まえがき•「耳に痛いことを、きちんと伝える」ための本です。•「嫌われない伝え方」は書いていません。•「嫌われても伝わる伝え方」を書いています。耳に痛いネガティブな情報を相手にフィードバックすることは、多くの人にとって勇気が必要で気が滅入る作業です。「正しいことを正しいと言えること」「(正しくないことを)やられたらやり返す、倍返しだ」という信条を貫く『半沢直樹(TBS系ドラマ、原作:池井戸潤)』は令和のドラマ最高視聴率を記録し、大きな注目を集めました。誰もが半沢直樹のような態度を取れたら、こうした記録は生まれなかったでしょう。■「言いたいけど言えない」理由■「言いたいことを言う」方法■「言うだけではなく伝わる」コツを、コンサルティング現場の実例を交えて紹介します。こうしたビジネスパーソンに、特にお勧めします。•上司として、多様な部下とのマネジメントに苦労している方•部下として、上司からのコミュニケーションや指示命令に問題を抱えている方•担当として、顧客や関係者の言いなりになって振り回されがちな方
目次
まえがき
本書の使い方
第一章ネガティブフィードバックとは何か?
第二章なぜ必要なのか?
21【組織のため】22【相手のため】23【周囲のため】24【自分のため】
第三章なぜ出来ないのか?
31【出来ない理由】を考える32【やらない目的】を考える33【やらないとどうなるのか?】を考える
第四章どう行うのか?
8ステップの構造とダメな例(例:部下へのフィードバック面談)
第五章どう行うのか?(5つのマインドセット)
51【嫌われることを覚悟する】52【期待するが期待しない】53【感情をこめるが感情的にならない】54【真剣に職務に取り組む】55【自分で決める】
第六章どう行うのか?(5つのスキルセット)
61【合意を得る】62【不協和を創る】63【話すより聴く(傾聴)】64【行動と事実について話す(ファクトフルネス)】65【諦める(明らかに見極める)】補足【オンラインフィードバックの注意点】第七章シーン別の活用方法71【対上司】72【対顧客】73【対友人】手順書手順書①実施検討編手順書②理解編・マインドセットについて手順書③理解編・スキルについて手順書④面談準備編手順書⑤面談実施編手順書ファイルのダウンロード
あとがき参考文献著者紹介出版社メッセージ
本書の使い方本書ではネガティブなフィードバックをきちんと伝えるために手順書を用意しております。手順書を使うことで抜け漏れなくしっかりとフィードバックを行うことができます。本書のつかい方は以下です。•まず本書を一通り読んで理解します。手順書の前提知識となっています。•次に巻末の手順書を使い下記の3ステップでフィードバックを行います。Step1:手順書を使いひとつずつ着実に準備します。Step2:本書のマインドセットとスキルを利用しフィードバックを行います。Step3:なし崩しに終わらせないために行動計画を「定点観測する仕組み」を作ります。
第一章ネガティブフィードバックとは何か?本書では、ネガティブフィードバックをこう定義します。『望ましくない状態の改善に向け、ネガティブな情報を相手に伝え、望ましい状態へ促すコミュニケーション』【ネガティブな情報】には、例えば下記のようなものがあります。•期待と成果のギャップ•変えて欲しい意識や行動•同僚や顧客からのクレーム•目標の未達成•厳しい評価•能力や意欲の不足•警告や注意•降格や降級•減給や降給•退職勧奨等ビジネス現場のネガティブフィードバックは、伝えるだけでなく「状態が改善する」「行動が変わる」「処遇を受容する」などの変化に繋がる必要があります。■私は10年以上「中高年のキャリア開発/ローパフォーマーやミスマッチ人材の活性化/事業構造改革・リストラクチャリングの対応」等、シビアな領域の人事コンサルティングに従事しています。日々、企業人事や経営者から、様々なご相談を頂きます。その中には、「対象者本人の変革を手伝って欲しい」という場合と「対象者と接する上司をサポートして欲しい」という場合があります。※経験的に、上司がしっかりしていない限り、本人だけにアプローチしても効果が少ないので、その旨も必ずお伝えしています。•以前は「上司が厳しく言い過ぎないように」という依頼が多かったです。•最近は「上司が厳しいことを言えるように」という依頼が多いです。今後の章では、「なぜ、厳しいことを言う必要があるのか?」「なぜ、厳しいことを言えないのか?」「どう、厳しいことを言えばよいのか?」を、様々な観点で考察していきます。■本書は主に、組織で問題になり易い上司⇔部下の関係を中心に解説します。「対部下」「対上司」「対同僚」「対顧客」「対友人」など、自分に当てはまる対象に置き換えながらお読みいただければ幸いです。
※ビジネスの現場で起こっている事象をなるべくストレートに解説するので、厳しい表現も多く、不快に思われることもあるかもしれません。あらかじめご了承ください。
第二章なぜ必要なのか?•「ネガティブな情報」を伝えられて、嬉しい人は滅多にいません。•「ネガティブな情報」を伝えるのが、嬉しい人も滅多にいません。※稀に「嬉しくて仕方ない」という上司がいても、それを受け取る部下が納得して行動変容していなければ、独りよがりでパワハラのリスクがあります。部下も上司も嬉しくない活動なのに、なぜ経営者や人事は我々のような外部コンサルタントにお金を払ってまで実行しようとするのでしょうか?ネガティブフィードバックが必要な理由は、下記4つです。1【組織のため】2【相手のため】3【周囲のため】4【自分のため】以後、それぞれ解説していきます。
21【組織のため】会社などの組織は「社会や顧客に価値を提供し、対価として利益を得る」等、何らかの目的で設立・構成されています。構成員は組織に所属する以上、その目的に合致した行動や貢献を求められます。•ただ、全員が目的や期待を上回る行動や貢献ができるとは限りません。行動や貢献にギャップがある場合、ギャップを解消してもらう必要があります。※綺麗ごと抜きで言えば、適切な行動や貢献をしてくれないなら、組織に所属してもらう意味がありません。■ギャップを解消する方法は複数の選択肢があります。「本人の行動や能力を向上させる」「組織の目的や期待を理解させる」「目標や役割自体を変える」「組織から離れてもらう」等いずれの場合でも、本人に対してギャップが生じている旨を伝え、解消や改善に向けた解決策・選択肢に関して合意を得る必要があります。その際に、本人が自覚している・いないに関わらず、不足している点や改善が必要な点等、本人の耳に痛いことを伝えることになります。•「本人の行動や能力は昔と変わらないが、変革が必要な場合」もあります。外部環境が変化することで、「社会や顧客のニーズ」「価値提供の方法・ツール」や「働き方・役割」が変化し、本人が気付かないうちにギャップが生じるケースもあります。※最近の変化では、新型コロナウィルス、テレワーク化、働き方改革、法改正、国際情勢などが挙げられます(図を参照)。
VUCAと呼ばれる複雑で変化が大きい現在、組織が環境変化に対応しながら社会や顧客へ価値提供し続ける為には、構成員にも変化やアップデートが必要になります。言わなくても気付きアップデートや改善を繰り返す人もいますが、気付かずに変化に取り残されそうな人には、今までの行動では不十分であることを伝えることになります。
