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ステップ 9 評価と賃金 ~頑張っても、認められない? ~

目次

1 適正な評価で「やる気」を引き出す

戦力化とやる気の関係

家庭の主婦が感じる最大の不満は、「家事労働が評価されないこと」でしょう。例えば「家族に『やって当たり前』と思われている」「頑張っても誰にも褒めてもらえない」「どれだけやっても一銭にもならない」などは、よく聞く不満の代表です。

パート・アルバイトの仕事も、同じです。入社当初こそ慣れない仕事にドキドキハラハラするものですが、家事同様、いずれ慣れが生じます。

ルーティン・ワークや、やって当たり前の仕事が多く、正社員に比べ仕事が限定されていたり、比較的簡単なことが多いだけに、何の評価も得られなければ、仕事が嫌になってしまいます。

では、そんな気持ちの停滞を防いでパート・アルバイトを戦力化し、その力を最大限に活かすにはどうするか。そのキーワードを敢えて一つ挙げるなら、それは「やる気」に尽きると思っています。「やる気」とは、わかるようでわからないような、非常にあいまいな言葉です。

一方で、多くの人が自分自身で実際に、実感する心の動きでもあるでしょう。例えばビジネスパーソンに「やる気になるとどうなるか、自分の体験を話してください」と促すと、多くの人からプラスの言葉が返ってきます。

具体的には「仕事が楽しくなる」「自然と仕事に集中する」「仕事の能率が格段に上がる」「仕上がり品質も高くなる」などです。これは、理屈ではないのです。もちろんパート・アルバイトでも同じです。

やる気を引き出す三つのポイント

では、パート・アルバイトの「やる気」を引き出すには、いったいどうすればいいのでしょうか。ポイントは三つ。

それは、すでに詳述した「コミュニケーション」「無理のないシフト」、そして「評価」です。中でも評価は、やる気に直結する、大変重要な要素です。

実際、パート・アルバイトに「いつ、どんなときにやる気になったか」たずねた結果を見てみると、一位が「お客様に喜ばれたとき」で五二・五%。これは、お客さまからの“評価”そのものです。

二位が「自分の仕事に対する評価があったとき」で、四六・八%となりました(『平成一七年版パートタイマー白書』)。ちなみに三位は「仕事の成果が実感できたとき」で三四・五%。さらに「上司から信頼されていると感じたとき」三三・八%、「責任のある仕事を任せられたとき」三二・九%と続きますが、これらに共通するのは、自分の仕事に対するリアクションが感じられたときだということでしょう。

評価とは、リアクションそのものです。自分の行動に対して、なんらかの反応があることは、実際にとてもうれしいことです。それが、プラスのものであればなおさらです。

「評価してくれた相手を失望させたくない」「相手の期待に応えたい」「もっと評価されたい」と思い、さらに頑張るものなのです。これが、やる気の源泉です。

適正な評価が、人と企業を成長させる

適正な評価の効用は、「やる気」を高めるだけにとどまりません。パート・アルバイトを成長させ、これが企業の成長につながります。

なぜなら、きちんと評価することで、個々のパート・アルバイトに「今の仕事ぶりでいいのか」「ダメならば、いったいどこを正せばいいのか」が伝わるからです。

まずは相手の仕事をしっかり見て、「こういう状態ですね」と認知すること。そして、それが会社が求める基準に沿っていれば「褒める」、つまり、「いいですよ」と伝えます。

褒められれば人はうれしいと感じ、もっと頑張ろうと思うものです。一方、何かが不足していれば「不足していますよ」と、注意します。

それが、自分の仕事を振り返ったり、見つめ直させることにつながります。その際「もっとこうしてください」とか「ここを改めてください」と具体的に指摘することが、彼らの成長を促します。

