることのできる作業で毎日(毎週)の作業量が多く、知識、技術、経験、判断力、お客さまへの責任をあまり必要としない作業となります。

一般の小売店を例に取れば、具体的には清掃作業、品出し・陳列作業、陳列直し作業、これに基本的な接客作業とレジ作業や包装作業が加わります。

スーパーマーケットなどの場合には、さらに生鮮や惣菜などの加工やパック詰め作業などが加わります。

また、単価や商品にあまり変動のない定番商品の検品作業や値付け作業なら、新人のP/Aでも実施できます。

これら検品や値付け作業に関しては、任せてもよい商品とそうでない商品を業者やメーカーごとに明確に分類し、決めると分かりやすくなります。

②新人向け主要作業の標準化と単純化をしよう

標準化とは、各作業の基準を決めることです。

清掃作業にしても、人によって違うやり方を許していては、あるべきクレンリネスの水準が保てません。

基準がないと例えば、山田さん、渡辺さん、鈴木さんと3人のP/Aが店内の清掃作業をしたとします。

3人はそれぞれ使用する洗剤や清掃用具も異なるし、清掃を始める場所の順番や手順も異なります。

結果として、山田流はバックヤードまではきれいになっていないが20分で終わりました。

渡辺流はバックヤードもきれいになりましたが30分かかってしまいました。

鈴木流は売場、バックヤードともきれいで25分かかりました。

このように仕上がりのレベルや作業に要した時間に差が出てしまい、しかも、各自は自分のやり方が一番良い方法だと思い込んでいる場合が多いのです。

清掃作業だからまだよいのですが、これが商品管理や販売に関する作業であれば、お客さまからの苦情の対象にもなりかねません。

従って、P/A向けの主要作業にはすべて基準を明確にしなければならないのです。

先の例の清掃作業であれば、自店にとって一番良い方法(洗剤、用具、手順など)と適正な作業時間を明確にし(標準化)、誰もがそのやり方を守ることをルール(マニュアル)とします。

しかも、分かりやすく誰でもすぐできるようにする(単純化)ことが重要です。

③トレーニングプログラム作成とトレーナーの事前トレーニングをしよう中小店だけでなく、マニュアルのある売上規模や店数の多い企業でも教育トレーニングがうまく実施できていない原因の大半は、トレーニングプログラムの整備不足とトレーナーが正しいトレーニング方法を知らないために起きています。

マニュアルがあっても、それはあくまでも基準を示しているに過ぎないことを理解すべきです。

必要なのはそれらを新人P/Aに対し、どのような順で誰がどのように教えるかということなのです。

これをトレーニンプログラムといいます。

トレーニングプログラムを作成する上で重要なことは、新人をどのレベルに何日間で育成するかという期待レベルを明確にすることです。

中小店の場合には基本的な作業やサービスに関し、正社員とアシスタントのできるレベルに3日間から5日間、長くとも1週間で育成することが目標となります。

トレーニングプログラム作成に当たっては、マニュアル同様に現場で作業のよくできる人や新人P/Aに教えるのが上手な従業員の意見を最優先にして作ることです。

さらに、それらを用いて実際に教育トレーニングを繰り返し実施し、自店のトレーニングプログラムを改定し続けることです。

まず良いと思えるものを現場でミーティングを重ね、店長などがまとめ役となって作成することが大切です。

考えるより生むはやすしなのです。

また、実際に新人P/Aの指導に当たるトレーナーのロールプレイング(交代で新人P/Aの役やトレーナーの役となり、トレーニングプログラムに沿って教えあう訓練)を行い、具体的な言葉や動作を確認することも大切な準備となります。

④新人P/Aは個人別にチェックしよう

P/Aにもいろいろなタイプの人がいます。

何にでも積極的に挑戦し、次々に要領良く覚えていくタイプ。

覚えるのに時間がかかるが、覚えたことは確実にしっかりと責任感を持ってやりぬくタイプ。

性格は明るいが少しおっちょこちょいで、作業は早いが簡単なミスを起こしがちなタイプなど、さまざまあります。

トレーナーとしてはトレーニーの特徴を把握するとともに、誰が何ができて何ができないのかを個人別につかむ必要があります。

また、それらを個人面談などを通して直接伝え、本人に納得してもらった上で、教育トレーニングを繰り返す必要があります。

詳細については第10章「P/Aの人事考課とカウンセリング」を参照してください。

⑤新人P/A各自の個性を伸ばそうP/Aにはそれぞれ個性があります。

サービスに関するマニュアルは最低基準を表しますが、基準に達したら後は、各個人の個性や能力の素晴らしい面を引き出すようにしたいものです。

特に、ファッションや輸入雑貨などの店では、商品知識をベースに接客サービス面でP/A各個人のセンスや個性を生かせる場面も多く、それらが仕事の張り合いややりがいにつながるからです。

将来的には仕入れを任すことも可能です。

このレベルになると、トレーナーはさりげなく距離をとり接客が終了した時点などに、トレーニーにワンポイントアドバイスを与えます。

また、自分が過去に体験した苦情や失敗の事例などを基に、トレーニーにそのようなときにどうしたらよいかも考えさせるとよいでしょう。

この積み重ねによって、トレーニー個人の技術レベルが上がるとともに、中小店の場合には従業員間の人間関係も円滑さを増します。

⑥全員で報告の習慣をつくろう中小店の場合、トレーニーが育ってくると人によっては自己裁量の度が過ぎる場合も出てきます。

大切なことは、任せてよい担当商品の範囲や値引きの限度などをも明確に伝え、それ以外の場合は「恐れ入りますが、上司と相談させていただきますのでお待ちいただけますか」などと、必ず接客中でも報告の習慣を身につけさせなければなりません。

また、定期的に行う初期に習った清掃などの基本作業も、その終了時には必ず「清掃終わりました」と上司に報告させる習慣を、きちんと守らせるようにする必要があります。

この辺が中小店でも組織を維持する際のポイントとなるのです。

⑦ベテランをトレーナーにしようとかくベテランの従業員になると、中小店の場合はハウスルールを無視したり、勝手に基準を変えてしまうことが多いものです。

そこで新人P/Aを育成するトレーナーには、ベテランの社員やベテランのP/Aが当たることを義務づけておくとよいでしょう。

ベテランが常に基準を正しく繰

り返して新人P/Aに教えるため、その店の基準とすべき接客サービスのレベルや商品管理、店舗管理の基本作業を自分から守らなければならなくなります。

その結果、基準となるべきレベルが維持されることになります。

サービスや作業で常に大切なのは、原理原則とその原点です。

それらを時流とともに変化するお客さまのニーズやウオンツに対応させ、どれだけ満足できるレベルまで自店の基準を引き上げることができるかが重要なのです。

そして、その具現化の決め手は現行マニュアルのレベルアップと教育トレーニングプログラムの作成と改正を含めた運用にあるのです。

第5章クレンリネスの仕組みとトレーニング法すべての小売・サービス業は清掃に始まり清掃に終わる

5-1店舗オペレーションの基本「クレンリネス」

クレンリネスの徹底で客数が増える流通業やサービス業で成功するポイントは、店舗数や売場面積が増えても、各店の商品力・サービス力・クレンリネス力がお客さまの満足のレベルを維持できていることです。

清掃することをクリーン、清掃した清潔な状態が維持されていることをクレンリネスといいます。

そのベースには職場の人間関係と円滑なコミュニケーション、そしてシステム(仕組み)が必要となります。

特にクレンリネスはお客さまの目や手に触れる部分(商品・備品や設備)だけに、不快の原因となりやすいものです。

しかし、お客さまが不快に感じても苦情となって発生することは少ないのも事実です。

従って、人手不足や時間不足を理由に毎日の決まった清掃も、とかくルーズになりがちです。

ところが、お客さまは苦情を言わないだけで「あの店に行くのは、もうやめよう」と心に決める場合が多いのです。

さらに、利用した本人は自分の知人や友人にも利用した店のひどさを伝えます。

口コミで伝わった苦情は信ぴょう性があるため、結果として利用した本人だけでなく、多数のお客さまを失うことにつながります。

アメリカの調査によれば、利用して良かった店の口コミが5人に伝わるのに対し、利用して悪かった(不快に感じた=満足しなかった)場合には何と17人に伝わると言います。

小売・サービス業として最も恐れる必要があるのは、このような潜在的な苦情が累積して、企業側で気がつかぬうちに客数が減少することです。

客数を増加させるには、日々の努力の積み重ねにより長い時間を要しますが、客数が減少することは簡単で急激に起こり、いったん減り出すと歯止めが効かないことが多いのです。

不振店となった場合でも、とにかくクレンリネスを徹底すると客数が伸びるのは、潜在的な苦情の絶対数が減り、店頭のすっきりとした好印象などから通過客の来店率も高まるからです。

外部から見ると派手に見える業種・業態でも、実際には大変地味なことを積み重ねて成功するビジネスが多いものです。

その基本がクレンリネスです。

すべての小売・サービス業は、「清掃に始まり、清掃に終わる」といっても過言でありません。

しかも、通常行われる清掃はP/Aを含め従業員の誰もが簡単にできる作業です。

清掃場所別に道具や手順をマスターし、タイムリー(適時)、デイリー(毎日)、ウイークリー(毎週)、マンスリー(毎月)といった清掃サイクルに従ってクレンリネス作業を実施してみましょう。

また、クレンリネスの基本が、自分の身だしなみにあることも忘れてはいけません。

小売・サービス業のプロとなるには、「清潔、控えめ、上品」という3つの身だしなみのポイントを、常に心掛けることが重要です。

店長はP/Aを含め従業員全員に対し、店で決められた身だしなみやお化粧の基準を守らせ、その店のイメージや雰囲気を醸し出す大切なユニホームの一部として理解させるべきです。

また、仕事に入る前に各自(または、上司)が髪、ユニホームのほころびや清潔さ、手や指先、靴の汚れなどもチェックする習慣や躾も必要となります。

クレンリネスの本質は安全性スーパーマーケットからコンビニエンスストアまで、流通業で食材の調達や調理加工を行い、販売する業種・業態は数多くあります。

言うまでもなく、人間は毎日食べることによって生きているのです。

女性の社会進出や余暇時間の増加など、今後、中食(惣菜や弁当などを購入し、家庭や職場で食事すること)など自家製加工食品の利用頻度は高まるばかりです。

これらを扱う店はお客さまの健康管理を含め、安心で安全な食材を元に大切な命をお預かりするビジネスといってもオーバーではありません。

これらの店でまず大切なのは、食品衛生を厳守し、品質管理を徹底した食材や調理済み食品を提供することです。

そのためには、定期的な清掃、点検を実施し、常にクレンリネス(清潔な状態)を維持し、食中毒の原因を排除する必要があります。

食中毒は養分・水分・湿度・時間といった要因がミックスされ、主に調理を行うバックヤードで発生します。

クレンリネスは、これらの要因に留意して組み立てられなければなりません。

そのため、食材の腐敗の原因ともなる冷蔵庫・冷凍庫の温度チェックは、品質管理面だけでなく、売場・バックヤードともクレンリネスの一部分として理解し、清掃、点検時に確認する必要があります。

また、ハエやゴキブリやねずみも食中毒の媒介となるため、専門業者に依頼し定期的に除去作業や発生を未然に防ぐ処理を行うことが重要です。

不衛生なだけでなく、ハエやゴキブリが売場に出てきたり、ねずみが天井で音を立てるようでは、お客さまの印象は最悪なものになってしまいます。

さらに、火災の原因となる排気ダクトなども、定期的な清掃、点検を実施し安全性を高めなければなりません。

店側で毎日できる排気ダクトのフィルター清掃と、専門業者によるダクト内部の定期清掃を組み合わせて実施することがポイントとなります。

安全性は食中毒や火災だけの問題ではありません。

毎日の清掃を怠るとバックヤードの床が滑りやすくなり、フライヤーに手を入れてしまったなどと、思わぬ事故につながります。

また、ノンフーズ(ファッション以外の非食品分野)の店でも、お客さま用の入り口、床、階段を清掃し、常に安全に留意しなければなりません。

特に雨や雪の日などは、滑りやすい個所など店側でタイムリーに清掃し、見た目だけでなくお客さまの安全を確保することが重要です。

商品の陳列にしても無理をせず、重く倒れやすいものは転倒防止の措置が必要となります。

緊急時の非難通路や階段を定期的に点検し、常に整理整頓に留意することも、クレンリネス作業の1つと理解すべきです。

安全性について大小いろいろと述べましたが、最も大切なのは、これらのことが毎日のクレンリネスの継続と徹底により維持されていることを理解することです。

従って、クレンリネスの本質は安全性ということができます。

クレンリネスとメンテナンス店舗や設備に多大な先行投資を伴う小売・サービス業は多いものです。

これらは減価償却が終わって(投資した建物や設備の元がとれて)から、大きな利益が出始める商売とも言えます。

従って、メンテナンスにより建物や設備をお客さまに満足を与えながら、いかに維持できるかが安全性とともに重要なテーマとなります。

毎日実施されるクレンリネスを通し、屋根や壁面、サイン(看板)などの異常や傷みに早く気づけば、壊れる前に補修ができます。

結果として修繕費が安くあがることになりますが、これは開店後数年たった店を預かる店長にとって予算管理面でも重要なポイントです。

また、電気や水道など配線や配管の老化にいち早く気づき、漏電や漏水を防ぎ大きな事故を未然に防ぐことができたという事例は数多くあります。

クレンリネスにともなうメンテナンスは、良いオペレーション(店舗運営)づくりの基礎と言えます。

同様に、店内の電球の切れやサインの照明状態も部下のクレンリネス作業を通し、店長は常に報告を受け対処しなければなりません。

毎日のクレンリネスを通し磨きあげられ、メンテナンスにより維持された店は、そこで働く人々にとって愛着が増し、店舗として真の輝きを持って熟成していくものです。

このような店は、店外にまで従業員の活気とやる気があふれ、店内の居心地も良いため、年数を経ても客数が増え続けることになるのです。

5-2クレンリネスの仕組みづくり

クレンリネス3つの基本

●ドライ(Dry):乾燥を徹底するクレンリネスで最も大切な基本の1つが、ドライ(乾燥)を徹底することです。

特に食材を扱う業種・業態の場合、バックヤードが重要です。

バックヤードが乾燥していれば食中毒も防げますし、作業中に滑って思わぬケガをすることもなくなります。

まな板やダスターなども、使用後や閉店後に乾燥させるのはそのためです。

湿気の多い日本では、バックヤードだけでなく売場もドライに気を配る必要があります。

また、店舗はレイアウト上、北側や地下などに倉庫があることが多いものですが、結露や湿気のためカビが繁殖し不衛生となっていたり、悪臭が発生している場合もあります。

保管しておいた消耗品や備品などが使い物にならなくなっていることもあります。

また、雨や雪などの後で店内の階段や床が滑りやすくなっている場合にも、年配者、子供、妊婦が滑って思わぬ事故になることも多いものです。

安全性の基本がドライにあることを忘れてはなりません。

●シャイニー(Shiny):光り輝くものは徹底して輝かせる鏡・ガラス・ステンレス・真ちゅう部分など、光り輝くものは徹底して店内外を問わず光り輝かせることが重要です。

これらの輝きが店に入る際に、商品の品質に対する安心感や、買物の楽しさなどうれしい予感を演出するからです。

また、宝飾店などの店内では雰囲気にメリハリをつけ、店の格式を高めたり、高級感や清潔感をつくり出す効果もあります。

入り口のドアやショーケースのガラス面が光の加減で手の跡など汚れが目立つようでは、いくら素晴らしい商品を品揃えしたところで興ざめです。

また、このような入り口のガラス面では通過客へのアピールも弱く、客数増は望めません。

また、トイレの鏡や便器の汚れは、その店の商品や雰囲気など、すべてに悪影響を及ぼします。

特に女性客は敏感です。

逆にいつも清潔できれいであれば、来店頻度が増す効果があります。

クレンリネス作業として光り物を扱う場合の注意は、対象となる物の材質により、それぞれにワックス・洗剤や道具が異なっているため、最も適した方法により実施することです。

●オーダリー(Orderly):整理整頓を徹底するクレンリネスの基本に整理整頓が入っていることを、意外と思うかもしれません。

しかし、実際にはどの店も店内外の美観というとらえ方をすれば、処分していいものや整理していいものがたくさんあります。

店長の異動などで処理の判断がつかないものも多いでしょうが、このような場合、初めて利用したお客さまの眼で駐車場、店舗の裏側、店内など客動線に沿って歩いて見てみるとよく分かります。

店舗の裏には使わない棚板や古い販促用品、店内には不要なちらしや備品、不要なものなどが詰まった段ボールなどが結構あることに気づくことでしょう。

不要なものは従業員や納入業者の作業動線を悪くしていたり、店内外の美観を損ねているのです。

また、緊急時の非難通路が、これらの不要物で占拠されているところへ放火でも

あれば、人災となりかねません。

これらの不要物や取りあえず使わないものは、店長やエリアマネジャー(スーパーバイザー)と相談して捨てるか、本部などへ連絡し移動してもらうべきです。

また、必要以上の商品が倉庫や棚に詰まっている場合、不良在庫となっているだけでなく、隅々まで清掃できないためにネズミやゴキブリの巣となっていることもあります。

これなども本部の承認を得て、不良在庫としてきちんと処分し整理する必要があります。

クレンリネス管理の仕組みクレンリネスは大掃除ではありません。

1週間を通し、常にある一定レベル以上(お客さまが満足するレベル)を営業中のどの時間帯でも維持し、管理できていることが重要となります。

従って、クレンリネスの仕組みは、誰がいつ実施するのかを示すことと、どのような洗剤や道具を用い、どのような方法や手順で実施するのかをマニュアル化(クレンリネス作業マニュアル)することがポイントとなります。

そこで、どの店にも簡単に応用できるアメリカの外食ナショナルチェーンのノウハウ[週間クレンリネス表]を提案します。

この表には誰がいつ実施するのかが示されています(図表❺-1)。

また、クレンリネス作業マニュアル(図表❺-4)は自店で利用する洗剤により異なるため、自店用に作成しなければなりませんが、不明な点は自店で取り扱っている洗剤会社に直接連絡すれば資料を送付してくれます。

クレンリネスは、誰にとっても面倒くさい、手の掛かる嫌な作業の場合が多いものです。

店長としては、一部の人や曜日・時間帯に負担がかからぬよう、公平に仕組みをつくることが大切です。

きちんとした公平な分業体制ができれば、各曜日・各時間帯に入った正社員やP/Aが責任を持ってやり続けるようトレーニングし、指導を継続することが重要です。

そのためにはP/Aにも店舗の一員として採用となった初期の段階で、自店におけるクレンリネスの重要さを理解させ、習慣となるまで納得できるよう徹底して教育することが大切です。

また、クレンリネスの習慣が弱い店の場合、いったんは従業員総出で大掃除をし、その後、きちんとした週間サイクルでクレンリネスを実施する必要があります。

このような店では当初、習慣化するまで、時間のある限り正社員が一緒になってP/Aと作業をすることも大切です。

さらに、人が不足した場合でも正社員が責任を持ってクレンリネスの分業を果たし、やり続ける覚悟が必要となります。

週間クレンリネス表の作り方①店内のクレンリネスチェックにより、チェック後優先順位を考え、場所ごとにクレンリネスのサイクルを決めます。

・毎日行うもの・週間に1~3回行うもの・月間に1~3回行うもの②セクション(場所)別にそれらの作業をまとめ、次に各時間帯別に整理します。

通常は、このようなセクションと時間帯で必要となります。

③「週間クレンリネス表」に記入しますが、時間帯ごとに作業する順に記入すると便利です(フードサービス用)。

また、クレンリネス作業、各時間帯ごとの優先順位の順に表示してもかまいません。

セクションと時間帯は必ず記入します。

例えば、開店が11時とし、早番が10時から作業するとします。

その場合、すべての作業を10時~11時に終わるべきかといいますと、決してそうではありません。

開店11時を過ぎてもお客さまに迷惑をかけないのなら、昼のピーク前までに行ってもよい作業もあるはずです。

このような店の場合、朝の時間帯を10時~12時と設定することも可能となります。

同様に、閉店の時間帯も仮に24時閉店の店の場合、すべての作業を24時すぎに行うべきかというと、お客さまに迷惑をかけず事前に行ってよい作業も多々あり、従って23時~24時という時間帯の設定も可能となります。