22【相手のため】ネガティブフィードバックの大前提は組織が存在目的を遂行するためですが、相手本人のためでもあります。•「厳しいことが言えない」や逆に「言い方に愛情が無く部下と揉める」上司は、この観点が抜けているケースが多いです。■フィードバックとは「対象者の行動について、何かしらの反応や評価を対象者に戻す・伝える行為」です。ネガティブ(叱責・注意)だけでなく、ポジティブ(賞賛・承認)、ニュートラル(確認・うなづく)なフィードバックもあります。心理学的に表現すると、フィードバックは本人の行動に対する『外発的動機付け』です。※叱責も賞賛も確認も、行動に何らかの影響を与える動機付けになります。•人が最も動機付けられないのは、やってもやらなくても「何もフィードバック(刺激・反応)が無い/変わらない」場合です。※ギャンブルやゲームに中毒的に熱中する人が多いのは、「自分の行動によって、フィードバック(勝敗/結果)が大きく異なる」「フィードバックとして、報酬(金銭・スコア・賞賛・刺激)が得られる」ためです。本人の行動に対して「プラスでもマイナスでもニュートラルでも、フィードバックしてあげること」自体が、今後の行動を推進したり制限したり変更したりするトリガー(引き金)になります。■特にネガティブフィードバックは、下記の機会提供になります。【気付きの機会】『不足やギャップがある点を気付かせる』【成長の機会】『成長や改善に向けて意欲を喚起する』上司が対立や面倒を敬遠して不足している点を伝えないことは、本人の気付きや成長の機会を奪うことになります。それは、部下育成の役割を担う上司の怠慢であり職務放棄です。※実際、中高年の低業績者に踏み込んだフィードバックを行うと、「ここ数年、周囲から指摘を受ける機会が無く気付かなかった」「薄々分かっていたが、改めて指摘されて行動するきっかけになった」等のコメントが出て感謝されることもあります。
23【周囲のため】「フィードバックは外発的動機付け」という説明をしましたが、フィードバック有無は本人だけでなく、周囲にもプラスまたはマイナスの影響を与えます。「やってもやらなくても、上司のフィードバック(評価やメッセージ)が変わらない」状態が続くと、成果を出している社員ほど、真面目に業務をすることが馬鹿らしくなる可能性があります。※労力や工数などのインプットを減らして、少ないフィードバックとの釣り合いを取ろうとします。特に「やらない社員の方が社歴も長く報酬も高い」場合、ギャップを埋める姿勢を上司や組織が示さないことへ周囲の不満が顕著になります。■内発的動機付けが高い社員は「仕事の報酬は仕事」という状態なので、外発的動機付け有無や周囲に関係なく仕事に熱中してくれる場合もあります。ただし、そういう社員は組織を見極める観点もシビアなので、より動機づけされる組織へ流出(転職・独立)するリスクを高めることになります。■本人だけではなく、チーム全体の規律や士気を維持するためにも、『貢献している社員の言動にはポジティブなフィードバック』『貢献していない社員の言動にはネガティブなフィードバック』を公平に行うことが重要です。「成績優秀なら勤怠不良や会議欠席でもお咎めなし」「成績不振なら些細なことでも叱責」等、人によって評価基準を変えることはNGです。ダブルスタンダード(二重規範)が蔓延すると、社員は「何を頑張ればよいのか」という行動基準や価値判断が不明瞭になり、モラルやパフォーマンスが低下していきます(学習性無力感)。•「人」ではなく、組織が求める「行動」「言動」を基準にフィードバックを行います。
24【自分のため】フィードバックは基本的に、組織の目標達成および相手の成長や改善を願って行う利他的な行為です。ただ、ネガティブフィードバックは実施する側には気が重い行為なので、「自分のメリット」もないとやる気になれません。「ネガティブフィードバックを行う自分のメリット」を考察します。【自分の価値観・スタンスを明確にできる】フィードバックは「こういう行動は歓迎する」「こういう行動は歓迎しない」という周囲へのメッセージになります。•あなたが上司であれば、(良くも悪くも)部下の行動や発言の方向性を決めていくことになります。•あなたが部下であれば、上司や同僚の関わり方に影響が出ます。一回では大きな変化は出ませんが、「あの人はこういう行動は必ず喜ぶor嫌がる」という積み重ねが、徐々に周囲の行動や関わり方に影響を与えます。結果として、自分にとって望ましい状況を獲得できる可能性が高くなります。ただし、価値観を明確にすることは諸刃の剣です。「あの人は、こういう情報や行動は喜ばない」と分かると、そういう情報は入らなくなります(ネットで言うフィルターバブル状態)。その結果、「イエスマン集団に囲まれた上司」「不都合な情報が入らない裸の王様」になる危険も常に存在します。『自分自身を俯瞰して軌道修正する視点(メタ認知)』と、『ネガティブな情報も冷静に受け止める謙虚さ』が無いと、知らず知らずのうちに周囲から人が遠ざかる可能性もあります。【ストレスが溜まりにくくなる】「言いたいことを言えない」状態はストレスが溜まります。「言いたいこと」「言ってあげた方がよいこと」は、過剰に恐れずに伝える方が、結果的には自分にも相手にも健全です。※相手も「本当はそう思われていたが言われなかった」という状態は、後で知った際に不愉快になります。■フィードバックは「自分の感情を投げつける」ことではなく「相手の行動改善を願って伝える」双方向のコミュニケーションです。適切なフィードバックが出来るようになると、言いたいことを我慢することなく、お互いに望ましい状況が明らかになり、双方の環境が改善していきます。※フィードバックをしない場合、「言いたいけど言えない」と感じるとコントロールできない状態と認識してストレスが溜まります。「言えない」ではなく「自分の意思で言わない選択をしている」と捉え方を変えること(リフレーミング)をお勧めします。【自分の自律と成長に繋がる】相手に厳しいフィードバックをする際には、我が身にブーメランがはね返る可能性もあり、勇気がいります。
「お前が言うな」と思われると、フィードバックは効きません。「何を言うか」も大事ですが「誰が言うか」はより大事です。他人へフィードバックを行う際には、「他人に求める行動を自分は出来ているか」「なぜ、自分はフィードバックをしたいのか」を意識することになり、自分自身の振り返りや成長にも繋がります。■また、組織全体や顧客を考えながら、冷静にフィードバックが出来る人材は、組織にとって貴重かつ希少な存在で、心ある同僚や上司から信頼を得られます(全員ではありませんが)。※冷静に自分を律しながら、相手や組織の為に真摯なフィードバックを行っても味方や賛同が得られない場合、「自分の伝え方が間違っている」か「所属している組織が間違っている」可能性があります。•その際は、「自分の言動を変える」か「自分が属する組織を変える」選択も必要な場合があります。健全なフィードバックが実行できない組織は、変化の激しい時代に適応できなくなる可能性があります。自分の能力や言動に理解を得られる組織を自分で選ぶ自律性(キャリアオーナーシップ)や対等な雇用関係も、今後は重要です。
第三章なぜ出来ないのか?前章では「なぜネガティブフィードバックが必要なのか?」を考察しました。本章では「必要なのはわかるが、なぜ出来ないのか?」を考察します。組織・相手・周囲・自分が望ましい状態に近づくために、耳に痛くても伝えることが有効だと分かっていても「言うは易く行うは難し」。実行は困難です。コンサルティングの現場でヒアリングを行うと、「分かってはいるけど出来ない」理由として、色んな意見が出てきます。■部下が、自分より社歴も年齢も上なので厳しいことを言いにくい■上司が、自分やチームの意見に耳を貸してくれない■現場の上司と部下が、お互いに率直なコミュニケーションが取れていない、等上記の例を追加で深掘りすると、こんな回答が出てきます。□年上部下なので、やんわりと伝えているけど、なかなか伝わらない□あの上司には言うだけ無駄。部下やチームの意見を上司自ら聞くべき□人事としては、現場がモチベーションを落とすのが怖く口出しできない•実は「思っていることを、相手に伝えていない」ことが多いです。※言うべきことを伝えていない場合、はっきり言えば伝える側の怠慢です。「ハッキリ言わずに察して欲しい」「自分は言えないから、誰かに言って欲しい」で相手が変わることはありません。•相手は何か目的/経緯/メリットがあって現在の行動を選択しており、周囲の刺激(フィードバック)がない限り変化する可能性は低いです。この後は、「出来ない」を「出来る」に変えるプロセスを紹介します。
31【出来ない理由】を考えるネガティブフィードバックが出来ない理由は色々あります。出来ない状態を変えるには、まず「なぜ出来ないのか」を把握します。【出来ない理由】を箇条書きで書いてみる。「嫌われるのが怖い、面倒、嫌だ」「ブーメランを食らうのが怖い、嫌だ」「ハラスメントになると大変」「余計な仕事を増やしたくない」「波風を立てたくない」「更にモチベーションが落ちるかもしれない」「たぶん、言っても変わらない」等•管理職の場合は特に、多くの【出来ない理由】があります。