評価の手段は、評価表に基づいた人事考課などに限りません。

例えば「頑張っているね」「大変そうだね」「暑いなかありがとう」といった声かけは、何気ない会話のようですが、「認め」という評価の表現方法の一つです。

なお、褒める評価には別の利点があることも、ぜひ心に留めておきたいもの。それは「人は認められると、認めてくれた相手に心を開く」ということです。

パート・アルバイトが心を開いてくれれば、マネジメントには大変なプラスです。コミュニケーションも活発になり、職場全体が活性化します。

逆に、パート・アルバイトの仕事ぶりを評価しないことのマイナスは、やる気を削ぎ、成長を止めるだけではありません。ついには、頭に「退職」の二文字が浮かぶのです。

このことは、パート・アルバイト本人に「どんなときに辞めようと思うか」たずねたアンケートの回答に、明瞭に表れています(平成二〇年版パートタイマー白書)。

回答者の三三・七%が「頑張っても何の評価もされないとき」に、二八・六%が「何年働いても賃金が上がらないとき」に、「辞めようと思った」としているのです。

【事例】賞与を「社長室で社長から手渡す」 ~豚まんチェーン ~

大阪に本社を構える、ある豚まんチェーンでは、年に二回の賞与を、社長から全社員に「手渡し」で支給しています。社長は支給当日、シフトに応じて三々五々受け取りに来る社員を待ち、一人ひとり社長室に招じ入れては、声をかけながら手渡します。

これが、朝から深夜近くまで続くのです。正社員のみならずパートも同じです。目的は、賞与を手渡すことにより、社長が社員一人ひとりと目を合わせて、ほんの数言でも話をすること。

こうやって、賞与に込めた「あなたを認め感謝する」気持ちを、伝えようとしているのです。現場があちこちに散っており、ふだんはなかなかもちづらい社長との直接の接点を、定期的に作ることも目的です。

パートも対象にしているのは、長年勤務している人が多く、正社員同様大事なスタッフだと考えているからです。実際その場で渡すのは、明細と数万円程度の現金です。

残りは振込となりますが、それでも、全社員分を封筒に入れ用意するのには大変な労力がかかります。もちろん、その日は社長は、まる一日拘束されてしまいます。

豚まんを、一つひとつ手包みで作り、各現場で蒸し上げて販売する同社の仕事は、楽ではありません。また、「丁寧に心を込めて作る」気持ちが薄れると、手作りだけに品質に直結します。笑顔の接客も、できなくなってしまいます。同社の社長が「手渡し」で評価を伝えることにこだわるのは、厳しい仕事だからです。

また「どこよりもおいしい豚まんで、お客さまに喜んでいただく」姿勢を伝えるためです。年に二回の、「評価を伝える」ダイレクト・コミュニケーションの効用もあってか、同社の売上は右肩上がりを続けています。

2 評価に応じた賃金の支払い方

評価に応じた賃金制度は必要か

評価に応じた賃金制度とは、パート・アルバイトを一定の基準で評価して、それを賃金に反映させる制度です。

勤続年数の長さだけ、あるいは「 ◯◯さんは何となく頑張っている感じだから、時給を上げてやろう」などという主観による決定は、評価に応じた賃金とはいえません。

近年、企業のパート・アルバイト活用が進み、その仕事の幅も広がっています。単純作業を繰り返す仕事の人もいれば、正社員の補助業務をする人もいます。

また、正社員の代替戦力として、かなり難易度の高い仕事を行っている人もいます。同じ職場で働くパート・アルバイトであっても、人により担当している仕事の質が、違ってきているのです。

こうした場合、評価に応じた賃金制度は不可欠です。「全員一律」の賃金は、多くの職場でひずみを生みやすくなっています。評価に応じた賃金は、法令遵守の面からも必要です。

というのは、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法により、すでに触れた「教育」同様、「賃金」や「福利厚生」などに関してパートと正社員の取扱いを同じにしたり、バランスをとることが、企業に求められているからです。

具体的には同法は、パートタイマーを大きく四つに区分して、正社員との働き方の違いに応じて、処遇を決定するよう求めています。

例えば「正社員と同視すべきパート」については、「賃金」「教育訓練」「福利厚生」などすべてについて、正社員との差別的取扱いが禁止です。

「正社員と同視すべきパート」に該当する人がいる職場は、実際には少ないと思います。とはいえ、それでも正社員との差別禁止が法律で明文化されたことは、大きな変化です。

なぜなら、この改正法により、雇用管理においてこれまで「別もの」と考えられてきたパートと正社員が、同じ線上に置かれることになったからです。「パートだから」というだけで、仕事の内容を考慮せず一律の処遇をすることは、法律違反となりかねません。

まずは「評価表」を作ることから

評価に応じた賃金制度は、まずは「評価表」を作ることから始めます。評価表を作ることで、パート・アルバイト全員を、一定の基準で評価できるようになります。

この結果、評価者によるズレやブレが生じにくくなり、評価の正確性を保ちやすくなります。評価表がないと、評価する側の人の価値観や、評価する側と評価される側の相性などによって、結果が大きく変わってきてしまいます。