よく閉店作業が遅くなる店がありますが、これらの再検討が重要です。

アメリカの外食産業では、プレクローズ作業(事前の閉店作業)といって大変重要視し、合理的に行っています。

開店・閉店ともクレンリネス時間帯の設定について説明しましたが、「お客さま最優先」で決して迷惑をかけずに作業を実施することは、いつも当然のことです。

④月、火、水、木、金、土、日の欄ですが、毎日行うものはそのままにします。

週間で行うものは作業しない曜日欄をぬりつぶすか、横線をひいておきます。

⑤クレンリネス作業以外の点検や補充の作業も、この表に一緒に記入しておくと大変便利です。

※(例)トイレチェック(点検)・喫茶カウンター補充・サービスカウンター補充・これらの詳細な項目は別表を作成し、各場所に表示しておくと便利です。

週間クレンリネス表の使い方コピーにより、毎日チェックリストのようにチェックする方法もありますが、コルクボード(ピンボード)とカラーピンによる方法をお勧めします。

理由は、毎日継続が必要な作業に対し、いちいちチェックするために鉛筆やボールペン、または用紙のコピーなどが伴うと「〇〇がないから…」と言って、すぐ3日坊主で終わりやすいからです。

初めから多少費用はかかっても、コルクボードとカラーピンを差しておき、その移動によりチェックする方が、はるかに簡単で単純だからです。

週間クレンリネス表の使い方は次の順序で行います。

①例えば、本日が月曜の開店時だとします。

すべてのピンは、月曜の空欄に差してあります(月曜に作業のない欄のピンは当然ありません)。

②いろいろな作業が終了した段階で(ある程度まとめて)終了した表示として、ピンを火曜日に移動します。

これにより、この作業は終了したと店長やほかの従業員に知らせたことになります。

③曜日の飛ぶ作業は、次の空欄の曜日に移動させてください。

④このようにして、作業が終わったらピンの移動を行います。

⑤なお、何かの都合で作業ができなかった場合は、当然その位置に残りますが、そのようなときは、次の時間帯に入る人が手空きのときにその作業を実施し、終了後にピンを移動するようにします。

⑥清掃用具と方法は、マニュアル(図表❺-4)を用いて説明し、場所ごとにしっかりと初めからOJTを行ってください。

※クレンリネスの基本トレーニングの方法は図表❺-3を参照してください。

また週間クレンリネス表の応用例として小売業用の作業チェックリスト(図表❺-5)も掲成してあります。

クレンリネスの5S小売業もフードサービス業も「清掃に始まり、清掃に終わる」ことが基本です。

クレンリネスは資産管理の基本です。

管理の対象は店舗、冷暖房をはじめとする各種設備、家具や道具類、器等の備品類、包装資材や紙ナフキンなどの消耗品類、それに商品、原材料や食材などです。

これらはモノに変わってはいますが、すべて

はお金(資産)なのです。

5Sはこれらの管理を徹底するクレンリネスの要素です。

この結果、①商品の価値を最高の状態に維持し、お客さまに提供する②お客さまに買い物や食事を楽しむための快適で安全な空間を提供する③従業員が明るく誇りを持って働ける労働環境を維持することが可能となるのです。

第6章緊急事態の対応マニュアル小売・サービス業はお客さまの命を預かっている

6-1緊急時対応の基本的考え方

小売・流通業やフードサービス業には、来店中のお客さまの人命を預かっているという認識が不足している企業が多いようです。

これはホテルや旅館、交通機関などと異なり、店舗(売場)の広さやお客さまの在店時間が短いことに起因していると考えられます。

しかし、一部の地域に片寄りがあるにせよ1964年以降、3年から5年のサイクルで大きな地震が発生し、死者を含めかなりの被害が出ています。

火山列島ニッポンにおける大地震の可能性は、1995年に発生した阪神大震災だけの問題ではありません。

また、地震・雷・火事……の例を出すまでもなく、地震や火災、水害、そして小さくは停電や断水といった緊急事態における、店舗での対応は他人ごとではありません。

40歳以上のベテラン店長のいる店舗では、これらの事態に何らかの体験をしている場合が多く、判断力もあるため、ある程度の対応は可能と思われます。

しかし、店長の年齢が若齢化傾向にある多店舗展開する企業にとって、緊急時の対応は盲点と言えます。

何かあってからでは済まされないにもかかわらず、ナショ

ナルチェーンを除いて、緊急事態に対応するためのマニュアルが正式にない企業が多いのが実情です。

防火管理責任者(従業者+客席数=収容人員30人以上の飲食店は消防法により選任を要す)はいても、名前だけであったり、避難訓練なども怠りがちではないでしょうか。

そこで、地震や火事といった「緊急事態に対応する」ための基本的なマニュアルを提案します。

自店の実情に合わせ必要な個所を手直しし、店長以下P/Aまで緊急事態への対応訓練をすることをお勧めします。

また、P/Aトレーニングに際しては、これらのマニュアルを1度は教えることと、必要な場合にすぐに見て対応できるよう保管場所を決めておきます。

緊急時の行動基準緊急事態への対応と処理の基本的な流れを優先順位に沿って挙げてみます。

①冷静になり決して慌てない。

火災発生やその可能性のある場合、火を消し、ガスの元栓を閉める②消防署や管理室(ビル内などの営業店)へ通報、連絡③お客さまの安全確保(地震の場合は原則として待機)、必要により誘導、避難※中規模までの地震の場合、主要振動が継続するのは1分前後である。

従って、1分を過ぎれば地震の直接の危険は去ったと考えてよい。

ただし、大型の地震の場合は、揺れ戻しがあるので注意④従業員の避難(火災発生時、可能なら消火器を集め初期消火)⑤時間があれば重要書類(非常持ち出し品)などの持ち出し⑥火災発生の場合、消火活動の円滑化に協力⑦緊急連絡先リストにより連絡⑧復旧作業と正しい情報の入手⑨所定の手続きにより報告以上の流れに沿って緊急事態に対応します。

5つの緊急事態にすぐ対応できるマニュアルを掲載してありますので、参考にしてください。

また、非常持ち出し品(現金やタイムカード、雇用契約書など)も企業により適正な範囲で定め、専用の袋なども用意し、定位置管理を徹底します。

6-2緊急時の訓練法

緊急事態に直面すると、大の大人でもパニックとなり119番すら満足に通報できないといいます。

いくら良いマニュアルがあっても、それがいざというときに実際の場面で生かされなくては意味がありません。

そのためには、社員はもちろんのことP/Aまで含んで、できれば月1回は訓練をすべきです。

地震や火災を想定し、どんな場合でも落ち着いて最適な行動がとれるよう、マニュアルに沿って繰り返し繰り返し訓練し、頭で理解するのではなく体で覚え込むことが重要です。

訓練とともに大切なことは、各店が所在する対象物における緊急事態に対応した計画づくりです。

具体的には、前述の防火管理責任者が作成し所轄の消防署に届け出る[消防計画]となります。

これは震災対策にも適用されていますが、内容的には火災発生時の通報、連絡や消火・避難・誘導の計画と訓練、消防用設備などの維持管理までが含まれています。

詳細は省きますが、少なくとも正社員と中心となるP/Aはマニュアルとともにこれらを熟知し、訓練に活用すべきです。

この訓練の実施と計画を「防火管理」と消防法では呼んでいます。

これらの実施により、仮に災害が起きた場合でも、被害を最小限にくい止めるこ

とが可能となります。

火災発生時における、日ごろの避難誘導訓練の成果は事例を挙げるまでもありません。

死傷者の数は地震や火災の大きさよりも、避難訓練や消火設備などの不備といった人災に因ることは、過去の悲惨な例からも明らかです。

地震や火災は他人ごとではありません。

特に、再開発に伴う地下街や高層ビル、ショッピングセンターといった、テナント出店による店の場合、大災害となる危険性も高く、ほかのテナントとの連係による対応が不可欠です。

規模の大小にかかわらず、緊急事態への対応マニュアルを作成し避難訓練を定期的に実施しましょう。

第7章より高いサービスを実現するためにP/Aのモラールアップとマインドシェア

7-1顧客満足を超えた個客満足をつくり出す企業文化

これからのサービスは、お客さまを不特定多数の「顧客」として対応するのではなく、一人ひとりの「個客」として個別対応を行うことです。

そのためにはP/Aを含めた従業員各自のホスピタリティをベースとする、思いやりにあふれた人間性が不可欠となります。

また、「気づき」や「察し」ができる感性を基に、個客の好みに即応できる商品知識と高度な接客技術やお客さまの立場になった心遣いが求められます。

その結果、サービスに対する評価は「満足」から「感動」や「感激」に昇華される機会を増やすことが可能となるのです。

最終的に目指すのは顧客満足(CS=カスタマー・サティスファクション)を超えた、個客満足(PS=パーソナル・サティスファクション)です。

それは自店の初回客をロイヤルカスタマー(ごひいき=信者)へと段階的にステップアップし、増加させることでもあるのです。

初めて利用した初回客から段階的にファン以上となった個客は、店側から担当者がお勧めする商品をオーダーする確率も高くなり、客単価はおのずとアップしま

す。

また、オピニオンリーダーとして友人・知人に対し積極的に店を紹介するだけでなく、フードサービス業であれば会食や宴会など大人数での利用頻度も増加します。

まさしくサポーター(支援者)であり、ロイヤルカスタマーとなるのです。

これらの個客に関連した売上増は、景気の影響を受けにくく安定しています。

また、このようにさらなる波及効果が期待できるのです。

通常、ファン以上の顧客比率は自店の全客数の20~30%です。

そして、その売上比率は全売上高のなんと70~80%を占めるといわれています。

ABC分析でいえば、A部門の顧客ということができます。

従って、その絶対数を増加させることが、今後の企業としての戦略目標となるのです。

小売業もフードサービス業も業種・業態にかかわらず、全国各地でオーバーストア状態となっています。

その結果、1店当たりの絶対客数が不足する小商圏化現象が顕著です。

従って、今後は店数や売上高といった販売シェアで競争が決まるわけではありません。

その小さくなった商圏内の顧客のマインドシェア(心の占拠率)で勝敗が決まるのです。

どれだけ商圏内の顧客を自店のファン以上の個客とできるかが最重要なのです。

マインドシェアを確保した店は、顧客のファーストチョイス(第一番目の選択)を獲得できます。

顧客が買物や外食をする際に、同業他店を抜いて真っ先に選ばれる店になるということです。

また、企業としてマインドシェアが確保されていれば、「信頼のブランド」が確立できます。

各種業態を展開している場合でも、店名の一部やマークなどに共通ブランドの表示があれば、顧客は安心して迷わずに利用することになるのです。

ブランド力は新業態や新店オープンの際に顕著に発揮され、早期安定につなげることも可能です。

これはサービス業において継続企業となるための必要条件です。

マインドシェアを確保する上で最も重要なことは、商品や価格による差別化ではありません。

競合他社(店)に対し、同一商品の増量や安売りをすることではないのです。

心のこもったサービスによる「区別化」を目指すことです。

21世紀は物(モノ)の時代ではなく、心の時代といわれます。

モノを通して他社(店)に差をつけること(=差別化)ではなく、従業員一人ひとりが心ある個別対応を徹底することで、他社(店)との違いを明らかにする「区別化」を図ることが重要なのです。

その結果、地域社会で長期にわたり勝ち残る原理原則となる「信頼のブランド」が構築できるのです。

信頼のブランドを築く企業文化マインドシェアを獲得し、信頼のブランド構築の「核」となるのは、経営者としての経営哲学や経営理念の明確化です。

経営理念とは自社を経営することで、どのように社会に貢献するのかを明文化し示したものです。

経営の目的を明確にし、経営行動の指針として、お客さまや商品・サービスに対し従業員全員に共有される価

値判断の基準となるものです。

小売業やフードサービス業を通して、「どのようにお客さまに喜んでいただき、その結果、地域でどんな役割を果たし、最終的にはこんな姿の企業にしたい」「わが社の従業員には自社(店)で働くことを通して、日々やりがいとプライドを持ち、自己実現を果たしながら、こんな風に幸せになってもらいたい」という、経営の目的を明確にすることです。

また、企業として商いの心得(商売に取り組む精神や姿勢)や組織風土(企業文化)、従業員一人ひとりの職責の果たし方といった、企業としての価値観や判断基準を共有化することです。

その本質にあるのは、経営者としての地域に対する愛とサービス業へのプライドです。

また、従業員一人ひとりの人生に対する責任感の自覚です。

信頼のブランドは一朝一夕では構築できません。

お客さま第一主義に徹して、地域に貢献することで醸成されるのです。

従業員それぞれが持っている固有の素晴らしい人格や能力を、サービスの仕事を通して互いに学び合い練成することで、それらを引き出すことが大切です。

その結果、各自が自己実現に結びつけて幸せになることが可能となるのです。

そのためには、企業として「育成の場の提供」と「自己啓発の土壌」が企業文化となるまで、長年にわたり創出し続ける努力が不可欠です。

7-2勝ち組の3ポイントとモラールアップを図る朝礼・ミーティング

小売業やフードサービス業など、ほとんどのサービス業でお客さまと接する時間や接点が圧倒的に多いのはP/Aです。

お客さまのニーズやウオンツの元になる生の情報把握や日々の品揃えや商品管理など、P/Aのモラール次第で売上げは大きく左右されているのです。

従って、P/Aのモラールをいかに維持しアップできるかで、「勝ち組」と「負け組」に分かれてしまうのです。

店舗数や売上規模にかかわらずモラールを維持するための現場でのポイントは、P/Aを巻き込みながら朝礼やミーティングを日々実践することです。

しかし、その重要性を認識しながらも実行と継続がなされていないことが多いのです。

P/Aは第一次商圏に住むお客さまでもあるのです。

その最も身近なお客さまの「マインドシェア」さえ確保できない店は、地域にとっても淘汰されるべき店ということになります。

それはこの厳しい時代に勝ち残っている企業(店)に共通な以下の3点を見れば明らかです。

その3点とは、①個別対応、②スピード、③行動規範・行動原則です。

それでは順に一つずつ解説してみましょう。

①個別対応お客さまは自分を大事にしてくれる店に足が向きます。

これは当然のことです。

そのためには不特定多数の「顧客」として十把ひとからげで扱うのではなく、お客さま一人ひとりを個人である「個客」として対応しなければなりません。

お客さまは初回客としてその店のサービスや商品が気に入れば、その後も不定期に訪れるようになります。

これを常連客と呼ぶことにします。

この常連客を定期的に訪れる「固定客」にすることが、ロイヤルカスタマーへの第一歩なのです。

この時点で最も大切なことは、従業員がそのお客さまの存在を認知していることを、さり気なく伝えることです。

「いらっしゃいませ、いつもありがとうございます」「先日は雨の中、お越しいただきありがとうございます。

お気に召すものがございましたら、お声をお掛けください」「前回はこういったデザインをお選びになったと思いますが、お客さまでしたらこちら……」「確か先日はあちらのお席にお越しになられていたと思うのですが……」「先日はこちらのスペシャルをお召し上がりになったと思うのですが、本日はこちらの旬のメニューがお勧めです」。

来店時や会話のきっかけにタイミングよく一言添えるとよいでしょう。

特定の個客として自分が認知されたことが分かれば、常連客は固定客になります。

固定客にステップアップして週1回、月2回など一定のペースで来店するお客さまに大切なのは、「答えはお客さまの数だけある」ということを忘れないことです。

そのためにはお客さまの名前と顔を一致させる努力をし、機会あるごとにできるだけ名前でお呼びすることです。

その結果、各自の好みなどの把握ができニーズを先読みして対応することが可能となります。

例えば、お客さまが特別に注文して取り寄せた客注商品を手渡す際の会話から、お名前と好みを知ることは可能です。

また、会計時に使用する各種カードから固定客の名前を覚え、データベースから購入履歴が分かれば新商品のお勧め販売も可能となります。

名前でお呼びできれば、固定客はファンにステップアップする可能性が高くなります。

ファンになると会話の機会も増えるため、お勧め商品や関連商品の購入がなされ客単価は上がります。

さらに担当者との人間関係が構築されることで信用・信頼が深まり、ファンをサポーター(支援者)へとさらにステップアップすることができます。

サポーターになると口コミで新しいお客さまを紹介したり、店に同行してくれたりするようになります。

ここに重要なポイントがあります。

これらの新しいお客さまは、その店のファンになる可能性が初めから高いことです。

その理由はその店のテイスト(趣味・嗜好・感性)や品揃えの良さが分かる人を、サポーターがわざわざ選んで紹介や同行してくれるからです。

このことは、特に高単価店や専門店の場合に大切です。

なぜなら、これらの店は外観や雰囲気など、初回客には入りにくいことが多いからです。

サポーターとしての関係が維持でき心の絆ができると、最終的に生涯にわたるお客さまとも言えるロイヤルカスタマー(ごひいき=信者)へとステップアップさせることも可能なのです。

前項でも触れましたが、ファン以上の顧客比率は、通常そ

の店の客数の20~30%です。

しかし、その売上構成比は70~80%もあるのです。

まさにABC分析でいうAグループのお客さまなのです。

「勝ち組」となるためには、これらの客数をいかに日々の努力で増加させ続けることができるかです。

従って、今後必要なのは、顧客満足を超えた個客満足なのです。

そのためには「ハッピーな従業員がハッピーな顧客を創造する」することを忘れてはなりません。

そしてその本質はP/Aのモラールの維持にあるのです。

②スピード現在の個客は、待たされることや対応が遅い店の利用を避けています。

今後もこの傾向は強くなると考えられます。

スピードで大切なポイントは3つあります。

1つ目は商品提供スピードです。

フードサービス業の中でも大衆をターゲットとする業態で、提供スピードの遅い繁盛店は皆無です。

書店など小売業でも、お客さまからの売場での質問や電話での問い合わせ、会計などが遅い店はインターネットを活用した販売店に負けています。

また、インターネットなど無店舗販売でも商品配送の遅い店は、早い店に負けているのです。

2つ目が、2ウエイ・コミュニケーションのスピードアップです。

2ウエイ・コミュニケーションとは、利用客と店の双方向のコミュニケーションを指します。

顧客は店側の接客サービスや商品の品質管理、品揃え、レイアウト・棚割り、店内の設備などに対しコンプレイン(文句)やクレーム(苦情)を抱えています。

それらを顧客アンケートやウォンツスリップ(本章の5の2参照)などでいかに拾い出し、どうスピーディに対応できるかで勝ち残りが決まります。

例えば、同規模の書店がまったく同じ品揃えで並んで営業していたとします。

書籍販売では商品と価格は両店とも同一です。

この場合、顧客が感じている不備や不満などの「不」と、他店と比べトイレが汚い、探している本が見つけにくいなど「負」となっていることにいち早く気づき、改善できたほうに勝ち目があります。

このお客さまに対する「不」と「負」の発見とスピード対応による解消は全業種・業態に共通なことです。

最悪の事態として「不」と「負」がそれぞれの顧客の限度を超えると、顧客はクレームやコンプレインとして店側に不快な意思表示をします。

このことに関する対応は、次項の「クレームマネジメント・マニュアルの作り方」で述べていきます。

3つ目のスピードは、本部決定事項の現場でのスピード導入と継続・徹底です。

複数店を展開する各社の本部では、業界や競合他店など各種情報も入り、店舗オペレーションの改善などさまざまな判断を下す際に、あまり間違った決定を行うことは少ないものです。

問題はその決定がお客さまとの接点まで、いかに早く正確に伝達されP/Aを通して実行に移されているかです。

そしてさらにその後も継続して徹底できているかなのです。

実はこの差が店舗間格差となり、企業間格差を生んでいるのです。

③行動規範・行動原則この問題は、新聞やテレビなど大企業と呼ばれる各社の昨今のお粗末な不祥事を

見れば、その重要性がお分かりでしょう。

それらの問題の本質は、行動規範・行動原則にあります。

行動規範とは、その企業に勤める全従業員が経営理念を元に、その企業にふさわしい従業員としての行動や態度を常にとることです。

また、行動原則とは発生した事態に対し、その企業のトップや社員として自社の経営理念(判断基準や価値観)に照らし合わせ、正しい対応を躊躇せずに実行できることです。

サービス業の仕事は、「毎日決まったことを決まった通り、明るく誇りを持ってやり続ける」ことです。

その基本は2つあります。

それは「あいさつに始まり、あいさつに終わる」ことと、「清掃に始まり、清掃に終わる」ことです。

人がいないと成り立たないピープルビジネスであるため、人のやる気と人の心の管理がビジネス成功のカギを握っていす。

身だしなみに始まり、従業員間の報告・連絡・相談、お客さまのコンプレインやクレームの対応など、企業としての経営理念の具現化でもある行動規範・行動原則の徹底こそ、従業員各自に求められるものなのです。