•パワーハラスメント(どう言えば良いか分からない)•働き方改革(労働時間の制約があり、強い指示がしにくい)•テレワーク(直接顔が見えないので、面談が難しい)•年上部下(役職定年や定年再雇用で、元上司が部下になる場合も)•風評リスク(SNS等にフィードバックの様子が流出・拡散する危険)•人手不足(もし辞められてしまうと、業務が回らない)等。経営者や人事の立場からすると、「管理職なんだから、当然やってくれ」「組織のためにやるべき」と言いたくなりますが、管理職も機械でなく人間です。理論上は「やるべき」でも、「出来ない」「やりたくない」と思っている状態だと、効果的な実行は期待できません。もう少し【出来ない理由】を掘り下げる必要があります。
32【やらない目的】を考える【やらない目的】というのも変な表現ですが、出来ない(=やらない)ことには何らかの目的が存在します。前述した通り【出来ない理由】は色々あります。放置していると、いつまでもネガティブフィードバックは出来ないままです。そこで「出来ない」という状態を違う角度から検討します。『嫌われる勇気(岸見一郎著ダイヤモンド社)』で紹介されているアドラー心理学「目的論」によると、行動や感情には原因ではなく目的があります。•ネガティブフィードバックが「出来ない」のではなく「何かの目的があり、やらない選択をしている」と考えるとヒントが見つかります。■例「元上司で年上部下なので、厳しいフィードバックが出来ない」→「数年で定年なので、面倒を避けて定年退職を待ちたい(だから、フィードバックしない)→「元上司なのだから、自分で気付くべきだし気付いて欲しい」(だから、フィードバックしない)→「フィードバックに必要な労力と時間に比べ、得られる改善効果および反発が割に合わない」(その結果、フィードバックしない方が得と考えた)等(その目的や推論が合っているかは別として)自分が何かの目的があって「出来ない」ではなく「やらない」選択をしているという事実が分かると、「出来ない」という思考停止から脱却して「やるか」「やらないか」にフォーカスできるようになります。•自分が「フィードバックをしないことで、何を得たいのか?何が得られると考えているのか?」を立ち止まって掘り下げてみましょう。
33【やらないとどうなるのか?】を考えるネガティブフィードバック実施を選択する最終ステップとして「やらないとどうなるのか?」を真剣に検討します。「相手の耳に痛いことを伝える」ネガティブフィードバックは(相手の反応や効果を気にしなければ)、言葉が喋れれば誰にでもできるはずです。•まずは、自分が「出来ない」ではなく「やらない」ことを(何らかの目的で)選択している事実を受け入れましょう。•そのうえで、「やらなければいけない」という前提条件を一旦捨て、「やらない選択肢」もある中で【やらないとどうなるのか?】【やるとどうなるのか?】を様々な角度で問いを立てて考えます。■例「入力ミスが多いが、注意をすると言い訳が多く面倒くさい」•問い:フィードバックしない場合どうなるのか?「同じミスを繰り返す可能性が高い→その結果、周囲の業務に支障が出る→本人の評価や処遇も上がらない」•問い:フィードバックをする場合どうなるのか?「言い訳が多く変わらないかもしれない」「ミスを減らせる場合もある→周囲の業務負荷が減る→ミスが減ると本人の評価や処遇も高まる→組織のパフォーマンスが向上する」フィードバックは万能ではなく「伝えたら必ず改善する」ものではありません。現実的には「改善される可能性がある」レベルです。「聴きたくないことを言われる」ので、反発や反感を抱かれる可能性もあります。一方、(特に同じミスや問題行動を繰り返す人は)フィードバックしないと「高確率で同じミスや問題行動を繰り返す」「改善するかは運任せ(本人が、たまたま何かの拍子に気付く可能性を待つ)」となります。※前章でお伝えしましたが、フィードバックをしないことは、相手の「成長機会」「気付きの機会」を奪う行為でもあります。■また、「やらないとどうなるのか?」に関しては、メタ認知で視点のレンジを色々変えてみることも有効です(相手の立場・時間軸・レイヤーなど)。「今期は良いが、来期以降はどうなるのか?」「今伝えてあげないと、この人が60歳になった時にどうなるのか?」「自分が本人なら、言われた方が良いか?言われない方が良いか?」「自分が尊敬する人なら、こういう時に言うか?言わないか?」「言わない選択は、お客様や他の社員にどんな影響を与えるのか?」「言わない選択をした自分を、未来の自分はどう思うのか?」等•自分の役割として、「不作為(なすべきことを知りながらしない)の結果および感情」が許容範囲なのかを真剣に検討し、ネガティブフィードバックを実施するか自分で決断します。
第四章どう行うのか?前章で、「出来ない理由」「やらない目的」「やらないとどうなるのか?」を検討しました。•そのうえで、最終的に「フィードバックする」と“自分の意思で”選択します。「組織のために向き合おう」「部下のために伝えてあげたい」「伝えないと自分が納得できない」など、目的意識をもって臨みましょう。※やらされ感で行うネガティブフィードバックは、効果がないだけでなく、その態度が伝わり、相手との信頼関係が毀損するリスクがあります。「耳に痛いこともフィードバックする」と決めたら、コミュニケーションプラン(伝えるための戦略・戦術)を立てます。ポジティブなフィードバックは、賞賛の気持ちを素直に表現するだけでも一定の効果があります。一方、ネガティブなフィードバックは準備を怠ると「ただ相手のモチベーションを下げ行動は変わらない」「感情的に対立して喧嘩腰になる」「お互いが責任転嫁して泥沼化する」など、百害あって一利なしの状態になる危険性があります。•本章以降では、具体的なフィードバック面談の構造・マインドセット・スキルセットを解説します。※シチュエーションは、期待通りの成果が創出できない部下に対する上司からのフィードバックを想定しています。「年度末の評価フィードバック」「年度初めの目標設定」「期中の進捗確認」「1on1」「キャリア面談」「辞令通知(異動・出向・昇降格)」など、上司部下で仕事の成果や目標に関して話し合う機会は多いと思います。■改善が必要な際のフィードバックに関する構造は下記の通りです。1.面談の「趣旨を伝える」2.部下の「自己評価を聴く」3.上司の「期待・評価を伝える」4.評価のギャップをお互いが「認識・受容する」5.改善に向け「意思の有無を確認する」6.改善計画を部下が立て「合意する」7.改善されなかった場合の「可能性に言及する」8.改善に向け「プロセスを構造化する」次章では、現場で起こりがちな失敗(ダメな例)も交えて解説していきます。
8ステップの構造とダメな例(例:部下へのフィードバック面談)1.面談の「趣旨を伝える」大前提として面談者側がゴールイメージを持っておく必要があります。「フィードバックを通じて、どういう問題(ギャップ)を解決したいのか」「どういう行動を改善して欲しいのか」など。そのうえで、面談の趣旨(例:半期の活動や業績レビュー/今後のキャリアを話し合う/来期の目標設定等)を、予め伝えて部下に心構えをしてもらいます。■ダメな例:「今日は厳しいことを言ってやろう!」と上司が勝手に決めて「◯◯君、ちょっといいか?」と本人を唐突に呼び出し、相手の心の準備が整わない状態で一方的にマイナス面を指摘する。上司としては、相手に防御や言い訳をされたくない心理かもしれませんが、不意打ちだと「改善に向けた合意」「事前の内省」が得られません。2.部下の「自己評価を聴く」面談の趣旨に即して、まずは部下の評価や意見を聴きます。上司は極力予断を交えず、真剣に【傾聴(耳と心を傾けて聴く)】します。先に上司の評価や意見を伝えてしまうと、部下にバイアスがかかってしまい、本音が引き出しにくくなります。■ダメな例:最初から上司の結論ありきで、本人の話に興味を持たない/遮る/論破する姿勢を示すと、部下は「言っても無駄だ」と心を閉ざし、本音や本質的な問題点が分からなくなります。特に頭が良く忙しい上司ほど、結論を急いで食い気味に部下の意見へ反論や否定をしがちです。「虫がいい」「言い訳だ」と感じる意見でも、一度は最後まで聴ききりましょう。3.上司の「期待・評価を伝える」本人の自己評価を確認したら、上司側の期待と評価を伝えます。期待を下回っている場合は、変にオブラートに包まず真摯にフィードバックを行います。その際は、「具体的な事実や言動」に基づいたフィードバックを心がけましょう。■ダメな例:抽象的なフィードバック(主体性が無い、協調性が低い、など性格面のみで具体性に欠ける指摘)は、部下もどうすればよいか分かりません。また、葛藤を避けた回りくどい言い方だと、「結局、何が言いたいのか?」が伝わらず、部下は「要はこのままで良いのか」と改善しなくなります。4.評価のギャップをお互いが「認識・受容する」評価に関しては、下記4つのパターンがあり得ます。A「上司の評価が高い」×「部下の自己評価も高い」ギャップなしB「上司の評価が高い」×「部下の自己評価は低い」ギャップありC「上司の評価が低い」×「部下の自己評価は高い」ギャップありD「上司の評価が低い」×「部下の自己評価も低い」ギャップなし•フィードバックが一番難航するのは圧倒的にCパターンです。