これでは、パート・アルバイトを疑心暗鬼にさせ、やる気を損ねてしまいます。評価表は、いくつかの要素で構成されるのが普通です。この構成要素は、企業によって異なります。

というのは、評価表は各企業が「パート・アルバイトに求めるもの」の一覧表であるからです。例えばスポーツクラブで、受付業務のためにパート・アルバイトを雇っている場合と、メーカーで部品の組み立て作業をしてもらう場合では、必要な知識も、実際に行う作業の中味も、そこで求められる能力も違います。

スポーツクラブの受付では、明るく臆せずお客さまにあいさつできたり、いつも笑顔でいられたり、混雑時でも慌てずに対応できる臨機応変さが評価されますが、部品の組み立て作業なら、細かな作業を手際良く間違いなくこなせることや、集中力などが評価されます。

一方、仕事の内容によらず、すべてのパート・アルバイトに求められることもあるでしょう。例えば職場のルールを守ることや、仕事に意欲的かつ前向きに取り組む姿勢などです。

これらもすべて、評価表に組み込みます。もっと具体的に、「改善提案を月に一〇件以上出す」ことを、評価基準として明示している会社もあります。

評価表の作成は、パート・アルバイトが行っている業務の一覧表を作ることであり、その難易度を明確にすることであり、さらには「自社が大切にすること」を明らかにすることでもあるのです。

【事例】接客販売 A社と部品メーカー B社の評価項目

接客販売 A社では、以下の三方面から、パート・アルバイトをそれぞれ五段階評価しています。

基本行動……仲間と協力して仕事をしているか、あいさつができるか、遅刻・欠勤がないか、社内ルールを守っているか、等

定型業務……店内の整理・整頓・清掃、クレーム対応、レジ業務、電話応対、商品説明、等 接客スキル……身だしなみ、表情、お辞儀、言葉遣いと語調、等 また、部品メーカー B社では、以下の二方面から、パート・アルバイトをそれぞれ五段階評価しています。

業績評価……代表的な製品に関する、一時間あたりの組み立て個数(具体的な難易度や作業工程の多さ等から、「何個組み立てられれば、どう評価されるのか」は、部品によって異なる) 行動評価……冷静さ、思いやり、率直性、礼儀、整理・整頓、清掃・清潔、身だしなみ、勤務集中、改善意識、コスト意識、日報

評価の結果を賃金表に落とし込む

評価の結果を、賃金に反映させたものが「評価に応じた賃金」です。つまり、評価表を作ったら、それに基づいて評価した結果を、パート・アルバイトの賃金にどう反映させていくのか、決めなくてはなりません。評価結果の反映のさせ方も、各社各様です。

中にはパート・アルバイトにも正社員並みの非常に細かい職務資格等級制度を導入し、「最下位等級では賃金アップのピッチは五円」などと決めている例もあります。

一方、もっとざっくりと「 ◯◯の仕事ができるようになったら五〇円アップ」などとしているところもあります。パート・アルバイトを評価して時給を見直す頻度も、それぞれです。

人事評価に応じて賃金決定する場合、賞与については半年に一度、時給については一年に一度といったところが多いようです。しかし、パートの戦力化に積極的に取り組む企業の中には、三カ月に一度という高い頻度で時給の見直しを行っているところもあります。

正社員に比べ勤続年数が短いことから「評価の頻度を上げないと、パートのモチベーションアップにつながらない」、また「常に評価し、時給アップのチャンスを明示することで、退職者を減らしたい」などがその理由です。

以上見てきたように、評価に連動した賃金制度の作成は、実際には大仕事です。同じ仕事をするパートが少なくとも一〇人前後いるならば、こうした賃金制度の導入は結果的にプラスになるでしょう。しかし、パートが二 ~三人しかいないような職場では疑問です。

ただし、制度化しない場合は、賃金決定の際の「納得性」「公平性」を、制度がある職場以上に意識する必要があるでしょう。また、正社員とのバランスがとれた金額にすることが、パートタイム労働法により定められていることは、すでに記したとおりです。

残業代の支払いが生じるときは?