そのためには、P/Aを含め従業員一人ひとりのやる気を引き出し、チームの一員として分業体制を取り、コンビネーションのある仕事をする必要があります。

また、お客さまからの要望や苦情、店内における簡単な引継ぎのミスや人間関係のトラブルなど、事あるごとにそれらを勉強と意思統一の機会とし、その店や企業としてのあるべき行動の規範や原則を徹底することです。

これら①~③を自店でも実施し、徹底して継続するには朝礼、ミーティングが不可欠です。

また、サービス業の特性であるP/Aへの依存度が高いことも併せて考えれば、朝礼やミーティングの重要性が再確認できます。

朝礼・ミーティングのポイント朝礼・ミーティングの目的は、店長として自社の経営理念や経営方針をお客さまとの接点で具現化するため、できるだけ多くの従業員とコミュニケーションを図り、意思統一を行うことです。

経営理念とは従業員全員に共有されるべき価値観や判断の基準となるものです。

お客さまから出される要望や苦情はさまざまです。

とてもマニュアルでは対応し切れません。

しかし、価値観や判断基準が従業員全員に統一されていれば、どんな事態が発生してもその企業としての正しい判断や行動がなされる可能性は高くなります。

思想(経営理念)が統一されていれば、従業員のサービスや対応に関する行動や表現も統一されることになるのです。

これが意思統一です。

自店のQSCスタンダード[Q=クオリティ(商品の品質)の基準、S=サービス(心のこもったサービス)の基準、C=クレンリネス(清潔な状態)の基準]の維持や個別対応サービスの強化、問題と感じていることなど、店長としての意志を伝えない限り、従業員には理解されません。

この意志を伝え、やる気を共有し行動

に結びつけるきっかけとするのが朝礼やミーティングです。

また、店舗オペレーションを通してP/A各自の個性や人間性、創造力など、その人らしさが発揮できるようにすることも大切です。

各自の持つ多様性とやる気を生かし、適材適所の店内組織をつくり分業体制を組めば、チームワークがはぐくまれ、仕事にコンビネーションが生まれる機会が増えます。

そのためには店長としてさまざまな面でコーディネーション(調整)が必要となりますが、これらも朝礼・ミーティングを通した「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」と引継ぎの徹底でスムーズになるものです。

また、ささいな行き違いから生じる人間関係のトラブルも、事前に回避できる機会が増加します。

店長は、ミーティングで普段あまり自分から意見を言わない人にも上手に意見を求めるように進行したり、テーマを事前に伝え意見を述べてもらうようにする配慮も必要です。

朝礼で2、3分間スピーチを順に行うと、P/Aを含めた従業員各自の店づくりや接客サービスに関する考えを聞くことができます。

その際に良い点や守るべき点を積極的に褒めたり、認めるとモラールアップにつながります。

朝礼の内容とポイントに関しては資料「朝礼チェックリスト」(図表❼-3)を参照し、自社流にアレンジするとよいでしょう。

このように朝礼やミーティングは情報を共有化し意志を統一するだけでなく、P/Aを含めた従業員各自のモチベーションアップに役立てることができるのです。

また、苦情への対応などテーマを決めて行えば、ベテランの意見やアドバイスを新人も聞け、ナレッジマネジメント(知恵の蓄積・共有・活用・評価)に役立てることも可能です。

ナレッジマネジメントに関しては、本章5「より高いサービスを実現する仕組みづくり」の3で詳細に述べています。

7-3クレームマネジメント・マニュアルの作り方

店長は常に聞く耳を持て店長は利用客から発せられた、どんな小さな文句や苦情でも聞き逃してはなりません。

そのためには常に明るく積極的な態度でP/Aと接し、彼らから伝えられる利用客の生の声を、言い訳や批判をせずに素直に聞く耳を持つ必要があります。

せっかくP/Aが言ってきたのに店長が「料理が遅いと言われても、どのテーブルでも待っているんだから……」「新人が多いんだから、お客も〇〇くらいはがまんしてくれなきゃ」「えっ、あのお客は〇〇についてそんなこと言ってるの。

それはお客の方が悪いよ」などでは、次回から言う気にもなりません。

逆にどんな小さな質問や苦情でも、「それは気がつかなかったけれど大切なことだ。

どのお客さま、私が行って説明するから……」、「それは教えてなくて悪かったね。

私も今行って謝ってくるから……」など、日ごろからきめ細やかに対応して

いれば、利用客の生の声も入りやすくなります。

また、店内ミーティングでも積極的な意見が期待されます。

P/Aには苦情を発する利用客は、実はその店の大変なファン(固定客)であることも理解させておく必要があります。

「せっかく利用したのに今日の“この商品は……”“このサービスは……”一体どうしたんだ!」という気持ちが文句や苦情となり、そのことが言葉となって発せられたことを理解させ、その店の商品やサービスに期待していたからこそ、それが裏切られたときに顕在化したのだと伝えます。

通常、顕在化した苦情の20倍の顧客が同じ苦情を潜在的に持っていると考えなければなりません。

顕在化した苦情は、いわば氷山の一角に過ぎないのです。

苦情が潜在化している利用客は、苦情に至らないだけで大半は二度とこの店に来るのはやめようと決めています。

しかも、友人や知人にそのことを面白おかしく伝えます。

アメリカでは最終的に17人の人に苦情は伝わると言われます。

結果的にこの店は、その苦情で17人×20倍=340人の利用客を失う計算になります。

実はこれが一番怖いことであると店長は理解し、利用客一人ひとりの大切さと重みをあらためてP/Aとともに確認する必要があるのです。

店長のクレームマネジメント5つのポイント具体的な利用客の生の声をできるだけ多くP/Aから聞き出したなら、店長はそれらを分類整理し、要因を分析して現状の自店の問題点を抽出し対処しなければなりません。

大切なことは「誰が悪いのではなく、何が悪いのか。

今後同じトラブルを起こさないためには、どうしたらよいのか」を考え対処することです。

特にゴールデンウイークや夏休み、年末年始など繁忙期を前に店長が行うべきクレームマネジメントのポイントは、以下の5つに要約できます。

①基本サービスを充実し徹底せよクレームの90%は、本来行われるべき当たり前のサービスや作業がなされていなかったり、担当者のうっかりミスにより起こっています。

このような低次元のクレームが多く発生している店の場合、職場内のあいさつや身だしなみをはじめとしたモラールが低下していることが多いものです。

要するに職場内にけじめがなく、P/Aの大多数の気が緩み、いい加減に作業やサービスをこなしているのです。

もしそのような兆候があるなら、店長は自分のリーダーシップのなさを猛省しなければなりません。

朝礼やミーティングを通し、まずハウスルールからあらためて徹底する必要があります。

また、店長としてこれらの凡ミスをなくすには、マニュアルを全員に確認させ、基本サービスを徹底することです。

サービスにおけるマニュアルは、その店で行われるべき最低基準を表していることを忘れてはなりません。

気配りや個別対応などのより高度なサービスは、基本サービスが充実されて、初めてその真価を発揮するものです。

②重点管理すべきポイントを絞り込めクレームは件数別にQSC(Quality、Service、Cleanliness)などの部門別や発生場所別で分類し、分析すると問題点が見えてきます(次項参照)。

その結果、重点管理すべき具体的な商品やサービス、作業工程や担当者などが明確になります。

それらに対し優先順位をつけて各時間帯の責任者、トレーナーを交えミーティングを行って対応策を練り、1つずつ解決することです。

クレームマネジメントを通してこれらを店内の幹部社員に考えさせ、店長の目指すサービスや顧客管理に関する意思統一を図ることが大切です。

③人事考課と個別トレーニングを強化せよP/A全員をマニュアルに沿い、トレーニングプログラムによって基本的な作業やサービスを教えたつもりでも、サービスレベルが低い数人のために特定の時間帯にクレームが集中していることがあります。

この場合、まず取り組む必要があるのがP/Aの個人別チェックです。

P/A各

自が、何ができて何ができていないか、得意なことと苦手なことが何なのかといった現状を、店長が把握する必要があります。

これを人事考課といいます。

その後、個人別にテーマを設定しフォローのための教育トレーニングを開始します。

[個人別サービス評価表](図表❼-5)は各個人の基本トレーニングの後、一定期間ごとに実施します。

ベテランはより高度な内容を含めマンスリー(月間)でよいのですが、新人の場合は当初、基本的な定形サービスや作業だけをウイークリー(週間)でチェックすべきです。

店全体で得点の低いサービス項目は何か、これが②の「重点管理すべきポイント」にもなるのです。

さらに各個人別に見ると、誰のどの点が問題なのかが一目瞭然で分かります。

それらをチェックし店全体のテーマと各個人別テーマを挙げ、ウイークリーごとに優先順位を決めるとよいでしょう。

これらが徹底できれば、店も各個人も順にサービスレベルが向上できるようになります。

店長として個人別指導の中で大切なことは、一方的にここが悪いからこうしなさいと押し付けるのではなく、コーチングの姿勢をできるだけ取り、本人に考えさせることです。

特に対象者が新人であれば店長はできるだけ聞き役に回り、本人が考えているサービスに対する考え方やそのレベルを確認した上で、店長が目指すサービスとその理由を伝えると効果的です。

④分業態勢でクレームを事前に予防せよ店長は人の入れ替わりが大幅にあったり、異動した店舗のモラールが低く立て直しに時間がかかると判断した場合、分業態勢で取りあえず対応しクレームを予防することも必要となります。

具体的には、作業係と気配り係を分けて育成することです。

慣れない新人に定形サービス以外の気配りを望んでも、各種の経験からくる判断力や資質も必要であり、育成には時間がかかるものです。

そこでまず自店のP/A人材の棚卸しを行い、明確に2つに分けて繁忙期までに短期戦力化を図ることも必要です。

平日にワークスケジュールを組む際にもこのバランスを考えて組み、2人から3人でブロック(部門)を担当させれば、作業係も気配りのポイントを理解できるようになります。

また、フードサービス業ではピーク時における各種専任を育成することも考えられます。

ピーク時間帯の数時間を限定してオーダー受け専門や料理運び専門、ご案内専門などに分けて分業を徹底するのです。

商品知識のあまりない人やサジェスティブセールスのできない人にオーダーを取らせるより、得意な人に任せた方がオペレーションはスムーズにいきます。

いくら優秀な店長でも、自分の公休日やピーク時などすべてに目が行き届くわけではありません。

そのためには店長代理だけでなく、店長の代行ができる各時間帯の責任者(P/A)を育成する必要があります。

クレームに関する時間帯責任者としての行動のポイントは、苦情になる前に気づくことです。

すべての不満はお客さまの顔や表情に表れているものです。

そのためには常にお客さまの表情を確認し、満足しているかどうかをチェックすると効果的です。

何かおかしければ「お料理はお口に合いますでしょうか」などと率先して尋ねるべきです。

また、サービス担当者が利用客に接している際も店内全体を観察し、通常にはない違和感があれば何気なくそばに行き、確認すべきです。

少なくともピーク時間帯には5分に1回のペースで店内を巡回し、各テーブルの上と利用客の表情、ディシャップ(配膳準備)での伝票と料理の流れ、パントリーや喫茶カウンターでのアフターの流れ、駐車場の状況などを確認できるよう習慣化しなければなりません。

店長が毎週安心して公休を取るためには、このレベルまで各時間帯責任者を育て上げることが目標となります。

⑤クレーム発生時の処理をルール化せよクレームは未然に防げればそれに越したことはありませんが、いくらサービスレベルを上げても何らかのクレームは発生するものです。

クレームマネジメントで大切なことは、クレームをできるだけ予防することと、起きてしまったクレームをいかに迅速に正しく処理するかということです(図表❼-6)。

クレーム処理で重要なことは、まず、そのお客さまの立場で状況を認識し対応することです。

これを誤ると、小さなクレームが大きなトラブルに発展しかねません。

例えば、お客さまのネクタイに学生アルバイトが鉄板で提供したステーキソースがはねてかかってしまったとしましょう。

学生アルバイトは、このくらいのことはよくあることだし、たいして汚れてもいないのに……と、取りあえず「申し訳ございません」と軽く謝り店長にも報告がなかったとします。

ところがお客さまにとってはお気に入りのブランド物の高級品であり、汚された瞬間には「あっ……」と思ったものの何も言わなかったがどうにも収まりがつかない……、帰り際に店長が呼び出され「この店の教育はどうなっているのか……」と大声で怒鳴りつけられ、ほかの利用客まで迷惑を受けるといったことはよくあることです。

学生アルバイトがそのときに心から詫びて丁寧に謝り、店長へも迅速な報告がなされすぐに謝罪に行けば、このようなトラブルにはならなかった可能性が高いと考えられます。

P/Aを多く使う店の場合、新人は6カ月間お客さまのどんな小さなコンプレインやクレームでも、自分で判断せず必ず店長に報告させるルールが必要です。

また、その報告を受け店長がいかに対応したかによって、店長に対する信頼感も不信感も生まれることを忘れてはなりません。

私が忘れたオーダーを店長が謝りに行ってくれた。

私が料理を間違ったテーブルに運んだのに店長が調理場に謝り、すぐに作り直してもらえた等々。

この、お客さまをどれだけ大事にしているのかという姿勢と状況に合わせたP/Aのフォローと個別教育が、店長のリーダーシップを確固たるものにし、クレームマネジメントをより強固なものにするのです。

7-4場所別・ケース別クレームと対処法

お客さまの在店時間が長く、苦情が多く発生しやすいのがフードサービス業です。

そこでフードサービス業を例に、その基本原則であるQSCに関する最も頻度の高い代表的なクレームとその具体的な対処法を述べてみます。

これらを参照し[苦情処理5カ条]を活用すれば小売業や各種サービス業にも応用できます(図表❼-7)。

Q(クオリティ=商品の品質)に関する代表的なクレームと対処法商品のクレームで多く発生するのが、髪の毛や金だわしの針金の小片、時期によってはキャベツにつくアオムシなどの異物混入です。

この場合、クレームが発せられた時点で必ず店長またはその時間帯の責任者が対応することがポイントとなります。

なぜなら、嫌がらせでもない限り、明らかに店側が悪いからです。

また、お客さまが口の中をケガしたり、歯が欠けてしまったという事態になっている可能性もあり、的確な状況判断で対応をするためにも、その時点での店内の責任者が対応すべきです。

いずれにしても、クレーム処理は「初動」が最重要であることを店長は常に認識し、P/Aにも徹底しておく必要があります。

次にクレームが発生した利用客に対し、事実を確認した上でまず謝罪することが重要となります。

ケガがあればその程度により応急処置を取り、必要なら近くの救急病院に同行します。

程度が軽ければ、あらためて謝罪にうかがうことを伝え、氏名、住所と電話番号などをメモします。

ケガがなければ、「同じ料理をすぐに作り直しをさせますが、いかがでしょうか……」と提案してみます。

利用客が了解すれば新しい料理をすぐ作り、さらに店長判断でデザートなどをサービスします。

クレームの程度にもよりますがあらためて料理を作り直し、利用客が召し上がった場合、原則として料金はいただきます。

料理を作り直さなくてよいと言われた場合には、料金は原則としていただきません。

いずれの場合も、お帰りに誠意を持ってあらためてお詫びをし「本日は大変ご迷惑をお掛けいたしました。

今後こういったことがないように十分注意いたしますので、ぜひまたお立ち寄りください」と食事券やサービス券などを手渡すとよいでしょう。

また、異物混入の原因が分かれば、その理由を説明し自店の不注意であったことも正直に添えるべきです。

問題となった料理は、クレームが発生した状態で調理長に見せ事実を確認してもらいます。

店長は当日中に調理場のアシスタントクラスまでを含めた緊急ミーティングを開き、異物混入の原因追及と同じクレームが2度と発生しないための具体的

な対策を決め、すぐに実行に移すようにします。

さらに多店化している場合には、電話と日報やコンプレイン報告書などにより、エリアマネジャーと本部にありのままを正直に報告することをルール化しておくことが必要です。

その理由は、他店でも同様のことが起きる可能性があるからです。

S(サービス)に関する代表的なクレームと対処法ファストフードを除く外食産業で業種・業態を問わず最も多く発生するのが「料理が遅い」というクレームです。

特に競争の厳しい地域のランチタイムは、料理提供時間が遅いというだけで客数が激減します。

また、いわゆる「同時同卓(同時提供)が基本である」といわれるように、同一のテーブル(グループ)の利用客が個別にオーダーしたメイン料理が一緒に提供されず、ばらばらに提供されたのでは利用客と店の双方に問題が出ることも忘れてはなりません。

例えば、同席する上司や接待する大切なお客さまより先に自分の料理が出されては、手をつけるわけにもいかず、かといって温かい料理が冷めたり、麺類なら伸びるのを気にしながら空腹をおさえて待たなければなりません。

上司や接待されているお客さまも当然イライラしていますが、「ねぇー、まだですか」というのも自分の人間性が疑われるようで気が引けるといった状態はよくあることです。

ここで重要なのは、このレベルの問題はクレームとはなりにくい点です。

クレームの本来の意味には、[異議申し立て、損害賠償請求、権利の主張・要求]といった強いニュアンスがあります。

このレベルは通常、コンプレイン(文句)となり顕在化せず利用客側で処理されてしまうものです。

しかし、嫌な思いをした利用客が再来店する確率はほとんど皆無です。

店側では、同じテーブルのたった1人の料理が遅れただけで、その店のテーブル回転率を落とし販売チャンスをロスしています。

しかし、結果として考えている以上の客数を失っていることが最も重要な問題なのです。

店長としては、ピーク時の各テーブルの状態とお客さまの表情を1人ずつさりげなくチェックし、おかしいと感じたらディシャップに行き、そのテーブルのオーダー伝票の順番と内容を確認することを習慣づける必要があります。

そしてお客さまが明らかにイライラしているようなら、先手を打って「今、確認して参りましたが間違いなくご注文は通っております。

もう少々お待ちください」と言葉を添えることです。

しかし、これらの予防もできず「君!まだかね。

私より後からきた人の料理が出ているのに、もう20分以上待っているよ。

どうなっているんだ!」とクレームが発生した場合には、まず店長としてそのテーブルにすぐ出向き、遅れていることに対し心から謝るべきです。

そして、お客さまの言い分をとにかくすべてお聞きした上で、「すぐに調べて参りますので……」と調理場に行き伝票チェックを行いま

す。

このときのポイントは何を言われても決して言い訳をしてはいけないことです。

このような場合に考えられるのは、①そのテーブルの伝票の紛失②本来はクレームのあったテーブルの料理を同じオーダーを受けたほかのテーブルへ運んでいってしまった③オーダー伝票の書き忘れや調理場への通し忘れ、またはオーダー・エントリーシステムの場合にはキッチンプリンターの故障や紙づまりなどです。

いずれにしてもオーダーされた料理を調べ、調理場に協力をしてもらい最優先で作らせるとともに、遅れた原因(①~③など)を正直に告げ、今急いで作っていることを伝えます。

また、オーダーを伺った担当者のミスによる場合には、一緒にあらためて謝罪します。

最悪の場合、オーダーされた料理が分からない場合もありますが、そのときには「本当に私共のミスで申し訳ありません。

ご注文のお料理をあらためてお伺いをし、これからすぐにお作りいたしますが……」とお客さまに提案し確認してみます。

店側のミスでお待たせしたのなら、お帰りの際に店長判断で料金は原則的にいただきません。

グループ利用の場合には、クレームの対象となったお客さまの料金だけが原則的には対象となりますが、ほかのお客さまに対しても必要によりデザートサービスや食事券をお帰りに手渡すなどの対応は、クレームの程度や状況に合わせ、店長判断で的確になされなければなりません。