この場合は「ギャップが生じている事実と理由」を認め、双方が納得できるまで話し合う必要があります。いきなり部下の自己評価を否定しても効果が無いので、「なぜそう評価したのか?」「なぜ上司との評価にギャップがあるのか?」を本人に考えてもらい、話してもらうことが有効です。※面倒で難しい作業ですが、ここを避けて表面的な改善策を立てても何の意味もありません。•B(部下の自己評価が低い)の場合は「自己評価が低い理由」を確認します。「目指しているものが上司の期待より高い」なら実現を応援し、「自分に自信がない」なら不安を一緒に払拭します。•D(上司も部下の評価も低い)の場合は「どうすれば改善できるか一緒に考えよう」と合意が得やすく、問題は具体策だけです。■ダメな例:「こんな数字じゃ困る」「どう挽回するつもりだ」など、ギャップを責めるような態度は相手の態度を硬化させるだけで意味がありません。一方、「その通りだ」「あなたも頑張っているよね」など、部下の自己評価に引っ張られて迎合してしまうと、その後のフィードバックが論理矛盾を生じます。落ち着いて、ギャップが生じている事実に向き合いましょう。5.改善に向け「意思の有無を確認する」ネガティブフィードバックが改善効果を発揮するには、1点条件があります。「本人が、改善や変化したいと思うこと」です。『馬を水辺に連れていけるが、飲みたくない馬に水を飲ませることはできない』(Youcantakeahorsetothewater,butyoucan’tmakehimdrink)「変わりたくない」「改善する必要性が分からない」という状態の部下に、どれだけ熱心にフィードバックをしても、上司がパワハラのリスクを抱えるだけです。「上司の私は改善や変化を期待しているが、あなたにその意思はあるか?」と問いかけて、自分の意思で選択してもらう必要があります。その際には、単なる「Yes/No」のクローズクエスチョンではなく、部下自身の言葉で語ってもらうオープンクエスチョンをすることが重要です。「変わりたくない」「改善の意欲が見られない」場合は、後述する「改善されなかった場合に起こりえる可能性」を伝え、理解してもらいます。■ダメな例:上司が長々と説教・説得し、最後に「分かったか?」とクロージングする。部下は「Yes」以外の選択肢がない上に、「どう分かったのか?」が不明です。フィードバック面談では、上司がつい饒舌で一方的になりがちです。感覚的には、6割は部下の言葉で話をさせましょう。6.改善計画を部下が立て「合意する」改善する・しないの選択後は、改善計画を部下自身に立案してもらいます。
内発的動機づけを高めるには、「自分で決められる」という【自律性】と、「環境や状態を自分でコントロールできる」という【有能感】が重要と言われています(心理学者:エドワード・L・デシ)。内容以前の問題で、上司が設定した計画だと「自分が決めた」「コントロールした」というプロセスが無いため、内発的動機づけがされません。部下が立てた計画を基に、上司がアドバイスとブラッシュアップを行います。また、自分で計画を立てることで「自分が立てた計画は実行したい(実行しないと気持ち悪い)」という【一貫性の法則】も期待できます。■ダメな例:上司が全部計画を決めてしまうと、部下は「失敗しても、上司が決めたことだから自分に責任はない」「上司の無能を証明するために失敗させたい」という心理が働きます。計画を修正する場合も、上司が最終決定するのではなく本人に決めさせる・選ばせる・書かせるというプロセスを加えることが重要です。7.改善されなかった場合の「可能性に言及する」5「意思の有無を確認する」と連動しますが「改善しない場合、どうなるのか?」を伝えるのも重要なフィードバックです。※日本企業および上司の多くは、特にここが苦手(または無い)です。会社組織に所属する以上、期待される行動や貢献が出来ない状態が続けば、組織運営に支障が出ます。その状態を解消するために、本人の変化が難しい場合は、処遇を変更する必要があります。※処遇変更には「役割の変更(配置転換・異動)」「賃金の変更(降格・降給)」「所属の変更(出向・転籍)」「雇用の解約(退職勧奨・解雇)」などがあります。こういう話をすると「部下が可哀そう」「反発されそう」という意見が出ることもありますが、ギャップが出ている状況で放置され続ける/叱責され続ける方がもっと可哀そうです。また、その状態を放置すると周囲(同僚や顧客)の負荷や反発も強くなります。•処遇の変更に関しては、事後報告ではなく、事前に可能性を言及しておきましょう。変更を望まないのであれば、本気の改善が必要な旨を理解してもらいます。■ダメな例:「改善しない場合」の変更が何もないフィードバックは、本人が健全な危機意識を持ちません。特に成績不振者へのネガティブフィードバックの場合、「改善して昇格・昇給しよう」というアプローチに興味を示さないケースが多いです。人間は、手に入る可能性より、失う可能性に対して真剣になる傾向があります【プロスペクト理論】。無理に不利益変更をしましょう、という意味ではなく「提供できる行動や貢献に見合った処遇にする」という信賞必罰の姿勢が会社の本気度を伝え規律を守ることになります。8.改善に向け「プロセスを構造化する」ギャップを認識し、改善への合意が得られたら、改善行動が習慣化するための「プロセスの構造化」を行います。本人にとってネガティブフィードバックで指摘された内容は、「今まで出来ていなかったこと」「今後も出来れば避けたいこと」の可能性が高いです。その場では「分かりました。頑張ります」と決意しても、なし崩しに終わるケースも多いです。
•それを防ぐために行動計画を「定点観測する仕組み」を作ります。「定点観測する仕組み」は、アプリやクラウドシステムへの入力や可視化も有効ですが、機械だけのフォローは、本人も飽きやすいです。一番効果的なのは「人による確認とフィードバック」です。■人による確認方法としては下記があり得ます。「上司との1on1(出来れば、短時間でも週1回以上)」「メンターによるフォロー面談」「同僚同士の報告会やグループミーティング」「人事やキャリアコンサルタントによるカウンセリング」「コミュニティ(リアルでもオンラインでも)での相互支援」「社内イントラやSNSでの定期報告」「出来ていたら賞賛される」・「出来ていなかったら指摘される」というフィードバックが続くと、実行が習慣化されていきます。■ダメな例:「本人が言ったのだから、当然やるだろう」と放置すると、「やってもやらなくても同じ」という状態になり、行動が止まります。また、「思いついたら確認」より「最初から、確認の仕方・タイミングを決める(構造化する)」方が本人も意識するようになります。
第五章どう行うのか?(5つのマインドセット)「言う方も、言われる方もやりたくない」ネガティブフィードバック。そのハードルを乗り越えて効果的に実行するためには、実施する側のスキルセット以上にマインドセットが重要です。お互いにストレスフルなコミュニケーションなので、感情のコントロールや気持ちの整理をしておかないと、感情的な議論になり、泥沼化することもあります。この章では、落ち着いて効果的にフィードバックするためのマインドセットを5つ紹介します。