パート・アルバイトの賃金にも、正社員同様、時間外割増(残業代)が発生します。具体的には、パート・アルバイトの労働時間が一日八時間(法定労働時間)を超えた場合、通常の賃金に二五%以上、上乗せした割増賃金を支払わなくてはなりません。

注意点は、割増賃金の支払いが生じるのは、パート・アルバイトの通常の勤務時間と関係なく法定労働時間つまり「一日八時間」を超えた場合であること(パート・アルバイトが仕事をかけもちしている場合、複数カ所の労働時間が通算されるのでさらに注意)。

例えば通常の勤務時間(就業規則や労働契約などで定められた所定労働時間。

拘束時間から休憩時間を除いたもの)が、午前一〇時 ~午後五時(休憩時間一時間を含む)の計六時間であれば、あと二時間つまり午後七時までの勤務については、割増賃金は発生しません。

一日八時間を超える労働、つまりこの場合なら午後七時以降の残業をした場合に、通常の時給が八〇〇円ならその二割五分増しの賃金、つまり時給一〇〇〇円を支払うことになります。

パート・アルバイトに深夜業(午後一〇時 ~午前五時までの労働)をさせた場合にも、割増賃金は発生します。

この場合の割増は二五%で、パート・アルバイトがこの時間帯に働けば、たとえ一時間しか勤務していなくても、割増賃金を支払うことになります。

居酒屋やコンビニなどの募集広告で、深夜労働に割増賃金が表示されているのは、法に則った行為です。深夜業の割増は、時間外労働、休日労働の割増と重複加算されます。

例えば「時間外労働の割増賃金」の例にあげた時給八〇〇円のパートが、さらに三時間、午後一一時まで働いたとすると、一時間あたりの賃金は以下のようになります。

○午後七時 ~同一〇時(法定労働時間を超えて労働)……時給一〇〇〇円(時間外割増二五%) ○午後一〇時 ~同一一時(法定労働時間を超えて深夜業)……時給一二〇〇円(時間外割増二五% +深夜業割増二五% =五〇%増し) なお、二 ○一 ○年四月以降、労働基準法の改正により以下のように割増賃金が変更になります。

時間外労働の量により割増率が変わるので、注意が必要です。

○ 1カ月の時間外労働が四五時間以内の場合……二五%以上増し ○ 1カ月の時間外労働が四五時間を超える場合……労使で時間短縮または割増賃金率を引上げる努力義務 ○ 1カ月の時間外労働が六〇時間を超える場合……五〇%以上増し ※中小企業に対しては猶予措置 ※引上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休日付与もできる

休日労働の割増賃金って?

労働者には、一週間に一日または四週間で四日の休日を与えなければなりません。この休日に労働させた場合には割増賃金を支払う必要があり、パートでも同じです。

割増賃金は休日労働した時間について、通常の賃金の三割五分以上、上乗せした賃金となります。休日労働をした場合、通常の時給が八〇〇円なら、時給一〇八〇円を支払うことになります。

なお、休日に時間外労働をさせても、別途時間外割増賃金は発生しません。この「休日労働の割増賃金の支払い」が、不要になる場合があります。

休日振替とした場合です。休日振替とは、「あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日にするもの」です。

具体的には、事前に振替休日を指定し付与します。こうすれば、当初休日であった日に勤務しても休日労働とはみなされず、割増賃金を支払う必要もありません。

なお、休日振替を行うには、事前に以下の二つを行う必要があります。

就業規則等に休日振替ができる規定を設けておく 少なくとも振替実施日の前日までに、振替日を指定して労働者に伝える 休日を振り替えたつもりでも、 を行わなかった場合、すなわち事前に振替日を特定していなければ、代わりに休んだ休日は「代休」扱いとなります。

この場合、休日労働した日の賃金支払いが必要になるだけでなく、その額が「休日労働の割増賃金」額となるので要注意です。

手当で報いるのも一つの手

パート・アルバイトの仕事について、手当を活用することで、公平性と納得性を上手に高めている企業もあります。

例えばスーパーの鮮魚売り場担当パートが「 ◯◯の魚を刺身にできる」といった一定の技術を習得した場合、「技術手当」を支給して報いる、あるいは「パートリーダー」や「パート主任」「パート店長」など、監督職やマネジメント職に登用されたパートに、リーダー手当を支給する、などです。