また、「何を今さら、もういい!」ということも多いものです。

この場合、さらにお客さまが苦情を続けるようであれば、言い訳をせず徹底して聞き役に徹する以外最善の方法はありません。

そして、再度謝りご丁重にお見送りするだけです。

そんなに長い間、そのテーブルに料理が出ていないことを気づかなかった店長であるあなたが一番悪いのです。

C(クレンリネス)に関する代表的なクレームと対処法クレンリネスに関する潜在的なコンプレインやクレームは、実際には一番多いと考えられます。

しかし、顕在化することはあまりありません。

理由は利用客側で「とんでもない店を選んでしまった。

このレベルでは言っても多分直るわけがないし、何か言ってかえって嫌な思いをすることもない。

この店を利用しなければいいのだから……」と心に決めるからです。

このことからも分かるとおり、主にクレンリネスに関するコンプレインやクレームは初回客によるものが圧倒的に多いのです。

従って、クレンリネスのレベルの低い店では、いつになっても新規客の固定化の比率が高められず、結果的に客数減少をきたし不振店となります。

クレンリネスのレベルの低さは、店長のリーダーシップのなさの証明でもあります。

なぜなら、クレンリネスには特別な技術や知識も不要であり、やる気があれば誰にでもきれいにすることができるからです。

それがきれいにならないのは、クレンリネスの作業分担がいい加減だったり、店長の指示やチェックが甘いため、いつの間にかずるずると店や見だしなみを含め、環境が悪化したにほかならないからです。

当然、このレベルの店はモラールも低く、人間関係も悪いためP/Aの定着率も低いものです。

その結果、クレンリネスはさらに悪循環を繰り返して悪くなってしまったのです。

不振店対策でまずクレンリネスを実施するのは、これらの理由からなのです。

まず必要なことは、大掃除を行って本来のあるべきクレンリネスのレベルに店を戻すことです。

さらに週間清掃作業の見直しと分業態勢を確立し、しっかりとやり続けることが基本となります。

人がいなければ店長自らが残ってでもきれいにするつもりがなければ、店のクレンリネスとモラールは維持できません。

環境は人を変えるのです(図表❺-1参照)。

クレンリネスに関するクレームが仮に出るとすれば、トイレ、テーブルの下、駐車場、入り口回り、店の裏側のゴミ置き場などが挙げられます。

これらの場所は、女性客が特に敏感なだけに注意を要します。

また、クレンリネスが悪ければメンテナンスも行われていないと考えられます。

夏に向けクーラーのフィルター清掃を怠れば、当然冷房の効き目は悪くなり、かび臭いような異臭も発生します。

さらに不潔なため、ゴキブリが昼間からテーブルに出没したり、天井や床下でネズミの出す音が店内に響くといったことにもなりかねません。

これらのことでクレームが発生した場合、店長としては何も言い訳できず、仮に謝ったところでその店の悪い印象は決して拭い去ることはできません。

クレンリネスに関するクレームマネジメントの本質は、店長の意識とプライドにあるのです。

店長個人がどれだけプロとしての自覚があり、そのために自己研鑽と努力を日々積み上げているかは、その店のクレンリネスのレベルを見れば一目瞭然です。

クレームマネジメントを通して自店のQSCのスタンダード(基準)のレベルアップを望むなら、まず、店長自らが心新たにクレンリネスの陣頭指揮と率先垂範を行い、P/Aに対しリーダーシップを発揮することが必要です。

7-5より高いサービスを実現させる仕組みづくり

より高いサービスを目指し、顧客アンケートの活用やモニター制度などにより、これらを定期的にチェックしている企業もあります。

さらに進んだ企業では、顧客の「不」と「負」に対しもっと積極的に対応しています。

それでは5つの手法を紹介しましょう。

1.ミステリーショッパーこれは専門に訓練された調査員が、店側にまったく分からないように顧客を装い調査をするものです。

この調査員をP/Aから選別し、訓練して養成しているファストフード企業もあります。

その業態に合った専用の調査用紙を用い、点数で評価します。

顧客満足度調査と商品の品質管理状態やスピード提供、クレンリネスレベルなどをチェックします。

フードサービス業のチェーン店などでは、QSCに関することを主体に各店の点数をつけ、定期的に評価することで各店の注意点や次回までの改善点、目標レベルなどを設定します。

また、順位を発表し店舗に対する報奨金制度の対象としていると

ころもあります。

2.ウオンツスリップウオンツ(潜在的に求めている物や事)とは、マーケティングの考え方にあるニーズ(潜在的に必要とされている商品やサービス)の卵ととらえることができます。

卵とは将来ニーズに発展する可能性の高いことを表しています。

このウオンツを接客サービスに際し、お客さまのボソッと言った一言やちょっとした反応を見逃さずにできるだけ多くとらえ、スリップ(紙片=メモ)として報告する手法です。

例えば、家具店でタンスを購入する際にあるお客さまが「このタンスにホイール(車輪)が付いていれば移動できるのに……」、中華レストランで「この点心は各メニューに2個から注文とあるけど、違う種類を1個ずつ2個ではいけないのですか」、靴の専門店で女性客がサイズ違いを頼まれた際に、その靴だけでなく若干異なるデザインで同サイズの靴を一緒に持参したら大変喜ばれたこと等をP/Aがメモに書いて店長に提出して帰るのです。

この結果、優秀な店長や経営者であればそのメモから顧客ニーズを先読みし、タンスにホイールを付けた実験商品を販売したり、点心の組み合わせをお好みで2個から可能とメニューに表示したり、お客さまが依頼した靴以外にその方のテイストを見越し、依頼された靴以外にデザインや色違いを必ず3足提案し選んでいただく等、さまざまな対応が可能となります。

また、「声なき声」を拾い出すことで自店のサービスレベルや品揃え、快適性や便宜性等に関する問題点など、潜在的に不満の原因となっていることを発見することもできます。

3.ナレッジマネジメントの活用ナレッジとは知恵のことです。

知識とは知っていることであり、これだけでは役に立ちません。

知恵とは物事を知っているだけでなく、それを活用して適切に対応したり処理する能力のことです。

ナレッジマネジメントとは、この知恵を皆で出し合い「蓄積」し「共有」して、皆が「活用」できるようにし、その知恵を出した人とうまく活用してお客さまに喜ばれた人や店を「評価」する仕組みのことです。

例えば、「お客さまにもっと喜ばれるサービスをしよう」とあるローカル30店のチェーン本部がキャンペーンを提案し、夏の2カ月を対象期間にコンテストを実施することになりました。

本部ではお客さまアンケートの点数と客数の前年対比伸び率で評価することを決め、最終審査と成績発表は9月28日に市の公会堂を借り切って行うことにしました。

各店ではP/A全員が知恵を出し合い、ベスト案を1つだけ徹底して実行することにします。

A店は「お客さまには絶対にドアの把っ手を触らせないサービスをする」、B店は「雨の日は傘をさし、駐車場まで送迎をする」、C店は「お帰りにはお客さまが見えなくなるまで、ドアの外でお見送りをする」……などが各店より出され、コンテストが実施されました。

その結果、優秀な成績を出した上位5店が公会堂に集い発表会と最終審査を行

従業員満足度調査顧客満足(CS)度調査と並び、今後必要不可欠となるのが従業員満足(ES)度に関する調査です。

それは言うまでもなく「ハッピーな従業員がハッピーな顧客を創造する」からです。

自社(店)の従業員が、明るく楽しく、やりがい・ふれあいにあふれた、健全・清潔で安全な労働環境で働いているかどうかは重要なことです。

ポイントは、上司とのコミュニケーションや職場内の人間関係、教育・トレーニングに関することやワークスケジュール(月間での時間数)・時給の公平感等です。

特に女性の多い職場ではセクハラ(セクシュアル・ハラスメント=女性に対する性的嫌がらせ)も重要なテーマです。

※セクハラの被害者は女性に限らない。

例えば、店長や店長代理が、軽い気持ちや意識せずにセクハラまがいのことを行っていることがあります。

また、彼らは上司として、時給や労働時間数(ワークスケジュール)の決定や調整を行っています。

その結果、P/Aは弱者の立場となるため、それらの行為に対するクレームを言いたくても言えず、がまんしているようでは大問題です。

これは一つ間違えばパワーハラスメント(上司や経営者が部下に対し、その職権や権力などを盾に取り、部下の人格を無視するような悪口雑言や陰湿ないびり、いじめなどを行うこと。

正しくはモラルハラスメントであり、パワーハラスメントは和製英語の造語)でもあります。

今後はセクハラよりも大きな問題となる可能性が高く、言葉の暴力は上司として十分に注意しなければなりません。

こういったことが起こらないように事前に対処するためにも、年に2回は人事部や総務部からアンケート形式で質問事項を作成し、P/Aの住居に直接郵送するなどして配布します。

店名、勤続期間、担当部署などを記入し、無記名でも可とし秘密厳守で直接回収すると効果的です。

見ることができるのはトップと人事(総務)担当の限られた者とします。

仮に同一店で問題が発生しているようであれば、実態を調査・確認した上で適切な対応を早急に取ることが必要です。

またこの調査は、店長を含め社員の倫理感の向上や自覚を促すことにもなります。

労働環境の整備や改善など内容を点数化して表示し、次回までの目標設定を行い実行(例えば個別面談やミーティングの回数、時給評価の説明など)させること

疑似体験判断トレーニングこの手法は著者が考案したトレーニング方法です。

グループ学習として1グループ6~8名ぐらいが適当です。

できれば新人からベテランまで、男女や役職の異なる方も参加するとよいでしょう。

事前に進行役を決めておきます。

リーダーではないので誰でも構いません。

まず、参加者にこの数週間から数カ月の中で、お客さまから出されたご要望や苦情で大変悩んだことを、1人ずつ題材として決めてもらいます。

進行役が指名するか、自主的に参加者の1人が順に題材としてその内容をグループのメンバーに向け話すことから始めます。

例えば、苦情であれば、何曜日の何時頃のことか。

そのときのお客さまの来店状況や店の人員体制など、できるだけ詳しく説明してもらいます。

そして、その苦情が発生した際に自分は当事者としてどこにいたのか。

お客さまに接するまでの経緯や、初対面のときのお客さまの表情や態度、言葉遣いや口調等も説明してもらいます。

また、苦情が起きたときの付近や店舗内の他のお客さまの状況なども含め、できるだけ正確に現場を再現してもらうのです。

さらに具体的な苦情の内容を、お客さまが言っていたことを思い出し、できるだけリアルに順に表現してもらいます。

ただし、当事者として行ったその苦情への判断や具体的な対応は話さないように事前に注意しておきます。

当事者は、ぎりぎりの所まで話し、進行役に引き継ぎます。

他の参加者は当事者がどのような状況に置かれていたかは分かりますが、その苦情に対しどのように判断しどう対応したか、その結果どうなったかはこの時点ではあえて分からないようにするのです。

進行役は当事者の立場に各参加者を置き換え、疑似体験させることで、「あなたならどうしますか」と各自の答えを求めます。

その際に状況や経緯を再確認するため当事者への質問はよいこととします。

進行役が注意する必要があるのは、答える順番です。

できるだけ、経験の浅い参加者、年齢の若い参加者から順に当て、答えを求めて行きます。

その際のルールは他の参加者が当事者を含め、回答者(疑似体験している人)の話を黙って聴くことです。

また、回答者は、お客さまに対して言うセリフや声の抑揚、態度・動作、表情などロールプレイングのように臨場感を持って行います。

必要により判断や対応の順序などの解説も交えます。

これを進行役も含め、全員が順に行うのです。

回答者を経験の浅い参加者や年齢の若い参加者から行うのは、ベテランの回答者の答えを参考とさせにくくしたり、ベテランの判断が先入観とならないようにするためです。

実際にやってみると分かりますが、経験の浅さや年齢に関係なく新鮮な答えが出ることも多いものです。

ベテランは既成概念的な答えや対応をしがちですが、このようなときに考えさせられることもあります。

また、新人は後から聴くベテランの答えから、より理解を深め対応の方法だけでなく、気遣いの深さや範囲の広さなど

を学ぶことにもなるのです。

誰でもお客さまからの苦情やご要望への対応は、そのときに自分がベストの判断と対応をしたと思いがちです。

しかし、同じことに対応するのでも、さまざまな考え方や対応方法があることを参加者各自が多面的にとらえることが勉強になります。

そして、全員が回答してから、最後に当事者が実際はどう判断し、どう対応したのか、その結果どうなったのかを話すわけです。

その際に自分の取った対応と、参加者のさまざまな意見や対応法を聴いた感想も述べてもらいます。

全員で最後にフリートークし簡単にまとめを行い一人分が終了してから、次の題材(参加者)に進みます。

この間、20~30分程度は必要です。

通常行われるお客さまからの苦情処理やご要望への対応は、翌日の朝礼などで店長が説明し、このような際はこうしてくださいと一方的なことが多いものです。

また、ミーティングで取り上げてもベテランや上司、声の大きな人や図々しい人の意見が優先し、新人は考える余地もなく対応として決まったことも実感が伴わないものです。

この疑似体験判断トレーニングでは、参加者が各自の体験を疑似体験し、全員が当事者として考えることが可能となります。

時間がかかることが難点ですが、さまざまな角度から考え対応する習慣や多くの意見を聴くことで、一部の参加者の偏った判断基準の是正も(本人が気づいて)自主的に行うことが可能です。

経験の浅い新人には、ケーススタディとして一度考えさせているので身につき、実践面ではさまざまな局面に対し応用が可能となります。

第8章P/Aワークスケジュールの作り方P/Aの共感を得て生産性を上げる仕組みを作ろう

8-1日別売上計画の作り方

日別売上計画がなくてはワークスケジュールは作れない稼働時間をデイリー(毎日)チェックし管理するには、後述する標準労働時間の活用と月間売上計画を日別売上高ごとに適正に配分する必要があります。

日別売上計画がなくては、適正なワークスケジュールが組めず、稼働時間のコントロールに結びつかないからです。

日別売上計画を作成する方法は各種ありますが、分かりやすく実用的な前年度の曜日別売上高を基礎とした手法を紹介しましょう。

①前年度の月間売上高を曜日別に分類します(月曜日から日曜日までの各曜日別とすることもできますが、ここでは平日、土曜、日・祭日の3分類とします)。

②月間の各曜日の売上高合計を前年度の月間の曜日別合計日数で割ります。

③前年度の各曜日(ここでは平日、土曜、日・祭日)ごとの1日平均売上高が算

出されます。

④今年度売上高予算の月間の前年対比目標伸び率を前年度の各曜日1日平均売上高③に掛けます。

⑤今年度の各曜日別(ここでは平日、土曜、日・祭日)計画売上高が算出されます。

⑥前年度と今年度との曜日のずれを確認し、売上高を曜日別に割り振ります。

⑦上旬、中旬、下旬や曜日別の特性(毎月中旬に落ち込むとか水曜日がいつも悪いなど)や給料日、ボーナス支給日、祭日、連休、地域催事などを考慮し日別売上高の微調整を行います。

また、前年に異常に売上高が悪い日があれば、日報などにより天候などの原因を探って確認し、今年の売上高をより確率の高いものとします。

⑧今年度日別売上計画の合計額が月間売上計画に等しくなっているか再確認します。

※図表❽-1の具体例は①→⑧の作業を示しています。

この曜日別売上高による手法のほかに、単純に伸び率を前年同日(同曜日)に掛け配分する方法もありますが、いずれにしても⑥、⑦にある曜日を初めとした微調整を行うことが重要です(図表❽-2)。

本部からコンピュータでこれらのデータが送信される店が増えています。

しかし、最新の傾向や状況は店でしか分からないのです。

ノートブック型のパソコンを用いれば、中小店でも店長が前年データを基に簡単に最新情報を入れた日別売上高などの各種データを自分用に加工できます。

操作の簡単なソフトも多く、自己啓発とキャリアアップのためにも、ぜひ、挑戦してみましょう。

8-2ワークスケジュールの作り方

週間部門別人時数の把握ワークスケジュールはお客さまに満足していただき、しかも適正な人件費の範囲で組む必要があります(作成手順は図表❽-3参照)。

そのためワークスケジュール作成の基本となるのは週間部門別売上高です。

週間部門別売上高は日別売上計画を基に部門別に配分し予測します。

スーパーマーケットや複合化したブックセンター(本・CD・AVレンタル・文具品販売)などでは、各部門別に週間売上高を予測し、それらを部門別・品種別作業の時間数に換算する必要があります。

そのためには標準作業ガイドラインを作成しておく必要があります。

これは、週間売上高に対する標準作業量を、部門別・品種別に換算する(割り出す)際に基準となるものです。

次に、原則として各曜日時間帯別に毎週定期的に発生する発注、検品、値付け、棚卸しといった各定例作業を加味し、曜日時間帯別に作業割当てを行います。

このときにポイントとなるのが、後述する[ミニマムスタンダード(最低必要労働時間)+α時間の適正化=標準労働時間数]の考え方です。

この結果、すでに換算した部門別・品種別作業量が週間部門別・曜日時間帯別必要人時数として把握されるわけです。

フードサービス業の場合には部門ではなく、ホールサービスと厨房というように2つに分けて換算すると有効です。

各店の店舗規模や業態、売上規模、調理システム、サービスシステムにもよりますが、曜日時間帯別売上高に合わせて仕込みなどの作業量、サービスレベルの維持などを考慮してホールサービスと厨房とに分け、適正に労働時間数を配分するわけです。

P/A個人別能力と勤務可能時間の掌握ワークスケジュールの線(稼働時間)を実際に引くには、週間部門別・曜日時間帯別必要人時数に対しP/Aの誰をいつ、誰と組み合わせて配置するかということが重要なポイントとなります。

ただ頭数をそろえても(必要人時数を埋めても)店舗オペレーションは回りません。

それはP/A各自の持っている職務遂行能力と勤務可能時間がそれぞれ異なるからです。

このためワークスケジュール作成に当たっては、P/A一人ひとりの個人別能力と勤務可能時間をしっかりと掌握する必要があるのです。

まず、職務遂行能力の基準となるのは各自のトレーニングの進行度とその評価です。

また、各職務に対するチェックも併せて必要となります。

次に各P/Aの動務可能日と月間希望月額(給与)も考慮し、できるだけ公平にワークスケジュールの線を曜日時間帯別に引いていきます。

このときに注意が必要なことは、P/A間のコンビネーションです。

能力だけでなく人間関係などにも配慮する必要があるからです。

リーダーシップのある人ばかりそろえてもチームワークが取れませんし、そのようなタイプの人が1人もいなけ

れば、いざというときに間に合わせることもできません。

ワークスケジュール作成は店長業務の中でも最重要なものの1つといわれるのは、これらのことを多面的にとらえ、しかも人件費管理をして生産性を上げる必要があるからです。

店長が独断的であったり、ワークスケジュールに不公平感があると、店内の人間関係はギクシャクし、おのずとP/Aの定着率は下がります。

従って、P/A定着率は店長の実力のバロメータということもできます。

8-3標準労働時間の設定法

売上別標準労働時間の設定プラン→ドゥ→チェック→アクション→プランというマネジメント・サイクルで、店長は自店の稼働時間数をコントロールする必要がありますが、このプランに当たるものが標準労働時間です。

店舗でお客さまの満足を獲得するためには、売上高(接客数)が変動しても、毎日繰り返す基本的な作業をベースとして、商品やサービスを均一に提供する必要があります。

しかも、店長は人件費管理のために稼働時間数を適正にコントロールしなければなりません。

従って、売上高の変動に合わせた標準のワークスケジュール(作業割り当て)と、その作業をするための標準労働時間数の設定が不可欠となります。

それでは、売上高に合わせ標準労働時間数を設定する1つの方法を提案しましょう。

●最低必要労働時間数の設定店舗オペレーションは売上高(利用客数)にかかわりなく、オープンからクローズまでに準備、清掃、待機と接客サービスなど最低限でも必要なワークスケジュール(作業割り当てによる稼働時間数)があります。

これを最低必要労働時間数(ミニマムスタンダード)と呼ぶことにします。

通常、売上高は平日が低く、土、日・祭日が高くなりますが、日別売上高がいくら低くても最低必要労働時間数は営業上確保しなければなりません。

従って、この最低必要労働時間数を算定基準とし、日別売上高の伸び(客数の増加)に合わせて、標準労働時間数(稼働時間計画)を設定することが可能となります。

ここで留意する必要があるのが、人時売上高と標準労働時間数およびサービスレベルの維持に関する適正なバランスです。

●標準労働時間の設定曜日別売上高の中で最も多い日数は平日(月~金曜日)ですから、平日の目標人時売上高と標準労働時間数との適正な設定が最重要となります。

例えば、月間の目標人時売上高を12千円と設定した場合、売上高の絶対額の多い土、日・祭日にこれをクリアすることは比較的容易です。

しかし、平日で人時売上高10千円以上を達成できていないと、月間でのクリアは原則として難しくなります。

基本的な考え方としては、最低必要労働時間数をベースとして、売上高の伸びに合わせ目標人時売上高と対比させながらバランスを取り、標準労働時間数を設定することです。

また、店舗面積やオペレーションのシステムにより若干の差はありますが、ある一定レベル以上の売上高を超えると、売上高に対し労働時間数を正比例的に増加させる必要はなくなります。