51【嫌われることを覚悟する】相手にとって耳に痛いことを伝えるので、当然ながら喜ばれません。脳の動きとして、「自分の安全や現状を脅かす情報」や「コンフォートゾーンから引き剥がそうとする他人」には闘争心か逃走心を抱くのが普通です。「相当の確率で(少なくとも短期的には)嫌われる」ことを前提に行いましょう。コンサルティング現場では「嫌われたり波風を立てずに済ませたい」という人事や上司の本音が見え隠れします。共同体に不協和や摩擦を生じさせたくないのは社会的動物としての本能だと思いますが、その不協和を起こさない限り相手は変わりません。※言わなくても変化できる人なら、とっくの昔に改善しているはずです。「嫌われようが煙たがられようが、組織や本人のために必要なことを伝える」「短期的に恨まれたとしても、中長期では必ず理解してくれる」という覚悟が出来てから、ネガティブフィードバックは行いましょう。•その際に「課題の分離(自分の課題と相手の課題)」という考え方を持つと、嫌われることが過剰に気にならなくなります。課題の分離は、『嫌われる勇気(岸見一郎著ダイヤモンド社)』で紹介されている「アドラー心理学」の考え方です。「伝えるか伝えないか」は、自分の課題(自分が選べる)「伝えられて何を感じて行動するか」は、相手の課題(自分が選べない)と考え、自分の行動と選択にフォーカスします。「相手がどう感じるか」「どう行動するか」は、コントロールできません。必要だと思ったことを真摯に伝えたら、結果(相手がどう受け止めるか)は相手の課題として分離しましょう。
52【期待するが期待しない】ネガティブフィードバックは「相手の改善や変化に期待する」行為です。ただし、伝え方を間違えると、自主性ややる気を奪う可能性もあります。出来れば、ポジティブフィードバック(良い点を誉める)またはナッジ(nudge:ひじで小突く)程度のアプローチで「本人が自発的に問題に気付き、行動変容する」ことが現実問題としても動機づけ理論としても理想です。「最初は自律的な気付きと改善に期待し、それで難しい場合はネガティブフィードバックを行う」意を決してネガティブフィードバックを行う側の反応で起こりがちなのは、「なんで(私が)こんなに一生懸命伝えたのに、(私の言う通り)行動してくれないのか」「なんで(私の言うことを)分かってくれないのか?」という不満です。「相手に期待(信頼)して、改善を願いフィードバックを行う(自分の課題)」「自分が伝えた通り行動することは期待しない(相手の課題)」行動しないことも本人の自由意思であり、その結果責任も本人が背負います。前項で紹介した「課題の分離」を行いましょう。相手の自由意思と責任を尊重せず、面談者のゴールへ100%誘導したり説得したりする姿勢は反発や面従腹背を招く可能性が高くなります。成功体験が多い管理職ほど「自分の意見は正しい(相手は間違っている)」「この解決策を実行すべき(他の解決策は劣っている)」と考えがちです。ある程度のバッファ(余裕)や流動性も持って臨み、一方的な「説得」ではなく双方が「納得」できる着地点を探すのが良いでしょう。
53【感情をこめるが感情的にならない】フィードバックは、小手先の手練手管以上に「日頃の信頼関係」と「伝える側の姿勢」が重要です。「この人は、真剣に自分のことを考えてくれている」「耳に痛いことだが、言っていることは正しい」「いつも職務に誠実で、組織や自分に向き合う姿勢に嘘はない」という面談者の姿勢や誠意が伝わると、すぐに変化や改善はしないまでも「自分も真剣に聴こう」という状態までは持っていけます。「言われている事実は嫌だが、言っている人と気持ちは信頼している」という状態は、ある意味理想です。「言い方がスムーズか」「説明が上手か」より、しっかり「相手軸の感情(改善への願い、信頼、期待)を込める」ことが重要です。ただし、「自分軸の感情(部下への怒り、面倒くさい、やりたくない、こうすべき)」や「誠意の押し付け」が滲み出ると相手に伝わります。一方、理論的な上司がやりがちなエラーは、「機械のように冷静で矛盾も無いが、相手のことを1ミリも考えていない」自分の都合(目標達成、組織の論理、自己保身など)だけで行う無感情なフィードバックです。※こうした根本感情や基本姿勢はかなりの確率で部下に伝わります。「この上司は、自分のことは何も考えてくれない」「この人とは話しても無駄だ」と思われ、弁護士沙汰になったケースも見ています。「説明は下手で流暢ではないが、日頃の関係も含めて本気で部下の成長や変化を願うフィードバック」は、初期や途中で揉めても、最終的には何かしら着地や合意を得られます。■相手の耳に痛いことを伝えるので、当然ながら反発や挑発やけんか腰の対応もあり得ますが、そこでけんか腰になると泥沼化します。伝える側としては、アンガーマネジメント/マインドフルネス/傾聴等の技術を学んで、落ち着いた精神状態で対応することが求められます。
54【真剣に職務に取り組む】ネガティブフィードバックが相手に受容されるには「この人に言われたら仕方ない」と思えることも大きな要因です。上司自身が怠慢な仕事ぶりなのに、部下の怠慢を指摘しても納得できません。「お前が言うな」「お前はどうだ」というブーメランを食わないように、平素から自分の職務に誠意を尽くしましょう。ただし、業務が細分化・複雑化している現在、上司が部下より担当業務の知識・スキルが少なくても問題ありません。「上司としての職務・役割」を真剣に全うしているかが重要です。「自他ともに厳しく明確な基準を持っている」「きちんと自分を律している」「誰に対しても分け隔てがない」「間違っていることには、上司や顧客との対立も恐れない」という仕事ぶりであれば、言うことの重みが違ってきます。「自分はそこまで出来ていない」と感じるのであれば、今からでも仕事への姿勢を見直してみましょう。経営者や管理職として人や組織を統べる立場であれば、自分の仕事ぶりが自他に恥じないものかは常に問い続けることをお勧めします。「自分のことは棚に上げて、部下にだけ高い要求をする」ことは卑怯です。
55【自分で決める】「本当はやりたくないけど、仕方ない」「俺はこんなこと言いたくないけど、経営の指示で言っている」「私は思っていないけど、周囲の不満が出ているから」など、フィードバックの際に言い訳したくなる心理も理解できます。誰かの責任にすることで、「相手の恨みを回避したい」「自分は悪くない」「発言の責任は自分にない」という心理的防衛が出来て少し楽になります。ただ、言われた側はその言い訳に納得するでしょうか?「では、あなたはどう思ってるんですか?」と聞きたくなります。•「自分の意思で伝えたいと思わないことは、失礼なので伝えない」ネガティブフィードバックで相手に即感謝されることは滅多にありません。(相手がよほど成熟していれば別ですが、そうした人はそもそもネガティブフィードバックをする必要がありません)一時的には、相手と対立したり、不愉快な空気が流れたり、反発されたりすることは覚悟する必要があります。「嫌われても、本人のために言っておいてあげたい」「組織が成果を出すには、この言動はどうしても変えてもらいたい」「自分の信条として、こうした状況を黙認できない」など、自分の意思・目的をもって「フィードバックするか・しないか」を選択することをお勧めします。抜いた刀は戻せません。厳しいメッセージを発するからには、多少の反発で意見を引っ込める優柔不断さは厳禁です。覚悟をもって、自分でフィードバックという刀を「抜くか・抜かないか」を選びましょう。
第六章どう行うのか?(5つのスキルセット)ネガティブフィードバックは、最初のボタンを掛け違えると暗礁に乗り上げます。また、相手の心理状態に応じたアプローチや、行動変容に繋げるためのクロージングも必要です。それぞれの場面で有効になるスキルセットを5つ紹介します。
