こうして桜花宝飾が成功している大きな理由として、同社のニュービジネスシステムを支
える優れたサブシステム群を見逃すわけにはいかない。それらを簡単に説明しよう。
受注システム
桜花宝飾は全国に約二万五〇〇〇軒の取引先を持つが、得意先からの商品の受注は、東京
と名古屋と大阪にある受注センターで行なっている。月曜から金曜までの毎日、午前九時か
ら午後五時まで、電話だけでなくファクスでも受け付けている。受注を受けると担当者は顧
客と応対しながらコンピュータ端末を操作し、①お客様の会員番号、②注文商品番号、③商
品在庫の確認、④受注書の発行、を迅速に行なう。
同社の商品在庫管理システムは、任意の商品が、現在、どこの支店の店頭にいくつあるか、
あるいは在庫はないがメーカーに発注済みかどうか、予定納期はいつか、などがリアルタイ
ムに把握できる仕組みになっているので、顧客に直ちに状況を知らせることができる。商品
の在庫が確認でき、受注が確定すれば、その旨を端末に入力して受注作業は終わる。この受
注データは店舗に自動伝送され、納品準備に引き継がれていく。
物流システム
確定した受注が店舗に伝送されると、自動的に受注書が発行される。この受注書はピッキ
ングリストの役割を担っており、店頭在庫から担当者が該当する商品をピッキングする。商
品は一つずつ小さなビニール袋に入れて、バーコードを印刷したシールが貼りつけられてい
る。ピッキングされた商品は、必要に応じてサイズ直しなどの二次加工を行なった後、スキャ
ナーでバーコードを読み取り、店舗に併設している発送部門に引き渡し、発送準備に入る。
他の店舗に在庫してある商品は、該当店にピッキングを依頼する。依頼を受けた店舗では
直ちにピッキングを行ない、宅配業者の定期便に乗せる。こうして、遅くとも翌日までには
在庫分の商品が発送部門に集荷される。
発送準備ではまず端末入力を行なって発送分の商品が集荷されたことを確認し、売上げを
確定して売上げ伝票をプリンタから出力する。次に、商品を梱包して郵便または宅配便で発
送する。店頭での受け取りを希望する顧客にも取り置きで対応している。
こうして顧客が電話で注文してから商品が手元に届くまで、早ければ来店の場合で当日、
発送の場合でも翌日という短いリードタイムが実現できる。
決要胴システム
代金決済は、基本的にはすべて現金取引と、非常にシンプルである。郵便または宅配便の
「代金回収代行サービス」を早くから利用し、代金は原則として商品引き換え払いを実施して
いる。
さらに、来店の得意先に対しては銀行POSによる決裁サービスも提供している。また「桜
花クレジットメンバーズ」の名前でハウスカードを発行し、上得意先に対しては卸クレジッ
トカードでの決済サービスを行なっている。
商品在庫管理システム
桜花宝飾のシステムのなかでも、最も注目すべきは、商品の在庫管理についての一貫した
設計思想である。本店および全国の各店に商品を適度に分散しながら、全体としての総在庫
量を必要最小限に抑え、余分な在庫金利を支払わないように、商品の在庫管理はすべてオン
ライン・リアルタイムで実施している。
このため、受注スタッフは端末から任意の商品の在庫状況を直ちに知ることができる。商
品在庫の有無を含め、メーカーに発注済みか、いつ入荷するかなど商品在庫に関する情報が
一元管理され、社内の端末からリアルタイムでわかる仕組みになっている。さらに各支店ご
との在庫量はできるだけ最適になるよう自動計算され、ストックポイント(適切在庫保管所)
移動の指示が打ち出される。これにより店頭での在庫切れをなくし、機会損失を減らしてい
る。
また、全社的に在庫が少なくなり、在庫が一定の基準を下回ると、メーカーヘ自動的に発
注指示が行なわれる。もちろん、商品戦略に応じた手動の発注もできる。自動発注、手動発
注とも、その内容や納期はすべてコンピュータで管理され、納品監督や検収作業を支援でき
る体制となっている。この自動発注は、メーカーに対して、 一定期間内の発注を適度に分散
させて生産効率を引き上げる効果が期待できる一方、納期の維持などの牽制としても機能す
る、いわばメーカーの弱いところを補強するシステムとも言える。
顧客情報システム
桜花宝飾の取引先は約二万五〇〇〇軒あり、そのうちの約半分が常時取引を行なっている。
これらの取引先のプロフィールや過去の購入履歴、現在の受注状況などは、すべてデータベー
ス化されている。リアルタイムでこれらの情報を検索できるため、受注時に前回のお礼を言っ
たり、注文の処理状況・進行状況を連絡できる。
また取引頻度・取引金額・地域別などで得意先を分類することもできるので、取引頻度の
少ない顧客にはイベント告知などを行なって取引の契機づくりを進めるなど、顧客の特性に
応じた種々のマーケティング活動を展開し、効果を上げている。
著者/井上和弘(いのうえかずひろ)氏について
「儲かる会社づくり」の指導歴50
年、オーナー企業の経営に熟知した実カコンサルタント。
これまで300
余社を直接指導、オーナー社長のクセを知り尽くし、 一社も潰さず、赤字会社を儲かる会社
によみがえらせ、 一部上場はじめ株式公開させた企業も10数社にのぼる。その実力とぎっくばらんな人柄
に惚れ込んだ社長は数多く、長年の信頼感から後継子息を氏に託す人が後をたたない。
氏は、経営指導で東奔西走する傍ら、日本経営合理化協会主催の「後継社長塾」の塾長を30
年間つとめ、
今までに500
人以上の後継者育成にたずさわる。その中から後継社長として社業を数十倍に伸ばしたり、上
場を果たし「中興の祖」と言われるような優れた経営者を数多く輩出している。
1942年大阪生まれ。早稲田大学卒。イタリアフローレンス大学留学後、大手経営コンサルタント会
社を経て、84
年ICOコンサルティングを設立、代表取締役に就任、現在会長。94年より日本経営合理化
協会理事。JMCA米国視察団団長、各種の社長塾を主宰。ダラス市名誉市民。
主な著書『井上和弘の経営革新全集』『井上和弘の儲かる会社の絶対法則CD』『井上和弘・古山喜章「社
長の経営財務」DVD』(以上、日本経営合理化協会出版局)、『儲かる会社をつくるには赤字決算にしなさい』
(ダイヤモンド社)、『社内埋蔵金をお金にする知恵』(中経出版)、その他多数。
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