従って、売上高が確実に一定レベル以上となる土、日・祭日は、目標人時売上高を高めに設定した標準労働時間数とします。

図表❽-4は、これらの考え方を基本に標準労働時間を設定しグラフ化したものです。

標準労働時間数と生産性労働基準法の改正に伴い、規模の大小にかかわらず労働時間数を短縮しながら生産性を上げることが急務となっています。

生産性とは労働生産性を示しますが、労働分配率とならび経営戦略上の課題として着実に改善していく必要があります。

人時生産性(人時荒利益)を指標として管理することもできますが、店長レベルでは人時売上高の方がなじみやすく、分かりやすいでしょう。

従って、標準労働時間数は多少きつめに目標値として自店用に作成することです。

次に、その目標値(標準労働時間数)となるように各作業の適正人員や実施方法、実施時間帯や頻度などの見直しを行い、ワークスケジュールを作り直してみましょう。

初めは従業員から愚痴や苦情が出ても、トレーニングなど真剣に店長自ら率先垂範で取り組み3カ月続ければ、お客さまの満足を損なわず少数精鋭を生むことが実体験として理解できるようになります。

8-4P/A労働時間のコントロール法

日別売上計画と標準労働時間による月間計画P/A人件費=時給×労働時間数となります。

この内、主にコントロールできるのは労働時間数です。

なぜなら、時給は競合店との関係もあり地域や世間相場などで、自店だけ低く設定することは不可能だからです。

従って、お客さまの満足を高めながら、P/Aの労働時間数をいかにコントロールできるかが人件費管理の決め手となります。

すでに、日別売上計画の作成法と売上別標準労働時間の設定を学びました。

この項ではこの2つを使い、マネジメント・サイクルにより月間計画を作成し、実際に人件費をコントロールする手法を提案してみます。

それでは、この手法の考え方の具体的な手順をまず説明してみましょう。

①店長は日別売上計画と標準労働時間により週間ワークスケジュール=計画(プラン)を作成し1~2週間前に提示します

②それに沿って毎日、オペレーション=実施(ドゥ)した後、実働時間を集計し、評価(チェック)します③計画と実際との差異が基準値の範囲を超えた場合、店長は翌週以降の週間ワークスケジュールを当初の計画から修正(アクション)=P/A労働時間数を増減し人件費をコントロールしますこの手法の優れているところは、計画と実際との差異が基準値の範囲を超えた場合にコントロール(増減)すべき実際の労働時間数が、実数で明確となる点です。

現在、大多数の店舗で行われているP/Aの労働時間数コントロールは標準化されておらず、店長各自の経験や勘に頼っています。

多店舗化している本部でも、人件費管理に関しては結果のみの評価となりがちであり、人件費コントロールに意識のある店長とない店長では店舗間で格差が生じ、大きなロスにつながっています。

この手法により標準化されれば、コントロール(増減)すべき実際の労働時間が実数で明確となるため、店長がどのように修正行動(アクション)をとったかという過程がポイントとなります。

また、若手でやる気はあるが人件費管理の具体的な手法が分からず困惑していた店長や店長候補も短期間で育成でき、人件費コントロールが可能となります。

人件費デイリーチェックの実際日別売上計画と実績売上高により、累計売上達成率を算出することは通常行われています。

同様に標準労働時間(計画)を算定してあれば、実働時間(実際)により累計労働時間達成率の算出も可能となります。

この手法のノウハウとも言える部分は、この2つの達成率を対比し計画に対する実績売上げと実働時間との達成率の差異率を求めることにより、コントロール(増減)すべき実際の労働時間数を実数で算出することにあります。

●人件費デイリーコントロール表と各数値の算出方法累計売上達成率=実績売上累計÷日別売上累計×100累計労働時間達成率=実働時間累計÷計画(標準)労働時間累計×100達成率差異=累計売上達成率-累計労働時間達成率±3%以内(コントロール不要)±3.1%以上(要コントロール)コントロール時間数=(累計売上達成率-累計労働時間達成率)×その日までの計画(標準)労働時間累計※-コントロール時間数→減少させるべき労働時間数+コントロール時間数→増加できる労働時間数2つの達成率の差異の基準値は±3%以内とします。

基準値を超えたら翌週以降のワークスケジュールで調整することになります。

実働時間の減少が必要な場合(累計売上達成率<累計労働時間達成率)にコントロールしやすいのは、土、日・祭日といった標準労働時間を多く設定してある曜日となります。

逆に実働時間の増加が必要な場合(累計売上達成率>累計労働時間達成率)は、サービスを強化したい時間帯や新人のトレーニングにそれらの時間数を有効利用し

ます。

さらに人件費をデイリー(毎日)でチェックする際に必要な指標が、人時売上高(売上高÷総労働時間数)と人時接客数(来店客数÷総労働時間数)です。

人時売上高は客単価の高いほうが有利になるため、本部などで客単価の異なる店を何店か評価するには、人時接客数も同時にチェックすることが必要となります。

店長が自店をデイリーチェックするなら、どちらか一方で十分です。

ただし、毎日の実績と当日までの累計実績は常に把握する必要があります。

人件費をコントロールするということは、月末での累計実績を結果として目標値の人時売上高(または人時接客数)に近づけることをいいます。

このシステムにも問題はあります。

それは売上規模の低い店やP/A比率の低い店(正社員比率の高い店)では、このシステムを活用しようにも最低労働時間数が多く、調整できる時間数に限界が生じるからです。

業種・業態にもよりますが、このシステムが活用できる一応の目安は、売上規模で月間700万円以上、全体の労働時間数に占めるP/A時間比率が40%以上の店となります。

P/A月間計画労働時間数により作成されたワークスケジュール(週間)通りに全員が勤務し、しかも月間での計画売上高を達成すれば、おのずと人時売上高(人時接客数)の目標値は達成できます。

しかし、実際には売上高の伸び悩みや残業、遅刻、欠勤などが発生するため、毎日、実績をチェックし翌週以降のワークスケジュールで調整しなければなりません。

いくら良い仕組みがあっても店長が意識してコントロールしない限り、目標値は達成できないものです。

8-5ワークスケジュールの基本ルール10カ条

P/A活用の基本対策は企業側が勤務日、勤務時間をフレキシブルに設定できるような仕組みをつくることです。

また、店長が各自の働く目的を的確につかみ、月間で各自が望む給与額(=勤務時間数)に合わせてワークスケジュールを組むことも必要となります。

ただし、ここで忘れてならないのは、あくまでも店側の都合に合わせてワークスケジュールを組むという点です。

そのためには第1章でもすでに触れましたが①曜日別(売上高の大きい店の場合には、売上高に合わせて)に標準的なワークスケジュールがパターン化(定型化)できている。

②各時間帯の基本作業が標準化、単純化、システム化できている。

これらのことが必要となります。

この結果、1日の作業が分業され、その時間帯に入ったP/A各自が責任を果たすことにより、全体として一体化(1日の運営)が可能となるわけです。

具体的には2、3時間といった短い時間でも勤務できるような態勢を店側がつくり、その各時間帯をP/Aに選ばせることにします。

また、主な勤務時間が人により決まってきますが、同一時間帯を受け持つ仲の良い人同士を3、4人組み合わせ、グループとすることも良い方法です。

「3人組」「4人組」と呼ばれるもので、同一グループの1~数人が必ずその時間を埋めて分業責任を果たすものです。

主婦パートは生活費のためだけでなく、生活のゆとりのために働いていることが多いものです。

そのため家事の都合や子供の学校行事、家族や友人たちとの旅行などですぐ休みを取りたがります。

また、子供が小さい場合には急病のため欠勤となることもあります。

この制度を使えばグループ内で互いに都合をつけ、連絡を取り合って店側が要望するワークスケジュールを埋めてくれることになります。

結果として、パート側に連帯感が生まれ定着率も向上します。

第9章P/Aの資格制度と賃金体系の作り方P/Aのやる気と能力を引き出すために

9-1女性パートタイマーを戦力化せよ

女性の労働力なくして勝利なし「年齢3区分別人口割合の推移比較」(図表❾-1)を見ると、2000年を越えた辺りから生産可能年齢人口が2060年近くまで、多少の踊り場はあっても、急激に落ち込むことが分かります。

また、団塊の世代(1047~49年生まれ)を主体に高齢化が一気に進むことも分かります。

2045年頃には65歳以上が人口の50%を占めることになります。

19歳以下の年少人口は2010年を前に人口比率20%を割り、その後も一向に増加する気配はありません。

まさに少子高齢化です。

次に、「女性の就業率向上ケースの前提」(図表❾-2)を見てみましょう。

総務庁がまとめた「就業基本構造調査」のデータですが、2025年の女性の潜在就業率が高水準で維持されることが分かります。

これらのことは、高齢化社会が急激に進行する今後50年間において、女性就労者の労働力に占める割合が高まるだけでなく、主戦力として活用しなければならな

いことを示しているのです。

特に小売業やフードサービス業などのサービス業は、20代の若年層と女性パートタイマーの労働力がなければ、今後も成り立ちません。

従って、女性の労働力を戦力化できるか否かは、企業の存続にかかわる問題としてとらえる必要があります。

女性パートを戦力化するには、女性の働く目的や意識を理解し労働環境を整備することが重要なポイントです。

また、単なる教育・トレーニングシステムによる単純労働者としての育成だけでなく、高学歴社会の中で各自の個性や特性を発揮できる能力開発の仕組みをつくるべきです。

それらは自社独自のパート用のキャリアパスプランとして構築され、多能化(1人で多種多様な職務ができること)や互換性(1つの部署だけでなく他の部署も勤務できること)など、タイトルアップ(上位の職位や職務に昇格すること)に連動した、次項で紹介する加点主義の賃金体系も不可欠です。

女性パート戦力化の基本対策現在、日本における女性パートを含めた働く女性の意識は過渡期にあり、大きく分けると2通りあると考えられます。

1つは積極的により上位の仕事を目指し、仕事に対する責任ややりがいを求めるとともに、職位や時給・資格給のアップを求めるタイプ。

もう1つは、できるだけ責任のない仕事をこなすことで自分が月間で目標とする一定レベルの給料を求めるタイプです。

後者のタイプには能力もあり、責任感があるにもかかわらず、あえて店舗内での責任を負いたくない女性パートも含まれます。

将来は前者のタイプが増加すると考えられますが、現時点では店長としてこの2つのタイプを的確に見抜き使い分ける必要があります。

後者の場合でも、店長は勤務中に要求する作業レベルや勤労意欲に対し基準を明確にし追及しなければなりません。

以下の「女性パート戦力化の基本対策」(図表❾-3)は、これらを基に小売・サービス業向けに10ポイントをまとめたものです。

9-2P/A加点主義の賃金体系の勧め

「ゆとり」と「ふれあい」と「加点主義」が決め手「ハッピーな従業員がハッピーな顧客を創造する」。

これはアメリカのあるフードサービス企業の理念の一つです。

大切なことは働く人の心のゆとりとふれあいのある職場(労働環境)づくりです。

そのためには、「人とふれあうことが好きで接客サービスを通し、お客さまに心から喜んでいただくことを自分の喜びとできる人(ホスピタリティのある人)」を採用することです。

ホスピタリティとは、だれもが持っている人に対する優しさや思いやりのことです。

相手の立場になることができ、相手の痛みや苦しみまでも理解しようとする心が、その本質にはあります。

また第1章でも触れていますが、自分を生かせる仕事そのものの面白さと、共感を生む企業としての経営理念や使命感といった企業フィロソフィ(哲学)、さらに職場の良好な人間関係が不可欠です。

働く目的として、P/Aも生活のゆとりと社会との接点を求めているのです。

大多数のP/Aは働くことを通して、近所や自分の学校以外の新しい仲間と知り合い、「職場を、仕事を通したやりがいと気の合う仲間とのふれあいの場」にしようとしています。

自分が店に行くことが楽しく、そこにいて仲間の一人として役に立っていると実感でき、みんなで力を合わせ何かをやり遂げたいのです。

何かとは、お客さまに心から喜んでいただき、できれば感動や感激までも共有することです。

そこにはわれ先にとがむしゃらにがんばるより、それぞれが個性を発揮し合いながらみんなで仲良くチームワークを組み、総合力を高めようといった風潮が強いのです。

店長はサービス面では、自店の業態が求めるサービスコンセプトを理解させることが重要です。

その後、まずマニュアルに示した基本サービスを徹底する教育トレーニングを実施します。

これらの基本サービスは、どんな経験者であっても定型サービスを守らせ、徹底して完全にできるまで次のステップに進ませないことです。

その上でお客さま最優先の考え方をベースとし、各個人の個性を生かせるよう柔軟性を持たせると効果的です。

そして彼らが自店の各種作業やサービスを通して能力を発揮するに従い、賃金体系面でも、それを認め評価する加点主義の仕組みづくりを自社で行うことがポイントとなります。

また、企業の経営理念をベースとするP/A個人の人間性や創造性を高めるための能力開発や教育研修システムも不可欠です。

P/A職務資格給制度による加点主義の賃金体系づくり職務資格給制度の導入により、今までの弊害の一つであった継続的な時給アップをなくすことが可能となります。

これまで他社との時給競争や定着を意識するあまり、大多数の企業で定期的な時給アップを継続して行ってきました。

しかし、このことがP/Aの時給を年功序列的にし、「古ダヌキ」をはびこらせる結果となっていることが多いのです。

失礼な言い方ですが古ダヌキは、古いだけに要領が良く、仕事はあまりせずグループ化し、優秀な新人パートをいびることにより自分たちの職域を守るといった風潮をよく見掛けます。

結果として優秀な新人パートは育たず、辞めるか古ダヌキと同化していきます。

もっとひどくなると若手社員の指示を無視し、逆にアゴで使うといったことも起きています。

職務資格給制度はこれらのことを防ぐことができます。

自店商圏内への大型店出店などのため地域の時給が上がれば、調整的に自店の基本時給アップも必要となります。

しかし、今まで通常行われてきたような定期的な時給アップは、職務資格給制度導入後1年で頭打ちにすることができます。

導入後はやる気と努力による仕事への習熟度により、資格をきちんと取った人が優遇され、資格が取れない(取らない)生産性の低いパートはおのずと給与に限界を来し、辞めていくといったことが実現されます。

がんばった人ががんばっただけ評価される公平な加点主義の仕組みが、職務資格給制度には重要です。

また、誰でも下位の資格から順に上位の資格へとチャレンジでき、責任や権限を与えられて仕事そのものにもやりがいや達成感を味わうことも可能となります。

やる気のある優良な新人P/Aが仕事を順に覚え、社員並みの職務を果たすようになるに従い、賞与を含め賃金も上がるようにします。

また、希望によっては準社員として福利厚生面でも優遇されるように配慮することも可能です。

企業としても生産性が上がれば効率経営に結びつき、社員の労働時間短縮や年間休日の増加も可能となります。

職務資格給制度のつくり方その第一歩は「パート・アルバイト」という呼称を変えることです。

この言葉には、企業側と働く側の双方に既成概念的な「甘え」が残ります。

それはパートだから無理だ、そんなこと言ってもアルバイトだから分からない、といった企業側の一部にあるあきらめのような考え方です。

逆にP/A側には、「責任を持ちたくない

からパートをしているのに」「時間から時間までいればいいんだ」といった、働くことに対する低次元のモラールが一部に存在することも事実です。

従って、これらを双方から払拭(ふっしょく)するために、自社でP/Aに対する呼称をつくり、オリエンテーションの際に明確にその理由を伝えることです。

第1章でも触れていますが、例えば、「パートナー」=働く仲間・共同経営者、「クルー」=乗組員・同じ目的地に向かい飛行機や船内で各自が役割分担を果たす運命共同体の一員、「メイト」=仲間・チームメイトなど、自店の業種・業態に合わせ適当な呼称を採用すればよいでしょう。

また、資格を取得して定型業務から応用判断業務や管理業務が加わり、より上位の業務を任せられるに従い、資格名(タイトル)もパートナー、トレーナー、時間帯責任者などと変化させるようにします。

また、社員のキャリアパスプランと同じように各資格に対する研修段階では、トレーニーをつけると分かりやすくなります。

具体的にはトレーニー(パートナーとなるための研修生・見習い期間中)、トレーナートレーニー(トレーナーとなるための研修生・見習い期間中)、時間帯責任者トレーニー(時間帯責任者となるための研修生・見習い期間中)となります。

より細分化するには、Cパートナー、Bパートナー、Aパートナー、同様にCトレーナー、Bトレーナー、Aトレーナー等にすればよいでしょう。

この場合、上位の資格をAランクとした方が分かりやすくなります。

外資系の著名なカフェ業態を展開する企業では、グリーンビーンから始まり、イエロービーン、シナモンローストといったように、コーヒー豆がローストされていく過程で変化するネーミングとしています。

自社の業種・業態に合わせたこういった工夫も興味深く、ユーモアもあり参考とすべきでしょう。

ここではパートナー、トレーナー、時間帯責任者を使用しています。

ホールとキッチンを分けた方がよい場合は、ホールCパートナー、キッチンCパートナーといった呼称とします。

職務資格給制度をつくるには現行業務の分類から入る必要があります。

業種・業態や規模により異なりますが、一般的なフードサービス業であれば、店舗オペレーションに関する基本業務、応用判断業務、管理業務と大きく3つに分類することができます(図表❾-5)。

表中の「タイトルアップ」とは、トレーナーが担当パートナーの教育・トレーニングを行い、上位のタイトル(肩書き=職位)に就けるようにすることを言います。

次に、これらの各業務には研修期間と習熟期間(一人前にこなせると認められるまでの期間)を設定します。

優先順位は企業により異なりますが、勤務初日から戦力となり、しかも絶対量の多い作業を基礎(定型)業務から選び、トレーニングプログラムを作成します。

当然、各作業はマニュアルを作成し、標準動作や標準時間が設定されている必要があります。

同様に、応用判断業務や管理業務にも研修期間と習熟期間を設定します。

資格要件としては、すべての定型業務を完全にマスターした後、一定の習熟期間を経過していることを次のステップへの必要条件とします。

業務内容によっては適性があるため、電卓による簡単な計算や実技テスト、ペーパーテストをタイトルアップ時に

資格審査として段階別に行います。

トレーナー以上のタイトルアップはエリアマネジャーの面接も行います。

また、トレーナーと時間帯責任者の有資格者には、年間2、3回のコミュニケーションやトレーニング、リーダーシップ等に関する理論を学んだり、グループ学習を行う研修会を、本部主催で開催する必要があります。

各自の実務能力アップだけでなく、自社の経営理念の徹底と経営方針のスムーズな伝達確認、プライドやロイヤルティの醸成に効果を発揮するからです。

特に女性パートやフリーターには効果的です。

研修後は経営トップも交えた懇親食事会などを開催するとよいでしょう。

時間帯責任者エリア会議では新商品開発、フェアやイベント企画などクリエーティブなことにも参画させ、自社の一員として本人のやりがいに結びつけることも重要です。

パートナーC・B・Aまでの業務は、店舗における戦力としての中心業務であり、資格とはいっても賃金的には時給に反映される部分となります。

採用した全員をここまで育成する仕組みをつくることが、職務資格給制度をつくる上で基礎的なポイントとなります。

応用判断業務が一人でできるまでに育成されたパートナーに対し、次の目標となる管理業務の資格を初めから設定しておく必要があります。

それは基本的には定型業務と応用判断業務を教えるための「トレーナー」や店長の代行を行う「時間帯責任者」と呼ぶ資格となります。

呼称は企業により適切なものを付けますが、要するに正しい教育・訓練を受けたベテランP/Aが新人P/Aに、順を追って教えるための仕組みとタイトルをつくるわけです。

また、店舗社員トレーニー研修では、新卒・中途採用ともまず時間帯責任者を目指すことになります。

ここまではP/Aも社員もまったく同じ教育トレーニングの研修プログラムを活用します。

その結果、P/Aでも時間帯責任者となれば社員の代行が正確にできるようになるわけです。

また、社員は時間帯責任者となるまでに、パートナーとして教わる経験とトレーナーとして教える経験を必然的に積むことになります。

その後、社員は時間帯責任者としての習熟期間を経て、アシスタントマネジャー・トレーニー(店長代理見習い)としての研修プログラムに入るのです。

職務資格給制度によるP/A賃金体系のすすめ基本時給自体は、1年間に限り一定額の範囲で定期的に上がるようにします。

例えば図表❾-7「パート・アルバイト資格等級制度」、図表❾-8「職務資格給制度の賃金体系」を基にすれば、入店後3~4カ月ごとに時給が10~20円ずつは昇給しますが、1年経過後は基本時給の昇給はないことにします。