61【合意を得る】ネガティブフィードバックは「言った側の自己満足」で終わっては意味がありません。※例えば、会議で経営者が「当社は厳しい状況だ、全社員が危機意識と主体性を持とう!」と熱弁をふるっても、社員の行動が変わらなければ経営者の自己満足に過ぎず、双方時間とエネルギーの無駄です。行動変容に繋げるためには、「置かれている状況」「改善の必要性」「これから話し合いを行うこと」に関して、個別に合意と理解を得ることが重要です。※ここを飛ばしてしまう経営者や上司は多いです。合意を得る際には「はい/いいえ」という2択のクローズクエスチョンでなく、「不明点はありますか?」「他に問題点はありますか?」「今はじめても良いですか?」など、本人へ問いを立てて、選択させる・意見を言わせるオープンクエスチョンが有効です。■合意を得ることは、各プロセスで行うことを推奨します。「面談の目的」「フィードバックを始めること」「ギャップの事実があること」「改善意欲を確認すること」「改善計画を立てること」「改善期間を決めること」「その後の運用方法を決めること」※後から「私はそんなことを言ってない」「そんなつもりじゃなかった」を防ぎ、シビアですが言い訳や逃げ場を無くす意味もあります。•フィードバック内容がどう伝わったか相手に説明してもらいます。そうすると、相手は「言われたことを思い出す」→「言語化する」→「上司に説明する」という活動をするので、伝えた内容が「長期記憶化」「言語化」「コミットメント化」されやすくなります。また、ボタンの掛け違いを早期に発見し軌道修正が可能になります。
62【不協和を創る】改善を求めるネガティブフィードバックは、「現状」と「期待」に必ずギャップがあります。ギャップの多くは、本人が目を向けたくない事実です。「本人の感情を害さずに気付いてほしい」「波風を立てずに変化して欲しい」と考える上司は多いです。しかし脳科学上、人間には「望まない変化を受け入れたくない」正常性バイアス(災害時などに「自分だけは大丈夫」と思いたがる心理)と、「未知の変化を避けたい自己保存本能」があります。変化を嫌うタイプの人が、放っておいて変化する可能性は極めて低いです。•行動変容を促すには、「今のままでいたい」⇔「今のままではまずい」という矛盾や違和感が最初の一歩になります。矛盾や違和感があると、その状況に留まることが気持ち悪くなり、何かしら行動や意識が変容し始めます。※心理学では【認知的不協和】と呼ばれます。伝える側は、不協和を恐れるより、「ちゃんと矛盾や不協和を感じてくれた(フィードバックが伝わり始めた)」ことを喜びましょう。
63【話すより聴く(傾聴)】フィードバックというと「うまい言い方」を考えがちですが、「うまい聴き方」の方が遥かに重要です。人間には【一貫性の法則】があり、「自分が言ったこと」と矛盾を生じたくない性質があります。一方的に言われたことなら否定しやすいですが、「自分の意見を組み込んで言われたこと」は否定しにくいです。まず、本人の言い分をしっかり傾聴(耳と心を傾けて聴く)しましょう。「これ以上、言うことは無い」「本音をすべて言い切った」という状態まで付き合うと、言語化が出来て本人の頭と感情は整理できていきます。特に、相手の不安・不満・恐怖・怒り等のネガティブな感情のサインを見つけたら「何か不安があれば教えてください」「お気持ちはこの場で全部吐き出してください」など、吐き出させることを推奨します。ネガティブな感情は、吐き出せず溜め込むと解消されません。傾聴により、感情を吐き出し精神的に落ち着く【カタルシス効果】と、時間と感情を共有してくれた相手に好意を抱く【単純接触効果(ザイアンスの法則)】の両面で、フィードバックを落ち着いて受容する土台が出来上がります。•「沈黙を恐れない」「間を使う」企業向けネガティブフィードバック研修では、ロールプレイを行います。そこで上司側がやりがちなエラーが「喋り過ぎる」「沈黙を埋めたがる」です。上司が過剰に喋り過ぎると、部下は「じっくり内省する」時間が持てません。必要な情報を伝えた後は、相手の反応や内省をじっくり待つ姿勢が有効です。「誤解があったら申し訳ないんだが……」「こういうこともあって、ああいうこともあって……」「どう思う?こんな風に思うよね……」など、少しの沈黙にも耐えきれず部下の心理を無駄に先読みしてベラベラ話して沈黙を埋めようとする上司もいますが、部下に話す機会を与えない限り、フィードバックのボールは相手に渡りません。■しばらく沈黙が続くと、部下も色々なことを考えざるを得ません。「自分から何か意見を言わないと、この面談は終わらない」「真剣に考えないと」「上司は何を期待しているのか」「今回は、いつもと雰囲気が違う」•沈黙と間を恐れない、むしろ上手く沈黙と間を創ることが重要です。
64【行動と事実について話す(ファクトフルネス)】ネガティブフィードバックは『性格・意識』ではなく『行動・事実』に焦点をあてて行う必要があります。ただ、実際に管理職・経営者・人事と話すと、『性格・意識』に関する相談(愚痴)が多く出ます。「もっと責任感を持った仕事をして欲しい」「シニア社員のモチベーションが低い」「あの人は気難しいので、仕事を頼みにくい」「協調性が足りない」等『性格・意識』に焦点を当てるべきでない理由は下記2点です。1.パワハラのリスクが高くなるパワーハラスメントに関する厚生労働省の定義(抜粋)です。「職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為」特に「人格権の侵害」と受け止められる言動は、相手に精神的苦痛を与えるため、注意が必要です。■例えば、「もっと責任感を持って仕事をして欲しい」という発言は、本人は「責任がない人間だと言われた」と受け止める可能性があります。「協調性」「主体性」「当事者意識」なども、同様の懸念があります。※誉める分には問題ない表現ですが、叱る際の使い方には注意が必要です。2.本人の改善や変化に繋がらない「もっと責任感を持って仕事をして欲しい」と上司が言ったとしても、「責任感を持った仕事とは何か?」は部下には分かりません。「自分の仕事すべてが無責任なのか?冗談じゃない」と反発を抱く可能性も高くなります。•フィードバックする際は、『どういう行動や事実を見て、上司である自分がそう判断したのか?』を掘り下げ、その行動・事実に基づいて話し合うことが重要です。例えば「責任感が足りない」と判断した事実が「プロジェクトの進捗状況を自分から確認しない。その状況が3回連続続いている」なら、その旨を伝えます。そうすれば、次回以降は「進捗状況は自分から確認する」という行動改善に繋がります。•会社で働くとは「労働提供を前提とした雇用契約」であり、家族や友人のように血縁や情緒を基にした関係ではありません。極論を言えば、内心や人格は関係なく、期待される行動を取ってくれれば組織運営上の支障はありません。※最終的にはフィードバック無しで期待を上回る行動や姿勢を取ってくれることが最善ですが、最初の目的は「期待通りの行動をしてくれること」です。現実的には下記ステップで改善していきます。■不足している行動・事実を指摘する(ネガティブフィードバック)■フィードバックされた行動が改善する
■改善に対して承認・賞賛する(ポジティブフィードバック)■誉められたことで、その行動を繰り返すようになる■行動が変わり、上司や周囲の評価が変わる(責任感の欠如を感じなくなる)■周囲の評価に応じて、内心も変化する場合がある『心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる人格が変われば運命が変わる』という有名な格言(ウィリアム・ジェイムズ:心理学者)がありますが、ビジネスの現場では下記の表現になります。『行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば評価が変わる。評価が変われば心が変わる。心が変われば人格が変わる』•行動を変えるには「良い点は誉め、悪い点は叱る」ことが必要です。「この人は良い・悪い」ではなく「この行動は良い・悪い」という行動をベースにした観点が必要です。誉めるのは「繰り返して欲しい行動」「更に伸ばして欲しい行動」叱るのは「繰り返して欲しくない行動」「足りない行動」「ローパフォーマーには常に厳しい」「ハイパフォーマーは常に甘い」など、行動ではなく人による差異が出ると、組織のモラルが低下します。「ローパフォーマーでも、良い行動は誉める」「ハイパフォーマーでも、悪い行動は叱る」上司が明確で誠実な基準を持っていると、組織のベクトルは合っていきます。