手当は、「毎月五〇〇〇円」など月額で支給することが可能です。時給とは別にすることで、労働時間にかかわらず、毎月の支給額を一定にすることができます。

他にも、勤務時間帯や職種による賃金の差を、基本給は変えずに早朝手当や職務手当、資格手当を支給することで、つけている企業もあります。

他のパート・アルバイトが出勤したがらない時間帯や曜日に働いてくれたり、あるいは特に忙しい時間帯に働いてくれる人に対して、会社への貢献度や時間あたりの労働密度の差を考慮した支払いをしようというわけです。

これらパート・アルバイトの手当をまとめると、以下のようになります。

・特別勤務手当……土・日曜・祝日や年末年始、早朝や夜間の勤務に対する手当。人が集まりにくいときに、人手を確保したり、出勤を奨励するための制度

・職務手当……仕事に特別な資格や免許、技術・技能などが必要な場合、資格手当などとして支給。

あるいは、雨天の屋外作業や、他部署に比べて大変な仕事だったり厳しい労働条件だったりする場合に支給すると、仕事による不公平感を埋めることができる

・役職手当……店長、主任、時間帯責任者などに、職務内容や責任の度合いに応じて支給する

・精皆勤手当……皆勤あるいは欠勤一日など精勤したパートに支給する手当。出勤率を上げたい場合などに有効

・通勤手当……実費を全額、あるいは会社規定の限度額内で支給

なお、改正パートタイム労働法では、こうした手当についても、正社員との差別的取扱いを禁止したり、バランスのとれた処遇にすることを求めています。

パート・アルバイトの賞与と退職金は必要か

パート・アルバイトに賞与を出したり、退職金制度を適用するかどうかは、各企業の判断です。つまり、出しても出さなくてもかまいません。

しかしながら、パート・アルバイトのモチベーションや定着率アップの観点から、これらを用意する企業もあります。特に賞与に関しては、正社員の賞与支給時に合わせ、寸志程度の額をパート・アルバイトにも出している例はよく聞きます。

パート・アルバイトの賞与の額は、以下のように決めているところが多いようです。

・基本給(時給)に一定率を掛けて算出し支給

・基本給に関係なく一定額を支給

・出勤率、勤務成績、勤務年数等に応じて支給

また、賞与はパートの年収に加算されます。

扶養控除内で働きたい場合は、就労調整(詳細は知っておきたい実務知識 )に注意が必要です。一方、退職金に関しては、働いた時間や年数などで基準を設け、これをクリアしたパートに支給している例などがあります。

例えば勤続年数五年以上なら一律七万円、一〇年以上なら一律一五万円を支給という会社がありました。いずれにしても「長く働いてくれてありがとう」という気持ちの表現であり、定着を促す手段の色合いが濃いようです。

なお、賃金同様賞与や退職金についても、正社員との差別的取扱いが禁止されたり、バランスを取ることが、改正パートタイム労働法で定められています。

正社員とのバランスを視野に

ここまで、正社員とパート・アルバイトのバランスを取るべきという記述が目立ったかと思います。

これには、近年企業が正社員を減らし、代わりにパート・アルバイトなどの正社員以外の従業員を増やしてきた結果、パート・アルバイトの仕事と正社員の仕事が非常に近くなる場合が増えてきたという事情があります。

何度も触れてきた二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法も、こうした社会の変化を受けたものです。

それだけでなく、パート・アルバイトでの仕事が、かつてのような「自分のお小遣い稼ぎ」目的ではなく、家計を支える重要な収入となっている人も増えているようです。

また、正社員としての勤務経験のある人や、自身がパート・アルバイトをマネジメントしたことのある人が、パートで仕事復帰している例が増えています。

こうした人は、自分がパートで行っている仕事が、会社のなかでどういった位置付けにあり、どの程度の難易度であり、責任の程度はどうなのか、などがわかります。

正社員とパート・アルバイトのバランスを取ることは、法の遵守という面だけでなく、労働の質に応じてきちんと報いるという面からも、非常に大事になってきているのです。

【事例】パートで仕事復帰した元正社員の不満

大手都市銀行に一〇年勤めて結婚を機に退職、夫の郷里に転居し出産後、子どもを保育園に預けて地元の地方銀行にパートで復職したある女性は、仕事の内容と時給があまりに見合わな過ぎることに、大きな不満をもっていました。

「業界経験があるだけに、自分がパートで担当している仕事が、どういうものなのかがよくわかるのです。今、パートとして担当している仕事の中には、かつて自分が正社員として行っていたものがたくさんあります。