この間に原則としてトレーニー→Cパートナー→Bパートナー→Aパートナーとタイトルアップするわけです。

原則としたのは、一定期間にわたり各職務資格のトレーニングをして

も、身につかなければ(タイトルアップできない場合)時給はそこでストップしてしまうのです。

例えば、700円がCパートナーの最低時給、750円がAパートナーの最高時給(基本時給の範囲内)とし、1年後でもBパートナーのままであれば720円ということもあり得るのです。

また、トレーニーとしての研修期間中は一人前ではないとして、一定時間を目安に低い賃金を設定する企業もあります。

例えば、仮にCパートナーの最低時給が700円とすれば、トレーニー期間中は30円低い賃金・670円、目安50時間などと設定するわけです。

この50時間を過ぎてもCパートナーの職務が身に付かなければ、低い時給のままさらにトレーニーの期間が延長されることになります。

トレーニーからCパートナー(時給700円)として定型作業を完全にマスターし2~3カ月の習熟期間が経過すると、Bパートナーとしての研修がスタートします。

その仕上げとして応用判断業務の資格試験が受けられます。

応用判断業務ではペーパーテストと実技テストで各85点以上獲得すれば合格とします。

Bパートナー(時給720円)として合格すれば、さらに3~4カ月の習熟期間を経て研修とテストを受けてAパートナー(時給750円)へとタイトルアップするのです。

トレーニーから1年を目安に各習熟期間と各担当トレーナーからの教育・トレーニングを受け、Aパートナーにタイトルアップしたのです。

その後の管理業務に関するC・B・Aの各トレーナーとしての資格は、習熟期間として最低でも各6カ月間を要することとします。

また、各習熟期間経過後でないと、次のトレーニー研修と資格試験は受けられない社内規定とするのです。

従って、この例では、最速で1年が経過した時点でCトレーナーとしての研修がスタートすることになります。

また、管理業務を行うCトレーナー以上の資格には、毎週3日間・月間80時間以上勤務、勤続1年以上、年間日曜・祭日の勤務実績60%以上などといった資格条件を付けることも重要です。

これは店舗への貢献度をチェックする指標となります。

いくら職務が身についても、店舗にとって必要な日や時間帯にワークスケジュールに入れなくては機能しないからです。

その代わり、この例ではさらなる段階的な資格取得により、順に時給アップや毎月の職務資格手当が支給されるようになっています。

さらに上位の資格取得後、本人の要望があれば準社員としての待遇も保証されることにするのです。

この例では、Cトレーナーまでが時給評価として最高時給が800円に設定されています。

その後、Bトレーナーには職務手当5000円、Aトレーナーには7000円、時間帯責任者には1万円が支給されるようになっています。

また、Bトレーナー以上には対象期間6カ月間の職務手当を除く月間平均賃金の30~100%が店舗実績に合わせ、業績賞与として配分されるようにするのです。

例えば、ある企業の品川店に勤めるAトレーナー鈴木さんの6カ月間の職務資格手当を除く合計賃金は72万円だったとします。

対象期間である半期(6カ月)の店舗予算の売上高達成率は97%、店舗貢献利益達成率は98%であり、この企業の品川店のBトレーナー以上に対する業績配分評価は80%と仮定します。

この場合のAトレーナー鈴木さんの業績賞与は6カ月間の合計賃金720,000円÷6カ月×80%=48,000円となります。

また、Bトレーナー以上の各資格(タイトル)ごとに、業績配分の比率に段階を持たせ変えることも考えられます。

この他の手法としては、図表❾-5、❾-6の「フードサービス業のパート・アルバイト職務資格制度」にある業務のうち、各セクションの基本サービスと基本作業を除く各業務に、職能手当を個別に設定して賃金体系を構築する方法があります。

仮にこれを「職能手当型の賃金体系」と呼ぶことにします。

具体的にはホールのパートナーであればサービスに関するすべての業務、キッチンのパートナーであれば仕込みと調理、双方のデイリー&ウイークリーの清掃・点検・補充などは、担当者として当然の職務として基本時給700~750円の範囲で評価するのです。

それ以外の応用判断業務や管理業務を職能として、レジ締め手当30円、備品・消耗品類発注・検収手当20円、予約電話の承りと各種セールス対応手当20円、週間および月間棚卸し作業と各棚卸し表記入報告手当20円、基本業務に関するトレーナー手当50円などとするのです。

各個人の特性や得手・不得手などを考慮しながら多能化を図るには、職能手当型の賃金体系の方が職務資格給制度に比べ融通性があることがメリットです。

また、キッチンとホールの双方の業務ができる互換性を持たせることも、業態によっては導入しやすいでしょう。

この場合でも前述の職務資格Bトレーナー以上に相当する管理業務担当のトレーナーおよび時間帯責任者には、上級トレーナーやパートナーマネジャーといったタイトルに合わせた資格給(手当)として支給するほうが効果的です。

タイトルに対する意識とプライドを持たせることができるからです。

仮に月間100時間以上勤務するトレーナーであれば、さまざまな職能を足して結果的に時給を70円上げる(100時間×70円=7000円)より、上級トレーナー資格手当7000円としたほうが、本人もその資格の価値と重さを感じられると考えるからです。

今までの年功序列型の賃金体系は、例えば、6年勤務しただけで、基本時給700円からスタートした者が職務や職能を正しく公平に評価されることなく、いつの間にか850円になっていました。

仮にこのP/Aが今月100時間働けば、賃金は850円×100時間=8万5000円となります。

しかし、今回提案した「職務資格給制度」の場合には、少なくともBトレーナーの資格(タイトル)にならなければ100時間働いても得られない金額です。

また、「職能手当の賃金体系」の場合でも100時間働いて8万5000円を得るのは大変です。

基本給の最高額750円に100円を上乗せするために、何らかの職能を多岐にわたり身に付けるか、トレーナーの資格を取得する以外にありません。

これら職務や職能で明確に評価される加点主義の賃金体系を、新業態や新店がオープンする際に導入することは容易です。

しかし、新しい賃金体系を既存店で採用するには、まず業務の棚卸しから入る必要があります。

次に自社に合う賃金体系を決め、それらの個別業務を資格制度か職能により明確

に再構築し明文化します。

その間にP/A全員に対し「パートタイマー/アルバイト雇用契約書」(図表❾-9)を、新しい賃金体系のスタートに合わせて更新できるようにします。

新賃金体系導入の3カ月前に、パートナーには本部通達として書面で知らせます。

次に各店で店長が数回に分け、全員に説明会を開くとよいでしょう。

さらに個別面談により、新システムとなった場合の個人別時給評価を説明し、現状の時給との差額を埋めるための資格や職能に関する不足部分を明確にします。

そして、導入までの3カ月で現状の時給額に近づけるよう、本人の認識と努力を促すのです。

導入後の評価でそれらの不足部分が補完できない場合、時給が下がることを理解してもらいます。

中には、それなら辞めますというパートナーも出ることが十分予想されますが、その分は新人で補えるように、現パートナーへの紹介依頼や求人広告などで事前に対応しておきます。

そのためにも導入時期はピーク月やその前を避け、年間を通し通常季節指数の低くなる9月から11月前半までの時期を選ぶべきです。

小売業の職務と職能については図表❾-10を参照し、自社(店)用にタイトルと業務の再構築を図るとよいでしょう。

その後、本文を参考にシステムづくりを行えば、自社への導入もスムーズにいき、加点主義の賃金体系による生産性アップの仕組みが構築できます。

第10章P/Aの人事考課とカウンセリング良い人間関係の職場をつくるために

10-1P/Aの人事考課と育成法

店長の最も重要な職務の1つは、社員やP/Aで構成される部下の教育トレーニングによる継続した育成です。

「基本心得チェックシート」(図表❿-1)や「職務基準チェックシート」(図表❿-2)は、各個人別に仕事に取り組む基本姿勢や勤務態度、職務に関する確認や実施レベルなどを評価するものです。

これらに関する評価は一定期間(1~3カ月)ごとに、本人による自己評価と上司(店長)による評価(人事考課)で行われます。

4段階としているのは、あえて評価に誤差を生じさせるためです。

本人に対しては、勤務態度や職務が要求する具体的な作業内容やポイントを確認し自覚してもらう意味で実施されます。

また、店長が各個人の現状レベルを一定期間ごとに改めて考課し把握するために行われます。

店長は個人別に知識や技術で不足している部分を見つけだし、次回の人事考課までに育成の目標レベルを設定し、教育指導の優先順位をつけるわけです。

店舗での教育は個別的・計画的・重点的・継続的に実施する必要があります。

優先順位は自店の店内組織や現状レベル、時期により変わります。

さらに週間単位でテーマを決め、教育トレーニングの重点ポイントをおさえておけば、毎日の仕事を

しながらでも、手空き時間やピークの時間帯に各部下に教えることが可能です。

P/Aにも各自の現状レベルを認識させる必要がありますが、それは個人面談によって実施されます。

具体的にはこれら職務基準チェックシートの中から本人と上司の採点のギャップのあるものを拾い出して行います。

それらを本人から聞くことを主体として面談を進め、店長としての正しい評価基準を説明して本人にも納得してもらうのです。

その意味ではこれらチェックシートは、コミュニケーション・ツールととらえることもできます。

店長の職務はこのように人事考課と個人面談、OJTを通して部下に目標設定し育成することなのです。

そして、その過程で自分自身もいつの間にか部下を通して成長していることを自覚するとともに感謝すべきです。

10-2P/A個人面談とカウンセリングの方法

お客さまに対しホスピタリティにあふれ、マニュアルを超えた個別対応のできる素晴らしいサービスを実践するには、各従業員の持つ資質や能力の良い面を積極的に引き出す必要があります。

また、仕事や職場の人間関係などに関する個人的な悩みや問題点を聞き出すことで、本人の心情を理解し、それらの解決策を見いだせるように協力することは上司としての務めです。

その基本となるのが、上司が部下に対して行う「ラインカウンセリング」です。

店長や経営者が従業員に対し、個人対個人として従業員の話を聞くことでカウンセリングは実施されます。

特にピープルビジネスといわれるサービス業では不可欠の技法であり、管理者としてマスターしなければならない能力の1つです。

定期的なラインカウンセリングを従業員全員に実施することで、「明るく・楽しくやりがい・ふれあい」にあふれる人間関係の良い職場が築かれ、上司としてのリーダーシップも醸成されていくのです。

説得ではなく納得

管理者として部下を個人別に見たとき、店内で発生するオペレーション上のさまざまな作業やサービスを「できない人」と「やれない人」がいます。

これらの部下には、主にOJTを通して不足する知識と技術を与えれば「できる人」「やれる人」に育てることが可能です。

この場合のポイントは各人に不足する知識や技術を指摘し、それらに対する「答え」を与えることで解決できます。

要するにヘッドツーヘッド(頭から頭へ)がテーマとなるわけです。

問題はこれから述べるP/Aたちです。

それは「できるのにやらない人」と「そこそこにやっている人」です。

十分な知識や技術がありながら、それらを発揮しない(したがらない)人たちです。

このような場合には、OJTやOFFJTをしたところで効果はあまり期待できません。

大切なことは、本人になぜしないのかを気づかせ、こちら(管理者)もそれに対応して「自分からやる人」になれるように導くことなのです。

この場合は先程の「答え」ではなく、双方が話し合いの中から「応え」を導き出すことが重要なポイントとなります。

要するにハートツーハート(心から心へ)がテーマとなるわけです。

なぜ、そうしてしまうのかを本人に考えさせ、ハートツーハートによる「応え」を導き出す技法が、個人面談を通して行われるカウンセリングなのです。

カウンセリングはこれらの問題を抱えたP/A以外に対しても行わなければなりません。

管理者が各P/Aが持っている、それぞれの人間的な魅力や個性の素晴らしさを発見し、素直に認め積極的に褒めることで、ホスピタリティや人間性がさらに発揮されるようになります。

その結果、仕事への前向きな姿勢が芽生えたり、マニュアルを超えた個別対応のサービスが実現されるようになります。

カウンセリングの基本は、まず相手の話をしっかりと心を開いて聞くことから始まります。

その結果、上司から説得されて何となくやらされているのではなく、自分で納得した上で自分の意志により積極的に行動を起こすことになるのです。

個人面談においては、上司が聞き役に徹するという基本姿勢が重要です。

1~3カ月に1回のペースで各部下に個人面談(カウンセリング)を重ねることで上司への「信頼感」が生まれます。

管理者として日常の言動がきちんとしていれば、やがてそれは「敬服」に進展し、最終的には「権威=リーダーシップ」に昇華されるのです。

カウンセリング5つの基本①まず、積極的に聞くことで相手を受け入れよサービス業の店長や経営者は仕事柄、話すことが得意な人が多く、説得力にも自信を持っています。

ところがカウンセリングでは、これが災いすることを肝に銘じなければなりません。

それはカウンセリングをしているつもりで、実は一方的に話し続け説教になっていることが多いからです。

優秀なセールスマンほど、話し上手よりも聞き上手が多いと言われます。

人は誰でも自分の話に耳を傾けてもらえると心地が良いものです。

その結果、そのセールスマンを信頼し納得して商品を購入してしまうのがその理由です。

商品ではなく人柄が買わせたのです。

従って、上司としてカウンセリングを行うには一切、批判的な態度やその人に対する先入観を捨てることです。

そして、積極的に聞くことから始めなければなりません。

少なくとも7:3か8:2くらいで相手に話をさせ、自分が常に聞き役に回ることを心掛けなければなりません。

②おうむ返しで確認せよ心を開いて本当に聞くためには、積極的なあいづちが必要となります。

基本形は「……こうしたんです」と言ったら、「そうなされたんですか」と、相手の言ったことをそのまま返す「おうむ返し」です。

さらに「それはよかったですね」「さぞ驚かれたでしょう」「それからどうなされたんですか」といった、話の潤滑剤とも言える誘いのあいづちも必要となります。

重要な点は、テクニックではなく心から耳を傾けあいづちを打つことです。

できるだけ相手の立場になって傾聴するのです。

③質問によりリードせよさらに何を言いたいのか質問を交えながら話を誘導し、相手の話や言い回し、表情から心情や感情を読み取り、話の内容を整理し要約するとともに明確化して相手に返すことです。

「要するに……、ということなのですね」「……はどう感じていますか」などがこれに当たります。

人間は誰でも向上心があり、自分自身に至らない点があれば、それを改善したいと思っています。

また、各自がプライドを持ち、常に自分を良く見せようと思っているものです。

大切なのは相手の性格や特質を知り相手の身になって考え、なぜそう言うのか、なぜそうしているのかを判断することです。

④具体的に相手を支持せよ話の中で良い点があれば、具体的にその行動を認め積極的に褒めます。

ポイントは成果やその成果を上げるために、どのような努力をしたか具体的に聞き出し褒めることです。

「最近、サービスの……がとてもきめ細かく気配りできるようになったと感じるのがですが、どんな風に努力したのですか」「ほう、それは素晴らしい。

すごく参考になるな。

今度はほかのパートの人たちにもトレーニングで使わせてもらおう」などです。

褒められ認められて悪い気持ちになる人は誰もいません。

表情豊かに心から、照れずに褒めることです。

⑤最後にまとめをしっかりとせよカウンセリングの最後に大切なことは、より良くなってもらうために何か1つは相手にテーマを与え、相手の口から言わせたり、相手に思いつかせることです。

人は誰でも自分で言ったことや自分の意思で決定したことが、行動の原動力としては最も強いものです。

相手自身に、ここは直さなければ、この点はもっと努力します、と言わせたり感じさせられるようにカウンセリングを導き、終わらせることができればベストです。

これらは何度も言うように、心を開いて聞くことで、相手も心を開き感じても

らえることなのです。

また、「店長として私のやり方に疑問や問題があれば、何でも言ってみてくれませんか」と個人として相手の意見を聞く姿勢を持つことも重要です。

例え何を言われても、その場では弁解や理由を説明せず、上司としてなぜそのように受け取られたかを反省すべきです。

その「応え」は、その後のミーティングや日ごろの行動を通し、店長として背中で示すことなのです(図表❿-3)。

事前準備が成功の決め手ただ単にカウンセリングをすればいいというものではありません。

全員にするには、誰からどういう順序で行うことがよいのか。

相手により何と言ってカウンセリングに呼び掛けたらよいのか。

カウンセリングをする時間や場所はいつ、どこが適切なのか。

はじめに何と声を掛けるのか、どこでどのように座り何から話したらいいのかなど、事前準備のポイントはいくらでもあります。

また、相手によりテーマを絞り、面談の内容も使い分ける必要があります。

例えば、「最近、クレンリネスの維持ができていないが、どうしたらよいと思いますか」と引き出したり、相談する手法や「今度、サービスをこうしてみたいが、やってもらえないだろうか」と頼む(押しつける)手法などがあります。

いずれにしても内容やテーマにより、その主旨をきちんと説明し個人面談を成功させたいものです。

人やカウンセリングの内容によっては、1回ではうまくいかないこともありますが、聞き役に徹し個人面談の回数を重ねることでお互いが理解でき、コミュニケーションも取れはじめ人間関係は徐々に潤滑さを増していくものです。

店長として重要な点は、相手の良いところを素直に認め、積極的に伸ばすことで欠点を減らすといったプラス発想の姿勢を常に取ることです。

そのためには、上司としていつも明るく公平に部下と接することを努力すべきです。

P/Aやってはいけないべからず100

①ハウスルールべからず10②接客担当べからず35③お客さまからの苦情対応べからず15④調理担当者べからず40「①ハウスルールべからず10」は第3章1で既に紹介していますので、ここでは割愛します。

これらは全業種・業態で使用できる内容となっています。

冒頭の「②接客担当べからず35」以降はフードサービス業を主体にまとめてあります。

これらを参考に自店の業種・業態やサービスレベルに合わせ内容をアレンジし、トレーニングの際などに使用すると新人P/Aにも分かりやすく大変便利です。

また、ベテランのP/Aに対しては基本の確認となります。

さらに、お客さまや働く仲間に対し良いと思うことなら、これらの「べからず」以外であれば、自分か

ら積極的に行動することを奨励します。

「してはいけないマニュアル」として活用し、これらのこと以外は自分で良いと思ったことはどんどんと積極的に行動しなさいと指導することもできます。

その結果、自主性にあふれた各自の個性を生かしたサービスや明るく楽しい職場環境がはぐくまれます。

②接客担当べからず35●サービス係の基本■ユニホームに着替えたら身だしなみをいい加減にするべからずユニホームは店の看板を背負って歩いているようなものだ。

いつも清潔で汚れのないものを着用し、化粧や髪の毛、アクセサリーもハウスルールに従うことが決まりである。

名札もしっかりとつけ、靴のかかとも踏まぬこと。

■何があっても店内を駆けずり回るべからず何かと急ぐ気持ちは分かるが接客係のあなたが店内を駆けずり回ったところで、料理提供時間などが早くなるわけではない。

むしろお客さまは落ち着かず、かえって食事がまずくなる。

■待機中にだらだらしたり、作業中もでれでれと歩くべからず待機中も客席や入り口に目を配り、気がついたらすぐにテキパキ、キビキビとスマートに動作を行うのがあなたの仕事だ。

ホールは舞台、あなたはお客さまから常に見られているスターと同じ。

自分の役を立派に演技せよ。

■常にお客さまに注目し、スマイル&ハッスルを忘れるべからず勤務中はどんな場合でもお客さまに注目し、お客さまの立場で何をしてほしいか考えよ。

お客さまから言われる前に求めることに気づき、それをするのがサービスだ。

一生懸命、がんばりながら、ほほ笑みも忘れずサービスせよ。

■お客さまが呼んだり手を上げたら用があっても無視するべからずお客さまに呼ばれたら、できる限り最優先でその要望に応えるのが接客係の基本だ。

待機中ならすぐお客さまの所へ行き、作業中でもお客さまに「ただ今すぐに伺います。

しばらくお待ちください」と一声掛けてから作業を続ける。

●入店時と新客作業■「いらっしゃいませ」のタイミングを逃すべからずたくさんの店の中から、わざわざあなたの働く店を選んで来店してくださったお客さまに、タイミング良く「いらっしゃいませ」を、明るくはっきりと言うことが接客の基本だ。