65【諦める(明らかに見極める)】ネガティブフィードバックを延々と続けると、部下も上司も疲弊します。期間の定めがない改善活動を、ある管理職は「ゴールの無いマラソンを走っているようだ」と言っています。※パワハラやメンタル不調のリスクも高まります。現実問題として「改善する場合」「改善しない場合」どちらも起こり得ます。「どこかのタイミングで、お互いに諦める(見極める)」ことも必要です。•3ヶ月から6ヶ月間、本気で取り組んで改善しなければ、違う道を話し合うことをお勧めします。ロンドン大学フィリップ・ラリー博士が行った研究では、人が新しい行動を習慣化する平均は66日だったそうです。3ヶ月(営業日60日前後)で一区切りし、今後に向けた検討を行います。改善が見られない場合の対応は、以下の選択肢があり得ます(第四章参照)。■「役割の変更(配置転換・異動)」■「賃金の変更(降格・降給)」■「所属の変更(出向・転籍)」■「雇用の解約(退職勧奨・解雇)」※本人にとって不利益な処遇変更や雇用契約の解約には、法律面での注意と心理面への配慮が求められます。本人としても「難しい役割や苦手な職務を、背伸びしてやり続けること」が必ずしも幸せとは限りません。※実際、社内外の違う役割・環境で活き活きと働いている方も多く見受けます。「改善しなかった場合の可能性」に関しては、改善計画を遂行する最初の段階で言及しておくことを推奨します。後出しだと、本人からすれば「だったら初めから教えて欲しい」「騙し討ちだ」と不満を持つ原因になります。
補足【オンラインフィードバックの注意点】最近は、テレワークが一般化してオンライン面談も増えています。ネガティブフィードバックをオンラインで行う場合は、下記に注意が必要です。■会話の「間」を重視するオンラインでは、会話が重なる・途切れる事態が頻発します。「本人が言い足りないことがないか」「必要なことが伝わっているか」面談途中でもしっかり間と沈黙を取って、確認しながら進めましょう。■相手の「表情」と「言葉」で受容度合いを確認する小さなスマホやPCの画面上では、微細な表情や雰囲気は確認しきれないことがあります。フィードバックを相手がどう受け止めているかが対面より把握しにくい場合があるため、出来る限り「どう理解したか、説明して欲しい」など、相手の口で表現してもらいましょう。一方、上司側は大げさにならない範囲で、対面時よりもうなずきや反応を大きくしてあげる方が、相手も本音を話しやすくなります。■雇用や処遇に関するフィードバックは対面を推奨ネガティブフィードバックの一環で、雇用契約の解約や処遇の低下など、より厳しい話をしないといけない場面も起こり得ます。その際は、出来るだけオンラインより対面を推奨します。「相手の感情(落胆・不満・怒り・動揺など)を把握しながら話せる」「通信状況の不具合による情報の抜け漏れを防ぐ」「無断録音・録画リスク防止(オンラインだと手元で録音されても分からない)」という効果があります。
第七章シーン別の活用方法今までは「上司による、部下へのフィードバック」を中心に解説しました。最終章では、その他のシーンでの活用も解説します。原則的な考え方は変わりませんが、相手が「部下」「上司」「顧客」「友人」だと、それぞれの関係性が異なります。そうした関係性に配慮したポイントを紹介していきます。
71【対上司】「ボスマネジメント」と呼ばれ、「部下から上司に、望ましい行動に変化を促す」ためのフィードバックになります。「そんな事が出来るの?」と思うかもしれませんが、「上司」はあくまで組織の役割なので、望ましくない行動があれば、改善を促す(または役割を退いてもらう)ことは組織運営上必要な行為です。「組織にとって適切な役割を遂行してもらうために話し合う」という観点では、上司による部下面談(第四章)と構造や考え方は同じです。ボスマネジメントのポイントは下記になります。■上司のメリット(Winや役割)を考えるフィードバックを行う前に、上司は「何が実現すると嬉しいのか」「組織から何を期待されているのか」を考えます。部下からのフィードバックが、その実現に近づく内容であれば、聴く耳を持つ上司は少なくありません。「部門の業績を達成するために、こういう行動を取って欲しい」「部下がコア業務に集中するために、こういう指示は控えて欲しい」「こういう言動はモチベーションを落とすので、言い方を変えて欲しい」など※単に「あれは困る」「こうして欲しい」という部下の不満や要望だけを伝えても、上司や組織にメリットが無いと上司も変わりません。部下の観点から見た代替案および代替案のメリットを用意して臨みましょう。■感謝している点は感謝を伝える上司は、部下以上に「ポジティブなフィードバックを受けていない」可能性があります。特に経営者と部下の板挟みになっている中間管理職は、部下から「褒められること」「感謝されること」は大きな喜び(快感)です。上司も人間なので、褒められた行動は再現する可能性が高くなります。※心にもないゴマをする、という意味ではなく「助かっている点、繰り返して欲しい行動は、そのことを伝える」だけです。■辞めて欲しいことは、その都度で冷静に指摘するTVや映画では、不満を溜めに溜めて辞表を叩きつけながら爆発させるような演出がありますが、感情的なフィードバックは実際の効果は低いです。※感情を爆発させた本人が、周囲から「扱いにくい人」と思われることも多い。何か不満がある際は、過度に溜めこまず「こういう行動は、こういう理由で困る。次からこうして欲しい」と落ち着いてフィードバックしましょう。※冷静な指摘でも改善が見られない上司であれば、経営者や関連窓口への相談など、必要な手順を講じても良いと思います。
72【対顧客】過度なクレーマーの動画やニュースも増え、昔に比べて「お客様は神様です」と無条件になんでも許す空気は減ってきました。それでも「お客様の要望は100%対応すべき」「理不尽な要求でも対応しないといけない」という考えをもって苦労している人は多くいます。顧客に対して、厳しい指摘をする際のポイントを記載します。■カスタマーマイオピア(顧客近視眼)の罠を避ける「顧客の言うことは常に正しい」「お客様の要望には必ず対応すべき」という視野狭窄状態になると、落ち着いた判断やフィードバックが出来なくなります。真面目な営業ほど、「お客様の言われた通りに対応する」ことに疑念を抱かず、過剰な要求にも反論できない場合があります。当然ですが、お客様の情報や判断基準が常に正しいわけではありません。対価を頂く以上はプロとしての矜持を持ち、「プロとして、正しい情報や提案を行う」「場合によっては、お客様の間違いを指摘する」「費用が高くなっても、ベストな提案を行う」姿勢は必要になりますし、その姿勢が信頼感に繋がる場合もあります。■NoDeals(取引しない)という選択肢を持つ世界的な名著『7つの習慣(フランクリン・コヴィー・ジャパン)』の「WinWinorNoDeals(WinWinの関係が築けない場合、取引しないことで合意する)」というフレームワークは、健全なフィードバックを行う際に有効です。「WinWin」を目指すのがビジネスの基本ですが、「WinLose」や「LoseLose」の関係性が続く場合は、取引をしない選択肢も持ちましょう。顧客にとって最善と思われる提案やフィードバックをしても受け入れられない場合は、今後も良好な関係構築が難しい場合が多いです。ビジネスは「顧客が選ぶだけでなく、顧客を選ぶ対等な活動」だと考えると、正々堂々と意見を伝えられるようになります。■相手を見てフィードバックするか決めるこちらをビジネスパートナーとして信頼してくれるお客様なら、耳に痛いネガティブフィードバックが、逆に信頼を高めることもあります。一方、単に調達手段としてしか見ておらず価格以外に興味を示さないお客様に、どんな熱を込めたフィードバックも無駄(むしろトラブルの原因としてマイナス)になる可能性が高いです。「人を見て法を説く」「無駄な相手には黙って去る」姿勢も必要です。