また、今の職場の正社員が、どんな仕事をしているのかも手に取るようにわかります。だからこそ、自分とほとんど同じ仕事をしている正社員の年収が、自分の三倍もあるのはやはり解せないのです。

もちろん、パートには営業ノルマもないし、残業もよほどのことでないとしないけれど、それでも差がありすぎるんじゃないか、って」 そのころから「たまに馬鹿らしくなり、辞めてしまおうかと思ったりもするんです」と言っていた彼女。

子どもが小学校に上がり、フルタイム勤務ができる環境が整うやいなやその銀行を辞め、今では派遣社員として、一・五倍以上の時給で別の銀行に勤めています。

3 実際に「評価する」ときの注意点

評価の公平性・納得性を高める五つの工夫

評価に関するパート・アルバイトの大きな不満の一つに「えこひいき」があります。「あの人ばかり評価される」「私のことは全然見てくれていない」といった声は、多くのパート・アルバイトから発せられています。

特定の人ばかりが上司に目をかけられている様子を不快に思うのは、人として自然な感情です。賃金に反映されるなら、なおさらです。

店長や上司自身に「えこひいき」している自覚がなかったり、実際にはしていないのにそう思われてしまうこともあるので、面倒です。

こうした不満がくすぶると、頭のなかに「どこかほかにいい会社がないか」という思いがよぎります。そして、仕事ができる人ほど、あっさりと次の職場に採用され、辞めていってしまうのです。

また、こうしたマイナスの感情はマイナスの連帯感を生みやすく、職場に派閥や敵味方を作ってしまいがちです。評価は両刃の剣です。

しかし、評価をしなければパート・アルバイトのモチベーションは下がり、また定着率も悪くなってしまいます。だからこそ、公平性が感じられ、納得感も得られる評価をするよう、細心の注意を払います。

以下、評価の公平性・納得性を高めるのに効果的な工夫を挙げました。

評価者訓練の実施……評価する側の社員を一堂に集め、集合教育で評価の仕方を教えたり、評価基準の共有を図る

複数評価の実施……直接の上司だけでなく、その上の管理職や事業場長など、二人以上の評価者が評価する

パート本人の自己評価……同じ評価項目について、評価者だけでなくパート本人にも自己評価させる

評価者面談の実施……パートと評価者である上司が面接し、評価結果を説明したり、自己評価をさせる場合は上司評価との差異について双方が納得するよう、話し合う

評価基準を具体化……誰が評価しても結果が同じになるくらい、評価基準に具体性をもたせる

評価者訓練が大事

前項でも挙げた評価者訓練は大事です。特に、パート・アルバイトの人数が多かったり、勤務場所があちこちに散らばっている場合は不可欠です。

せっかく評価制度をしっかり作っても、評価する人が誰かによって評価の結果が違ってしまえば、評価制度導入の意味がありません。

具体的には、パート・アルバイトのどこを見て、どうであればどういった評価点を付けるのか、ということを具体的に教えます。

評価表を渡し、評価項目の一つひとつについて、具体的にどうであれば A評価であり、どうならば B評価なのかということを説明し、評価者全員で共有していきます。

評価者訓練は、一堂に集めての OFF― JTで実施するとよいでしょう。伝わる内容にブレが生じにくくなるからです。

成果だけでなくプロセスも見る

評価をするといっても、多くの場合、パート・アルバイトを結果ばかりで評価するのは困難です。勤務時間や日数の短いパートは、一つの仕事を何人かで担当する場合が多いからです。

一つの仕事が達成された場合、それは最終段階を担当した人だけの成果ではなく、その途中を担当した人すべての力が結集された結果です。

そんな、目に見えないプロセスを担った担当者にもきちんと評価の目を向けてあげないと、その人たちは報われません。なお、これは逆の場合も考えられます。

トラブルやクレームです。仮に、パートの Aさんがお客さまからクレームを言われたとします。しかしその原因は Aさんの直前の時間帯にシフト勤務していた Bさんにあった、などということは、実はよくあることなのです。

自分には直接原因のないことでクレームを受け嫌な思い思いをした上、評価まで下がったとなれば、 Aさんが「こんな職場で働き続けたくない」と思うのは自然です。

実際、パートに賃金に関するアンケートをしてみると、自由回答では「結果だけでなく、プロセスも評価してほしい」という声を目にすることが少なくありません。

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