全員の声がこだまする店はチームワークも良い。

■働く仲間の「いらっしゃいませ」を無視するべからず「いらっしゃいませ」はお客さまの来店を告げる合図だ。

作業中以外はすぐにあなたも「いらっしゃいませ」を言い、サービスステーション付近なら何人か確認し、新客作業

(水、おしぼり、メニュー等)の準備をせよ。

■入店したお客さまが通過する際に、ぼけっとしているべからずお客さまがあなたの前を通過するときは、待機中や作業中にかかわらず必ずいったん止まり、お客さまの方を向き、目を見て「いらっしゃいませ」と軽くおじぎをしなければならない。

歓迎期待の心理に全員が応えてこそ、地域一番店だ。

■新客作業はすべての動作の基本。

いい加減な気持ちで行うべからず入店時の「いらっしゃいませ」と新客作業がその店の第一印象を決める。

丁寧に確実に心をこめて行う必要がある。

客席に行ったら「いらっしゃいませ」を丁寧にはっきりとお客さまの目を見て言い、次にサービスに入る。

■水やお茶の提供は、お客さまの口の触れる部分を持つべからず新客作業や中間サービスで水グラスや湯飲みを持つ際には、必ず容器の半分より下を持つようにして提供したり、つぎ足しを行わなければならない。

勤務に入る前や休憩の後なども手を洗い、常に滑潔に留意するのも常識だ。

●オーダー受けとセッティング■メニューを見て注文の決まったお客さまに手を上げさせるべからずお客さまに言われる前に気づくのがサービスだ。

メニュー選びが終わりメニューブックから目線を外したときやメニューブックを閉じたときがオーダー受けのタイミングだ。

すかさず「お決まりでございますか」と客席に行こう。

■よく出ている商品やフェアーメニューの商品知識を忘れるべからずオーダー時によく内容を聞かれるメニューの商品知識は、あなたの言葉で説明できなければならない。

上司や先避がどのように説明しているか研究し、お客さまの目に浮かぶようにおいしく楽しく、正しく言えるようにせよ。

■忙しいときほどテーブル番号の記入や入力を間違えるべからずオーダー受け時にテーブル番号が間違っていると、できた料理が間違った番号のテーブルに当然運ばれる。

運ばれたお客さまも迷惑なら、オーダーしたお客さまも迷惑だ。

あなたの少しばかりのうっかりミスが、大きな苦情に発展する。

■どんな場合でもオーダー通しを遅れるべからずお客さまの苦情で最も多いのは「料理提供時間が遅い」というものだ。

オーダーが通らなければ調理場は料理が作れない。

オーダーは受けた順に、できるだけ早く、一組ごとに正しい内容で調理場に通さなければならない。

■オーダーを受けたテーブルの料理セッティングを忘れるべからずオーダーを受けたテーブルは、すぐに責任を持ってセッティングをするくせをつける。

料理が運ばれてから慌ててセッティングしたのでは、お客さまが不愉快になるし、料理を運んだ従業員にも迷惑がかかる。

一つ一つの作業を確実に行うべし。

●料理提供■出来立ての料理のおいしい提供タイミングを逸するべからず

調理場が心をこめて一生懸命に作った料理だ。

熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに最優先で提供する。

熱々の鉄板のジュージューする音、めん類やスパゲティのシコシコしたおいしさ等が料理の命である。

■ライスやサイドメニューなど調理場との連携を忘れるべからず調理場の料理を提供する順やタイミングに合わせて、ホールサービス側も手際良くライスやみそ汁、サイドメニュー(付け合わせ)を準備しなければならない。

そうしないと結果的に料理の提供が遅れ、お客さまが迷惑する。

■料理提供前に盛り付けやセットの内容等、確認を忘れるべからずディシャップ(配膳台)に料理が上がったら、ホールサービス側もお客さまの目で点検しなければならない。

盛り付けや分量は問題ないか、焼き具合や揚げ具合はちょうど良いかなど、もし、基準と異なれば調理責任者に確認せよ。

■お客さまが楽しみに待つ料理を何も言わず、乱雑に扱うべからずいくら忙しくても料理提供時に「お待たせいたしました」は必ず言う。

あなたのサービスは一言添えることで輝きを増す。

また、料理の盛り付けには向きがある。

料理の正面をきちんとお客さまに向け丁寧にそっと置くこと。

■料理提供後、手ぶらでサービスパントリーへ帰るべからず料理を運んで客席まで行ったのだから、帰りは必ずそのテーブルや近くのテーブルを見回り、中間下げ(食事中でも食べ終わり不要となったサラダやスープの器などの下げ)を行う。

サービス係は助かり他の仕事や気配りができる。

●中間サービス■料理を提供した後も担当の客席に気を抜くべからず本当のサービスは、料理を提供した後にどれだけフォローできるかである。

料理はすべて間違いなく出ているか。

ライスや付け合わせのソースなど不足していないか。

追加オーダーや水、お茶、コーヒーの補充や灰皿交換などいくらでもある。

■自分の承ったテーブルの商品提供は最後まで責任を忘れるべからずお客さまは、オーダーを受けたあなたが自分たちのテーブルの責任者だと思っている。

他のサービス係が料理を提供してくれたり手伝ってくれても、最後まで確認はあなたがしなければならない。

休憩等、引き継ぎのときも要注意だ。

■用もないのにサービスパントリーにたむろするべからずお客さまに対する気配りがなくサービスレベルの低い店では、とかく従業員がパントリーに集まり、雑談や大きな笑い声なども聞こえることが多い。

お客さまにとっては、自分のことを言われているようで嫌な感じで不愉快になる。

■アフターオーダー(食後の注文)を忘れるべからず気分良く食事が進行し満足していたお客さまも、アフターのデザートやコーヒーが忘れられたのでは不愉快になる。

担当したテーブルは自分が最後までしっかりと確認しなければならない。

引き継ぐときは個人名で指名するとよい。

■ピーク日、ピーク時間帯は中間下げの徹底を忘れるべからずお客さまの待つピーク日やピークの時間帯はどの店も決まっている。

手が空いたら全員が中間下げを徹底すると、お客さまの立った後のテーブル下げが早くでき、待ち時間も減って喜ばれる。

客席回転数もおのずと上がる。

●下げもの■下げものは素早く行いテーブルの下のチェックも忘れるべからず下げが早いと次のお客さまも早く案内できる。

また、下げものの際、テーブルの下は最初にチェックし残飯やゴミを拾い、次にいすの汚れチェック、最後にテーブル上の下げものと、3ステップで行う習慣をつけるとよい。

■特に幼児・子供のいた客席の窓のガラス面やテーブル下を見落とすべからずあなたもそうだったように、幼児や子供は食事中にテーブルを汚すものだ。

また、窓のあるテーブルの場合は窓ガラスも触りたがるものなのだ。

これらの客席は、下げものの際に特に念入りに清掃し、次のお客さまのために備えよ。

■客席のお客さまの忘れ物チェックを忘れるべからずついうっかりと忘れ物をするお客さまは大変多い。

下げものの際に忘れ物のチェックを必ずしなければならない。

お客さまも忘れ物をすれば困るし、すぐに気がつけば間に合うことが多い。

間に合わなければ上司に報告せよ。

■鉄板や鍋物の後、いい加減にテーブルを拭くべからずステーキ専門店や焼き肉専門店、鍋物をよく扱う店のテーブルはどうしても汚れがちになる。

徹底してテーブルの側面を含めテーブルの拭き掃除をしなければならない。

このような店では週に2、3度は壁面の清掃も必要となる。

■下げた後、カスターセットや灰皿のセットも忘れるべからず下げものを終わっても下げの作業は終了ではない。

次のお客さまに備えて、カスターセットや灰皿の準備を忘れてはならない。

時間帯によりテーブルセッティングをしている店ではそれも行い、次のお客さまをご案内したい。

●お会計とお帰り■食事が終わり席を立った会計のお客さまをレジで待たせるべからず帰る気になったお客さまはせっかちになっている。

レジで待たせることは、お客さまの気持ちを必要以上にいら立たせ、それまで全員で積み上げてきた自店の料理やサービスの好イメージも台なしになる。

最後まで気を抜くな。

■レジ操作と現金の受け渡しをいい加減にするべからずレジはサービスの締めくくりであり、従業員全員の努力が最終的に売上げとなってレジに入金されるのだ。

あなたの給与もお客さまからいただいている。

確実なレジ操作を行い、正しい現金の受け渡しを行うことが基本である。

■1000円札でも紙幣は会計終了までレジに入れるべからず釣り銭ミスの中で最も多いのが、釣り銭の渡し間違えだ。

あなたのちょっとした勘違い

でお客さまも不愉快になるし、店側でも現金ギャップが発生し原因追及に無駄な時間がかかる。

1000円札でもレジに仮置きし、清算後に中にしまう。

■現金を乱雑に扱い、お客さまの目を見ずに釣り銭を手渡すべからず釣り銭を渡すときはマニュアルに従い確実に金額を数え、お客さまに確認していただいた上で丁寧に手渡さなければならない。

乱雑に現金を扱ったり、よそ見をしたり、乱暴に手渡してはあなたの人格も疑われる。

最後まで丁重にせよ。

■お帰りの際に全員で「ありがとうございました」を忘れるべからずサービスの締めくくりに言うのが「ありがとうございました」だ。

外食産業は来店頻度(客数)で勝負が決まる。

お客さまが席を立たれたとき、会計が終わり出口に向かい歩いて行く際、できる限り正対して全員が丁寧に心をこめて言おう。

③お客さまからの苦情対応べからず15■お客さまが不満な顔や表情で見ていたら知らぬふりをするべからず苦情処理のポイントは、苦情になる前に気づくことだ。

そのためには待機中や料理提供時にお客さまの表情を確認し、満足しているかどうかをチェックするとよい。

何かおかしければ「お料理はお口に合いますか」などと尋ねること。

■簡単だからといって当たり前の作業をいい加減にするべからず苦情の中で最も多いのは、当たり前のことができていないために発生した苦情だ。

自分の持ち場や自分の担当した作業は責任を持って最後まで確実に行わなければならない。

全員が徹底すれば苦情はほとんどなくなる。

■どんな小さな苦情も勝手に判断せず上司への報告を怠るべからずお客さまの苦情の内容は正しく聞き、勝手な解釈や推測をせずにできるだけ早く上司へ報告し、判断をあおぐことが最善の方法だ。

経験を積めば自分で処理してもいい苦情もあるが、上司への報告は必ずしなければならない。

■お客さまが苦情を言い始めたら最後まで聞き途中でさえぎるべからず苦情を言ってくるお客さまには、それなりの理由がある。

また、かなり店側の行為をがまんした後で苦情を伝えているのだ。

従って、お客さまが苦情を伝える間に言い訳をすれば、より不愉快な感情を高めるだけだ。

聞き役に徹せよ。

■明らかに自店のミスの場合はまず謝り、先に言い訳をするべからず苦情処理に当たり店側のミスのときは、素直に過ちを認め、謝ることから始める。

苦情を言っているお客さまも当方の立場を理解してくれることが多い。

しかし、お客さまに甘えずにきちんと処理をする。

■苦情を生かし、お客さまに教わることを忘れるべからず苦情を言っているお客さまは、その店に自分が期待したレベルのサービスや料理を得ら

れず、店に裏切られたからだ。

顧客満足を高めるためには苦情を生かし原因を追及して、二度と起こらないようにすることだ。

■店や商品のことをお客さまに聞かれたら、いい加減に答えるべからず店や商品に関する質問を、いい加減に答えることほど無責任なことはない。

勝手に知らないと言ったり適当に答えず、不明な点は上司から説明してもらう。

そのときにそばにいると、店や商品に関する知識が自分のものになる。

■料理が遅いと言われたら伝票確認と上司への連絡を怠るべからず最も多い苦情の一つは料理の遅れだ。

まず、調理場で伝票を確認し確実にオーダーされているか、後どのくらいでできるのか提供時間を確かめて上司に伝える。

そうすれば上司からお客さまに早く正しく伝えることができる。

■料理がメニュー写真と違うと言われたら、あいまいに答えるべからずお客さまはメニューやサンプルを見てオーダーしている。

提供された商品の内容が、それらと異なっていれば詐欺だ。

すぐに上司に報告し対応しなければならない。

商品内容によっては、メニュー基準の見直しも必要となる。

■お客さまが料理を3分の1以上残したら下げて洗い場に直行するべからず提供された料理はお客さまが買ったものだ。

「料理に不手際がありましたか」等、なぜ残したのか必ず聞く必要がある。

もし、味を含め品質のミスなら調理責任者や店長に確認してもらい、作り直して提供することも必要となる。

■ピーク時のウエーティングの順番を間違えるべからずお客さまは今か今かと、自分の順番が来ることを待っている。

順番を間違えることはお客さまにとっては非常に不愉快なことだ。

空いたテーブルの席数に合わせて案内することで順番が入れ替わるときは、待ち客にはっきりと伝える必要がある。

■他のお客さまに迷惑な行為をするお客さまをそのままにするべからずひどい酔客や禁煙席で喫煙するお客さまなど、明らかに他のお客さまに迷惑な場合は、店長に早めに伝え、判断を急ぎ対応する必要がある。

お客さま同士のトラブルとならぬよう、事前に手を打つのも店長の大切な仕事である。

■お客さまの要望はとにかく聞き、できませんと勝手に答えるべからず店内のテーブルの位置や料理の内容の変更など、お客さまの要望はできるだけ聞くことが望ましい。

もし、要望に添えないと自分で判断できる場合も、勝手に判断せずに上司から理由を説明し、お客さまに納得してもらうことが最善である。

■忙しいランチタイム、一人ずつの別会計に嫌な顔をするべからずランチに利用する会社員のほとんどは、一人一人の支払いとなる。

計算機を準備し一人ずつ確実に伝票をチェックして、順に会計を済ませる必要がある。

釣り銭も間違えないようにし、次の方には「お待たせしました」を言うこと。

■レジの打ち間違えを自分で勝手に処理するべからずピーク時の会計や急な割り勘などの場合、レジの打ちミスが発生しやすい。

お客さまに

正しいレシートを手渡した後で、間違ったレシートはレジにそのまま保管し上司に報告する。

正しくは、決められた方法と時間に社員が訂正を行う。

④調理担当者べからず40●仕込みと洗浄作業■決められた衛生管理作業を実行し、食中毒を出すべからず手洗いの励行はもちろんのこと、閉店時のまな板の洗浄と乾燥や各種ふきんの漂白殺菌作業など、調理場で行われる衛生管理作業は確実に行う必要がある。

また、クレンリネスの徹底はハエやゴキブリ、ネズミなどの対策にもなる。

■仕込み用電動調理機器のコンセントを使用後に入れておくべからずスライサーやミキサー、フードプロセッサーなど電動の仕込み用調理機器の電源(コンセント)は使用後に必ず抜く習慣をつけ、万が一スイッチが入っても動かないようにしなければならない。

そうしないと大きな事故になる。

■仕込みマニュアルを見ないで作業するべからず仕込みは、調理の基本となる味や分量などを決める重要な作業だ。

従って、必ずマニュアルを見ながら行い、使用するずん胴など調理機器の大きさや食材の分量、調味料の量、決められた手順、火加減などを確実に守る必要がある。

■仕込み後の調理機器や道具を出したままにするべからず作業は必要な機器や道具の準備から始まり、作業後にそれらを元の状態に戻すことで完結する。

やりっ放し、出しっ放しは他の作業者のじゃまになるだけでなく、手を切ったり火傷など思わぬ事故にもつながる。

■ほんの少しの時間も水道の水を出したままにするべからず洗い場や仕込み、調理の補佐など次々と作業が発生するのが調理場だ。

そんなとき、すぐ使うからといって水道を出したままにするのは、お金を垂れ流しているのと同じだ。

節水・節電など省エネは習慣にしなければならない。

■ふたをせずにお湯を沸かすべからず仕込み作業の中には、先にお湯を沸かすことが多く発生する。

ふたをしてお湯を沸かせば熱の効率が良くなり、短時間で沸騰し蒸発も防げる。

ガス代の節約にもつながる。

良い習慣として、機会あるごとに後輩にも指導せよ。

■調理機器のヒートアップを早い時間から行うべからずフライヤーやグリドル、洗浄機などヒートアップ(スイッチを入れてから、すぐに使える温度に上げること)に必要な時間は通常15~20分だ。

早めにつけても電気代やガス代の無駄となる。

決められた時間を守ること。

■目分量で仕込み作業を行うべからず塩やスパイスなど微妙な分量で味はすぐに変化する。

仕込みに際しては必ずメジャーカ

ップや軽量スプーン、秤など決められた道具を使い正確に測る必要がある。

米も研いだ後、水の分量は平らな所で測らなければならない。

■生米に水が浸せきしないうちは炊飯のスイッチを入れるべからず米の味や硬さは、主食だけにその店のレベルを評価される大きな要素の一つだ。

いくら良い米を使用しても、洗米後に通常は20分以上の浸せき時間(水分が生米にしみこむ時間)を守らなければ、お米はおいしく炊き上がらない。

■ライスは炊き上がったら「しゃり切り」を忘れるべからず炊飯器で炊けたライスは、上下や周りと中心部など若干の炊きムラが発生する。

従って、この炊きムラをなくし、均一な炊き上がりにするのが「しゃり切り」作業だ。

また、余分な蒸気も飛ばされ保管状態も均一に保ちやすい。

■スープなど大量の仕込みの際はその場を離れるべからず大きなずん胴で仕込む大量のスープなどは、持ち場を離れずに必ずつきっきりで仕込みを行うことだ。

ちょっと油断して目を離したり、他のことを手伝っている間に焦がしてしまっては、量が多いだけに大変なロスとなる。

■虫のついたサラダや異物の入った料理を出すべからず食べる物だけに異物混入のショックは大きく、お客さまの苦情も激しくなる。

異物で特に多いのは、レタスなどにつきやすい虫や髪の毛の混入だ。

サラダ類の仕込みは細心の注意を払い、帽子も必ずきちんとかぶり作業する。

■洗い立ての温かい容器にサラダや刺し身を盛り付けるべからず冷たく提供する必要のある料理は、容器も冷たく冷やしてから盛り付けることが基本となる。

間に合わないからといって、洗浄機から出たばかりの熱い器にサラダや刺し身を盛り付けては最悪だ。

不足なら食器の数を補充する。

■洗浄機は洗浄ラックが食器で一杯になる前に作動させるべからず洗浄機は一回作動させれば、一回分の水道代と洗剤代、電気代が当然かかる。

従って、洗浄ラックが食器で満たされてから作動させなければならない。

また、洗浄ノズルの穴の清掃や中の残飯捨ては、小まめに行う必要がある。

■洗浄機の洗浄ラックは食器を分類せずに使用するべからず洗浄ラックは中がフラットなもの、突起のあるもの、仕切りが付いたものなど多種類ある。

自店で使用する食器ごとに分類して用いなければ、破損したり汚れが落ちにくいこともある。

また、食器を並べる向きも同方向を守る必要がある。

■保存は決められた方法や保存期間を破るべからず食材は缶詰や冷凍食材でも、時間が経てば劣化する。

自店で仕込んだり開封した食材は劣化も早い。

従って、決められた保存方法と保存期間を厳守する必要がある。

先入れ先出しなどのルールや保存期間の表示は、そのためにある。

■冷蔵庫、冷凍庫などの決められた時間での温度確認を怠るべからず冷蔵庫、冷凍庫などの温度管理は調理担当者のデイリーワークだ。

この結果、保管時の

品質基準が維持される。

冷蔵庫のフィルター清掃や冷凍庫の霜取りなども定期的に実行し、電気代の削減も行わなければならない。

■保管時にラップを使い過ぎるべからず調理場で使用する消耗品の中で、ラップは単価、使用量ともばかにならない。

従って、決められた食材や商品の保管に限り、必要最小限の量で使用すべきだ。

通常、保管に際してはできるだけ半透明の蓋付き容器を使用する。

■冷蔵庫、冷凍庫、倉庫など自己流の置き方をするべからず保管は、決められた場所に決められた方法で行うことが原則となる。

その結果、他の作業者もものを探したり、先入れ先出しなど使用する順を間違えなくて済む。

保管のルールや並べ方、積み方を守る定位置管理は、品質管理の基本だ。

■検品のルールを厳守し、いい加減に行うべからず慣れてくると、業者から納品があった際に検品を省略するようになる。

検品のルールは発注書で行うことが原則だ。

また、検数、検量だけでなく、生鮮食材などは鮮度の状態やサイズ、熟成の度合いなどのチェックが必要となる。

●調理作業■調理作業マニュアルで決められた手順や温度、時間を破るべからず調理する手順や温度、時間は、メニュー担当者が実験を繰り返して決めマニュアルとしたものだ。

従って、それらを完全に励行し徹底して、初めて商品の品質が保たれる。

その通りに作業してもおかしいときは、調理責任者に報告する。

■ピーク時間帯に入ってから担当料理の食材準備をするべからず担当する料理の仕込み済みの食材や器は、ピーク時間帯前に自分でチェックし準備しなければならない。

でないと、一つの食材やソース、タレなどが切れたり、レードル1つ準備を忘れたために追われ仕事となり、品質管理もできない。

■ピーク時間帯は、次に何が出るかを確認せずに作業するべからずピーク時はホールをはじめ調理場全員が仕事に追われている。

調理責任者の指示をよく聞き、次に何が出るのか、何をしたらいいのかを常に意識して作業しなければならない。

息の合ったチームワークが料理提供の早さのポイントとなる。

■料理に関するお客さまからの苦情に対し、対応を遅れるべからずサービス係を通して入るお客さまの料理に対する苦情は、例え自分が間違っていなかったり、自分のミスでないと思っても、素直にその内容を聞き、即時に対応することが原則だ。