73【対友人】「部下」「上司」「顧客」のようにビジネスで繋がった契約関係ではないだけに、フィードバックする難しさがあります。■相手に求められたら行う友人関係は特に情緒で繋がっている関係のため、受け手が望まないタイミングでのネガティブフィードバックは、大概揉めます。少し気になるが自分に被害が及ばないことなら「求めよ、さらば与えられん」というスタンスで、「相手から相談された」「相手が求めている」状態にならない限り、静観することも有効です。※ビジネスシーンの場合、フィードバックしないと組織や顧客に損失が発生する可能性があるため、相手のタイミングを待てない場合が多いです。また、フィードバックをする前に「相手の気持ちや言い分を、最大限傾聴する」という姿勢はビジネスシーン以上に重要です。※口では「アドバイスを求めている」と言いながら、雰囲気や表情が「ただ話を聴いて同調して欲しい」という場合もあります。■関係が断絶や変化することも覚悟する友人関係は、ビジネスの契約と違い「論理」「成果」ではなく「感情」「居心地の良さ」が大きなウェイトを占める場合が多いです。ネガティブフィードバックを受けて楽しいと思う人は極めて少ないので、ビジネスシーン以上に感情や関係がこじれる可能性は当然あります。こじれた際にビジネスライクな関係でない分、修復が難しい場合があります。「それでも、お互いのために言った方が良い」「相手に必要だから、嫌われても伝えてあげたい」「これ以上、今の状態が続くと自分が困る」と判断したら、絶縁も覚悟したうえで伝える方が、毅然とした対応ができます。「この人は本気だ」と伝わればフィードバックを真剣に受け止める確率も上がります。本気で伝えたフィードバックが通用しない相手なら、「距離を置く」「接触頻度を減らす」「関係を解消する」などの対応が望ましい場合もあります。■長期的に判断するビジネスの関係は契約期間(定年など)やルール(就業規則など)が存在しますが、私的な関係は(原則として)期間やルールが存在しません。「短期的には我慢できるが、中長期で考えると困る」「将来を見越して、今のうちに軌道修正が必要」「我慢や譲歩し続けると、自分の経済的・精神的ダメージが大きい」という場合、なるべく早いタイミングでフィードバックする方が、「改善できる可能性」「改善した場合の効果」「関係解消のし易さ」も大きくなります。望まない状態や関係を長く続けると、自分自身の心身に悪影響を及ぼします。一方で「3ヶ月後にはこの状況は無くなる」「この時期を過ぎれば問題ない」など、問題が長期化しないものであれば「フィードバックしない」ことも賢い選択肢です。
「将来も踏まえて、フィードバックをしたいのか・したくないのか」を自分の意志で決めることを推奨します。
手順書ここまで読み進めていただきありがとうございます。こちらは抜け漏れなくネガティブフィードバックを実行するための手順書です。こちらをしっかりと活用し効果のあるフィードバックを実現してください。カッコ内は関連している章です。再度参照しつつ手順を進めることを推奨いたします。
手順書ここまで読み進めていただきありがとうございます。こちらは抜け漏れなくネガティブフィードバックを実行するための手順書です。こちらをしっかりと活用し効果のあるフィードバックを実現してください。カッコ内は関連している章です。再度参照しつつ手順を進めることを推奨いたします。
手順書②理解編・マインドセットについてマインドセットチェック(メモ欄)1【嫌われることを覚悟する】を理解できているか?(五章)2【期待するが期待しない】を理解できているか?(五章)3【真剣に職務に取り組む】を理解できているか?(五章)4【自分で決める】を理解できているか?(五章)
手順書③理解編・スキルについてスキルチェック(メモ欄)1【合意を得る】を理解できているか?(六章)2【不協和を創る】を理解できているか?(六章)3【話すより聴く(傾聴)】スキルを理解できているか?(六章)4【行動と事実について話すスキルを理解できているか?(六章)5【諦める(明らかに見極める)】スキルを理解できているか?(六章)
手順書④面談準備編準備チェック(メモ欄)1気持ちや感情は冷静か?(二章)2何を伝え、どうなって欲しいか明確か?(四章)3本人に考えてもらうことを整理できているか?(四章)4場所は適切か?できれば声が漏れない会議室5行動と事実の情報は揃っているか?性格面や抽象的な指摘ではなく(四章)6必要な書類は用意できているか?過去の評価記録、改善計画書、合意書など7合意を得るイメージはできているか?ある程度の柔軟性は必要(六章)8改善期間と確認プロセスは想定しているか?(六章)9改善できなかった場合の処遇は想定しているか?(六章)
手順書⑤面談実施編実施チェック(メモ欄)1上司との1on1(出来れば、短時間でも週1回以上)(四章)2メンターによるフォロー面談(四章)3同僚同士の報告会やグループミーティング(四章)4人事やキャリアコンサルタントによるカウンセリング(四章)5コミュニティ(リアルでもオンラインでも)での相互支援(四章)6社内イントラやSNSでの定期報告(四章)7システムを利用した可視化(四章)※全ての方法を実行する必要はありません。適切な方法を選択ください。※定点観測で効果的なのは「人による確認とフィードバック」です。
手順書ファイルのダウンロード本書の手順書は実際の現場で使えるように印刷用のPDFをご用意しております。ダウンロードURLhttps://mangabito.biz/?page_id=13543パスワードeasytoFB手順書がダウンロードできない場合はこちらのメールアドレスに御連絡ください。support@mangabito.jp
あとがき「相手の耳に痛いことを伝える」ネガティブフィードバックは、勇気や覚悟が必要な行為です。•伝えたかった真意が伝わらない。•行動も意識も変わらない。•相手に嫌われる、煙たがられる。•意見が合わず、感情的な対立を招く。こんなことも、当然起こり得ます。一方で、こんなことも起こります。•真意が伝わり、感謝される。•行動や意識が望ましい方向に変わる。•今まで以上に、相手と深い信頼関係ができる。•意見は合わなかったが、お互いの気持ちを理解する。「思い邪なし」で、心から相手のため組織のためを願ったフィードバックは、相手や周囲は案外受け止めてくれるものです。「全員に嫌われない関係」より「心ある人達との深い信頼関係」の方が、大きな財産になります。私自身、必要と感じた時には公私とも厳しいフィードバックをしてきました。その結果、疎遠になった方もいますし陰口を間接的に耳にしたこともあります。一方で、意外なところで感謝してくれる方もいますし、今まで以上に深く付き合えるようになったお客様や同僚や上司も増えました。全体で考えると「本音で思ったことは、伝えて良かった」と実感しています。あなたの勇気ある一歩が、周りの世界を少しでも善くすることを願っています。
参考文献『嫌われる勇気(岸見一郎著・ダイヤモンド社)』『7つの習慣(スティーブン・R・コヴィー著・フランクリン・コヴィー・ジャパン社)』
著者紹介難波猛(ナンバタケシ)マンパワーグループ株式会社シニアコンサルタント早稲田大学卒業。株式会社PHP研究所、株式会社太陽企画を経て2007年より現職。人事コンサルタント、研修講師、コンサルタントとして、日系・外資系企業を問わず2,000名以上のキャリア開発施策、人員施策プロジェクトにおけるコンサルティング・管理者トレーニング・キャリア研修、プロジェクトマネジメント等を100社以上担当。専門領域は、中高年のキャリア開発・活性化/雇用調整/ローパフォーマー対応等。■著書•「働かないおじさん」は、なぜ「働けない」のか?ローパフォーマーの行動変容を促す3つのポイント•『雇用調整の考え方と進め方』「リストラされにくい人」になる5つのポイント
出版社メッセージ読了いただき誠にありがとうございました。本書は【MB動き出せる本シリーズ】の書籍です。豊富な実務経験、心理学、脳科学、マーケティング、コーチング、最新科学研究などをベースに、読みながら動き出せる書籍設計を追求しているシリーズです。手始めに本書を徹底的に活用ください。皆さまのお役に立てることを願っております。「動き出せる本」新刊情報こちらからhttps://mangabito.biz本書に関してご意見、ご感想等ございましたら是非こちらにご連絡ください。support@mangabito.jp作家募集「動き出せる本」を執筆いただける作家様を募集しております。entry@mangabito.jp人生と仕事を進化させよう株式会社まんがびと
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