同じ料理をもう一度作り直すことも必要となる。

■同じ伝票の料理の上がり時間を別々のタイミングとするべからず同じ伝票のメイン料理は同時提供が原則となる。

理由は、お客さまが一緒に食べ始められるように配慮するためだ。

また、結果的に客席回転が早くなり、ピーク時の売上げも上がる。

各料理の調理時間を考慮した作業が必要となる。

■調理に自信のないメニューや不慣れなメニューを作るべからず調理マニュアルがあっても、調理には技術と経験がどうしても必要となる。

従って、自信のないメニューや不慣れなメニューは、調理責任者のOJTを受けながら作るべきである。

品質基準以下の商品が提供され続ければ客数減となる。

■調理の決められた状態チェックをせずに提供するべからずスパゲティや麺類などは、ゆで時間と麺のゆで上がり状態のチェックが必要となる。

また、フライ物は揚げ時間と揚げ色のチェックが必要となる。

メニューによっては味見をして確認すべきものもあり、これらは経験を要する。

■フライドポテトなどフライ物を揚げ置きして使用するべからずたいして忙しくもないのに、フライドポテトなどフライ物をオーダーが入る前から揚げ置きし、間に合わせることが悪い癖になっている店が多い。

揚げ物はすぐ調理でき、劣化もしやすいので、オーダーに合わせその都度揚げ、熱々を提供する。

■サラダの3Cを守らずに調理するべからずサラダのおいしさは、コールド(冷たく冷やして)・クリスプ(パリパリした状態)・クリーン(清潔で新鮮)の3Cが最も大切な要素となる。

新鮮な素材を適切に調理(カットや水切りなど)し、よく冷やして提供することが基本だ。

■ピーク時間帯にライスやみそ汁、スープの品切れを起こすべからずライスやみそ汁、スープなどン料理に付属するサイド料理は、ピーク時間帯に品切れを起こすと調理に時間がかかり、お客さまに迷惑をかけることが多い。

事前準備を徹底するとともに、常に残を確認し作業することだ。

●盛り付けとディシャップ■盛り付けや料理の分量を間違えるべからず料理の基本は均一な商品を提供することだ。

味の一定化はもちろんのこと、分量も決められた量から多過ぎても少な過ぎても失格だ。

また盛り付けは、メニュー写真やサンプルと同じにすることで、お客さまの信用が得られる。

■器の汚れ、破損のチェックなしで料理を盛り付けるべからずいくら素晴らしい料理でも器が汚れていたり、チップして(欠けて)いては料理が台なしになる。

不衛生だし、お客さまが口などにケガをしかねない。

盛り付け前には、器を必ずチェックする習慣をつけなければならない。

■ソースの汚れや指紋を拭かずして料理を提供するべからず料理の盛り付けをきれいに行っても、器にソースやタレがかかっていたり指紋が付いていたのでは何もならない。

提供前にもう一度確認し、もし汚れていれば、きれいなふきんで器の回りをよく拭き取らなければならない。

■客席に提供されるタイミングを予想し料理のシズルをなくすべからず料理は客席に提供されたときにシズル(おいしさを感じさせる状態)がなければならない。

鉄板ならジュージュー、鍋焼きならグツグツ、カツ丼なら卵の黄身と白身の火の入り

具合など、客席で最善となるよう予測し調理する。

■調理責任者の最終チェックを経ずして料理を提供するべからず料理の最終チェックを行うために、ディシャップ前には通常、調理長や調理の時間帯責任者が立つが、これら責任者の最終チェックを経ずに料理を提供してはならない。

この徹底により、調理部門のP/A化を進めても品質が管理される。

■よく出る料理の盛り付けや分量を頭に入れずして作業するべからずどの店にもよく出るメニューが必ずある。

それらはできるだけ早い時期に盛り付けや分量を頭で覚え、いちいちマニュアルを見なくとも作業できるようにしなければならない。

そうすればピーク時に慌てずに済む。

■品切れや料理遅れは、早めに連絡し黙って作業を続けるべからず何らかの事情で料理の品切れや、料理の遅れが予測されるときは、調理責任者やサービス係に事前に直接連絡しなければならない。

品切れや遅れが分かっているのに黙って作業を続けたのでは、お客さまに連絡もできず、後で苦情となる。

■ディシャップ台は常に整理し、少しの汚れも残すべからずホールとの接点であり、調理場から出来上がった料理を載せるディシャップ台は常に整理し、余分なものを置かぬことだ。

また、器の下面にディシャップ台の汚れが付き、お客さまのテーブルを汚さないためにも、手が空いたら常に拭いておく。

■料理提供の順番とテーブルナンバーのチェックを間違えるべからずピーク時間だけでなくディシャップに同じ料理が並ぶことは多い。

料理を提供する順番やテーブルナンバーのチェックを間違えると、同時提供ができずお客さまが迷惑する。

また、調理場内でも調理手順が狂い全員が迷惑する。

■ピーク時には調理長とサービス係は料理提供確認を怠るべからず自分が担当する作業の途中で伝票の進行順が分からなくなったときは、遠慮せずに調理長に確認しなければならない。

また、調理担当者も提供したかどうか不明な料理はサービス係に確認し、伝票ごとに料理一品一品を確実にチェックする。

P/Aマネジメントのための基本用語50

■ESエンプロイイー(従業員)サティスファクション(満足度)を表す。

「CS(顧客満足度)はESから」といわれるように、社内の労働条件・環境が整備され、良い人間関係と働く満足感が基礎となり、CSが生み出される。

■OJT現場(店舗)での作業技術を体得するために実施されるトレーニングのこと。

OntheJobTrainingの略称。

原則としてトレーナー(教える側)とトレーニー(教わる側)とのマンツーマン(1人対1人)で訓練する。

■OffJTOJTに対し本部などで知識や理念を理解させるために行う集合教育をOffJT(OfftheJobTraining)という。

教育訓練のポイントはこの2つをバランス良く組み、トレーニングプログラムを作成することである。

■オペレーション店舗運営で行われる作業のすべて。

自社の作業のスタンダード(基準)を店舗運営で完全に徹底して実現し、継続することがサービス業成功のポイント。

そのカギは、P/Aの人事考課とトレーニングにある。

■オリエンテーション進路指導のことで、新人のP/Aや社員が新しい環境や職場に適応できるように行われる人材として育成するための基本ステップ。

本質は動機づけにあり、P/Aの場合でも経営者や店長が直接担当する必要がある。

■QSCQ(Quality=商品の品質)、S(Service=サービス)、C(Cleanliness=満潔)のことで、店舗オペレーションを通してお客さまに心から満足を与えるために必要な、サービス業成功の最も重要な3つの要素。

■業種小売業で用いる生産体系やメーカー系列など店側の都合による営業形態で肉屋・魚屋・八百屋・電気店・化粧品店などのようにメーカー名が付いた〇〇ショップなどをいう。

外食産業では和食、洋食、中華といった分類となる。

■業態小売業ではスーパーマーケット、コンビニエンスストアなど、お客さまの立場に立ちライフスタイルの変化に対応して生まれた営業形態を指す。

外食産業ではファストフード、ファミリーレストランといった分類となる。

■苦情処理お客さまと店との間に発生するさまざまな苦情やトラブルをお客さまの満足を優先し、しかも店側の立場も理解していただきながら前向きに解決すること。

苦情の大部分は、基本作業が徹底できていないために発生する。

■クレンリネスサービス業成功の要素であるQSCの1つC(クレンリネス)。

定期清掃を行いドライ(乾燥)、シャイン(光り輝く美しさ)、オーダリー(整理整頓)を徹底し、衛生状態を良くし、安全性を高めメンテナンスに努める。

■経営理念自社(企業)を経営することにより、どのように社会に貢献するのかを明文化し示したもの。

経営の目的を明確にし、経営行動の指針として、お客さまや商品に対し従業員全員に共有される価値判断の基準となるもの。

■検品業者から納入された商品、原材料、備品、消耗品などを発注リストを基に照らし合わせ、発注数や単価、銘柄、新鮮度や熟成度、破損や欠品の有無など自社の基準によりチェックすること。

納入時間帯も定めておくとよい。

■固定費来店客数や売上高の増減に関係なく生じる経費のこと。

一般に正社員の給与や地代・家質などの賃借料、租税公課、リース料、支払利息などが固定費とされる。

多店化している場合には本部費なども含まれる。

■固定労働時間著者が作った用語で、固定費同様に来店客数や売上高の増減に関係なく生じる労働時間のこと。

開店から閉店までの必要最小限の労働時間を表し、売上げの伸長に合わせ標準労働時間を作成する際の最低標準時間となる。

■雇用契約書P/Aの採用時でも労働基準法第15条により「労働条件の明示」が規定されている。

就業規則を基にそれらを書面で表し、採用時に契約書として取り交わすもの。

特に賃金に関しては書面で通知しなければならない。

■サイドワーク勤務中の手空き時間に行う接客サービス以外の清掃、補充、点検作業のこと。

接客サービスを優先しながらも手空き時間に、上司の指示ではなく、P/A自身の判断で作業できるように訓練することがポイント。

■在庫管理店舗での手持ち在庫量や在庫額を適正に管理すること。

食材や備品、消耗品の在庫は物に変わっているだけでお金を寝かせていることと同じである。

また、食材は在庫期間が長いと劣化し、品質にも悪影響を与える。

■先入れ先出し食材の品質管理の基本。

検品後に箱に日付けを記入したり、日付けのタグを付け定位置管理を行い、古い順に食材を使用するようにローテーションを行う。

生鮮食品や乳製品などは特に重要であり、鮮度管理の基本となる。

■CSカスタマー・サティスファクションのことで、お客さまが商品やサービスを購入したり利用した結果の満足度。

アンケートやインタビュー調査などで把握されるが、日本のサービス業に関するCSの求めるレベルは高く、笑顔や気配りがないと評価されにくい。

■指示・命令上司が部下に対し特定の業務を割り当てること。

命令は直属の上司が行い、報告もこの上司に行う。

命令は期待される結果を明示し、期限を明確にする必要がある。

部下のレベルにより具体的な方法や手順が示される。

■システム化誰が作業や業務を遂行しても、同じ成果を出せるようにした仕組みのこと。

サービス業ではP/Aによる作業のシステム化が多店化の決め手。

標準化、単純化と並びチェーン展開には不可欠の要素である。

■就業規則自社の労働条件や職場規律を定めた規則。

労働基準法第89条では常時10人以上の労働者を雇用する場合、作成しその内容を所轄の労働基準監督署長に届け出義務がある。

正社員用とP/A用を分け作成することが多い。

■人事考課一定期間の部下の職務に関する成果や職務遂行能力、勤務態度などを上司が評価すること。

正社員だけでなくP/Aに関しても個別に行う必要があり、ワークスケジュールやトレーニング計画作成の基礎となる。

■ストアツアー店舗でのオリエンテーションの際に実施される店内案内のこと。

店内施設の名称と機能を理解させ不安感を取り除く。

新人とそのときに勤務する従業員とを相互紹介し、あいさつの徹底も行う。

■損益分岐点売上げと費用が一致する、損失も利益も出ない売上高のことで損益分岐点売上高と呼ぶ。

損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費/売上高)として表す。

損益分岐点を売上げが上回れば利益となり、不足すれば損失となる。

■棚卸し商品・原材料・備品、消耗品など手持ちの数量を品目ごとに実際に調べ、在庫量と在庫額を把握する作業のこと。

これらはすべて実地棚卸しが基礎数値となり、発注や原価管理の面でも正確さが要求される基本作業である。

■単純化だれでも簡単にできるようにした作業や業務の仕組みのこと。

チェーン展開を目指す企業の店舗オペレーションはすべて単純化を目指す。

特に、調理システムは食材の調理加工度を高め、調理機器の開発を行う必要がある。

■トレーナー各職務や職位のトレーニー(見習い)に対するトレーニングを担当する者。

自社が定めた各職務や職位の経験者で、それらに必要な知識や技術に精通しており、本部や現場でトレーニーに実践訓練する担当者である。

■トレーニー各職務や職位の見習いを表す言葉。

例えば、時間帯責任者トレーニーの場合、P/Aトレーナーとして店舗オペレーションの技術や知識を修得後、ストアマネジャーから社員代行としての管理面での研修を受ける。

■トレーニングプログラム店舗オペレーションに必要な作業技術の習得や、社員のマネジメント能力を短期間で育成するための教育訓練プログラムのこと。

教育訓練はマニュアルやビデオ、チェックリストなどにより店や本部で実施される。

■人時売上高(ニンジウリアゲダカ)売上高÷総労働時間数=人時売上高。

正社員、P/Aを含めた1人1時間当たりの売上高のことで、高いほうがよい。

今後の人件費を考慮すれば、フードサービス業で最低6,000円以上、小売業で15,000円以上が目標。

■人時生産性荒利益÷総労働時間数=人時生産性。

正社員、P/Aを含めた1人1時間当たりの荒利益(生産性)のことで、高いほうがよい。

今後の労働時間の短縮や休日増を考慮すれば、最低でも4,000円以上が必要。

■人時接客性客数÷総労働時間数=人時接客数。

正社員、P/Aを含めた1人1時間当たりの対応客数のことで、高いほうがオペレーションの効率はよい。

客単価×人時接客数=人時売上高と表現することもできる。

■ハウスルール店内規則のこと。

オリエンテーションできちんと説明され、採用初期にしっかりとしつけられる必要がある。

身だしなみや化粧、あいさつの徹底やタイムカード打刻など多岐にわたる。

店内モラールの原点と言える。

■発注一定期間の売上予測を基に商品別の販売数を予測し、商品や原材料の在庫量を確認して不足分を各業者に納入依頼する基本作業。

商品や原材料によっては、定量発注と呼び常に一定量を定め不足分を発注する方法もある。

■バッシングフードサービス用語で下げ物をする作業のこと。

お客さまの撮った後、皿や残飯、グラスなどを下げること。

プレバッシング(中間さげ)と呼ぶ、食事中に不要となったものを下げることも客席回転率を高める重要な作業。

■標準化作業や業務を遂行する際に最も良いやり方を定め(基準・規格)、全員がその方法で実施すること。

マニュアルに表現され、チェーン化の重要な要素の1つとなる。

また、定期的により良い基準に見直しを行う必要がある。

■標準労働時間開店から閉店までの固定労働時間(最低標準労働時間)をベースに売上高や来店客数の伸長に合わせ、適正な人時売上高や人時生産性達成を前提に設定される。

設定のポイントは日数の最も多い平日の適正化にある。

■変動費来店客数や売上高の増減により変化する費用のことで、「固定」費に対して「変動」費と呼ぶ。

人件費は社員比率が高いと固定費化するが、P/A比率を高めることにより変動費化が可能となり、生産性も上がる。

■報告上司より命令を受けた業務に対し、最終結果を上司に伝えること。

業務が完了していない場合でも指示された期限が来たときや、何らかの事情で業務遂行途中で中断を余儀なくされる場合にも報告は必要となる。

■ホスピタリティ人に対して表現される手厚いおもてなしや温かい心で思いやること。

米国ではホテル、レストラン、旅客機、テーマパーク、リゾートクラブなど設備の中でおもてなしをする産業を、ホスピタリティ・ビジネスと呼ぶ。

■マニュアル作業や業務の動作や流れを標準化し、単純化することによりシステム化を図った具体的な指示書のこと。

ビデオや絵などを用いて分かりやすく作成される。

店舗での各作業はマニュアルが基準となって具現化される。

■マネジメント・サイクルプラン(計画)→ドゥ(実施)→チェック(評価)→アクション(修正行動)→プラン(計画)という管理サイクル。

店舗は企業が計画した売上げと店舗利益を上げるため年間、月間、週間の管理サイクルで運営される。

■モチベーション動機づけを行うこと。

上司は部下の成長に伴い具体的な目標を設定し、常に仕事に関する興味を与えつつ成果を上げることが、その決め手となる。

会社の経営理念や方針を理解させ、仕事の意義を示すことも重要である。

■雇入通知書雇用契約書がない事業所などで代用する労働省が示したモデル書式のこと。

労働省ではP/Aの処遇と労働条件などの改善のため平成元年に「パートタイム労働指針」として交付することが望ましいとしている。

■レイバースケジューリング稼働計画のことで、ワークスケジュールと同義語で用いられる。

週間部門別売上計画をベースに必要作業時間数(人時=マンアワー)を算出し、曜日時間帯別に作業割り当てを行ったもの。

店長の重要な主要業務の1つ。

■ロールプレイング現場で起こるさまざまな場面を想定し役割を決め、演技することにより行われるトレーニング方法の1つ。

実際の例を挙げ、個別対応が要求される基本サービスやレジでの応対、苦情処理などの教育に用いると効果的である。

■労働生産性従業員1人当たりの荒利益を示し、高いほどよい。

今後は最低でも月間80万円は確保する必要がある。

通常は月間を単位として表現されるが、人時生産性として1時間当たりの生産性(荒利益)に換算されることも多い。

■労働分配率荒利益に占める人件費の割合を表す。

労働分配率=人件費÷荒利益。

35~40%が適正値となるが、45%を超えると経営が苦しくなり、50%以上では経営が極めて危険な状態と言える。

経営計画策定の際にも重要となる。

■ワークスケジュール日別売上計画を基に出勤予定者の作業割り当てを個人別、時間帯ごとに行ったもの。

店長の職務としての最重要なものの1つ。

お客の満足を優先し、しかも適正な人件費(労働時間数)で管理することがポイントとなる。

清水均(しみずひとし)1949年神奈川県生まれ。

1970年国際観光専門学校ホテル・レストラン経営学科卒業(在学中、英国ホテル研修)。

同年、肉の万世入社。

銀座モンセニュールでマネジャー、(株)ブレーンでプランナーおよびマーケティングディレクターを経験後、1979年にシズラージャパン本部スタッフ(米国コリンズフーズへ派遣され教育および本部管理システム研修)。

この間、1973年より、わが国フードサービス・コンサルタントの草分け小熊辰夫氏に師事し、1984年に外食コンサルティング会社のチーフコンサルタントとなる。

1988年に(株)プロジェクト・ドゥ・ホスピタリティマネージメント研究所設立、代表取締役チーフコンサルタントとして現在に至る。

また、1990年に亜細亜大学より派遣されコーネル大学、ミシガン州立大学、ワシントン州立大学ほか、アメリカの主要なホテル・レストラン学部を視察。

現在、亜細亜大学経営学部講師、(社)日本フードサービス協会協力アドバイザーも務める。

●専門分野は人材教育、主に小売・サービス業の店長、SV教育、パート・アルバイトのマネジメントシステムづくり。

フードサービス分野では、社員教育と計数管理を中心にコンサルティング活動を展開。

指導実績は、小売、外食、ホテル、AVレンタル業など上場企業をはじめ500社を超える。

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